∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 09 ■
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ルー、おまえ、本当は激しいのより優しくマッタリした方は好きだろ?

何をバカなこと・・・優しいのに慣れてしまうと後が辛いからナ。

忘れたのか? もう後の心配はしなくていいことを。俺達は共に年を取れる。

そう・・・だったナ。 でもマッタリすると如何も気が抜けてしまってナー

慣れろ。慣れるまで何度でも繰り返してやってやるから。

何度でもやってくれるか。でも身体がもつかナー(笑。

 

 

魔導師ルー復活。ディ少年にとっては実に喜ばしいことである。一応。

「ヨシ、今日は昼からライと本気で戦え」

はい?

ディがライを尊敬しないのは、性分的に気に喰わない以上に

今や魔導士ということにおいて自分の方が遥かに優れている自負があるからである。

知恵、知識こそ力なり。

しかし、それでもライが知る限り最強の戦士だということは認めている。

イヤイヤであっても

「ち、ちなみに何故昼からなんですか?」

「ん? 朝からだと逝ってイロイロ遣り残してしまうじゃないか。

それじゃあ余りにもカワイソウだからーナ。 

何なら私が「筆オロシ」してイイ思いさせてやろうか? ケケケケケ(邪笑」

悪夢だった。ルーは魔女を止めてもやはり「魔女」だった。

「冗談だ。私の身体はライのモノだからナー。

ライに勝てたら考えてらなくもないゾ」

「・・・万が一、勝てたとしても結構です。」

「あー? ナンダその態度は? ガキのくせに。 泣かすゾ、コラ」

「大人気ないので止めてください。弟子として恥ずかしいです、非常に。」

「ドーセ私は子供ダ。子供の冗談でガタガタ言うナ。 コノっコノっコノっコノっ」

ゲシゲシゲシゲシ

「子供なら子供らしくして下さい。痛いです。本当に痛いです。」

逃げ出すディにルーは追い縋る。人差指立て両手組み、必殺技の如く突き出し一発

「喰らえっ!!!」

「はぁんっ!!?」

浣腸的中、ディに合唱。

「ふっ、またつまらぬモノを突いてしまった。」

ルーは至極満悦で悶絶するディを残し行ってしまった・・・

・・・・・・テッテッテッテッ

「わん、ディ、何してる?」

「・・・・・・(ピクッピクッ」

「わぅ〜〜(悩」

テッテッテッテッ・・・・・・

・・・・・・・・・・

ライと本気で戦えという以上、少なくともライは何からのハンデを付けるのは確実。

しかし手加減はしてくれない。 ディ自身本気で攻めなければ本気で殺される。

あの男はそういう男。

朝に一悶着ありながらも姉カップルに辛うじて危機から救われ

死ぬ気もないので時間まで着々と戦いの準備を行い過し・・・

ライはライで毎度デスクワークに追い回され・・・

時に、決戦場に選ばれた毎度訓練場の広場には法衣に晶槍で完全武装のディと

戦闘服に龍腕で完全武装・・・ではなく得物を持っていないライ。

「いいんですか、万全の体勢の僕に対し武器を持たずに?」

「人を殺すに刃物は要らぬ。俺の武器はコレだ。 ・・・なめるなよ、小僧」

「・・・なめているのは貴方のほうだっ!!!」

ディが懐から放った魔石が、それを核に胴を構成

胴より四肢と頭が生え、さらに両手に剣と盾を持つ。

一見、単純な鎧兵を思わせるものが十体足らず。

「行け、魔導機兵(レギオン)っ!!!」

晶槍を指揮杖の如く揮うディに、魔導機兵は従ってライに襲い掛かった。

来る剣を右へ左へ後へステップで避け腕甲で受止め、盾や胴に蹴りや拳を叩き込み弾く。

剣を折り盾を壊し魔導機兵自体を多少破壊したところで直修復されてしまい

変らぬ勢いで襲い掛かってくる。 もっともダメージを受けた分、

余計に内蓄した魔素を消費して機動時間が短くなるのだが。

「ふぅ、厄介な・・・。 っ!!?」

瞬間、それまでライが居た所を天から降ってきた無数の光矢が打ち抜いた。

見れば天使の如く背に4対の燐光翼で空舞うディ。

燐光翼がはためき燐光の羽毛が冬空の雪の如く空を占める。

魔導機兵による包囲は既に完了。

「逃げ場は無いですよ」

ディの振り下ろす腕に舞う燐光の羽毛が全て光矢に。

「うおおおおおおおっ!!!」

轟っ!!!

と、ライの地を穿つ拳に立つ土煙が立ち一帯を覆い、雨の如く全ての光矢が貫いた。

「・・・・・・。 ・・・やった、のか」

思った瞬間、何かがディの頬をかすめ跳んでいった。それは魔導機兵の腕。

続いて、もう一つの腕、脚、首、再生が追い着かなくなったか胴のみまで。

明らかに狙われているという恐怖・・・

「う、うわあああああっ!!!」

何度も更に幾重に羽ばたき燐光の羽毛を散らせ光矢を叩きつける。

その存在が跡形も無くなるよう、土煙に自身が覆われてしまうほど。

咳き込み、やっとディ冷静を取り戻した。 

周囲は土煙で覆われ、地面の様子に至っては全く分らない。

「らしくないことを・・・やり過ぎましたか」

「・・・・・・制空権を得たくらいで優位に立てると思うな」

「っ!!? ぐはっ!!?」

声に振り返ることなく背を撃たれ、それでも確認しようとする処に

反撃すら許さず降る甲拳。 数発食らいながらも次の拳を避ける が、

足首を掴み引っ張られ勢いに顔面へ迫る爪先を肩を蹴られながらも避け

「はぁっ!!!」

手より生み出した魔弾を強襲者の腹に叩き込み打ち落とした。

もし法衣の下に皮胴鎧を着ていなかったら容易に致命傷になってしまっただろう。

今はとにかく、身体を休めるため射撃有効範囲外まで上昇。

整理して翼二対を残して消費してしまった。勝負始って早々なのに・・・

土煙は未だ引かず。しかし

バシュっ と音を立て雷撃槍が土煙を撒き散らし、動けなかったディを掠めていった。

「カモンっ(クイックイッ」

・・・生き残るためには攻撃しかない。しかも小細工をこらした生半可な攻撃ではなく

全身全霊、命を込めた一撃。

「・・・・・・分りましたよ」

ディの覚悟に一対の翼全てが燐光の羽毛と化し周囲を舞う。

ライを真下にレンズ形の魔方陣を展開。燐光の羽毛を身体に吸収。 

身体を蝕むほどのエネルギー過剰飽和状態に起る放電現象。

そして、

「いけっ『光の滅鎚』っ!!」

対象を焼かんと魔方陣より光の塊、柱が落ちてくる。

対しライは身体を仰け反らせ命一杯捻り

「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

瞬間、溜め込んだ力を開放して天に向けて拳を撃つ。起る空間湾曲に競合う焼滅光。

気合に拳で光が切り裂かれ、ライの周囲が焼ける。 が、更に

「っああああああっ!!!」

光が消える前に切り裂き、落ち,跳びこんできたディの勢い以上に

振り下ろされる光刃で大剣と化した晶槍。

「んぁめるなぁっ!!!」

返す拳で光刃の腹を撃ち、ディはライの横の地面を穿たされた。

「まだぁっ!!!」

ライはすぐソコで吼えるディを蹴りで弾き飛ばそうと、

しかしディによって両足を氷付けで地面に固定され、

ライの無防備の脇を跳ねる光刃が襲う。

そしてディは手に返ってきた硬質なものを叩く感触を得、後頭部の一撃に昏倒・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

戦いの余韻が消えぬ内、伸びたディ少年を足元に立つライの側による小さな影

「ゴクロウサン。御主から見て小僧はどうだ?」

「いいんじゃないか? 元々剣を使うつもりは無かったからな、いい感じに成長してる」

神狼牙を思わず召喚させ使わせただけでもディは満点をもらっていい。

「如何だか・・・小物に頼らねばならん時点で私的には及第点だナ」

小物とは、魔導機兵の自立制御のための魔石とか魔素の電池である燐光翼とか。

燐光翼を消費して魔素を集めるタイムラグを無しに魔導を使う事が出来るのだが

「ルーと比較するのは可哀想ってもんだ。

贅沢を言えば、もう少し翼を翼として使って欲しい気もするけど」

ルーですら『浮遊』で空を飛べるだけであって、制空権を持っているわけではないのに。

戦龍神も浮くが、制空権を持っているとは言いがたい。

ディは制空権を得ただけで空を支配しているわけではない。でも決して不可能ではない。

その翼で風を捉え、切り裂き、大空の覇者達と渡り合うことも・・・

「『セラス』とコイツといい・・・血か?」

「何でもいい。 使いモノにならなけりゃ意味がない。

おい、ソコで隠れて見物していた三匹、ディの面倒を見てやってくれ」

と、クタクタになっていてもルーを肩車に場を立ち去るライと入れ替わりに現れたのは

アレスとリオとルナ。

アレスはただ無言でディを抱き上げ、ルナは魔石を回収。

リオは気を失いつつもその手に握っていた得物を預かる。

「ディ、随分と成長したね。 おねぇちゃんはうれしいよ」

「・・・これでも男だからな。 負けてはいられない」

アレスがディに重ねるのは出会った当時の少年が嘗ての己か。

ルナはわけも分からず ん?ん? とディをアレスを見比べるだけ

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「っ!!?」

とディが跳ね起きた場所は夜の居間。そこには一緒にルナとリオが姉妹の如く寝ていた。

「夕食を食べてから一風呂浴びて寝るといい。これは俺が面倒をみるから」

振り返れば、テーブルで小さな明かりを頼りに読書のアレス。 

・・・らしくない。

そしてその向かいに、上に布を被せた夕食一式。

「あの・・・勝負の行方は? 僕、最後の方の記憶がないんですが・・・」

「最後の一撃を防がれ、ソコに後頭部に肘鉄一発貰い終わりだ。

ディが団長にまだ勝てるわけがない。 ルナと組んで、俺と対等・・・より少し上か」

「・・・ありがとうございます。 そうですか、やはり勝てませんでしたか。

くやしい・・・・・・以上に、むかつくぅー――――っ(うがぁー――」

「そ、そうか(汗。 まぁ、がんばれ」

へこんでいないならそれでいい。 

ディ少年、どう転んでもライを尊敬する事はないようである。 何故か。


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■ EPISODE 09 ■

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