∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ 焔の魔剣 ■

■作者:nao 様/ 紅乃鳥飛鳥 様■
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エルは非常に緊張していた。

ライ&レッドは死んだように爆睡し、シエル&フォウ(+ヴェルジュ)は狩り。

一応信用したとは言えルーは魔女。ライの監視が無いで何を仕出かすか解らない。

その時果たしてエル一人でそれを防ぐ事が出来るだろうか・・・

「おい、エル」

「は、はいっ!!」

一瞬心を見透かされたかと思った。事実してもおかしくない。

「この男、見てもいいか?」

今更ライを見ても仕方がない。この男とは勿論レッド。

しかし何故。変な事をしようものなら・・・と構えつつ。

「どうぞ。」

ルーがレッドの傍らに立ち魔杖を振り上げた瞬間、空中に展開する魔方陣

「!!!」

ではなく、何か観測結果を表したパネル状の代物。エルにも見れるように。

「・・・はっはっはっ、エルも見てみろ。凄いぞ二人とも。

もう戦闘が出来るまでに回復してるナ。何者だこの男」

と今度は別のパネルを展開。

エルが覗き込むと、一枚目は二人の健康状態を詳細に見たものだった。

・・・確かに凄い。空っケツの状態から2刻程休養しただけで7割がた回復してる。

二枚目は

「ふむ、竜人と天使のクオーターと。人としては覚醒しておるが

そっちの方は覚醒しとらんナ〜〜。すれば面白いだろうに・・・」

レッドの血の情報。エルが聞いた通りの物以上が其処に

「・・・さて、如何するかナ」

やはり・・・

「帰ってくるまで寝るか。」

〜〜〜〜〜〜〜〜。

考えて見ればライが信用している人間がそんな事をするはずがないと。

注)ライが出会った当時ごろまではやっていたんだけどね。

考えてみればこのライ、つくづく不思議な男である。

「・・・あの、ルーさん」

「ん〜、なんだ〜」

「もし、魔剣に操られている人がお仲間でなければ

ライさんは助けようと思われるでしょうか?」

「愚問だナ。私が知る限り、それは人間にもよる」

「やはり・・・」

「見知らぬ奴であろうとソ奴が抵抗しておれば助けようとするだろうし、

仲間であっても端っから抵抗せん奴なら諸とも切り捨ててしまうかもしれん。

まあ、全然運命に抵抗せん奴なんぞ我等が仲間にはおらんがナー」

「・・・そうですね。」

どうも知識が有り過ぎると己の直感を疑ってしまう傾向にあるようで・・・

「私はともかく、ライは信用しても構わんと思うぞ。

知っていると思うが、こやつは見たマンマだからナ。(ゲシッ)」

「うっ・・・・・(眠」

ルーさん、寝ている人の頭を蹴らない。

「信用してますよライさんの事は勿論、ルーさん貴方の事も・・・(笑」

そして二人は共通の話題(何?)で花が咲き・・・

暫くして、狩りから二人が帰ってきた。フォウが獲物を担いで。

「・・・代ろうか?」

「い・・え・・、この位・・・(重いよぅ)」

(・・・・・・フォウ、無理するな)

自分だけ何もしないというのは・・・と途中からフォウが持っているのだが、

何度このやり取りが繰り返されてきただろうか。

フォウはそのまま獲物を地面にドサッと落とし、

それをシエルは腰に差した道具専用短刀で捌き始めた。

「狩ってきちゃう上に・・・捌いちゃうの(驚」

「素早い手際ですね。」

「シエルのコレは趣味だか、本職の奴には負けておらんぞ」

実は、騎士団の屋敷の食卓に並ぶ肉はほぼ全てシエルが狩ってきたもの。

でも何故そこで威張る、ルー?

因みにシエルの味付けは塩コショウと極めて単純、というかソレしか出来ない。

ルーは論外、初めっから料理は下手糞。 そんな事までフォウ,エルは知らず、

「お肉を切っていただければ、後は私達で」

「エルさん、ちょっと休ませて・・・」

幸運な事にフォウ,エルの腕前は良く食う奴がいるだけに腕前はそこそこ。

その辺に生えているハーブを使って・・・という芸当も出来る。

その程度ライも出来るが、今はくたばっているため×

レッドは端ッから×

そうこうしている内に料理が出来(量だけに肉のほとんどは保存のため燻製中)、

「誰かライさんを起していただけませんか?レッドさんは私が起しますので」

とエル。 コレばっかりは他の人へ譲る気はない。

「ライは私が起そう。コヤツに任せると一緒に寝ているからな。」

と素知らぬ顔をするシエルをニヤリ笑いながらルー。

駆けて行ったルーは寝ているライの腹の上に跳び跨ぎ乗り

「お〜きろ〜〜!!!」

「・・・・・・・(驚」

「・・・人の・・・上で暴れるなよ。 おはようさん、こんな時間だけどな。」

見かけと違い目覚めは宜しいようで、ライさん。

「め〜さめたか、ライ」

「おはようございます、ライさん。 

レッドさんを起しますので先にお食事していてただけませんか?」

コレを譲る気が無いと言うより、余りにも寝起きが悪過ぎるから

そのため起すためには飯で釣るかアダルティ(?)な方法を使うか。

「・・・そいつ、俺が今すぐ起そうか?」

「えっ、如何やって?」

「なに、こうすれば(ニヤリ)」

瞬間、辺り一体の虫の声が消え空気が凍り付きそうな凄まじい殺気が

がばっ!!!

「よう(ニヤリ)」

「・・・貴様も人が悪いな」

「さっきの礼だ。 さー飯食うぞ、飯っ!!」

とライはルーを肩に乗せてレッド共々立ち上がり・・・

「・・・如何した?」

「腰が・・・・・(泣」

エルさん、ライのさっきに腰を抜かしたようで

ポリポリポリ、がばっ

「きゃっ!!!」

不意にレッドはエルをお姫様抱き。

「ひゅーひゅー、やってくれるねぇ」

「御陰様でな。」

剣で語り合っただけあって今やマブダチ?

その調子で4人は焚き火の3人(?)の処へ戻り

「大丈夫だといっただろ?」

「はぁ、本当ですねぇ・・・」

ライの殺気の事で盛り上がっていたらしい。フォウが全く堪えていない処をみると

流石、戦士。

(ライ、御前がやったな?)

「まあな。それよりサッサと飯食おうぜ。冷める」

全員円陣を組んで座り、食事が始った。約二名親の仇の様に食い散らかし・・・

「「ご馳走様」」

(・・・お前達、本当に今日初めてあったのか?)

頷く二人。

(幾ら戦ったとは言え・・・お前達、今日出会った者同士には見えんぞ。)

二人を除き全員同意見、飯を食べながら頷く。

「そんなこと言われても」

「なあ?」

・・・意外にこの二人、性格が似ているのだろうか。

「なんでもいいさ。お前達もサッサと飯食ってくれ。」

「・・・そうだな。急ぐとしよう。」

その存在に気付いたのは、ライは魂の繋がり,シエルはその超感覚。

ルーはその事が解っても黙々と食べ終わり。続いてシエルも。

(・・・なるほど)

「「「???」」」

訳も解らずフォウとエルも食べ終わった。で

「・・・こっちに向っている。多分、後、四分刻(30分)もかからない。」

「俺とヤるのに十分な力を得たってか? なめやがって・・・」

それで残りもライ達+が何を言っているか理解出来た。

野営している所は接近が分るよう、森の中にあるただ広い広場。

「・・・向うから来るのなら罠を張ってみれば?」

「その道のプロを引っ掛けられるようなモノ、俺達には無理だな。

ルーとエルを中心に四方に立つぞ。ルー、頼む。」

「うむ、承知した」

ルーの魔杖一振り、広場を囲むように灯る「光明」の魔光。

これで、どうやっても接近が解る。例え相手が暗殺のプロであろうと・・・

と暫くして不意に魔光の内の一つが消えた。ルーなら軽く1週間はもつというのに。

そして、次から次へと順送りに消えて行く。

「ルー、真上に特大っ!!」

とライの叫びと共に真昼のように明るくなる広場。

やってくるのは・・・マントで身を隠した何者か。

手には気味が悪い血朱の刀身をもつ魔剣ジェライラス。

「・・・・・・俺だけがでる。」

「「「「「!!!?」」」」」

瞬間、制止をする間もなくなくライは飛出し、ぶつかり合う剣と剣。

鍔競り合い、接近する顔と顔。 

マントの影から見える口元のは女性・・・レイハのモノ。それが声無く

ら・い・ ・わ・た・し・を・こ・ろ・し・て

「・・・もう少し我慢してくれ。 絶対助ける。

聞け、魔剣ジェライラス。貴様は絶対潰すっ!!」

レイハの蹴りに二人は離れ、レイハは中距離で手持ちのクナイを一気に投擲。

五月雨。避けられないよう無数のクナイを的に対し当時に投擲するという。

しかもコレは影撃と混合。

それを神狼牙の握りの長さを駆使して振回し一つ残らず撃墜。

「オマケだ。」

ばしゅっ!! と音と共に千切れ飛ぶマント。撃墜+軽めの真空刃はお約束。

其処から出てきたレイハはその身体に半分,色々な処に

血を煮詰めたような黒いモノ 否、魔剣ジェライラスから染み出したモノを

纏わせていた。

「ライッ!!」

ルーの叫びと共にレイハの周囲を疾駆する束縛系魔法陣。

だが、ソレが完成する前に

「っ!!」

レイハの身体が霞み消え、ライは剣を盾にした状態で吹っ飛ばされてしまった。

もしライの持つ剣が並のものだったなら、この霞斬で上下両断。

恐るべしレイハの技と魔剣ジェライラス。

非常に微妙な戦い。レイハは殺すつもりで襲ってくるがライは手加減せざるなく、

ライは武器破壊を目的で戦うが巧みな剣技で受け流され・・・

しかも何時の間にかレイハは二刀流。

魔剣ジェライラスから染み出したモノが左手で破壊剣を形造り、倍の波状攻撃。

レイハの妖撃+魔剣ジェライラスが蓄えた技は次第にライを追詰め

ガキンっ!!

「動きはわかった。援護する」

ライの首を跳ねようとしていた狂刃を打ち上げる滅竜刀

しかも不意にレイハはバックステップ、

「私を忘れてもらっては困る」

シエルの霞斬を避けたか。シエルの霞斬はレイハの見取り稽古で得たモノだが

レイハの斬るモノと違い、爪の間に出来た空気の塊で諸とも相手を撃つという。

霞斬爪打式、それでも威力は本家本元に負けず劣らず。シエルの瞬撃ならでは。

「皆さん、避けてっ!!!」

「「「「!!!??」」」」

ズガガガガガガッ

降り注ぐ無数の炎弾。

「馬鹿タレっ!!ちょっとは状況を考えんかっ!!」

「フォウさん・・・」

撃ったのは勿論フォウ。それを蹴るルー。呆れるエル。

昔ライ諸とも敵を攻撃した事があるルーがフォウを叱る資格は無いと思ふ。

「余りフォウを叱ってやるな。御陰で向うが引いた」

土煙から出て来た3人のライの一言。シエルは土煙が辛いのかしっかり目を瞑り、

レッドはしかめっ面。でもそれはフォウに対してではなく

「痛み分けだ。どちらにしろ今のままでは俺達に勝ち目はない」

ライ達の勝ちとは唯一、レイハを助け魔剣ジェライラスを砕くこと。

しかし今のままでは目的を果たす前に疲労し返り討ちに合うのは確実。

(・・・あの剣、魔剣にあらず。砕いた処で滅する事が出来るかどうか。)

「・・・ハードだな。」

ライの何かを決意した表情に不安が過るルー&シエル。

この男は目的のためなら己が傷つくことを厭わないから・・・

 

一方、先程の戦闘で意外にレイハが盛り返していた。

ライを傷つけないよう遠くへ逃げようと動けるまでに。

これも炎弾の直撃を魔剣が食らい、一時的に支配が弱まったため。

現に魔剣から染み出たモノも要所を覆うのみとなっていた。

それでも手から魔剣は剥がせない。ならば自分諸ともこの魔剣を葬ろうと・・・

「!!?」

「おう姉ちゃん、色っペー姿で何やってるんだい?」

気付けば囲まれていた。そもそも周囲を気を付ける余裕すらなかった。

近くにいるのも合わせて40人強。 多分、全てザコの野盗だが・・・

「ケケケケ、俺等がヤった後ミンナで回すか?」

「をっと、抵抗するなよネーちゃん。抵抗したら手足もいでヤり殺すぜぇ

文字通りなぁー。」

こういう輩はいつも・・・

と思った瞬間もう遅かった。ほんの僅かに持った殺気が

魔剣により無限に引き摺り出されて行く。それにより魔剣も活性化。

レイハの支配権を奪い

「殺」

「「!!?」」

一人が声を上げる間もなく嘘のように縦真っ二つ。

彼等がそれを誰がやったか気付いた時、殺戮の宴が始り・・・

血を浴び、屍の中に立つ影が一つ。

その身体の本来の持ち主は既に心奥底に封じられ、顔は狂喜に歪み

「サア、復活の宴の始りダ」

声と共に起き上がる骸。骸は更なる生贄を求め・・・

そして何処からともなく集まってくる小竜達、否、廃獲羅竜の生屍。

そう、レッド達が退治したあの廃獲羅竜の群。

これが有ったから魔剣、邪神は態々こんな処まで来た。

今だ生を求めこの世に留まる魂を喰らい己が力とするため。

「我身体とナれ屍・・・・」

刀身が砕け散り、そこから闇の光を放つ魔剣。

それと共に生屍竜がレイハへ襲い掛かり・・・のように見えるほと激しく群がり

ある形へとなっていった。 邪神がもっとも好む姿、それは

 

レイハとの一戦を終え一同は無事、明方を迎えていた。

木を背凭れに腕組みで白む空を睨むライの太腿を枕に寝るルーとシエル。

向いに同様のレッドとルー&シエルの真似をしてレッドの太腿を枕にエル。

その間、三角座りで膝を台にチラチラと二人を見比べるフォウ+ヴェルジュ。

「・・・眠らないのか?」

「眠れると思うか?」

「確かにな。 ・・・策は?」

「肉を斬らせて骨で裁つというのは」

(邪神が復活となるがオチだ。)

「レイハを助けられりゃソレはソレでいいんだけどね。」

「をい。・・・そもそも何故そんな物騒なモノ滅ぼさず封印したんだろうな」

「その時は滅ぼせる奴がいなかったんだろ? 普通なら封印するしかないさ」

「その時?普通なら? ・・・それなら今は滅する事が出来るんですか?」

フォウの一言に一瞬、沈黙が支配。 

「こいつ等が起きるまで俺達も寝ようぜ」

「ふむ、そうだな」

「・・・もしかして私、話そらされた?」

(・・・・・・・・)

「悪いなフォウ、俺の脚は二本しかない。膝枕はまた今度の機会にな・・・・・・」

「な、な、何言ってるんですか師匠っ!!?」

「「・・・z・・・z・・・z・・・」」

「・・・・・・(泣」

(・・・我を枕にしても構わんぞ?)

「ヴェルジュ固いからヤっ!!」

(固い・・・固いか。我は剣だからな)

みんな眠り、一本地に立つ魔剣に哀愁が漂う。

勝機が無い状況にも関らず、彼等に悲壮の色合いは無い。

何故なら未だ希望は潰えていないから。この面子なら創世神でも喧嘩を売るだろう。

相手が邪神だからといって端ッから怖気づく連中ではないのだ。

束の間の時が流れ、晩朝。全員が目を覚まし

「参ったな。昼、何も出来ねぇ」

「ヤツは昼動かんからナー」

「でも・・・凄い瘴気を感じる。 これは気持悪い(ウップ)」

「ルー、シエルに「シールド」かけてやって。」

「しかし、それでは・・・」

「無理するな。それはそれで如何にかするさ。」

探知能力が落ちてしまうが仕方がない。ルーがシエルに魔法をかけ、

瞬間嫌悪感に膨れ上がるシエルの尻尾

「いるっ!!」

シエルが指差した方向は群生地があった方向

「・・・!!? まさか」

「如何した?」

「この方向にはつい最近私達が退治した竜の群生地があります。

当然、その遺体は弔われているはずはなく・・・」

「端っから餌には事欠かなかったってかぁっ!!!」

「じゃあ、昨日戦ったのは何だったんですかっ?」

「たまたま通道の近くに私達がいたんだろうナ。行掛け駄賃というやつだ。」

「・・・行こう。昼間の内にこっちから奇襲してやる」

頷く一行。もう何の躊躇いもなく駆出し

小一刻、到着した其処には

「・・・何だ、これは?」

「俺が知るかよ」

巨大な卵に見える、森をスッポリ覆った漆黒のドーム。

「・・・結界だナ、コレは。 十中八九、中はヤツの領域だ。」

「つまり、それは如何いう事なんですかルーさん」

聞き返すフォウ。青い顔をして解らないはずがない。

「何時お客さん大歓迎ってこと。」

「お客さん・・・」

「・・・つまり俺達だな」

「他にいないだろ。神とやりあえる連中なんか。」

「神か・・・戦った事はないな。」

「神と戦うなんて・・・」

邪神といえど神は神。神官のエルにとっては畏怖の存在。

「・・・神じゃない。ヤツはエセ神だ」

「それって・・・」

先陣を切って中に飛び込んだライに残りの言葉を飲み込むしかなかった。

 

結界の中は森そのままなのに空は血のように赤く気味が悪い世界。

その中央に鎮座するのは・・・ライ達を一飲みできそうな黒紅邪竜。

「・・・・・・邪神ってヤツはすぐ竜の姿を取りたがる。それは神話の時代

神々と対抗し滅する事が出来た最強の生物 竜の力を少しでも得んとせんがため」

「・・・一体、何をいっているんだ?」

「まあ聞けや、あんちゃん。ヤツがモノホンの神なら竜の姿なんぞ取らんわけだ。

ヤツが神と価するのはその不死性ぐらい。んなモノが神? クソくらえっ!!

大方大元は死んだ神の欠片を獲た馬鹿タレだ。それに今更神だぁ?」

先手、破壊光の竜吐息に一同は散り、得物を装備構え

「・・・俺は竜殺し。竜相手に死にはしない、"絶対に"。

貴様が何者であろうとその姿を獲た事が敗因と知れ。」

ライ&レッドの放った無数の真空刃が黒紅邪竜の身体を切り裂く。

だが図体が図体だけに直に出来た傷は直り、その上

「気を付けろ御前等っ、迂闊に散らすと眷属が増えるゾ」

飛び散った肉片はそれぞれ幾つもの小竜と成る。が、

轟!!!

「露払いは私達に任せて遠慮なくやっちゃってくださいっ!!」

鳳凰がソレに襲い掛かり喰い燃やす。

斬っ!!

「細切れにしてしまえば何も出来まい・・・」

シエルの霞斬爪斬式に細切れ肉と化し、まだピクピクと動くそれをさらに

「「浄炎」っ!! ・・・フォウさん達とまではいきませんが支援は任せて下さい」

エルが二度と蘇えらないよう神聖魔法で燃やし尽くす。

後方ではルーが守護結界を前面に展開しつつ黒紅邪竜を観測。

「レイハはそのデカイのの胴の何処かにいるっ。先そっちやれっ」

レイハを先に助け出さない以上ルーは危なっかしくて魔法が使えない。

とは言え、黒紅邪竜の爪や尻尾,羽の攻撃をかわしつつ攻撃する前衛の

ライとレッドにはレイハを見付ける術は無い。

でもライにはレイハが未だ生きている確信がある。魂の繋がりを感じるから。

不意に黒紅邪竜の動きが止まり、首の付根胸中央がボコボコと歪むと出てきたのは

「外道があっ!!!」

「人質のつもりか」

レイハの上半身。うだなれ顔は見えないが胸が上下している事はちゃんと・・・

黒紅邪竜は知っていた。レイハがライに対し絶大な威力がある事を。

そして黒紅邪竜は明かに笑っている。つまり

「・・・レッド、後は頼む。 俺が合図をしたらやってくれ」

「何を・・・」

「行けッ!!!」

瞬間、レイハを身体内にしまい込んだ黒紅邪竜の顎が襲い掛かり

避けたレッドは兎も角、ライはそのまま

「し、師匠おおおおおっ!!!」

(落ち付けフォウ、ライはまだ生きている。)

「・・・・・・うん」

一瞬フォウは我を失い全身に炎の紋様が出掛る、が直消える。

今はまだその時ではない。

「あの馬鹿わぁっ!! ・・・急げよ、ライ」

ルーは何があろうと取り乱さない。ライの考えを察し事態を最適にするが仕事。

一方、ライが丸呑みされるのを見て茫然としてしまうエル。

「ライさんが・・・」

「大丈夫っ、ライは大丈夫。」

「シエルさん・・・ライさんの事を信じていらっしゃるんですねっ!!」

「ああっ!!」

交差する攻撃。お互いの背に襲いつつあったもう竜と言えない蟲を

瞬撃、聖撃で粉砕するシエル&エル。

黒紅邪竜の攻撃を避ける反動で隻腕の滅竜刀を振るうが、ライが欠けた分

敵の攻撃は2倍、こっちは半分。時折フォウの炎刃が援護するが間に合わない。

「まだか、まだかっ、まだかっ!!」

合図はまだかっ!! 

合図は何かは知らない。しかしアレほどヤり合ったライが何も無く終るはずがない。

その時を信じてただ攻撃。

邪神は邪神で、レイハからライが如何いった者かを知りその力を我ものと出来るため

余裕。後はその力が我ものとなった処で腕鳴らしがてら目の前のゴミを・・・

だが眷属のレイハを吸収しなかったのではなく出来なかった。それが何を意味するか。

不意に黒紅邪竜の胸中央の一点に奇妙な燐光。邪神がその様な光を放つわけも無く。

「そこかああああああああっ!!!」

連発連撃幾重にも放たれたレッドの真空刃が其処に炸裂。肉片を撒き散らしつつ更に

ゴバッ!!!

内から爆発し、跳出して来たのは当然

「悪食は腹壊すぜ、おっさん。」

片腕にレイハを抱き抱え、多分無傷のライ。捨て台詞を残しサッサと引くと

レイハをシエル&エルに預け最前線復帰。

「遅いぞっ」

「おう、探しモノ見付けるのに手間かかった。」

嵌められた、はめられた、ハメラレタ

邪神は怒り狂い、その一撃のため天井ぎりぎりまで飛び上がるが

「やらせないっ!!」

斬っ!!

空舞う鳳凰上フォウの一撃。巨人級超大剣と化したヴェルジュが黒紅邪竜の翼を

ねごそぎ切り落とし、墜落する前に翼の肉片は変化の間も無く空で焼滅。

墜落した黒紅邪竜の動きを封じるルーの光と重力の檻、極超重光鎖結界。

だが生身の竜ですら一瞬で叩き潰すこの魔法ですら黒紅邪竜の脚止め程度しかない。

「目覚め早々私達に出会った己の運を呪うんだナっ」

後は御前達に任せた、ライ,レッド,フォウ !!」

それで十分。黒紅邪竜を中央に三方に3人が展開し、

「「「うをおおおおおおっ!!!」」」

神狼牙を腰溜横に構え、目が黄金の龍眼へと変り黄金色に燃え上がるライ、

鳳凰と融合し炎の中で焔の魔剣を上段に構え全身に炎の紋様が走るフォウ、

二人の気に呼応してその内の何かが覚醒、瞳が真紅の竜眼と清蒼の聖眼へと成り

背より竜が羽ばたくが如く噴出した気は肩担ぎに滅竜刀を構えたレッドを覆う。

「「「滅びろおお、邪神っ!!!」」」

撃ち放たれた三者三様、必殺の一撃は真直ぐ黒紅邪竜へ襲い掛かり、起つ破壊の竜巻。

エネルギーの奔流に邪神の世界に皹が入り粉砕

陽の光の元、竜巻の中で断末魔の叫びを上げる黒紅邪竜の邪神は徐々に崩れ・・・

「・・・勝っちゃいましたね。」

「負けるとでも思っていたのか?」

膝枕に意識の無いレイハを眠らせたまま唖然とするエルに

笑みを浮べながら返すシエル。

「いえ、負けるつもりはありませんでしたが・・・

考えてみれば今凄い人達が揃ってますね。」

神をも恐れぬ騎士ライ,竜殺しレッド,炎の愛娘フォウと焔の魔剣フランヴェルジュ

魔導師魔女ルー,瞬撃の純戦士シエル,神官巫女のエル。

そして、邪神に使われようと身体,精神共に滅びる事無く耐え切った戦忍レイハ。

「・・・力にはソレに対抗するだけの力が現れる。 受け売りだ」

シエルの言わんとする事は良く分かる。

其処へテクテクと駆けて来る幼女魔導師ルー。

「おー御前達、これでやっと一見落着だナ。」

直、主の4人(?)も合流するだろう。気配からしてフォウはノびて戻るだろうが・・・


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