「・・・・・・」
きっと彼女は罵詈雑言を吐いているのだろうが、ルーは聞いていなかった・・・
・・・・・・・・・
行き成りだが、ルナは月見が大好きだ。
例え哀しい事あろうとこれだけは決してやめられない。位に大好きだ。
いつものように月を仰ぎ、舞い踊る精霊達の歌に耳を傾けていると
屋敷から人が出る気配を感じた。 見下ろすと屋敷から出るマント姿の者。
飛び降り、その者の側に立ち顔を見上げ
「わん?」
こんな時間に何処へいくの? とばかりに首を傾げる。
「・・・ルナに見た目は関係なかったかな」
と女声に男言葉でマントを捲ったその顔は、
いかにも適当に切ったショートの黒髪にハッキリとした目鼻立ちの凛々しくも優しい顔。
美人の部類にはいるか。 男装をさせてもドレスを着せても良く似合うにちがいない。
そう、数時間前ルーに怪しげな事をされた『彼女』
誰かを彷彿とさせるが、屋敷の誰もが今の今まで会った事のない見知らぬ者に
ルナは警戒する素振もなく、寧ろシエルやライと接するのと同様に尻尾を振る。
「皆にはこの事は秘密。いいか?」
「わん!!!」
頭をクシクシと撫でられ、ルナは嬉しそうに吠え応える。
「じゃ、急ぐから」
と駆け去る彼女を、ルナは丸で主人を見送る犬のように見送った・・・
都市の勢力圏から出て王都の勢力圏に入るまでの間、
ゆっくりと進めば如何しても野営しなければならない処が出てくる。
老紳士に従ったため進行が遅い事に便乗し、追跡者達を誘う事にしたのだが・・・
騎士達は四方に立ち、その中たき火の周りにフル装備の3人。
老紳士は始め野営に文句を言っていたが今は側で暢気に眠り
「アルシアさん今更ですが、いざとなったら・・・」
「私達に構わず・・・」
「バカねぇ、死ぬときはいっしょ。それならそれまでだったってことよぉ」
偵察の結果、可也の戦力が集結していた。 アルシアを暗殺するためだけに
こっちの戦力なら一点集中で撤退も可能だが、騎士達が使いものにならない。
せめてライ達の誰かもう1人いれば十分対抗できるが・・・今となっては儚い望み。
気配に騎士達が抜刀した。
「・・・彼等に気を使う必要はないわぁ。生き残る事だけ考えて」
「了解。俺達3人が生残る事だけを・・・」
「今は考えます・・・」
戦いは必至・・・・・・・・・
・・・・・・
結局、騎士達は各々数人を道連れに討たれてしまった。 老紳士は
「き、き、貴様等、皇女アルシア様の一行と解っての狼藉かああああっ
触るなあああっ、放せええええ無礼者おおおおっ!!!」
・・・何やら元気に叫んでいる処をみると全く元気らしい。
殺す価値もないと。 囮にすらならないと。
寧ろ、今、即、その口を永遠に封じて下さい。
と今はそれ処ではなく、
3人揃って撤退つつ辛うじて無傷で敵を討ってきたが・・・背には絶壁。
目の前の森、周りは敵兵に囲まれ、正に絶体絶命
「・・・リオ、やるぞ」
「・・・うん。」
やりたくは無いが背に腹は変えられない。
月光に煌く狂剣に、二人はセラフを召還をしようと手を繋ごうとした瞬間
「「「!!?」」」
マントをひるがえし、光を纏う影が舞い降りて来た。
その登場に一瞬硬直する敵兵,3人の前で
瞬く間にマントの中から揮う腕から帯状の光が敵兵に絡み着き、撃破。
「ぼやっとするなっ!!!」
「チャンスよぉっ!!」
「はいっ!!」
「っ!!」
敵にとって誤算だったのは、 アルシア自身が二人に劣らない戦士であり、
ライ達が1人増えるごとに戦力が相乗的に増加するよう彼女でも同様の事が
起きてしまったこと。
4人の連携がとれた攻撃に数倍以上あったはずの敵兵は瞬く間に殲滅撃退されていった。
・・・・・・・・
・・・・
アルシア3人が一息着く中、彼女はノした敵兵を探り
「・・・・・・ちっ、これも駄目か。」
一応死なない程度に手加減したにも関らずその敵兵は死んでいた。
捕まった時、秘密がばれないよう何らかの仕掛けがされていたのだろう。
その彼女に、側にアレスとリオを従えアルシアは近づき
「助けて頂き礼を言います。私は」
彼女はピッと指を立てた腕を上げアルシアの言葉を遮り
「アルシア=フォアスタ。 極星が一つ、薬師」
空気が固まった
「・・・そして皇女様?」
バッと、アレスとリオが前に立ち構えアルシアを護れるように備える。
助けてくれたからといって必ずしも味方とは限らない。
「貴女、何者?」
「・・・私はアルシアの望みを叶えるため、彼の願いにやって来た」
と彼女がマントの中を見せると、その服はアレスが着ている戦闘服と同質・・・
否、それより丈が長いライの戦闘服そのもの。それをベルトで腰を縛り。
シエルと同じ位に高身長だがライの戦闘服に包まれるその肢体の線は以上に細い。
だが胸はシッカリあり、ベルトのせいで更に胸が強調されライの戦闘服に見えない。
良く見れば、マントは極星騎士団で使っているものだったりした。
極星騎士団で使っているマントや戦闘服はそれを織っている素材が特殊であるため
メンバーが見れば直分る。 そして、トドメはその手に持って見せる得物。
「そ、それは・・・」
片刃を背合わせにしたような刃を持つ短剣。 アルシアはそれを知っていた。
『戦闘妖精』と謳われた少女騎士の魔法剣。
その少女の死後、継承する者なくライの手により大事に保管されていた はず。
盗まれる事は絶対ない。 と、なれば・・・
「・・・分りました。貴女の事を信用しましょう。」
「「・・・・・・」」
アルシアが信用すると言った以上、アレス&リオも彼女を信用しないわけにはいかない。
でも、二人は揃って困惑気味。
「・・・処で貴女、御名前は?」
「えっ? あ〜〜〜」
露骨に目をそらし戸惑う彼女。 めっちゃ怪しい。
本名を名乗る訳にもいかないし、いまさら何をいっても偽名と思われる。
「私に名は意味を成さない・・・・・・と言うのはだめ?」
「「「駄目っ!!!」」」
一斉にツッこんでしまった。
まあ、これなら信用してもいいと思ってしまったのも本気。
「でも、名前が明かせないっていうのも困ったものねぇ・・・
・・・そう、イリア。 私の母親の名前、これを使いなさい」
「えっ? い、いいんっスか(汗?」
「なぁにぃ、文句あるって言うのぉ?」
「イエ、無いです、ハイ。
・・・ではイリアの名、ありがたく使わせて頂きます。」
畏まる彼女 改めイリアに対し、何故かアルシアは満面の笑み。
そこへ
「おおおおおっアルシア様、御無事でしたかああああっ!!!」
なんだ生きていたか と嫌そうな4人の顔も意にせず老紳士、何処からとも無く復活。
「彼女・・・イリアの御陰で敵を撃退する事ができました。」
「よくぞ、アルシア様を護ってくれた。誉めて遣わそう」
「・・・うるさい。」
近づいてきた老紳士の首筋に一瞬でイリアによって突き付けられる短剣。
「なっ・・・」
「襲われ、人が死んだにヘラヘラ笑うな。これは貴様の迂闊さがもたらしたものだ。
貴様、自分が大物だとでも思っていたのか? 所詮、貴様は使者でしかない。
せめて小物らしく大人しくしてろ。 ・・・邪魔だ。」
「う・・・お・・・」
止める間もなかったが、止める気もしない。それは皆の心も代弁していたから。
「・・・これから私達は強行で王都に入ります。
ついて来れない者は置いて行くので心してください。」
無論、そんな事で一番困るのは老紳士
「しかし、それでは護衛ができませぬ」
その護衛の騎士がが死んでしまった今、何をいう。
「それは大丈夫、イリアが新たに私の護衛となりました。
では、我々は先に王都の神殿で待ちます。」
後はもう老紳士がどんなにゴネようと皆揃って無視、荷物を片付け出発した。
戦闘後、疲労している身体を強精剤で強引に。 老紳士1人残して・・・・・
そもそも、都市から王都までそう日々は掛らない。
1日も掛らない内にアルシア4人は王都に入り、神殿に到着。
敷地を通り講堂を通り、1人祈りを捧げる女性がいる祭壇へ
「御久ぶりです、フェフ様。」
声を掛けたアルシアに、その女性は振り返り・・・既に初老を迎えている筈なのに
相変わらず全く年が分らない。目尻に小皺はあるのだが。
「久ぶりね、アルシアちゃん。元気にしていたみたいでよかったわ」
「「「・・・・・・・・・」」」
「・・・あら?」
イイ年して流石に御茶目過ぎたと自覚したのか、一度咳払い後
「よく、王都へ帰ってきました皇女アルシア」
「・・・はい。」
「今日はもう遅いですから一泊していくといいでしょう。大した御持成しは
できませんけど。 処で貴女の御付の方々を紹介していただけますか?
・・・それとも御仲間さんと言ったほうがよろしいかしら?」
この人も、地位も名誉も意にしないタイプの人間だった。
「・・・アレス=ルバード。 極星の騎士が1人」
「あらあら、猛々しいのに随分と落ち着いた子だこと。
そちらのお嬢さんの相方さんかしら?」
アレスですら、この婦人にかかってしまえば子。
まあライですら子扱いだった事を考えれば、アレスはライの弟みたいなもの?
「はいっ、私はリオ=クラウス。極星騎士の1人です。」
フェフは微笑ましく若い二人を見比べ頷き、今度はイリアの前へ。
「あら? 貴女は何処かで御会いした事がありますわね。何処だったかしら・・・」
フェフ、ホヤホヤに見えて、やはりあなどれない。
「・・・いえ、初対面です」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。 私、これでも一度覚えた人は忘れないの」
「・・・きっと勘違いです。私はアルシアを護るために彼より遣わされました。
名はアルシアの好意により「イリア」と名乗らせて頂いています。」
「あら? あらあら。 今回は彼は来ないの? 貴女が彼の代わりなのね。」
「「「・・・・・・」」」
「あの、あまり彼彼と連発されるのはちょっと・・・(汗」
「あら?」
イリア、やっぱりフェフの事は苦手かもしれない。子のイタズラを見透かす母親みたいで。
こうして嵐の前の静けさとばかりに日は暮れて行った・・・
夜、王都を駆け抜ける一つの影。影の主は戦闘服で腰に得物を携えたイリア。
本来なら夜は治安が悪いのでとても出歩けたものではないが・・・イリアには関係無い話。
そうして到着した場所は、王都守護騎士団駐屯地。
そこの、嘗てライ達の抜け穴を探し・・・いまだ健在だった其処から中から忍び込む。
巡回の衛兵の隙間を縫い棟の影から影へ渡り歩き、辿り付いた処は執務室がある・・・
・・・夜にも関らず、執務室ではまだ守護騎士団長であるオーディスが
机に向って仕事をしていた。
コンコンコン
「開いているぞ、入りたまえ」
暗殺者の如く無言で入ってきたのはイリア。
「君は、何処かで会った事があるな・・・はて?」
オーディスも身内の顔と名ぐらいは全て覚えている。それでもイリアの顔に
該当する名が出てこない。 よく知っているような気はするのだが・・・
「・・・初めて御目にかかる。 私はアルシアを護るため彼より遣わされた者」
それで納得するオーディス。 彼の使者なら十分。
「・・・夜遅く、何用かね?」
「貴方にニ,三聞きたい事がある。」
「・・・ふむ、答えられるかは質問の内容による」
「アルシアを『失姫』と言いはじめたのは貴方か?」
「・・・何故かね?」
夜遅く訪れた使者を態々試すかオーディス。
「一番良く事情を知っているのはフェフ様。 そのフェフ様ですら本当に
アルシアが『失姫』かは知らない。ただ時期的に可能性があるだけで・・・。
彼からの伝言だ。
もしアルシアが「殺される」ような事があれば・・・俺はこの国を潰す」
「・・・そうさせないために彼は君を遣わしたのではないのかね?」
「・・・・・・」
一度、人に席譲るとか言っていたくせに・・・
やはりこのオヤジとはキッカリハッキリ決着をつけるべきか。
「本当は彼が付いて来ることを期待していたのだがな・・・
男子三日会わざれば括目せよというが・・・以上に大人になったか・・・。」
前言撤回。こんなに老けたオーディスの姿、ライはきっと見たくない。
「・・・利用するつもりで風潮したのか」
「ふっ、まさか。守護騎士団と神官戦士団は尽力を尽くして皇女アルシアを護る。
もっとも、多少の火の粉は自身と君等で払ってもらわなければならんが。」
「・・・了解した。 明日、正午前、皇女アルシアは神殿より王宮へ入る。」
「うむ、そのように取り図ろう。 ・・・処で
今この国は主に幾つの勢力に分れているか知っているかね?」
「・・・?」
「主に三つ。この王都。彼の都市。そして、打算で組みする側を覗う者達」
「・・・」
「この王都は古より力と秩序によって支配してきた。だが今は秩序が失われつつある。
我々がなんとか保っているがね・・・・。 国のための人となっては、終わりだ。
まぁ、最大勢力が未だ王都というのは言わずもがな・・・
彼の都市は情と熱意により人が集まり、正に人のための勢力と言えるだろう。」
「・・・それは買かぶりでしょう」
「何故、彼の都市がこんなにも短期間で発達したか分るかね? それは王都側から
若く有能な人材が流れていっているからなのだよ。王都だけではない、近隣諸国からもだ。
今や都市自体は完成されそう規模は変らんが、それを模した、いや、技術協力を行った
衛星集落,町の数は10は下るまい? 彼がどんなに否定しようとそれはもう彼の勢力
彼が一声かければ皆奮つだろう。 その事を彼が把握しているかは疑問ではあるがね」
「・・・それこそ買かぶりすぎ。愚息に期待し過ぎだ。」
「愚息? ふっ、確かに愚息だな。だが、その予想外な行いに期待したくなるのが親心。
彼は滞ったこの国の新たな流れ。 皆、彼の都市の一挙一動に注目しておる。
私は思うのだよ。
老いたモノは若さを妬むのではなく次の世代の試金石となり、後は消えるべきだと」
全く、重要な情報をポロポロ混ぜてくれるから迂闊に会話もできやしない。
「・・・そんな不穏な発言、私にしてもいいのか?」
「構わんよ。裏切られるようなら私が所詮それまでの男だったということ。
それに、この事を君の耳に入れておけば必ず彼の耳にはいるのではないのかね?」
「・・・・・・」
何でこう、この人達はこうも易々と人の事を信用するのだろう。
・・・間違っちゃいないけど。 知り尽くした関係者でなければ、
招かざる訪問者が守護騎士団の最深部のココまで辿り付けない。
イリアはもう話す事は無いとばかりにオーディスに背を向け
「もう帰るのかね?」
「ああ。必要な事はもう話した。いつまで話していても仕方が無いからな」
「そうか・・・中々楽しかったよ。 私が一方的に話していただけだがね。
・・・処で、本当に君とは初対面かね? 懐かしい、良く知っている気がするのだが。
それに名を未だ聞いていなかったな」
「初対面だ。名はイリアと名乗らせてもらっている」
「イリア・・・」
「御存知の通り、アルシアの母の名を頂いた。大事なものだから
変えるつもりはない。次会った時もこの名で呼んでくれたらいい」
「・・・ふむ、それでは近いうちにまた会おう。」
対し、イリアは応える事無くその場から立ち去って行ってしまった。
爽やかさと懐かしさの香を残して・・・
「若いのを嗾けておいて、私もうかうかしておれんな・・・」
やはり何処かで会った気はするが、今となっては如何でもいいこと。
そんな事より、今はやらなければならないことがある。
若いのに後を任せるにしてもそれなりに手筈は整えておかなければ。
それは無意味で、無意味な自己満足なのかもしれにが・・・・・・
・・・・・・・・・
「若い女性が夜中に出歩くのは感心できないな。 ましてや治安の悪い場所で」
「深夜に人の部屋に居座ってそういう台詞は如何かと思うけどね。
・・・連れ合いが居るくせに夜這?」
全くこういう手合いは余裕がある分、性質が悪い。 イイ例が守護騎士団の古参面子。
厳かな夕食後、イリアが密かに客室から抜け出したのはアレスのみが知っている。
皆はあっさりとこの女に気を許したが、アレスまで気を許したわけではなかった。
寧ろ、皆が気を許せば許すほどより警戒しなければならなくなる。 せめて1人だけでも。
だからリオを眠らせた後、軽装のまま得物を携えイリアが帰って来るのを待っていたのだが
「茶化すのはよしてもらおうか。俺はなんとしてもアルシアさんを団長の元へ
連れ帰らなければならない。 例えこの命に代えることになったとしても・・・
答えろ。何処へ行っていた。返答によっては・・・」
この場で斬って捨てると剣を抜き放ち、突き付ける。
「・・・命に代えても云々は彼一番嫌いなことだと思うけど」
「言われなくても・・・男として俺自身、心意気の問題だ。
質問を質問で返し、はぐらかすのは止してもらおう。」
「・・・ちょっと、守護騎士団団長にイチャモンを付けにね。何の証拠もないけど」
「守護騎士団団長?」
「オーディス。世間では老獅子とか謳われる呆けたオッサン」
「・・・・・・」
「・・・その目、信じてないだろ」
「・・・信じられると思うか?」
イリア、腕を組み考えてみる。 考えて、考えて、考えて、結論。
「思わない。絶対。」
「ほらみろ」
「いや、其処で勝ち誇られても。 そうそう、オッサンから伝言。
明日、神殿から王宮まで守護騎士達の護衛がつく・・・はずだと思う」
「はぁ?」
「だって、あのオッサンを何処まで信用したらいいものなのやら・・・」
「は・な・し・を・ご・ま・か・す・な」
「で、何の話しだったっけ?」
「・・・・・・もういい。」
この手合いの相手は成れている筈なのに・・・本気で相手をすれば疲れる。
喋らせて、嘘をついていれば自ずとボロを出すと
「そうか・・・、寛がせてもらってイイかな?」
切先を向けられたまま、よくも抜け抜けと・・・
「・・・・・・」
「・・・それじゃ勝手に」
と、イリアは短剣の鞘が付いたベルトを取り椅子にかけ、戦闘服も脱いで椅子にかけ
シャツ一枚に、さらにはそのシャツも脱いで上半身肌
「お、おいっ!!?」
「ん? 走って、胸が苦しいんだ。 コレくらい取らせてくれよ」
ではなく、赤子のような白い絹肌の上を腹から胸を固める様にサラシが巻かれていた。
「・・・・・・(ガクっ」
「?」
精神的ダメージを受けたアレスを傍目に、イリアは意もせずそのサラシを解き
その下には巨乳とまではいかずとも造られたように滑らかな椀型な美乳が
「お・・・・・・(汗」
「はぁ、さっぱりした」
・・・イリアさん、貴方は自分がうら若き女性だと理解していらっしゃるのだろうか。
乳房を労わる事無く乱暴にタオルで身体を拭き、アレスがいることを全く気にしない。
「・・・・・はぁ(快。 ・・・如何した?」
コレだけやっておいて、剣を支えにしゃがみ込む青年が一体如何見える?
「・・・取り敢えず、シャツだけでも着てくれ」
「・・・・・・おおっ、済まん」
事態に気付き、イリアいそいそとシャツを被り・・・シャツに浮く乳もとい乳首
「・・・・・・もういい(泣」
分っていた筈なのに本気で相手していたら疲れるだけだって。
「で、何の話しだったっけ?」
「・・・・・・くっ、今日はこの辺で勘弁してやるっ」
と御決まりの台詞を残しアレスは逃げていった
「・・・何しに来たんだ、アイツ?」
眠気に目がとろんと垂れてきたイリアを残して。
そのまま子供が如く無防備にポテっとベットに倒れ込み、
その瑞々しい唇からはすぐ穏やかな寝息が漏れ・・・・・・
神に仕えるだけあって、神殿の朝は物凄く早い。特にココは長が長だけに質実剛健。
空が白む暁7つ(午前四時)には神官達は起き、御勤めを始める。
見た目不良神官のアルシアは意外にも真面目に御勤めを行うためちゃんと起きた。
今は騎士とはいえリオも神官戦士として教えを受けた身、御勤めを行うため起きていた。
当然、リオの相方であるアレスもその辺りの事情を聞いて、付き合うために起きていた。
そして、各々清潔な作業着に身を包みフロアに集まっていた。・・・たった1人を除いて
「私、思うのよねぇ。お客とはいえ、迷惑かけてるんだから
御勤めぐらい自主的に手伝わなきゃいけないってぇ」
「あはははは、私からは何とも・・・(汗」
「偉そうな事を言って、これか・・・。叩起こすべきでしょうね」
ちょっと米神を押さえ唸るアルシアに、リオは乾いた笑いを洩らしアレスは憮然と
ライ一派の者なら朱交われば何とやらで意外に義理堅いのだが・・・
やはりイリアは部外者?
「・・・こうしていても埒があかないわねぇ。
私、イリアを起してくるから貴方達は御勤めして来てくれるぅ?」
「はい、では先に行ってきます」
「・・・・・・了解」
意外にアレスは二人っきりになることを許し・・・どうせ、怪しいと言っても
聞かない事は分かっている。 ならば、泳がせ警戒するしかない。
二人から分かれアルシアはイリアがいる部屋へ。
コンコンコン
「もしも〜〜し、起きてるぅ?」
・・・・・・待っても全く返事がない。再びノックの後
「勝手にはいるわよぉ?」
テンカウントでも反応がないため無断でドアを開け、入ってみるとベットの上には
背が高く、その戦いぶりから思えないほど華奢、シャツとパンツのみでお腹剥き出し
寝乱れノびたうら若き乙女イリア。
白い肌は血色よくほんのり染まり・・・同性のアルシアですらドキッとさせた。
「・・・ねぇ、起きてぇ。朝の御勤めぐらい手伝わないと」
何故か優しく揺すり・・・寝惚けるイリアから返ってきた返事は
「・・・眠い・・・もう少しねる」
警戒も全く無くそのまま うにぃと布団に顔を埋めてしまった。
・・・幼くて可愛いかもしれない。妹みたいで。 じゃなくって
「ほら、起きなきゃだねよぉ」
「・・・やだ・・・起きたくない」
「ホントにもう・・・貴女、荷物は何処? 着替えないと」
と辺りを見まわして見てもらしき荷物は全く無く、あるのは戦闘服とマント,その得物だけ
「・・・ん〜、荷物ぅ〜〜」