∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ 焔の魔剣 ■

■作者:nao 様/ 紅乃鳥飛鳥 様■
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・・・・・・2年後・・・・・・・

ある森に廃獲羅竜の群生地があった。

廃獲羅竜。魔獣の1種で最大人間成人大サイズの竜であるが性格は狂暴。

そして竜のを冠するだけの強さ,素早さを有し、空を飛ぶ。

その上、奴らは群で行動する。大きな獲物を狩る時、

小さい獲物の群を襲う時、そして人を玩ぶ時。

これが人里からかけ離れていたのなら何の問題はない。

しかし、よりにもよってすぐ側には町があった。

大きくはないが小さくもない規模の町。だから避難は出来ない。

かと言って山狩りを行おうモノなら近くに町が在る事がばれ逆襲は必至。

そこで町は知る人ぞ知る竜殺しの冒険者の一行を雇った。

隻腕の男一人乙女二人という、確実に本物か疑ってしまう面子。

その群生地に隻腕の男、レッドはやって来た。

見た目は2年前と同じ、部分金属補強の革ジャケットにその隻腕には玉繊維の手袋。

背には布で包んだ大刀を吊り下げ。

その男の登場に百匹余の竜達は警戒音を上げ威嚇する。

レッドを獲物の人ではなく、竜と認識したのだ。

「皆殺しとは後味が悪いが・・・お前達が無作為に獲物を狩る以上仕方ない。

他の生物にも生きる権利がある。恨むなら、己の性(サガ)を恨め」

大刀を構え、ソレを縛る紐の端を咥え一気に引くと、

その中から姿を現したのは『竜滅刀』ドラグレス。

竜達は自分達より強い獲物を狩るのと同様、集団一斉に襲い掛かり・・・

・・・殺戮後遺体の山に立つのはタダ一人、全身返り血を浴びつつも無傷のレッド

それに駆け寄るは修羅場には似合わない神官乙女エル

「レッドさん、お怪我は?」

「いや、御陰で無傷だ。それより、やはり半数逃げられた。 フォウに連絡を」

二人のいる場所からは鬱蒼と茂った森が邪魔で空の様子は覗えない。

「はい。(・・・フォウさん、半数そちらへ行ったそうです)」

一方行の魔法「念話」ではフォウの返事は確認出来ない。でも大丈夫。

その頃、空へと逃げた竜達の前にはレッドに負けず劣らない強敵がいた。

「了解っ!!」

とエルの「念話」に返事するフォウが空にいるとは如何ほど?

その答はフォウが立っているモノの正体にあった。

猛禽類を思わせる巨大な鳳凰。フォウが炎を具現化させた精獣。

そして、その手には焔の魔剣フランヴェルジュ

(油断するなフォウ。 奴等も生きるため必死、

魔獣と言えど生を求め戦う権利はあるっ!!)

「うんっ!! ヴェルジュ、鳥さんもお願いっ!!」

フォウに鳳凰は一啼応え、ヴェルジュは炎を生み刀身を伸ばしていく。

あたかも切先から炎の結晶が成長するかのように。事実、増加分刀身は紅透明。

これが二年間、まだ成長途上中のフォウの,二人(?)の力。

そうやって元の数十倍の刀身を得たヴェルジュを構え、鳳凰は竜の群れへと・・・

・・・

「ただいまぁ〜〜〜」

鳳凰の上で疲労困憊フォウは帰ってきた。心なし鳳凰も疲労気味。

「お疲れさま。」

「今日の大金星はフォウだな」

対1では軽くレッドに軍配が上がるが、広範囲,多彩性となるとフォウは及ばない。

で、着陸とともに鳳凰はサヨナラ〜とばかりに霧散し、

その背でヘタバリくっ付いてきたフォウは

ベタン

「ふぎゃ!!?」

(・・・ふぅ、それなりに成長したがマダマダ未熟だな。)

と地面に叩き付けられ

「クスッ・・・今、治癒をかけますね?」

「お願いします〜〜、エルさ〜〜ん(泣」

今やエルは戦闘支援,治療と経理の一行の後方支援が主。

それほどに二人は一騎当千。

レッドは端から竜殺しとして戦っていたため判っていたが

あまりにも可愛らしかったフォウがココまで戦えるようになるとは・・・

フォウがヴェルジュを手にしたことは間違いなかった事になる。

「つかれたぁ〜よぉ〜(ズルズルズル)」

・・・可愛らしいという点は今も変らない。

その頃、遠く離れた希望の名を冠する都市で大事件が起きていた事を

4人(?)が知るはずもなかった。

 

連続辻斬り事件。

あるド阿呆が古代文明の遺物美術品の刀で試斬りを始めて起ったこの事件は

この都市では意外な展開へとなりつつあった。

この都市の自警団は他所で騎士団と名乗る程の実力を有する。その一部隊が

立った一人を相手にほぼ全滅。死者が出なかったのは奇跡に近い。

そして彼等の尊い犠牲の末、今その犯人はこの行き止まりの路地裏にいた。

「非番なのに申し訳ありません・・・」

「いえ、そのために私達はいます。 

私が通りかかった幸運、手遅れにならず良かったですよ。」

隊員が話しかけるのはその大部隊隊長ですら頭を下げる事に抵抗がない相手。

一見、デスクワークが主のキャリアウーマンにしか見えない若い女性。

隊員でも一捻りで勝てそうな上、場違い。

「ただ、今は自分の得物を持ち合わせていません。

何か貸していただけませんか?」

「では、これを」

と、渡された長剣を持つ姿はその服装とミスマッチなのにちゃんと様になっている。

二人は薄暗い路地裏へ。その奥に男はいた。

古美術品の刀で試し斬りを始めようと考えるくらいの体格をしているが、

それでも一部隊が全滅するほどの強者には見えない。

「私が行きます。貴方はここで。」

と彼女は無作為に歩いて行く。本来なら隊員は彼女を止めるべきだろう。

居合に入った辻斬りの一閃。

斬っ!!

凶光煌き、彼女は真っ二つ・・・ではなくその服のみが其処で両断。

「「!!?」」

「なるほど、部隊が全滅したのは頷けます」

彼女は塀の上にいた。

極星騎士団戦団長補佐 戦忍レイハ=サーバインが。

もっとも今は軽装の忍姿だが。

其処から跳び降りるのと同時に手を一振り、何本ものクナイが飛ぶ。

それを辻斬りはすべて弾き落す。が

トスッ、トストス

胴に刺さった。

「・・・甘いですね」

レイハとあろう者が単にクナイを投げるはずがない。

彼女はいつも素でクナイを叩き落す仲間達と戦闘訓練しているのだ。

当然、その対処もある。

影撃。囮のクナイの影に紛れるよう本命のクナイを撃つ技。

中々避けられるものではない。しかし

「!!?」

辻斬りは刺さったクナイを全く意に関していなかった。

アルシア特製即効性麻痺毒が塗ってあるというのに。

「アルシア」の名を知るものならその効力は容易に想像は付くだろう。

となった以上、レイハはもう手加減はしない。

己の身を危険に曝してまで相手を気遣う気はないし、

「彼」も文句は言わないだろう。

構え、次の瞬間

「???」

姿が霞み消え、辻斬りを点に元いた所の相対のところにいた。

「・・・秘技、霞斬り」

レイハが長剣を鞘に収めチンと鳴り、辻斬りの胴の上下が泣き別れ。

「不十分な装備でコレですか・・・」

思わず隊員も唸る。

極星騎士団。「彼」、戦団長ライを元に一騎当千少数精鋭の戦士達。

都市が都市だけに自警団が活躍し幅を利かせているが・・・

それも表向き、彼等の後盾があってこそである。

感心し通しの隊員を他所に、レイハは思案していた。

霞斬りの感触。やはり一部隊が全滅するほどの強者のものではなかった。

そもそもそんな相手なら霞斬りがアッサリ成功したかも疑わしい。

遺体に近づき調べ・・・今度は辻斬りが持っていた剣を手に取り

「うっ!!?」

「如何かしましたか、レイハ様」

剣から何かが流れ込み、レイハの自由を奪っていく。

そのまま身体は隊員の方を向き、一薙

「うわっ、い、行き成り何を」

危なかった。辛うじて避けさせたが。

「に、逃げて・・・コレは・・・この事をライに・・・」

「えっ、えっ、ええ!!?」

意に反し身体は血を求め暴れようとするのを渾身の精神力で抑え込み

嫌な脂汗が身体を伝っていく。

「早くぅっ!!!」

レイハの悲鳴に近い叫びに、これが冗談ではなく(レイハはそういう冗談はしないが)

危機迫る状況と解り隊員は後も省みず逃げ出した。

その隊員を後姿を見つつレイハは安堵し、

ライが助けてくれる事を望みつつ意識を失った・・・

 

その事から小半刻、異様な早さでフル装備のライは現場へと辿り着いたが

既にレイハの姿は其処にはなく・・・小雨が降出し、

「済みません。済みません。済みません・・・」

「謝るな。仕方がなかった事だ。」

隊員が思うに、ゴシップが本当ならレイハはライのイイ人。

ライの怒りは並ではないはず。

現にほら、そのガントレットの腕が小刻みに震えている。

「ライ、魔剣ジェライラスを知っとる・・・わけないナ」

「この瘴気なら1週間経とうと追える」

ライのイイ人、二人目,三人目登場。

美幼女魔導師ルーとそれを肩車する黒猫人の女戦士シエル

後、4人目の神官戦士アルシアを合わせてライのイイ人全員になるのだが。

話戻

「魔剣ジェライラス、邪神が封印されし魔剣だ。持つ者はソレに操られ、

邪神復活のため生贄求めて殺す。操った者と斬った者の能力を吸収、使ってナ。

今はまだレイハの精神力が勝っとるようだから、

それで人気のない処へ逃げたんだろナ。犠牲者を増やさぬように」

「・・・上等だ、エセ神が。レイハを苦しめる分

キッカリ利子つけて払わせてやる。」

ライに纏わるゴシップが一つ、「神殺し」

誰かがいった。ゴシップは真実を隠すため、あえて本当の事を言っていると。

それほど「神殺し」はヤバイ存在。 敵味方関らず、色々な意味で。

「一旦屋敷へ戻るか?」

「いや、時間が勿体無い。・・・コノ面子なら大丈夫だろう。」

実際、ヤり合うのはライ。援護をルー。

当然先に魔導師を潰そうとするだろうからルーの護衛はシエル。

例え計4人が出払おうと、屋敷にはカインを筆頭にアレス,リオ

そしてアルシアが控えている。戦力的には十分。

「おい、自警団の。」

「は、はい。」

「悪いが屋敷まで一っ走りして留守頼むと、その旨伝えてくれ。

俺達はこのままレイハを追う。追って、絶対・・・取り返すっ!!」

その隊員は思う。若き英雄ライに纏わるゴシップは良かれ悪かれ数多くある。

そのどれもが真実に基づいているのだろう。

しかしそれでもライが決して仲間を見捨てないと言う真実は変らない。

だから人は例え一度しかあった事がなくてもこの男を信用するのだろう。

 

廃獲羅竜退治から数日後、時は昼過ぎレッドは一人森で迷っていた。

レッドは迷子になっていた 本気(マジ)で。

心眼を持つ者が迷子などになるのだろうか。答は可である。

例えば、超精密な地図を持つ者がいるとする。

しかし自分が何処にいるか解らず地図が正しく読めなければ意味がない。

しかも迷ったならじっとしていればちゃんと見つけてもらえるのに、それを

「こっちか?」

と明後日の方向へと走り・・・ 取り敢えずレッド、走るな、じっとしてろ。

そもそも何故レッドが迷子になったかというと、

野営地で他二人が出払っている時に近隣の村へ食糧(酒)を買いに行ったから

初めてのお使い〜♪すら成功した事がないレッド君 その自覚は全くない。

と、森の獣道の向こうから何者かが歩いてきた。

旅人かマント姿の男で、野営のため薪でも集めているのだろうか。

すれ違いざまその男は軽く会釈し、その時マントから覗いた腕はガントレット。

肩には剣の握りらしき膨らみ

「・・・(この男、可也出来るな。)」

ジャガーノート以来久しく会う強者。その時は動揺し気付かなかったが

「・・・(戦ってみたい、この男と)」

今、この男を逃せば二度と出会う機会はないと直感が告げる。まさに一期一会。

と同時にその手は背の滅竜刀の握りへとのび、振り向きざま一閃。

居合にいたはずの男はバックステップで既に居合外。やはり・・・

「行き成り何する、貴様」

「・・・手合わせ願いたい」

「悪いが貴様と遊ぶ暇はない」

と再び背を向け立ち去ろうとする男に対しレッドは「滅竜刀」を解き真空刃。

「・・・いい加減にしろよ、貴様」

「ここで貴様を逃せば二度と会えない。少しはやる気になったか?」

「上等だ。ヤるとなったら隻腕といえど手加減はしないぞ」

「当然、貴様が負けた理由にされたくないからな」

もう戦いは始っていた。お互い言葉で牽制しつつ、ライはマントを投げ捨て

「後悔するなよおおおおおおっ!!!」

「誰がするかあああああああっ!!!」

戦叫を上げ両雄激突

 

エル&フォウ(+ヴェルジュ)がそれぞれの用事から帰ると、

其処にいるはずの人間がいなかった。 即ち、レッドが。

一人で動けば迷子になると解っているくせに、偶に思出したかのようにやらかす。

(人は何故愚行を繰り返すのか。それを挑戦と)

「御黙りなさい。 レッドさん、今度という今度は・・・」

「・・・(ひょえええええ!!)」

(触らぬ神に祟りなし・・・)

3人(?)は既にレッドの位置を把握している。

しかし迷子はレッド。高速で移動し、かつランダムに方向転換。

エルが激怒していなければフェウ&ヴェルジュが怒っていた。

もっともその可能性は無きに等しい。二人が怒る前に既にエルが激怒してるから。

まーそう言う訳でレッドを捕まえようと走っているのだが、不意に

(・・・レッドの位置が止まった。  

・・・今度は戦いを始めたぞ。 相手は・・・これはまた・・・)

珍しくヴェルジュに走る動揺。

「相手は知ってる人?」

(知っているも何も、相手は「ライ」だ。)

「「ライ」って・・・」

(我が「ライ」と呼ぶ者は僅か二人。一人はレッドの父親ラシュイ。

しかし、この者は既にこの世にはいない。もう一人は二人が知るあの「ライ」・・・)

一瞬時が止まった。

「「えええっ、何故二人がぁ!!?」」

二人とは勿論、レッドとライ。

(其処までは解らん。しかし、この様子だと二人とも本気だな。 急げっ!!!)

改めて乙女達はは駆出した。両雄を戦わせるわけには行かない。

色々な意味で・・・

つかヴェルジュ、動揺の余り自分が飛んで行ける事を忘れてる。

 

ガギン、ギン、ガン、ギン、ガン

戦いにしては余りにもリズミかるな剣戟の中、二人は戦っていた。

その光景に一瞬茫然

「は、早く二人を止めないと」

(待てっ!! 機会としては丁度いい。フォウ、二人の・・・

達人の戦いというものを良く見ておけ)

「でも、でもっ」

「そ、そうです。余りにも不謹慎」

(戦士の誇り高き戦いを止める事は誰にも許されんっ!!)

「「うっ・・・」」

(・・・本当に危険となったら我が教える。それまでは大丈夫だ。)

・・・確かに。 二人の戦いは戦いというよりまるで舞踊。

「ほ、本当にあの二人は戦っているのですか・・・」

レッドの強力無比な剛撃をライが受け流しそのまま烈撃を

それをレッドは受止め押返し剛撃へ転じ・・・

まるでお互いの動きを知っているかのように

実際、二人はお互いが如何動くかを知っている。

撃合った時の返って来る感触,筋肉の微妙な動き,気の流れ等から次の動きを予測。

「二人とも・・・」

凄いというべきか美しいというべきか・・・妥当な言葉見付らない。

フォウは純に剣技,体術において己が二人の足元にも及ばない事を自覚した。

(我は幸運だ。この戦いを見ることが出来ただけで魔剣となった価値がある・・・)

普通、二人ほどの強者が我を忘れる程本気で戦う事はない。

その結果が周囲もただでは済まない事を自覚しているから。

だから、ライとカインは今まで本気で戦う事をしていない。

しかしレッドとライの場合、レッドは戦士の本能を優先でそこまで考えていない。

そしてライは己の事態が事態だけに焦り、急ぐ余り容易にキえてしまい結果。

戦っているうちに二人とも己の全力を出せる相手に驚喜、我も忘れ・・・

と、お互いの攻撃に可也の距離まで弾き飛ばされた二人は

起き上がったその場で構えると動きが止まってしまった。

両雄、腰を落としたまま全身に力を蓄え・・・お互いの闘気が互いに呼応し、

際限なく膨れ上がって行く。

(・・・止めろっ、二人の戦闘思考が最終段階へとなった!!)

要するに、自分のダメージ無視で相手を攻撃するという。

「そんなっ、ヴェルジュさんが二人に語り掛けて」

(無意味だ。既に二人はお互いしか認識出来ていない)

「それなら、私が二人に攻撃・・・」

(二人にお前達を殺させる気か? 二人とも無意識で攻撃を繰り出すぞ)

「・・・レッドさんは私が如何にかします。フォウさんはライさんをっ!!」

とエルはレッドの方へ跳出し

「エルさん!!? も、もうっ」

エルの意図を一瞬で理解したフォウもヴェルジュを捨て飛出し・・・

 

お互いを倒すため必殺の一撃を繰り出した二人は身を投出してきた乙女達に

「「!!?」」

一瞬で理性が戻った。

レッドは最愛の人を傷つけるのは己自身許さない。とは言え

勢いが収まるはずもなく ぶつかったエルをそのまま腰にしがみ付かせ・・・

ライはフォウの事を忘れていなかった。健気にも己を犠牲に人々を戒め、

己が求める物の手がかりをくれた娘の事を忘れるはずがない。

そんな娘を傷つけたくないと左腕でフォウを抱締め、己の身体を盾に・・・

攻撃から護るため攻撃するという矛盾の中、二人の剣と闘気はぶつかり合い

「「っ!!!」」

引けば己と相方が、押せば相手とその相方が、

そのままでもいずれ膨れ上がった闘気が暴走し、と八方塞がりの状況。

瞬間生残る方法を模索、目が合い、お互いの考えを理解。そして

「「おおおおおおおっ!!!」」

(この闘気の高まり、素晴らしい・・・)

天を真直の光が貫いた。

 

爆発が収まり、そこには地面に叩き付けられる事を回避するため

乙女を上に抱き抱え倒れる両雄。

「「え〜〜〜っと・・・」」

お互い状況が掴めていない。

で、状況を一番良く知るヴェルジュは歓喜のあまり恍惚としてるし、その内

「大丈夫かっ!!」

「何があったっ!!」

と騒動に起きてやってきたシエルとルーがライの状況を見て凍り付き

状況は更に混乱する模様。

「お久しぶりで、師匠っ!!」(フォウ)

「フォウ久しぶり・・・じゃなくて」

「状況をちゃんと解るように説明しろ」(ルー)

「いつまでそんな格好でいるつもりだ」(シエル)

と圧し掛かられ、挟まれ責められるライと

「レッドさん、貴方は、何をやって、いるの、ですかっ!!」(エル)

「す、済まんん〜〜」

と、はしたなくマウントポジションでエルに襟首掴まれ叱られるレッド

(・・・・・・・・・・・・)

でヴェルジュは恍惚にいったまま返ってこない。

プチッ

「ちょと、だ・ま・れっ!!!」

「「「「「・・・はい」」」」」

収集が着かないこの場合キれた者勝ち。ライの一喝静まる一同。

円陣を組み座った中、半ば司会者と化したライが知らないのは

「取り敢えず、俺に喧嘩売って来たソイツは誰?」

とエルとフォウに聞き、

「俺は流離の「竜殺し」レイバード=フォルシュタイナー。レッドと呼んでくれ。

貴様はフォウとエルと知り合いのようだが・・・誰だ?」

「知らんと喧嘩を売ったんかいっ!!!」

(・・・彼があの「ライ」だ。)

戻って来たヴェルジュの一言にレッド目が点。そして納得。

レッドに負けず劣らず、この強さなら皆があそこまで言うのも頷ける。

(目的の物は手に入れたようだな、ライ)

「おう、御陰様でな」

と自分の剣 神狼牙を掲げて見せて、そのライの首にチョークをかけて

「さあ、今度は私にも解るよう説明しろ。 その喋る剣は何だ?」

「「「!!?(驚)」」」

(こ、この幼娘・・・)

「先、それぞれの紹介からな」

ライはぐいぐい首を締めるルーを無視してそれぞれの紹介。

「今、俺の首を締めているのが魔導師ルー」

ライさんの子供かしら,肌柔らかそう とエルとフォウは思い、

この子供何者っ!!  とレッドとヴェルジュは怪しむ。

「で、この無愛想な猫娘は純戦士のシエル」

ライに無愛想と言われシエルは耳と尻尾を動かしつつライの頭を軽く小突き、

カッコイイのに、猫耳がカワイーと エルとフォウは格好良さと可愛さの同居を知る

・・・ライ、マニアックなヤツと レッドとヴェルジュは率直な感想。

「彼女は神官エル=プリス。焔の魔剣の巫女だった。」

対し、ルーとシエルは女の直感でレッドの関係が解ったので特に感想はなし。

「彼女はフォウ・・・・・・すまん、本名何だったけな?」

呼ぶ時は「嬢ちゃん」、最後に「フォウ」だったので本名を忘れてしまってりする。

「あははは・・・イイですよ、師匠(汗。 

私はフォウエン=フレイル、愛称はフォウです」

ライを師匠と呼ぶ・・・なぜ? とシエルとルー。

ライは焔の魔剣を指さし

「彼は焔の魔剣フランヴェルジュ、意志を持ち使い手を選ぶ剣

・・・今もフォウの相棒だよな?」

(うむ、フォウはそれなりに成長したぞ。まだまだ未熟だがな)

「ヴェルジュっ(照」

「ふっ、そうかぁ・・・」

と、思わず皆の存在を忘れ弟子(仮)の成長を喜び。そこにシエル

「私にはその・・・魔剣が何を言っているか解らないが?」

・・・どうも皆さん、ヴェルジュが何を言っているか分っている事を

前提で話をしていたようです。

シエルの場合、その超感覚でヴェルジュが明確な意思がある事を解っただけで

「ちょっと待て・・・・・・これでどうだ?」

ルーはシエルに何かの魔法を施し、

(シエルとやら、如何だ?)

「ん、ちゃんと聞こえる。」

(今度は我が質問させて頂いてよいか、ルー殿?)

「なんだ、フランヴェルジュとやら。」

(貴君に資質は無いはず。それを我が意志ある事を知り、

その猫娘に我の声を聞かせた。 何者?)

「ふっ、天才大魔導師ルー様だっ!!! 御前に意志がある事はすぐわかったぞ

妙な思念波を発しておったからな」

「これ、魔女」

「あっ、バラすなコノっ!!! (ゲシゲシゲシ)」

一瞬、ライの一言にエルは警戒するが、

ライとルーのそれぞれに対する態度を見ていると。

「・・・(信用しても・・・大丈夫)」

そもそも神官と魔女は相反する存在、天敵なのだ。

素に平気で付き合えるアルシアが特殊・・・というよりアルシア自身異端。

「でも何故、師匠がこんな所に」

ライは剣に特殊なガントレッドに特殊繊維戦闘服と

見る者がみれば装備が半端じゃない代物と解る。

シエルはゴッツい黒チョーカー(鋲打首輪ともいう)&黒のレザーアーマーに

黒レザーパンツ,そして両太腿には直装備出来るよう鉤爪とその鞘。

というワイルドアダルティーな格好・・・妙にプリチーな尻尾のリボンは趣味?

ルーは魔導師ローブに魔法杖とコスプレみたいだが、

使い慣れている事が見て取れる。でも可愛らしい。

そして、3人とも一様に特殊繊維製のマントでソレを隠していた。

つまり面子の装備からして単なる旅ではなく、何らかの目的がある。

「「「・・・あー――っ!!!」」」

3人ともこの騒動でスッカリ忘れていた、旅の目的を。

「急がないと・・・あれ?」

とライは立ち上がろうとして、その腰が力が抜けたかのように落ちる。

「何をやって・・・???」

とレッドも立ち上がれない。

(あれほどの戦いを繰り広げた後だ。二人とも昏倒していようとおかしくはない)

つまり、二人とも気がスッカラカン。

「こ、こんな処でモタモタしてる暇はないんだあああっ!!!」

と剣を支えに立ち上がるが、膝が笑いシエルに支えられる始末。

「止めとけ。少なくとも今日は休養すべきだナ」

「くっ!!!」

回復系魔法を掛けてもらった処で目的を成すためにはルーの言う通り休養が必要。

再び地面に座り込んだライの拳が力無く地を打った。

もうエル&フォウ&ヴェルジュはさっきのレッドとライの経緯を察した。

偶然出会い、ライを何者か知らず強者と感じ喧嘩を売ったのだろう。

ライは買おうとしなかったはず。それを強引に・・・

もう、恥ずかしいやら情けないやら。

「私達にライさんの手助けをさせていただけませんか?

どうせ、ウチのレッドさんのせいでこんな事になったのでしょうから」

「・・・これは俺達の都市(まち)で起こった事、有難いが・・・巻き込みたくない」

ライに神妙な顔で言われると一同は何も言えない。

因みにレッドには最初っから発言権はない。 しかし不意にフォウが

「・・・人助けは師匠の性分ですよね。」

「ん、まあな・・・」

「私は師匠の弟子です。その性分もしっかり学ばせて頂きました。

それに従い、例え師匠が何と言おうと私は師匠を手助けしますっ!!」

「師匠師匠っていうなよ。そもそも、フォウを弟子にした覚えはないぞ」

(今更何を言っている。それにコノ未熟者でもいないよりましだ

我としてもフォウの成長のためにも手伝わせたい。)

「ライ、一本取られたナ。御主の負けだ」

「でもな、命掛けのモノを手伝わせるわけには・・・」

「ん? なら私達ならいいのか?」

シエル、何故嬉しそうに尻尾をくねらせる?

ライは縋る様にレッドを見・・・駄目だコイツは。

何故ならエルに肩を揉まれ、見た瞬間目ー反らせやがった。

「も〜好きにしてくれ。 ルー、一応事情を説明して。

それを聞いて止めたかったら止めてもいいからな。」

と、そのまま仰向けに倒れたライに代り、ルーが説明。

掻い摘んでその事件と道中起こっていた事

マントの辻斬りに幾人も斬られ生命力を奪われた・・・まだ死者はいないが。

と一通り説明が終り、再びライは起きあがり。

「俺はその魔剣を破壊し、操られている者を助けたい・・・

自分が無茶いっている事は重々承知している。

凄腕の剣士相手に殺さず勝てといっているんだからな。」

「ライさんとその方の御関係は?」

「レイハ=サーバイン、俺の大事な・・・・・仲間だ」

如何ようにも取れる間。

「・・・何であれ余り時間は残されておらん。すでに可也の生命力を

喰っているからナ。死者がでるのは・・・邪神が復活するのは時間の問題だ。

唯一の救いはアレが夜しか活動せん事とこっちにはシエルがいる事。

何であれ、ヤツは生けとしモノ全ての敵だ。命を喰い死を操り玩ぶ。」

「・・・・・・反省してください、レッドさん」

「すまん。」

「いいよ。いまさら。全然気にしちゃいないさ、全然な。」

・・・その物言い、めっちゃ気にしてますね。

「カリはちゃんと返させてもらう。事態が貴様・・・ライの望む形になるようにな」

「・・・まあ期待させてもらうか」

取り敢えず、各パーティーは使えないリーダーをそこに残し荷物,馬を取りに戻り、

再び合流。日暮れ前に野営地をそれに適した場所へと移した。

奇襲にも対応出来るよう、見晴らしの良い場所へ・・・

使えないリーダーはそのまま丸太の様に転がせておき、ルーとエルがその面倒。

そして、シエルは

「・・・食糧を狩って来る。」

はい?

買うでも釣るでもなく狩る・・・文字通り。

(フォウ、シエルへ付いて行け)

「えっ、は、はい。シエルさん、私も付いて行きますっ!!」

「ん。」

とシエルは頷いただけで一人スタスタと歩き始めてしまった。

その後をフォウはヴェルジュを携え追っ掛け・・・

目的地が解っているのかシエルは無作為に森を突き進んで行く。

「シエルさん、この辺りには来られた事が?」

「いや、初めてだ。」

「えっっ!!? こんなに進んで迷いませんか?」

「大丈夫。ライ達がいる方向は・・・向う」

と明後日の方向を指さすが結構な距離を出鱈目に歩いたため

フォウに解るはずがない。

(・・・その通り、たいした心眼だ。 いや違うか、これは)

「は〜〜〜〜(驚」

フォウにとってシエルのソレは心眼だろうとなかろうと大差ない凄い能力。

目的地に到着したのか一旦辺りの様子を覗うと納得し、

「ん、ここで暫く待つ。」

と近くの木へ三角跳びの容量で一番下の太枝に掴り、大車輪の要領でその上へ。

「来い」

「来いって・・・如何やって?」

(頑張れフォウ、シエルと同じ要領でやってみるのだ)

「・・・うりゃぁーー、とうっ!!!」

すかっ

「・・・・・・(泣」

「もう一度」

見ればシエルは枝に膝掛け逆さにぶら下がり、下に腕を伸ばし

数分後フォウはシエルの手助けもあり無事いっしょに枝に腰掛けていた。

シエルはそのまま気持良さそうに目を細め夕風に身を身を任せ、な〜にも喋らない。

元々お喋りでもないし、フォウ対する興味は既に失せてしまった。

だって気まぐれな猫だから。

でもフォウは

「あの・・・シエルさん、師匠との御関係は?」

「師匠? ああ、ライの事か」

ライより年下のはずなのにシエルは呼び捨て。

(年齢:ルー>>>レッド,ライ>シエル>エル>フォウ)

(サイズ:レッド,ライ≧シエル>フォウ,エル>>ルー)

「私が子供の時は保護者とか言っていたが、今は・・・何かな」

嬉しいような寂しいような複雑な笑み。それだけで只ならぬ関係と解る。

シエルとしては、一応肉体関係はあったものの仲間以上恋人辺り?

というより家族。これもライが極端に濃厚で淡白な事が原因なのだが、

ルー共々よく膝枕で昼寝させてもらう関係をなんと言うかは疑問。

これをフェウが聞いたら一体何というのやら・・・

「って、師匠は何者ですか?」

「ん? 都市シウォングの騎士団団長」

都市シウォング。フォウでも名だけは聞いた事がある新生新鋭の都市(まち)。

騎士団団長ということは其処の軍事最高責任者、場合によっては領主。

「さ、最初に会った時は賞金首って」

およそらしくなかったが。 詳しくはSS「焔の魔剣−Knight.as」参照。

「私が出会い、保護者だった時は守護騎士(ロイヤルガード)だった。」

「は? 師匠が守護騎士だった・・・てぇええええっ!!!??」

どの国でも守護騎士という場合、その国公認の最高位騎士団の騎士を指す。

そして最高位騎士団とは人間単体で最強の集団。

まあ、場所によってはドラゴンナイトやグリフィンナイト等を含む所も有る。

話戻、滅多に出会える存在ではないし驚くのは当然。

一方シエルはそんなに驚く事かと首を傾げ

「その前は傭兵をしていたと聞いた」

(若いのに傭兵から守護騎士、一転賞金首となり

都市の騎士団長へと返り咲きか。随分と面白い経歴だな。)

「・・・もう私、師匠の事何を聞いても驚かないと思ふ」

一通りライの事に満足すると今度はルーの事。

「ルーさんって師匠とシエルさんの子供、なわけないですよね・・・」

もしそうなら見た目ルーと同じ年+チョイに産まなければ計算は合わない。

その年で結婚という話はよくあるが、妊娠出産となると・・・

「ん。 ・・・ライとの子供か、欲しいな」

シエル、さり気無く問題発言。それをフォウは聞き逃し

(魔女という存在を知らんのか?)

「魔女って、魔法を使う女性の事?」

(悪魔と契約せし者の総称だ。場合によって何故か男でもそう言われている。)

「へぇ〜〜」

とフォウは一応感心して見せるが多分何も分かっていないだろう。

(簡単に言えば、フォウ達より我に近い存在・・・)

「???」

(ルー、形は幼女だが腕前,物言いからして可也の歳、恐らくは軽く3桁と見た。)

「はへぇ〜〜〜(驚」

今度こそ本気で驚いた。と言っても、

理解出来たルーが見た目と違い自分より年上という事に関してだけ。

でネタ尽き再び沈黙が支配。レイハの事を聞いて雰囲気を暗くする訳にもいかない。

意味なくシエルの尻尾が揺れる。まるで風と遊んでいるかのように・・・

「あのーシエルさん、真に申し上げにくいのですが・・・」

「ん?」

「尻尾・・・触ってもいいですか?」

シエルの片耳がピコピコピコピコ

「何故皆触りたがる?」

と困った顔をしながら二人の間に黒尻尾を入れ、フォウ恐る恐る

わきわき、サワサワサワサワ

「う、うわぁ・・・ピクピクして、温かいぃ」

なんだよぅ。離せよコノヤロゥ。 と尻尾はフォウの手の中で悶える。

もっとも本気で嫌なら触らせないし、こうすると大抵の受けがいいから

不意に

ぱしっ

「あっ・・・」

「来た。気配を消せ」

尻尾がフォウの手を叩き消えるや否や、シエル自身の気配が消える。

確かに其処に存在、枝の上でしゃがみ鉤爪を装備しているというのに。

(見事だ、流石ライの連れ。・・・・・・はやく気配を消せ、フォウ)

「っ・・・・」

息を殺し身動きしないようにしてるだけ。それでもしないよりマシと。

しばらくして、シエルの言う通りやって来たのは狂暴な角を持つ鹿。

神経質そうに辺りの様子をうかがっている処をみると気付かれている・・・

ならココには来ていない。でも僅かに異常(フォウ)を感じているのは確か。

鹿が二人の下を通り過ぎると共にシエルは音も無く飛び降り、

それに気付いた鹿が上を向くが既に居合内、シエルの爪が鹿の首を一撫で

鹿は自分が死んだ事すら気付かなかっただろう。

そのまま血を撒き散らしながら膝が折れ・・・地に倒れた。

「終った。」

上を仰ぐシエルの顔は血で汚れ・・・フォウはソレが美しいと思った。

「如何した? 帰るぞ。」

「あっ、はいはいはいはい!!!」

フォウがもたつき、枝から飛び降りた頃には既にシエルは鹿を担ぎ。

重量、軽く見積もってもシエルの2倍弱?。

「・・・お、重くないですか」

「ん。まあ、多少は」

鍛えられ上げた野性味溢れる身体にはたいした事はないのかもれない。

3人(?)はそのまま野営地へ。


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