■とある騎士団の日常■
〜The Chivalry,s daily〜
EPISODE 08
The Lost Princess
我、人の身に有を無に帰す力 破壊神の力を有す
故に我は人にして神を威す者
我が求めるは楽 故に平穏を渇望する
我のみならず、我に携わる者達へも
故に、我が本性を知らぬ人々は我をこう呼ぶ
理不尽な暴力に声無き者の叫び、力無き者の剣
『英雄』と
我、望まざるに関らず
「あ〜〜、死ぬぅ〜〜(疲」
「うぅ・・・恐かった。 恐かったよぅ・・・(怯泣」
やはり、アルシアの人体実験から居間へ生還してきた二人は
被験者であるライは病み上がりのように顔色も悪く窶れ疲れ果て、
生徒であるディはその様に未だに子供のように怯えべそをかいていた。
何であれ、その様子は夕食まで居間で独り時間を潰していたアレスの予想通り。
「毎度毎度、本当懲りない・・・」
「毎度ですかっ!!? 」
「・・・・・・(伸」
話し始めたアレスとディを放ったらかしで、ライはソファの上でバタンキュー。
「ああ、いつもこの調子だ。」
「うわぁ・・・」
「・・・これも一つの愛の形なんだろうな。未熟な俺には理解出来ないが。
むしろ、絶対したくはないが」
「奥が深いですね、愛って・・・」
ムクッと
「お・・・お前等、勝手な事いうな。」
「うわっ、まだ生きてる」
「少なくとも死ぬ事は無いと思う。死んでしまうとアルシアさんの玩具が無くなるから」
ライが精神的に疲れ果てているのをいいことに、二人とも凄い言いぐさである。
「ライさんって一応領主で騎士団長なんですよね?
嫌ならさせなければ良いんじゃないんですか?」
「・・・・・・そうだな。 ん〜〜、その手の趣味がある・・・とか?」
激しく違う。 流石に二人の戯言に耐えかねた
「・・・しょうがないじゃん。約束しちゃったんだし」
「そんなことを言われても・・・」
「僕達は経緯をまぁ〜〜ったく知りませんから」
教育の賜物か二人とも意地悪。 時間潰しにライをゲロさせるとこにしたらしい。
「はぁ・・・仕方ないなぁ。 時間まで少し昔話でもしてやるか・・・」
それを解って付き合うこの男もこの男・・・
事の始りはこの都市が出来る以前、村だった頃まで遡る。
周囲の森には、以上に薬の原料となるものが豊富。 来て、その事に気付き喜んだのは
薬師であるアルシアだった。
あれば造りたくなるのが人の常。早速それらを採取し様々な薬を完成させ・・・
それは村に多いに貢献した。 しかし、薬とは必ずしも良いものばかりではない。
毒も使い様によっては薬、もとい、毒はどうやっても毒。
使えば、人体にどのような反応を起こすか。
詳細なデータを得る事が出来ればより良い物が造れる。
アルシアはそれを言い寄ってくるバカ男達に試そうとしたが(無論、死なない程度に)
バカ男達が良からぬ事をしようとしていると勘違いし、ライが叩きのめしてしまった。
結果ライはアルシアに小言をいわれ、自分から約束してしまった。
他人にさせるくらいなら俺がアルシアの実験台になってやる と。
無論、安全である事を前提で。
それは今も続き、たまにライはアルシアの玩具にされ
「・・・バカだな。」
「・・・バカですね」
「んな事は改めて言われなくても自覚してるよ。でもな・・・」
何よりも変な虫をアルシアの周囲に付き纏わせる気にならなかった。
しっかり護らなければならないと思った。 ・・・二度と失わないため・・・
「・・・愛ですね。」
「・・・だな。」
「ゴルァっ 勝手な事言ってるんじゃねぇ!!!」
怒るライに二人は脈アリとばかりに逃げ・・・今日も都市は平和だった。
相変わらず、その日も屋敷はアットホームにオヤツの時間だった。
居間では皆、各々思い思いにオヤツを頂き・・・不意に、
「最近、回りを変な連中がうろついているよな・・」
今日のオヤツ、もとい会議のテーマは屋敷の目の周りにうろつく不審な者達。
普通なら全く気付かないだろうが、皆一騎当千(子供除き)。 既にそれを把握済み。
「ん。 常に2〜3人。面子はいつも同じ」
と、シエル。その超感覚は伊達ではない。
「挑発してみたが、反応はなかった」
「うん、そうだね。今のところ様子を見る為、みたいだった」
と、アレス&リオ。 オマケにディとルナもウンウンと頷く。
「その道のプロでしょう。 でも暗殺や調査のため・・・
ではないようです。 恐らく・・・念の布石 今は。」
と、レイハ。今ある情報だけでそれだけわかるとは流石、元関連業者。
「それに関しては私は如何しようもないわねぇ・・・」
「なんだそれは? そんな話始めて聞いたぞ」
と、アルシアとルー。ルーに至っては仕方がない。
「・・・最近あまり外出してないからな、ルーは」
「外出したゾ。 屋根の上で昼寝した」
それは外出したとは言わない。
「・・・ふと思い出したんだけどね、『失姫』がこの辺りにいるらしいんだよ。
一体、どんな美女だろうね・・・(惚」
と、カイン。
「行き成り女の話かよ。 ・・・情報が足りないな」
ちなみに、『失姫』とは行方の知れない王の血族の女子。男の場合は『失君』
この男はこんな時に無意味にそんな話をしない。
ただ、それと思う自分のカードを見せるだけ。
それがわからない子供達は優男を不謹慎とばかりに睨む。
誰一人気付かなかった。『失姫』の言葉に、その人が強張った事に・・・
その夜、
ライの部屋に1人の訪問者が来た。ノックにドアを開けると
「・・・ちょっと寝酒に付き合ってもらえないかしらぁ?」
ガウン姿のアルシアがそこに。
・・・何かを企んでいる気配はない。いつもの妖艶な気配もなく
寧ろ、普通の娘が信頼する者に悩みを相談しにきたような・・・
「・・・・・・ふぅ、何処で呑む?」
「私は何処でもいいわよぉ?」
「・・・ここで呑むか。」
招きにアルシアは入り言われる間も無くベットに腰掛け、仕方が無いので
ライはその前にテーブル代わりの木箱、酒瓶とコップを引張出し。アルシアの隣に腰掛
「御酒、あったのねぇ・・・」
「まあな。・・・どうぞ。」
そして空間を沈黙が支配する。 ついて、ライは何も言わない。
何か話しいたい事があるならアルシアが話始めるはずだから。
「・・・・・・ねぇ、何しに来たか聞かないのぉ?」
「寝酒の呑みに来たんだろ? ・・・まぁ、無理には聞かないさ。」
再び、沈黙が支配し・・・アルシアは俯いたままポツポツと
「・・・私って私生児だったの。 母は宮仕えの薬師。」
「・・・・・・・・・」
「ある時、母は私を身篭っちゃってねぇ・・・・・・王宮から追い出されて・・・」
「・・・・・・・・・」
「何者かに追われる旅の中、母は私を産んで・・・私が物心ついた頃に
王都に帰ってきて・・・死んじゃった。 フェフ様に私を預けて・・・」
フェフ、神殿の最高司祭。
「・・・・・・もしオヤジさんが現れたら如何する?」
「・・・勿論・・・ぶっ飛ばしてやるわ。・・・でも、それはないわねぇ
フェフ様、おっしゃったもの。私の父君はもうお亡くなりになってしまわれた って。」
フェフが尊敬の意を込めて呼ぶ人物などそうはいない。
彼女は見た目丁寧だが、本当に敬意を持っていなければそうしないから。
・・・先々代の王は名君で、当時一端だった司祭のフェフや守護騎士のオーディスとも
交遊が深かったという・・・しかし、ある時謎の病死をしてしまった。
名君の子も名君とは限らない。先代の王はその嫡男だったが、違い、何も出来ない傀儡。
そして一子のみを残し若くして病死したということになっている。・・・表向き。
元で他国から侵略戦争が勃発し、それがライ達も関った先の大戦。
今、覇権を握っているのは先々代王の妻。と言っても
結局これも傀儡でしかないようだが・・・実際はまだ幼子である現王の摂政達のし放題。
「・・・・・・・・・『失姫』、先々代王の娘?」
「さぁ、どーかしらぁ。 父の事はほとんど全く聞いてないないしぃ
・・・・・・何であれ傍迷惑な話よねぇ、今更・・・」
「・・・・・・前のクーデターで王位継承権者の上位が殆どいなくなったからな。」
「ホント、やーねぇ・・・殺伐として」
全く、優しい言葉の一つも懸けられないのか。
「・・・・・・肩、使うか?」
「・・・ありがと」
顔を見せないままアルシアはライの肩のシャツ地に顔を押し付けた。
布越しに、肩には濡れた生暖かい感触。
思ったより小さい背をポムポムと叩き慰め、夜は深け・・・
衝撃の告白(?)から数日後、必要な欠片は揃い、完成した絵は想像通り。
それに齎された情報は、近衛騎士団が『失姫』を捜し動いている と。
近衛騎士団。王族を護るためのみに存在する者達。
一見、近衛騎士団が最強ではと思われがちだがその実、
本当に王族を護る事しかしないため無用の長物ともいえる。
王の威厳が強かった時代は近衛騎士団は守護騎士団の一隊で、コレこそ
少数精鋭,王の剣 と謳われたものだが・・・いつの頃からか廃れ、
ハーレムになったり・・・先々代には一度解体されたが死後、再編成され
・・・今その実力の程は殆ど知られていない。 張子の虎が通説。
執務室、レイハと二人っきりの中ライは
「・・・・・・それしか解らないなら解らないって書けよ」
仕方が無いと分っていても、守護騎士団からの手紙に思わすツッコむ。
毎度ライの狂行をレイハはさして驚きもせず
「如何しました?」
ライは無言で手紙を渡し、レイハはそれを読んで・・・複雑な表情。
「正直、忍びでも気持が悪かったとか・・・
若いのに死んだ魚の目をしていたそうです。」
言わずもかな、近衛騎士についてのことである
「・・・なぁ、もしも『失姫』が近衛騎士団から俺達に
助けを求めて来たらそれを助けるとして、如何なると思う?」
「普通なら人の感情を考える事が出来ますが彼等はそれが出来ませんから。
敵対すると後味が悪くなる事だけは確実といえます。引き渡す事が得策かと。
・・・『失姫』・・・もしかしてアルシアの事ですか?」
「何でそう思う?」
「フォアスタ、王族の名乗る氏の一つ。普通、神殿の者が名乗るものではありません。
それなら当然それなりの子女のはずですが、当時では隠子を神殿に預ける事は皆無です。
・・・それに、王宮で仕えるが出来る者は身元がはっきりしている者だけ。
結果、その施設で造られた者,有名貴族の子女,継承権のない王族の中位以下・・・
アルシアの母親は身篭った事が判明した直後、王宮から失踪していたそうです。」
昔の任務のため、皆の身元はその親から大凡分っていた。唯一知らないのはライのみ。
「その手はレイハの方が詳しかったな。・・・・・・ふぅ、ドロドロしてるなぁ」
肯定も否定もしない。必要もない。
「・・・もう一つ。先々代から主の血族は一流、現王と先代だけ。
それは后が以外の子を始末させたからだそうです。正妻以外の子を」
話に思わず顔を苦く歪めてしまうライ。レイハも心を殺さなげれば話をやってられない。
「・・・それなら先々代の『失姫』が出てきたらとんでもない事になるな。」
「そうですね。どちらにしても必死に探しているでしょう。・・・周囲も」
「???」
「先々代の『失姫』なら現王以上に価値があります。傀儡にするにしても。
『失姫』なので、言うことを聞かなければ貴方の嫌悪する事も・・・・・・」
「・・・やるだろうな、連中は。」
「・・・何にしても大きな火種です。『彼女』は」
「その時、俺は如何したらいいんだろう・・・・・・」
一度反逆者の名を被った者は何であれ王宮に立ち入る事は許されない。
無理を通せば、元も子もなく周囲に害が及ぶのも必死。
「これはまた・・・この場合、ルナじゃないんですか?」
「ん。」
ディが呼ばれ執務室に行って見れば、待っていたのはライとシエル。
相変わらず二人とも共にシャツ,ズボンとラフな事この上ない。
もっともライの長裾に対しシエルはカットパンツでムチムチなのだが・・・
「俺もそう思うんだけどね、これで正解。 んで用件は、コレ上げる」
と、ライが机の上に置いたのは二つの小荷物。 二人が小包みを開けると中身は
ディには、蒼に白銀飾縁取りのライの戦闘服と同材質な貫頭衣型法衣
シエルは、背と腹を護りながら肩と首が自由な超軽量合金製腹甲で 何故か胸は解放。
「・・・これ、僕には大きすぎませんか? ブカブカなんですけど?」
ディ少年、法衣の腰を付属のベルトで縛ってちゃいるが裾が膝まである。
「ディはまだ成長するからな、それだとずっと使えるだろ?」
「・・・私のコレは何なんだ?」
言わずもかな、何故シエルの鎧は胸部分が無いのだと
「ちょっと想像してみ? あればどうなるとおもう?」
相当のサイズにすれば邪魔で動けない。小さくすれば胸が圧迫されて息が出来ない
「・・・・・・(悩」
「・・・・・・・・・」
「・・・なら、何故コレを造ったんだ?」
「一番狙い易いのは腹だろ? 万が一、腹をやられたら致命的だからな。」
「そうか・・・ありがとう(照」
やはり獣娘(シエル)は単純で騙し易くてイイ。・・・本当に防具としてなんだけどね。
「・・・あの、僕には兎も角ルナには何もないんですか?」
「安心しろ。ルナの服、材質は俺達といっしょだ。 だからデザインは対照的だろ?」
白銀と緋のルナの服は赤に黒縁、金と碧のディの服は蒼に白銀縁。
「・・・・・・なるほど、ライさんも好きですねぇ(呆」
「・・・てめぇ、要らないなら返せ。」
「・・・折角だから貰っておきたいとおもいます。」
「・・・やらん。返せ。」
「一度、人に上げたモノを返せというんですか? 騎士団長の癖に?」
「こん、クソガキャァー、お前にはまだ早いといっているんだぁー」
部屋の中で鬼ごっこを始めた二人を他所に、シエルは自分の新装備の具合を確かめ上機嫌。
いつ何時であろうとアットホームな屋敷。
しかし、これは万が一に備え急がせ作らせたモノと知る者は僅か。
その日、予想された客は五人。老紳士1人と騎士4人。
隠密で守護を目的として行動するには最適のユニットといえる。
皆の監視の元、騎士達は居間に残し、老紳士は執務室へ。
挨拶もそこそこに正式な書状を読ませ
「短刀直入にアルシア様、 アルシア=フォアスタ様はココに御在しておられますな?
隠し立ては貴公の為になりませぬぞ。 アルシア様は早急に我々が保護させて頂く。」
「いないと言っても、ばれているんだろうな。
処で、最近ココの周囲をうろついていたのはそちらの身内?」
「??? 何の事をおしゃっておられるのかな?」
老紳士には隠している様子はない。
「・・・何であれ、あんた達に渡したくない。 アルシアが不幸になりそうで」
呼び捨てにした事が気に食わないのか、老紳士の顔が歪む。 其処へ
「私が不幸になるかはライが決めることじゃないわぁ」
毎度の格好のアルシア登場。 娼婦みたいなその格好に老紳士の顔が更に歪む。
「アルシアの性分からして縛られるのは好かないだろ?」
「き、貴公、アルシア様を皇女と知ってその態度、無礼罪に当るっ!!!」
「御黙りなさい。そのような事、貴方が言うことではありません。
そもそもライは私が最も信頼を置いている者。充分その権利は有しています。」
「「う・・・お(驚」」
その豹変ぶり。 気配に、格好はどうであれ本当に姫に見える。
・・・本当に姫なんだけどね。
老紳士に至っては思わず膝間着いて頭をさげ
「よしなに・・・」
「うぉぉ・・・」
ライ、モロに引いてしまった。
「・・・やぁねぇ。 演技よ、え・ん・ぎ♪」
「いや、演技でも中々出来るものじゃない。 ・・・やっぱり行くのか?」
「行かなきゃ。・・・決着を着けるためにも」
「俺は・・・それでも行かせたくない。」
「そんな顔しないで、大丈夫だから。」
とアルシアは子供を慰める様に座っているライの頭を抱締め
・・・早鐘の如く速く打つアルシア鼓動が聞こえる。
大丈夫なはずがない。恐くないはずがない。
保護された環境から単身、周囲敵のみの環境へ飛び込むのだから。
アルシアはライから離れ、姫になり
「1日、時間を下さい。発つ準備をいたします。構いませんね?」
1日程度なら文句は言えない。老紳士は頷くしかなく
「畏まりました。但し、護衛のため我々も今日は屋敷に滞在させて頂きます。」
「ああ、仕方ないな・・・」
二人を残しライは居間へ。決った以上、次の手を打たなければならない。
居間ではテーブルで紅茶と菓子を前に無表情のまま寛ぐことがない騎士達を
やはり今屋敷に居ないカインを除いた皆がソファに座り監視をしていた。
「・・・連中はどうだ?」
わざと騎士達をさして聞こえる様に言うライに対し、アレスは意図を察し
「それなりに強いのでは? でも、4人対俺とリオでも俺達が勝ちますが。
ディとルナなら二人相手で厳しいところ・・・ではないでしょうか。」
「わんっ!!!」
「あはははは(汗」
「身内の護衛を連中にさせたいと思うか」
「絶対ごめんですね」
本来なら侮辱と聞き取れるその言葉に騎士達は眉一つ反応させない。
・・・まぁ、アレスの見解は打倒だろう。ライも一目でそう思った。
技と力はあるがそれに伴うだけの心がない。何があっても護り生残るという。
「んな事よりこの騒動は何だ?」
「ん。掻い摘んで説明してほしい」
とルー&シエル
「・・・何、アルシアが先々代の『失姫』だった。で、先のクーデターで
継承権を持つ者が少なくなったから連中は慌てて捜した と。」
その意味を知るアレスとリオ,ディが強張り、レイハはやはりといった感。
ルーとシエル,ルナに至ってはダカラと首を傾げ。
ルーにとって権力は遥か昔、すでに無用のもの。
獣娘'Sに至っては『失姫』の意味すら理解していないにちがいない。
先々代の『失姫』の価値。 今なら、一つ間違えればこの国が崩壊する。
「詳しくは、おいおいレイハから聞いてくれ。
アレスとリオ、二人には折り入って頼みたい事がある。
・・・俺に代わってアルシアを護ってほしい。」
「「!!?」」
「正直、俺自身が出向きたいが・・・今回ばっかりは、な」
その辺の事情は二人も心得ている。
そうであってもココに以上のモノに引かれやって来た。
「・・・微力を尽くしましょう。一抹の不安はありますが」
「うん、がんばります。命に代えてもアルシア様を・・・」
「・・・できれば1人の仲間としてアルシアを護ってほしい」
「「「!!?」」」
アルシアの正体を聞いた途端、3人とも萎縮してしまった。
でもこの男は大義名分も無く純粋に1人の人として仲間を護ろうとしている。
それに、それだけではないはず
「分りました、団長には及ばないかもしれませんが・・・」
「はい、安全になるまでアルシアさんを護ってきます」
「改めて、宜しく頼む。」
深々と頭をさげるライに、皆これが始りでしかない事を再確認した。
「・・・ルー、ちょっといいか?」
「ナンだ?」
これだけでは終わらない。できる限りの用意をするのがこの男。
魔導師ルーを呼び出し、二人して何やら怪しげな企みを・・・
一晩、アルシアは食事などの必要以外皆と話すことなく篭って着々と何かの準備をし
翌日正午、別れの時となった。
屋敷の前では、意外に地味な旅服に騎士マント姿のアルシアは専用の馬に荷物を付けさせ、
作業を行うアレス&リオも全装備をマントで隠していた。
それを唇を噛んで腕を組みライを筆頭に皆が見守り、
本当に出発の準備は全て終わってしまった。
ライの目前に姫と見紛うアルシアが立ち、・・・言いたい事はたくさんあるが
口は動いてくれない。
「俺は・・・」
と、そのライの口を塞ぐようにアルシアはキス。 いたって普通の、でも長い
「!!?」
それに叫びそうな老紳士に、皆が立ち塞がり睨んで威嚇。
二人の邪魔は決してさせない。
もしかしたらこれが永久の別れになるかもしれないのだから。
悠久のような刹那の時が流れ、
「・・・・・・」
茫然とするライに何か一言二言呟き離れた。咄嗟に伸ばした腕から逃れるかのように。
「出発します。」
老紳士がし切る前にアルシアが号令し、馬に乗って出発してしまった。
あっさりと。 本当にあっさりと。
それを見送る事無くライは屋敷に立ち戻り、皆その背中にかける言葉が無かった。
道中、老紳士を先頭にアルシアをアレスとリオが挟み、騎士達が周囲を囲む陣形。
当然老紳士は二人が側にいることを良しとしないが、文句を言うごとにアルシアは
「少なくとも貴方たち以上に信用できます。」とか
「回りくどい美辞麗句より粗野でも率直な言葉の方が分かり易いです」と
できる限り二人が行動し易いよう計らう。
「下のものに示しがつきません。多少言葉使いは気を付けなさい」
と多少二人を嗜めたりもするが。
以上に3人が気懸りなのは、つかず離れず付いて来る者達。
二人が近づけば逃げるし、戻れば再び現れる。
老紳士に警告しようと
「王家の御威光に刃向うものなどおりますまい。気のせいでしょう」
と一笑。 コレだから温室育ちは・・・
いざとなればこの老紳士と騎士達を囮に・・・と考える3人だった。
アルシア出発して未だ1日も経たない頃、
地下の魔導実験室には魔導師のルーがいた。地下のため、今昼か夜かもわからない。
「・・・良く耐え切ったナ。身体の調子はどうだ?」
ルーが話し掛ける相手は、足元に巨大な魔方陣の中で力無く伏す人物。
それは割りと高身長、でも造られたかのような理想的に均整の女性的な身体
全身産まれたて赤子のような柔肌に粘液の如き老廃物を纏わせていた。
この現場をみたものはきっとルーが『彼女』に良からぬ事をしたと思うに違いない。
「・・・・・・」
「・・・乳や尻が重い事ぐらい我慢しろ。・・・うむ二刻、
身体を綺麗にして休め。 間に必要な準備はしてやる。」
「・・・・・・」
「・・・仕方がないだろ。まぁ、そう事を急ぐな」