∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ep.11 LEGEND(中編)■
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屋敷に向かう道を、両手に買物袋を携えいた男とゴスロリ幼女を肩車する逞しい黒猫娘。

言わずもかなライ,ルーと、軍顧問の仕事を負えて街外れで合流したシエル。

そして、ほのぼのと歩く三人の視界に入ってきたのは屋敷の門と

その前でスーツ姿に流髪で顰面の女性。 サッサと身体を洗い帰りを待っていたレイハ

「・・・・・・」

 「なぁライ、御主レイハに何かよからぬ事をしたナ?」

 「ん。 機嫌が悪い」

「よからぬ事といたって、毎度してる程度だぞ。」

 「でもアレは・・・可也・・・」

「俺のせいか? 俺が悪いのか? ・・・あ〜〜、帰りたくない(泣」

 「アキラメロ。 既に射程距離内ダ」

二人は我関せずにスタスタとライを残して行き、レイハの横を通り過ぎて屋敷の中へ。

ますます遅くなるライの歩みに、ついに待ちかねたかレイハの方からライの元へ

「よ、よう。ただいま・・・」

 「・・・・・・。 お客様がいらしてます。神国コンロンから姫君がいらしています」

レイハが怒っていない事の安堵に、ライの表情はマジメに。

「・・・押しかけ姫じゃなさそうだな」

 「人あらざる者としてのライに用があるらしく・・・私を眷属とか」

「眷属? 眷属・・・眷属ね。 其処まで知っていて俺に何用だ」

 「それは御自身で確かめていただくしか・・・」

「ふむ・・・。 行こうか」

今は秘書より巫女なレイハを連れて、真龍騎公は神国の姫君の処へ。

居間では皆、己の事をしながら遠巻きに客人を見・・・

ライは四姫を従え、その前へ

「自分がライ=デステェイヤーだ」

 「・・・神国コンロンの竜妃メイフィア」

「それを証明するものは?」

 「・・・ならば、これで」

その瞳が縦割の龍眼に凄まじいまでのプレッシャーが。

しかし、レイハが感じるのは先と変り、護られているかのようで可也ましである。

「・・・、まぁいいだろ。それで、話というのは?」

 「眷属の者にも聞かせて構わないのならばココで話すが?」

「・・・・・・」

ならばと二人は執務室へ。 部屋を完全に締切ってようやく二人は席につく。

「それでは改めて、話というのは?」

 「・・・貴公は本来、運命に存在しない。 正しい運命は人に創られた神

否、神モドキにより其の国は滅び 戦乱に多くの命が奪われるはずだった。

そして当然、貴公の国も存在などしてはいない。」

つまりそれは、王国ヴィガルドは件の事件で国の良心ともいえる

守護騎士団,神殿戦士団は やはり壊滅に、戦乱の時代へと突入。

多くの命が奪われ・・・

「運命なんてものは己の力で幾らでも如何様にでも変るものだと思うが?」

 「それは一個人,少人数だけの話。貴公のように多くの運命を

捲き込むモノならば当然、運命に存在しなければならない」

「・・・話を聞いてると、君は運命を知っているような素振りだな」

 「詳しいことならば、元は魔の贄であった眷族に聞かれるといい」

「それは・・・ルーか?」

 「貴公にはこれ以上運命を狂わさぬようコンロンへ来て頂かなければならない」

「・・・感じからして、そのまま座敷牢にでも放り込むっぽいな。

悪いが俺は縛られるのがイヤでね。 それを断れば?」

 「勿論、貴公を殺さなければならない。『大崩壊』を起こさないためにも・・・」

メイフィアは淡々と、それだけで言っている事が伊達や酔狂でないことは分る

「・・・ふぅ、決定だな。 それでいつ俺を殺すつもりだ?」

答えるライも己の命など関係なく、単に旅云々の話をしているかのように冷静である。

 「今日明日とは言わない。 貴公に道を定めるまで、暫しの猶予を」

「そりゃ、ど〜〜も。 時間が経っても心変りはしないと思うけどな。

・・・・・・それで、君の用件はそれだけなのか?」

 「・・・・・・」

黙して語らず真摯に頷くのみ。 メイフィア、元々真面目な性分らしい。

「それで猶予期間、君は如何するつもりだ?」

 「麓の都市の宿に滞在を」

「・・・結構悠長だな。間に逃げるかもしれないのに」

 「私から逃れる事はなど出来はしない・・・」

と、目の前の乙女の瞳が龍眼に変り、更にその肢体を覆うマントがボコボコと蠢く。

「・・・覚醒の上に変態か。大した自信だ。 あ〜〜恐い恐い」

真剣な表情から一転おどけて見せるライに、メイフィアは変態を止め瞳も元に。

仮にも人外の面をもつライにコレを見せるという事は未だ切札を持っているのだろう。

 「・・・分っていただけたのなら」

「そうだな、態々降りて昇っても手間だろう。屋敷に泊まったらいい」

流石の竜妃もコレには唖然。暗殺を宣言するものを身近に置くとは

 「・・・・・・正気か?」

「いたって正気だ。 それで判断すればいい。俺を本当に殺すべきか否か」

 「それこそ悠長。貴公は運命を狂わし過ぎた。

それ故・・・貴公が英雄か殺戮者かはもはや関係ない」

「ふぅ、さよけ。 まぁ、一度泊まれと言ったからには泊まっていけばいい」

 「・・・私を簡単には殺すことは出来ない」

「ンナ事はしねーよ。 俺は、その時に正面から撃破るっ!!!」

 「・・・イイだろう。貴公の挑戦を受け、ココに泊まらせていただく」

「いや、別に挑戦してるわけじゃないんですけどね」

 「・・・・・・」

自信があるのかないのか、何処まで本気かつかみかねる態度。それでも

謳われるだけあって前向きな性格に、善処しようとする姿勢はうかがえる。

再び二人は居間へ戻り、リオ達に部屋の準備をさせる一方で

竜妃の相手を銀狼少女に。

「と、その前に、ココに泊まるんだからマント脱いだらどうだ?

何なら洗濯させるけど?」

 「・・・いいだろう」

マント脱ぎ曝した内の姿は、良く似合う蒼系で背が剥出しミニスカの一枚造りの衣装。

これで派手に縁取りすれば決戦衣装としても・・・肌の色からしてルナと対照的。

そもその服の材質自体が

「服、普通と違うな。ルナのソレに近いが?」

 「・・・これは天蚕糸と不滅金(オリハルコン)を元に編んだモノ」

「ルナのソレも、俺達の戦闘服も似たようなモノだ。 扱いも多分同じだな」

 「・・・・・・」

ある意味、最高軍事機密をサラリと・・・手に入れた処で普通は扱いきれないのが

関の山なので普通は大丈夫だが、それなりの相手という事を失念しているのか?

「他に服もっていなさそうだから幾つか用意させて置こう。気にせず着てくれ」

いぶかしむメイフィアと話の内容が分らず首傾げるルナを残し、ライは居間を去った。

其処へ行く途中の廊下で待っていたのはレイハ。

秘書で忍である故に、屋敷の安全を受け持ってしまった以上何を話したか気になる。

そもそも、ライはそういった事を禁じる達でもないし。

 「ライ、今ちょっとよろしいですか?」

「まぁ、ちょっとで済むのなら・・・」

 「客人とは何を話されたのでしょう。 彼女は・・・」

「彼女か・・・早い話、神国から来た刺客 といったところか?」

 「は? だ、誰を?」

「俺。」

 「・・・・・・」

神だ眷属だわけが分らない上に、ライを殺しにきてソレを当人に話したと?

「まぁ、簡単にいうと俺は「運命」には存在していないそうだ。

んで、俺がココから動く気が無いので「大破壊」が起きないよう修正すると」

 「何をおしゃっているのか理解出来ないのですが・・・」

「レイハは現実主義だからな・・・様は、俺がそれだけ物騒な存在だったって事だ」

 「そんな事・・・では、彼女を」

レイハの顔が、女性のそれから戦士の 忍の 暗殺者の顔へ。

「止めれ。 そうさせないために彼女をココに置いたんだから。

どの道、レイハでは手に負えない。 彼女は神人だからな・・・」

 「・・・神を殺す毒もあると聞いた事があります」

「もし彼女を殺すことが出来たとして、そうするとソレが誰かの思い通りの気がしてな」

 「???」

「・・・つまり、俺は誰も殺す気はないし死ぬ気もない。

今は、その時までは安全だから安心しろ」

 「・・・わかりました」

渋々ながらもレイハは納得した。泣顔に戸惑ってはいるか。 その娘へ額に接吻し抱擁

「よし、イイ子だ。 それとコノ事は二人だけの秘密」

 「・・・はい。」

それだけで懐の娘の身体からは力が抜け、声も何処かぼんやりと・・・・・・

コンコンコンとノックに、ルーが扉を開けると其処にいたのは主。

「今、いいよな?」

 「ああ、構わんゾ。」

そもそもルーがこの遊び部屋にいる時点で全然問題ないのだが。

散らかった部屋で唯一開いた場所。其処に居座るコタツに二人は陣取る。

「このコタツってやつはマッタリしていていいなぁ・・・」

 「ウム、このコタツほど偉大で平和な発明はそうはあるま〜〜い

んで〜〜、夕飯前のコンナ時間に態々何用なんだぁ〜〜」

早々にタレ始める幼女。こんなことなら懐に入れて置けばよかったか?

「ああ、「運命」と「大破壊」の関係について一寸聞こうと思って」

 「それは・・・ん〜〜、分り易くいうと「運命」というシナリオがあってナ

実際起こった事が「運命」から外れ過ぎると、「大破壊」で修正されるわけダ」

「分ったような分らないような・・・」

 「そうだナ具体例を上げると、昔「時詠」達の詠んだ時と関係無に魔王が降臨した。

魔王は大いに暴れまくって、結局英雄達に倒されたらしいが・・・大地震に文明ごと」

と幼女は出した可愛らしい拳をパッと開く仕草。

「・・・差し詰め、俺は魔王か」

 「実際如何なんだろうナー。 そう言えばコンロン皇族の連中は

その文明の「時詠」末裔とか聞いたことがあるゾ。 フム・・・まぁ眉唾か」

「兎も角、運命云々言われてもなぁ・・・そんなもの分らないし」

 「・・・いや、分らん事もないんだナ コレが」

何を思い出したかルーはゴソゴソとコタツの中を弄り、引っ張り出すのは

以上に大きい魔杖「魔魂」。

「・・・どんな召喚の仕方だ(呆」

 「万物の情報が集うモノがある。それは神々の記憶(アカシックレコード)。

図書館(ライブラリー)とか、倉庫(アーカイブ)とか、中央経典(セントラルドクマ)

とか言うが・・・早い話、「運命の書」ってヤツだナ」

「・・・・・・」

 「「時詠」の連中はそこから「未来」の決定事項を詠んで語っておるのが大半だ。

流石の私でも未来は本質的に検閲かかって見れんが、現在,過去は見れない事もナイ」

「・・・悪い、ちょっと話ついていけない」

 「つまり ダ、この神々の記憶を見れる事こそ大魔導師の必須とも言えるのダぁ」

「・・・つまり、自慢したかった と?」

 「ち〜が〜う〜。 御主なら辞書を引く事がどんなに凄いことか分るだろうが。

図書館で素人が司書無に自分の見たい本を探すのが如何に難しいか想像できるダロ」

幼女ルー、自分より大きい魔杖振り回し地団駄。

「そりゃ、まぁ・・・なるほど。 やっぱり自慢したかったのか・・・」

 「んにゃあああああっ(地団駄じんだんだジダンダ」

やはり、女の子を困らせるのは楽しい。困らせていても話が進まないので

「・・・冗談。 純粋に、ルーはスゴイ」

ナデナデ

 「本当か?」

「ああ、本当本当」

涙目な幼女を抱擁にヨシヨシと・・・これで機嫌が良くなるんだからチョロいものだ。

心機一転、ヤル気満々満面の笑みなルーは魔杖を振り回し

 「それで御主は如何したいんダ?」

「そうだな・・・神の本当のシナリオが知りたい。現在と過去

俺が最初に傭兵になった当初から今現在の、本来のシナリオを・・・」

 「??? 変な事を言うな、御主・・・マァそれなら簡単に。

 んで、私だけが見るか? それとも御主自身が見るか? 

そうなると、初めての御主には多少危険が伴うが・・・」

「・・・簡単にどんなんかを教えてくれたらいいから」

 「フム、その方が手っ取り早く楽だしナー」

とルーは魔杖一閃に帯状魔方陣が球となって浮いたルーの身体を包み隠し・・・

・・・・・・・・・

暫し後、魔方陣解除にルーの顔はワケワカランと疑問符。

「んで、如何だった?」

 「あ〜〜、私等、死んでおった。

シエルは幼い頃に変態貴族に絵飼われて、そのまま日の目を見ずに剥製。

アルシアはPRに苗床として嬲られて耐え切れず廃人に。で、後は肉人形で使い捨て。

私は御主と出会う切欠の、アノ変態魔導師の不意打ちで捕らえられ永遠に実験生物。

レイハは任務に失敗して拷問され、ツカイモノにならないと実の父親に処分。

つまり・・・ライ、御主によって私達は生き長らえた、らしいナー。

ってことは、私等も亡霊かァ?」

「ふぅ、だから眷属か・・・」

 「オ? ソレ、ナイスな言い方。私達は「御主」が御主であるための鍵でもあるからナ」

「??? 如何いう意味?」

 「御主、以前私等を贄に破壊神 んにゃ、意志を持った戦龍神となったダロ?

私の時は炎の力に、破壊を操って。シエルん時は地の力に、驚異的な生命力。

アルシアの時は水の力に、調整,調和。 となると、レイハは風の力か・・・」

「・・・話戻そうや。」

 「何の話だったか・・・ああ、眷属? つまり、神としても人としても

私達4人を直接助けた御主は私達の主という事ダ。御主が存分に力を振るう為のナ」

「何か未だ話、ズレてるぞ。 つまり、本来の神のシナリオと現状況は

余りにも違っているわけだな? 「大破壊」が起きるくらいに・・・」

 「その辺りは多分御主の予想通りダ。 「大破壊」かぁ・・・

まぁ、もし起こるとしたら滅びる分は御主が関った処丸々だナ」

「・・・・・・・・・」

無表情に己の額を指で擦るライを見て、その心中を察しルーの顔が珍しく悲しみに歪む。

 「御主・・・ンナ出鱈目な事に、自分を犠牲にしようと考えちゃいないだろうナ?」

「まさか。 俺がそんな性分に見えるか?」

 「大いに見えるゾ。 御主は自分の為と言いつつ人の為に行動する男だからな」

「大丈夫。安心しろ。 責任放ったらかして消えるほど俺は図太くないから」

 「・・・その言葉、信じてるから」

たったルーは未だに座ったままのライに近づき、その顔を抱擁する。

恋人がそうするように・・・命尽きるまで皆共にいられるよう願いを込めて・・・

・・・・・・・・・・・・

「・・・処で、ウチの他の連中のもヤッパリ?」

 「ンニャ。 カインは守護騎士団崩壊で、実にヤツらしく女に刺されノタレ死。

リオとアレスは向うでも運命的な出会いを果たしておったナ。ソレまでは冒険だが」

「・・・それでカインは眷属でないと? それはそれで嫌だけど」

 「ヤツが死ぬのはヤツ自身の行いのせいだからナー。御主に運命を狂わされたクチだ」

「ルナとディは?」

 「ルナがこの都市に来る事になったのはこの都市の影響っぽいナ。

最初っから最後まで、野山を元気に駆け回っておったしー。

ディは結局家出に騎士目指す魔導士ダ(ケケケ」

「俺に引き寄せられたか・・・世の中、結構巧く出来てるモノだな」

何事も、成るようになるものである。



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■ep.11 LEGEND(中編)■

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