オブシディア・グラムス領。
本来なら国境ぎわで、辺境の地でしかないこの地は今や領主交代により
オブシディア国内でも国内有数の生産力を誇る地に成りつつあった。
それも国風と異なり、領主ジークフリード=グラムスの柔軟な対応に
友国シウォングから様々な技術協力を受け入れ開発に勤しんだからなのだが。
だからココももはや本国とは異なった気風を確立しつつあった。 それはさて置き
無謀な開発は封印されしモノや眠りしモノ達を呼び起こす可能性が高い。
が、その辺りはシウォングの技術者が予め必要ないと思われていても地図を作成し
それを元に社など域と関係あると思われる場所には触れないようにしているので
そういったモノ達を叩き起こす心配は、普通に開発を進めるより遥かにない。のだが
今、オブシディアの女将官の前に広がる光景は
「・・・バカな。山が・・・森が消えただと・・・」
まるで地ならしされたかのように地肌剥き出しの大地。
その手に握り締めた地図には要注意地点として小山とそれを囲む森があった はず。
「ニーベル、やはり村には犬一匹すらいやしない。 これはまた・・・
・・・彼らの事を思い出すな。 コレと同じ現象で戦うことになった」
「!!? ハガルっ、今まで同じ現象があった処の地図を出せっ!!」
「? ああ・・・」
場所に関係なく物を散らかし、地図を広げる。そして印を付けつつ
「ココが要注意地点でココが消えた村。その先にあるのは・・・」
「・・・都市シウォング。 コレも・・・コレも・・・(汗」
二人はこれから起きる予感に戦慄を覚えつつ、それでも周囲に何の気配を感じない事に
安堵していた。 今、この瞬間だけは満足に反撃出来ない自分達が安全である事を・・・
そして、都市シウォング。 その王の居城たる屋敷では、主と秘書が地図を睨みつつ
「またか・・・」
「復活の可能性があると思われた地域付近の避難は済ませました」
「それですら一時的なものでしかない。以降、何も無いというのが・・・
起こり始めたのか? ・・・「大破壊」が。 ・・・運命の修正が」
「そのような事・・・」
ライの握り締めた拳を見ていると、レイハですら如何慰めていいのか分らなくなる。
だが、非日常の出来事にいつまでも縛られているわけには行かない。
日常を護ることこそ彼らの本来の職務であるのだから。と、不意に騒がしくなる屋敷内に
ドタバタドタバタドタバタ バンっ!!!
「たったったっ・・・」
執務室に飛び込んで来たのは、動転しまくりのメイドなリオ。
「???」
「そんなに慌てられていては何を言われたいのか分らないのですが?」
「たっ!!?」
リオは不意に口を押さえしゃがみこんでしまった。 ・・・舌噛んでしまった模様。
「全く・・・自分で確かめに行くか」
一転、先ほどまでの苦悩はウソのように飄々と行くライに、レイハも黙し着いて行く。
玄関にはリオの騒動に様子を見に来たのか総員揃い困った表情。
その向うには
「久しいな、ライ=デステェイヤー」
「オーディス・・・老いぼれのクセに未だ現役か(苦笑」
「ふんっ、それは貴様が私に楽させてくれなかったからではないか」
現守護騎士団団長 オーディス。 背後には旅姿でも守護騎士とわかる者10人2ユニット。
そしてライ達の後ろでは追着き、ライの無礼に顔面蒼白でガタガタ震えるリオ。
一応、オーディスよりライの方が立場が上であることを忘れ・・・
居間ではかつて無い大入りにテーブルは隙間無く埋まってしまっていた。
お子様でも屋敷の一員である事を認められた三人はソファーになってしまったが。
「守護騎士団団長たるオーディス様が態々この屋敷まで如何ような御用件なのでしょう」
「・・・ふむ、では簡潔に。ヴィガルド国内で複数の荒神の復活が確認された。
しかし、その後の消息は一切不明・・・ある処に向かったであろうという事以外は。
其処とは、都市国家シウォング。 つまり、ココだ。」
「・・・・・・」
「聞いた処ではシウォング国内でも荒神の復活が確認されたそうだが?」
「ああ、復活だけは確認した。でも・・・」
一切雲隠れに何の音沙汰もない。復活の地近辺の村が無人になってしまった以外は。
「これはもはや国内の問題のみで済まされる事ではない。集った荒神達が何を求め
如何行動するかは人の身たる我等には検討もつかぬが、炎が広がるは必死。
決戦はこの地になるであろうな」
「だから、2ユニット連れて来たと?」
「言うな、ライ。例え貴様が灯火であろうと、もはや個人の問題で済む次元ではない。
これはもう、神と人との生存をかけた戦いっ!!! 2ユニットでも足らぬくらい・・・」
「心使い、一国の主として感謝する。 守護騎士団団長オーディス殿。
でもブッチャけ、神々がいつ動き出すかが問題だな・・・」
「うむ、だからこそ私直々に率いてきたのだが・・・」
悩む長二人に、回りの人間が分ろうはずもなく・・・
「んにゃ、ワカランでもないゾ」
!!?
いた。それが分りうる唯一の人間。元魔女にして見た目幼女な魔導師ルー。
「この幼娘は・・・」
「元魔女のルー。」
「この幼娘が・・・」
「そういうワケだ、老英雄騎士殿。 サテ、クサレ神々が動き出すであろう直だが
・・・年月からいって、月が陽を喰らい光と闇が交じり合う日 日食であろうナ」
「具体的に、それはいつ?」
「それは・・・ワカランっ!!!」
思わずこける皆々。 揃ってジト目で睨んでしまったり
「マテマテ、そう睨むナ。クサレ神々が一斉に起き出したせいで
その暦が狂ってしまっておるのダ。それでも・・・今からそう遠くないのは確実」
「「・・・・・・」」
「まぁ、そのときまで気長に待つことだナ。 ドウセ、神々と戦える者は限られる」
「ここにいる面子は全て大丈夫だとして、軍からは1/4・・・」
「一月二月ならば兎も角、私とていつまでも留守に出来る立場ではない。
この者達、都市国家シウォングの王 真龍騎公ライに授けるとしよう。
願わくば、国を 民を護る剣としてこの者達を用いん事を願う。
元々、その為の希望者を募り申し出てきた者達。 所縁もある。
気を使う必要はない(ニヤリ」
「・・・了解した。この者達を我が民を護る剣として与る」
結局、オーディスはその日の内に王都へ向けて出発した。
一泊でも滞在することを勧めるにも関らず、話が終るや否や早々に・・・
・マテリア=リフォース
ユニット隊長。魔操鎧闘士。騎士に似合わず小柄で寡黙な娘。
・トール=スターナイト
ユニット副長。破壊剣の攻撃型魔法戦士。熱血漢っぽい感じの青年。
・シグ=デバスタ
騎士剣の戦士。凡で極めて特徴がない青年。騎士剣使用。
・メイ=レティエシア
二剣流の女戦士。戦士らしい性格でサバサバし物事を深く考えない。
・ウィル=レティエシア
双頭剣の戦士。メイの双子の弟。 戦士らしい性格というより物事に無頓着。
(以上、ep.08「The Lost Princess」 登場)
・アルト=ベイゼ
槍騎兵。軽装の斬込み型。針髪頭の飄々とした青年。
・ナイア=アグフォス
魔導士。攻撃より参謀を主とした賢者型のマジメ娘。
・ウィン=スティア
聖騎士。礼儀正しい青年。重装で回復の担手。
・リーナ=クラウス
癒士。礼儀正しく活発な娘。回復の担手だが格闘士スタイル。
・ネル=マッケン
攻防万能型魔法戦士。 基本的に無口だが思慮深い娘。
面々を代表して、前にでるのはマテリア
「真龍騎公ライ=デステェイヤー。貴方の元で働けることを光栄に思います。
現役だった貴方達の活躍を聞いて私達は守護騎士を目指したようなものですから」
確かにアレス,リオ達の世代は、守護騎士が何者も恐れず本来の任務を真っ当し始め
数々の武勇伝を打ち立てたライ達の世代に憧れてこの道を選んだものが多い。
「それは・・・どうも。 だが、君等がココでの最大の任務は神々を退ける事と
言っていい。君らにその覚悟はあるか? 神殺しの禁忌を犯す覚悟を。」
端より覚悟っ。 我が剣は民のためっ。 平穏を乱すモノは神であっても裁くっ。
「・・・よしっ。いい覚悟だ。 でも、自分の幸せも忘れるなよ」
はいっ。
一糸乱れぬ宣言は予め仕込んでおいたのであろう。
希望者という事はライ達の気質もまた・・・
「まぁ、憧れて来てもらって言うのも何だけど、実態を見て失望しないように(笑」
「大丈夫です。 そちらの武勇伝もお聞きしていますので・・・」
「・・・さよけ。」
王たる凛々しい顔から一転ふつうの兄貴の顔となったライに
マテリアもまた一隊の長たる顔から年頃の娘の顔でポッと頬を染め
「あの・・・イリアお姉さまはドチラに?」
「・・・はい?」
思わず何コレと指差すライに、アルシアは肩をすくめお手上げ。
以下マテリア隊(仮)の面々を目をそらしていたり、知らぬ者は誰それと。
「あ〜〜、イリア・・・イリアね。 いないよ、彼女」
「・・・え?」
「だから、彼女はココにはいない。 分り易く言うなら
簡単に会わせられない。彼女は可也特殊な存在なんでね。」
「・・・・・・・(哀」
ライのそれが嘘偽りでは無い事を悟り、打ちひしがれるマテリア。
つまりこの娘はそれが目的の大半で希望都市へやって来た と。
「まっ、いいんだけど・・・」
十人増えたくらいなら今の屋敷でも十分対応出来た。 ハズだった。
あえて誰と誰と誰が余計に部屋を占領していなければ・・・
結果、今ある屋敷から見える然程離れていない処に次館を建てる事となった。
幸い、わけあって整地が済み後は建物を建てるだけ。必要なのは大工と人手。
普通なら屋敷一つ建てるのに人手などそう揃うはずなどないのだが
人手だけは十分にあった。 つまり、希望都市に新たにやって来た・・・
「人の世を護る為にやって来たはずなのに・・・まさか最初の任務が大工とは・・・」
「其処っ、ツベコベ言わずキリキリ働くっ」
王のはずのライが率先して動き、アレスやルナやシエルの面々まで働いているとなると
人の世の為、決戦に地におもむいた面々も一時騎士から大工に転職せざるえなく・・・
本職でなく実際携われる人数が十人余であったとしても揃っている面子が面子。
文系で不向きな娘や、「ボク、女の子だから・・・」とノタまう小娘も
リオ筆頭にそのサーポート。 しかもマテリアの魔操鎧闘士 土木工事Verが
ガッチョンガッチョンと動き回れば、建物だけならソレこそモノの数日で完成。
流石に内装,家具だけは本職の方々に頼まなければいけないが
それも建築前に話をつけただけあって速完にピッタリ納入。
「・・・本当に完成してしまった(汗」
「ふっ、当然」
自分達で作り上げた家を見上げ呆然な面々の前、ふんぞり返るライとウンウンな旧面々。
こんな処で長らしさと結束をアピールしても仕方が無いのだが・・・
それでも皆で作り上げた次館。広さは元あった屋敷と同等で質実剛健な造りに
中央を階段で、二階は連なる個室、屋根裏の物置。一階は居間と台所に大浴場。
そして元の屋敷と異なり、執務室,図書室の代わりに大会議室。
「と、言う訳で早速私の部屋を・・・」
「そうねぇ・・・何処がイイかしらぁ」
「ちょっと待てぃっ!! オマエ等の部屋はもう既に向うにあるだろうがっ!!!」
素で自分の部屋を決めようとするルーとアルシアを捕縛し
顔で合図するライに新面々は慌て屋敷に飛び込み早速会議を始めたのは言うまでもない。
ここ数日の付き合いで、この二人なら本気で部屋を占領しかねないと知ってるから・・・