∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 08 ■
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とイリアが手を伸ばす方向には・・・椅子にかけられた戦闘服のみ

距離感が無いのか、何度も何度も手がクイックイッと空を掴み・・・

・・・戦闘服を取りたいのだろうか。アルシアはいぶかしみながら戦闘服を渡し、

その戦闘服に手を突っ込んだ夢現なイリアはそのままゴソゴソと

取出した物は一辺親指サイズのマジックキューブ。 ソレをポイっと床に捨て

「ん〜〜〜〜『解除』」

「なっ!!?」

コレが驚かずにいられまいか。解除されたマジックキューブは女性1人ぐらい入れそうな

バックに化けていた。 いや、デカバックをそのサイズのマジックキューブに圧縮。

ということは、その魔力,魔導センスはアルシアの知る限りルーに次ぐと思われ

・・・見ればイリア、またスヤスヤと寝息立てているし。

アルシア、らしくなく叩起こす気もなれず

「・・・仕方ないわねぇ。もぅ」

とゴソゴソとイリアが解除したデカバックの中を漁り、中から適当な衣服を引張出し

「ほら、腕上げで」

「ん〜〜」

アルシアは愚図るイリアの胸に布を巻き付けシャツを着せ・・・

「・・・・・・何ですか、それは?」

「・・・あはははは(汗」

アレス&リオには、アルシアが手を引張って連れて来たモノが

立ったままうっつらうっつらとまどろむイリア以外に、何に見えると?

つか、いい図体こいた娘が立ったまま寝ないで頂きたい。 しかも涎垂れてるし。

「・・・それは連れて来た意味があるんですか?」

「・・・あはははは(汗」

「・・・もぅ何も言わないでぇ(泣」

仕方なく御勤めの間、立ったまま柱に抱き付き寝るイリアが

ずっと好奇の目に曝されていた・・・・・・

・・・・・・・・・・

「いやぁ、参った参った。朝起きれないとは

自分も思わなかった。 まだ慣れてないなぁ・・・」

とイリアは照れ頬を撫でながら朝食を食べ・・・意識は覚醒しているが、まだ眠そう。

そのイリアを呆れ混じり皆して見、

「いや、マジで。 ・・・ゴメンナサイ。

二度とこのような事がないよう気を付けます」

「・・・ホントにもぅ。 次からは気をつけてねぇ」

「・・・・・・ああ、務めを果たす為にも」

・・・気迫が、さっきのさっきまで眠気眼だった娘から

既に臨戦体勢だったアレスですら威す気迫が溢れ出す。これではまるで

「・・・(何者だ、この女)」

身近な誰かを彷彿とさせる。しかし、やはりこの女は知らない。

アレスより長身でも華奢,シエルやレイハに劣らぬ素早さ,ルーに次ぐ魔導力

・・・・・・ライに匹敵する魔法戦士。

「済みませ〜〜ん、おかわり」

・・・そして、ライに匹敵するお惚け。

皆して何故か思った、こんなのが増殖しちゃったらヤだな と。

 

イリアの言った通り昼前、実用的な儀式衣装に見を包んだ守護騎士一隊が

神殿へやって来た。 それを率いるのは守護騎士団団長 老獅子のオーディス。

出迎える最高司祭 優母のフェフ率いる神殿戦士団一隊もまた騎士達と同様。

そして彼らが守るべき『失姫』アルシアも紫のドレスの上に儀式用神官鎧を纏い、

それを包むは金銀糸縁取りに中央には八方星を囲む葉蔓の紋様

極星騎士団、薬師アルシアのエンブレムが刺繍された正式なマント。

アルシアを護衛する3人は

アレスは完全装備に、八方星の後に左右へ龍翼を意匠化の紋様

リオは完全装備に、八方星の後に左右へ天使翼を意匠化の紋様

のマントと、正式決戦仕様の衣装。

そしてイリアはライの正装戦闘服に、八方星を囲み守護する龍の紋様

ライのエンブレムのマント・・・彼の正式決戦仕様の衣装。 彼の代理として。

前方を守護騎士達、後方を神殿戦士達、中央にアルシアを中心に三方を3人が護る

行進が王都の街並に繰り広げられた。

民は、王都の者たちは知る。

凱旋した『失姫』が一つの騎士団に属し、彼女を神殿と守護騎士団が擁護するこの事態。

三権。 『信』と『法』が『武』を差置き、表立って一つのそれに協力する

今ここに他を凌駕する一大勢力が現れた事を。

『失姫』の彼女が既に現王以上の力を有している事を。

そして、彼女を征するものはこの国を征する事が出来る。

つまりは彼女の・・・

この事は瞬く間に国内を駆け巡った。

 

 

アルシアが屋敷から去った翌日からライは壊れ、もとい、廃人となってしまった。

先ず、朝訓練は来ない。で、朝食は気配もなく幽鬼の如くやって来てボソボソと食べ、

らしくなくサッサと執務室に入りあっという間に仕事を終わらせてしまうという健全ぶり。

自室に帰ると後は夕食までずーっと窓の外を眺め・・・誰が来ても何処吹く風。

丸でアルシアに魂を持って行かれてしまったかのように・・・

アレス&リオ,アルシアが居らず、ライは使い物にならないとなった以上、

残りの面子が面倒を見なければ成らず、シエルがルナ,ルーがディなら未だ良し

だがコレが入れ替わったり子供二人同時となると転でダメで、二人同時となると結局

「・・・結局、私が見るしか仕方がない訳ですね」

「? 如何かしましたか?」

「わう?」

「いえ、世の中の不条理についてちょっと思うところが」

「ああ〜〜、それ、良くわかります。ホント何ででしょうか・・・(シミジミ」

「わう〜〜〜(シミジミ」

と、朝っぱらからの朝訓練、レオタードにジャケットの軽装戦忍姿で悩むレイハに

思わず共感してしまった訓練服のディと毎度のルナ。

ディ君も成長し、もうレイハの艶姿(?)に照れたりしません。直視さえしなければ。

ルナちゃん、訳も分っていないのに合わせて悩む振りをするのはやめませう。

さて置き

ライが気持悪いくらい真面目に仕事をしている今、レイハの仕事の負担は

仕事の確認程度だけでいい。しかし、それはライが虚ろに呆けたままだという事で・・・

「いつまで悩んでいても仕方がありません。 先ずは軽く流しましょうか」

「そうですね。よろしくお願いします!!!」

「わんっ!!!」

と、子供二人はレイハから距離を取り各々自分の得物、

ディは法杖「光晶槍」,ルナは大太刀「獣皇鬼・砕牙」を構えた。

レイハ、その攻撃はライやシエルに比べ各段に軽く、ディすら撃合っても柳に風が如しに

流されてしまう。 その上トリッキーな攻撃も多数 忍だけあって。

そんな彼女に、今日はこちらがトリッキーな戦法で攻めてみたいとおもふ。

レイハを中心に、ルナは大太刀を肩担ぎに持ったまま腰低に駆け走り始め、

次第にその速度は上がり、その後に生まれ数を増やしていく残像。

見よう見真似でもルナは分身を取得しつつある。

ディもじっとしたまま己の姿を増やし・・・こちらは魔導。

それを見てレイハは

「・・・これでは数で不公平ですね」

と、ピッピッと印を切り精神集中したレイハの姿が一人から二人,二人から四人へ

「「「「・・・・・・(笑」」」」

今更、子供達も引けない。 

どれが本物かも分らず、戦力を分散して子供達は襲いかかり・・・・・・

結論、全てが実体を持っていた。 レイハ二人相手に

ディはその分身を悉く散らされ、残った本体は二人相手に揉みくちゃに・・・

ルナは躓かされ独りに戻りコケかけた処を受止め投げられ受止め投げら・・・

今、子供達は這々の体で四人の腕を組んだレイハに囲まれていた。

「全部本物だなんて・・・」

「わうぅ〜〜〜〜(泣」

「「「「これが本当の分身。『分身』(ワケミ)です 

ルナが使おうとしていたのは『残身』(ノコシミ) 

ディが行ったのは『幻身』(ウツシミ)といいます」」」」

・・・いや、四人揃って女教師が如くピッと指をたてられましても

「わぅ〜〜レイハ、四人、四人ん〜〜(オロオロ」

「・・・す、済みません。先、分身を止めて下さい。」

ルナなんか完全にパニクッているし。

「「「「・・・仕方ありませんね」」」」

と残念そうにレイハの姿が四人から二人、二人から一人に、で講義再開。

「『残身』とは高速移動を点々においての気,動作の強調により

残像をそう錯覚させたもの。コレは身体が要の人が良く使います。

『幻身』とは空間に姿を投影させるもので、手段としては主に

魔導を用います。他にも色々ありますが、今は省略しましょう。

『分身』とは忍の奥義。資質に修行を積まなければ出来ませんが

・・・これは気を分ける事で存在そのものを分け、御します。」

ほうほうとディは面白そうに頷き、ルナは腕を組んで頷き解ったフリ。

「・・・一見、『分身』が最もいい様に聞こえるのですが?」

「物事、何においても一長一短があります。 例えば、

『幻身』は幾ら分身体を消されようと本体が攻撃を受けない限りダメージには成りません。

それに投影しているだけなので化ける事も・・・これは改めて、いう事ではありませんね。

『分身』は増えた数だけ存在が分散されます。 分身体の能力とダメージは単純な計算で

考えればいいでしょう。しかし、分けた分だけ倍に疲労しやすくなるのですが・・・」

「・・・つまりそれは、僕達ではレイハさんの実力の半分にも及ばないと」

「わう?(哀」

ルナ、哀しげに 及ばないの?と首を傾げ、

「・・・様は何事も戦略次第ということです。シエルは『分身』を修得し3人まで

分かれる事が出来ますが性分に合わないので使いませんし、ライは『分身』『幻身』

は出来ませんがその『残身』は自体に破壊力を内包し攻撃の手段として用いてます。

実力云々の前に貴方達はまだ子供ですから。 さあ、もう一戦やってみましょうか」

休憩はもう終わりらしい。レイハから距離を取った子供達は頭を付合せゴニョゴニョと

「「・・・・・・(にぱ」」

「・・・いい作戦を思い付いたようですね。」

再び『分身』で四人に分かれるレイハに、

大太刀をディに預け、独特の構え 狼牙拳のルナが跳出した。

狼牙拳と命名されたルナが使う技は、単純に揮われるだけながらルナの腕力を活かし、

獣の牙の如く突き立てた指は安物の鎧なら容易に抉り、蹴撃は凹ませ破壊する。

防御と攻撃より素早さを優先したこのスタイル。だが、侮ってはいけない。

少女の求めに応じ、少年から大太刀がブーメランがごとく飛来してその手に返るから。

そのルナの姿が一から二、二から四、四から八から十六へ

「・・・『幻身』ですか?」

その遥か後方で杖を構え念じる少年。ルナを要に、ディは完全に支援に徹すると。

レイハはルナに・・・の群に飛礫を投じ、瞬間、全てのルナが払い除けた。

「『幻身』だけではないと・・・」

レイハも撃って出る。一対四だが、

回避にルナ同士で同士討ちになったり、レイハにカウンターを貰ったりと・・・

「・・・なるほど」

子供ながら中々の知恵である。 乱戦の中、一体のレイハは一体のルナに対し一撃

「ぎゃんっ!!?」

と吹っ飛ばされたソレを受け止めようと他のルナが集まり、受け止め

その時には既に一体のレイハがディの背後に

「はい、術を解いてください」

「・・・はぁ。 今度は巧くいくと思ったんですが・・・何がダメだったんですか?」

其処にはルナ当人とルナの同サイズ出来そこないの水人形が

つまり、ディが空気中の水分から水人形を作りソレにルナの姿を投影したため

『幻身』ですら実体を持っていたように見えた、と。

「所詮は虚像。ルナは非常に気が強いですから」

「あ・・・」

失念していたとばかりに子供達は再び頭を付き合せゴニョゴニョと相談し・・・

打てば響くように目に見えて成長していく子供達。それがこんなにも楽しいとは。

でも、どうせなら何も無い時に元気な彼と共にコレを実感したかったと思い

「はぁ・・・・・・」

「・・・今日はこの程度にしておきましょうか?」

「くぅ〜〜〜ん」

気付けば子供達が心配そうに覗き込んでいた。

子供達に心配されるとは・・・レイハも重傷なのかもしれない。

「そうですね・・・」

「・・・早く、また皆揃う日が来るといいですね」

「わんっ!!!」

・・・それは儚い夢、次皆が揃うときは一人かけているかもしれない。

しかし希望は決して失われてはいないものまた事実。

ルーが一応全ての事情を知り、後はもう彼と彼女次第だという事を心得ているとはいえ

それでもまだライの力になってやりたい。

だから慰めてやろうとライの部屋に行き、ノック。返事が無いのは分かっているので

「ライ、入るぞ」

と入った其処には、ベットの上で壁を背に脚を投出し虚ろなライ。

と、その脚の上でゴロニャンと猫なシエル。

・・・丸で主人に甘える猫である。

・・・他に表現のしようがないから仕方がない。

「・・・何をやっておるんだ、オマエは?」

「ん? 元気が無いライを慰めようと思って」

慰めようとしている、じゃなくて慰められてるの間違いである。どう見ても

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・私だってな」

「ん?」

「ライの事、慰めてやりたいぞおおおおッ(爆 !!!」

シエルは少し身体をずらし

ポンポン

「ここ、開いてる」

「・・・・・・おう」

と二人してライの脚の上。

女の子二人の重量、可也の重さになる。結果、脚は痺れる。

幾ら虚ろでも思う。

「・・・(御願い、二人して脚の上に乗らないで)」

でも、言う気力すら全く無いので結局言わず終い。

流石に二人が満足して去った後に動こうとして、痺れでのたうち回ったが。

 

身辺護衛として3人を引連れたアルシアは、

幼少年である王と先妃,大妃(先々代の王妃)そして摂政,大臣衆との謁見を

殺意や嫉妬,疑惑,欲望等に曝されながらも無難に終え、

夕方には再び行列を率いて神殿へと返ってきた。

取り合えず後は、正式に継承権が決定する継承の儀まで王都に滞在するだけとなった。

様々な貴族がそれまでの間自分の館への滞在を申出てきたが・・・如何考えてもそれは

得策ではない。 結果、神殿に滞在する事となったのだが、昔の様にはいかない。

四六時中、打算目的で皇女へ謁見を求めるもの達もいるしパーティーの御誘いもある。

それも一応、謁見時にアルシアの左右にアレス&リオ,背後にイリアが睨みを

利かせるため直に帰る。 当然の如く誰の手の者か、命を狙う者も。

まあ、不埒な者達に対しては神官戦士達の御膝元の上、

守護騎士1ユニット(5人)が警護として神殿に在してくれる事となった。

・・・いや、守護騎士の青年達の目的は寧ろアレス達?

いつも通り、誰といわずとも鬱陶しい連中を適当に捌き誤魔化し・・・

四人が休憩にそれとなく茶をしていると、守護騎士の青年が軽装で

「済みません。今、コイツ借りて行っても大丈夫ですか」

とアルシアに。 コイツとは勿論、アレス等のことである。

守護騎士ならば当然ライの逸話も承知。アルシア達はその仲間である。

当然、直接実力の程を知りたくなるのは心情。

「あら、二人とも連れて行っちゃってもいいわよぉ? 彼女いるし」

とアルシアはイリアの方を見、イリアは手に持つカップを上げ応じた。

「・・・ふぅ、少し遊んできます」

敷地内なら護衛1人で十分。 何が起ころうと直、戦える者が駆け付ける事が出来るから。

だからアレスとリオは二人して守護騎士達と遊びに、もとい、手合わせに。

そして二人のは取り残され・・・何をするでもなく茶を飲み

「・・・若いねぇ。 よくやるよ、全く」

「あら、貴女達も十分若いんじゃありませんか?」

・・・イリヤのぼやきにフェフ襲来。二人の輪に加わる。

そのフェフへアルシアは無言ながらも機嫌良く茶を差し出し

「俺は拳で語るほど子供じゃないですよ」

「あらあら、お姉さんぶっちゃって。でも、お姉さんなんだから

ちゃんと子供達の面倒は見てあげないとダメでしょう?」

この人に何を言っても揚足を取られてしまう。

子供といっても守護騎士達はアレス達と同年代でイリア,アルシアからして見れば

弟妹みたいなものなのだが・・・フェフにしてみれば皆子供か。

「・・・アルシアからも何か言ってくれ」

「あら、いいんじゃなぁい? 子供達の面倒、見てあげたら? 私も行くから♪」

二人してイリアが戦う処を見たいらしい。 そこまでして正体を探りたいか?

仕方がないのでイリアは軽装のまま得物を携え、3人してアレス達の所へ。

その時には既にリオVS副長の青年との手合わせは終わっていた。

「どちらが勝ったんだ?」

「残念ながら引き分けちゃいました」

リオは照れ答え、対し副長は可也悔しそうな顔を見せた。

お嬢さまっぽいリオはそんなに強くないのだろうと思ったのだろうが、

頑固者で器用なこの娘は戦いぶりにもそれが現れ、中々気合が入った戦いをしてくれる。

熱血漢の彼が悔しがっているのはリオをそう見た己の甘さ。

「そう・・・じゃ、次ぎ俺が相手しようか」

イリアの申出に沸き立つ守護騎士達。苦笑のアレス。

仮にもライの代りを預かるこの女、只者ではないことは気配からでもわかる。

「なら、先に俺が」

と一歩前に出たのは標準的な戦士の体格で得物は騎士剣の特徴のない青年。

二人は距離を取り構え、イリアの短剣から破壊剣が如く伸びる光の魔法剣。

「・・・・・・くしゅん」

とフェフのクシャミを合図に二人は跳出し、

一撃目、イリアの急停止に青年の横薙ぎは空振り、そのまま青年の回し斬りを

イリアは下へ掃ってバックステップ。

追うように青年の上段斬りを同様にイリアは上段斬りで受け止め

「!!?」

青年の斬撃はすんなり通る。否、その勢いを喰ったイリアは一歩斜め前へ

魔法剣の首はね回し斬りが青年の後頭部を襲い

「ぐはっ・・・・・・(絶」

「若いくせにだらしがないなぁ。そんな事じゃお姉さん満足できないぞ」

と、ノびた青年を魔法で回復して起し下がらせ

「ほら、次ぎ二人いっしょに相手してあげるからおいで」

寝床でも通用する台詞の笑みを浮べ手招き誘う。出てきたのは二剣流の娘と双頭剣の青年

「ふぅ〜〜ん。今度はキワモノね」

イリアの魔法剣は破壊剣状から細く長々いリボン状へ。

やはり守護騎士二人同時相手では油断できないのか、気も漲っていく。

不意に、

パンッとフェフの拍子が静寂の均衡を打ち破り、守護騎士二人が跳出し襲いかかるが

動かないイリアまで切先が届く居合に入った瞬間

「破ァッ!!!」

「「!!?」」

気合一発、全方位衝撃波に弾かれた二人の隙を、

もう1人の影になるよう双頭剣の青年に周り込み攻撃を仕掛けた。 

勿論、二剣流の娘には曲線軌道の魔法弾の牽制は忘れない。

「あらあら、彼女上手ね。・・・でも、彼等もそれを許すほど優しくはありませんよ」

伊達にも守護騎士。二人同時攻撃が無理なら、1人を死角とした波状攻撃に切り替え

イリアを休ませず逃さず、追詰めていく。

そもそも、二剣流は一方を止めればもう一方が襲い、双頭剣は力加減を間違えれば喰われ

カウンターとなって襲う。 

対し、リボン状の魔法剣も実剣部,魔法剣部を止めた処でまだ魔法剣部が長く曲って

襲いかかる。

「休めないのは辛いわねぇ・・・イリアなら問題ないかしらぁ?」

休ませてくれないないなら早急に決着をつけるまで。

イリアの爆裂魔法に再び煙が立ち上り視界が遮られ。

「・・・・・・」

「「・・・・・・」」

向かい合い、必殺一撃を繰り出そうと

青年は身体を捻り双頭剣を振り上げ、娘は剣を持った腕を己の身体に絡ませ。

その間、イリアは膝立てしゃがみ白鳥が如く両腕を広げ短剣を逆手に

剣指の両手を各々二人の顔に向けていた。

その体勢のまま三者動かない。 いや、動けない。

既にイリアの両手には必殺の魔法弾を撃込めるだけの魔力が陽炎を放ち・・・

「はいはい、そこまでですよ」

フェフの一声に場の緊張が解けた。

「まあ、こんなものじゃないかな」

「流石です。」

「参りました。」

腕を下し立ち上がるイリアを二人は得物を納めつつ賞賛し

技術で負けるつもりはないが、勝てない圧倒的な経験の差がそこにあった。

「さてと、お次は・・・」

イリアの視線の先には、感情が乏しそうな1人の少女。

騎士らしくないこの少女がこのユニットの隊長だった。

「・・・私、ですか?」

「応。 お姉さんが優しくしてあげるからおいで、お嬢ちゃん」

「・・・優しく? ・・・見た目で判断すると泣きを見ますよ」

それでも立ち上る闘気は流石、守護騎士。

出した得物は法杖。

「やはり魔道士か・・・」

「・・・私は魔操鎧闘士」

魔操鎧闘士。アルシア,イリア共に聞いたことがない。

皆の前、少女は構え

『我に集い、我に纏え、力よ。 魔を退き討つ盾となりて我鎧となれ』

術詞に魔方陣が地を走り、集う燐光が小石,砂と共に浮いた少女へ集い・・・

地に降り立つ鎧騎士、魔操鎧闘士。

ざっと見積もって身長はイリアの倍。その太い甲腕や甲脚は怪力を有すると思われ、

胴には少女がスッポリ納まっているのだろう。

「ほぉ・・・(驚」

感心するイリア等々を他所に、守護騎士達の顔は青く

「近接重装型だと・・・(汗」

標準,近接軽装,重砲装,軽砲装ではなくイリアがもっとも苦手と思われる・・・

「イリアさんには無茶だ」

その声に一瞬気を取られ、また意識を戻した時には魔操鎧闘士の姿は無い

「上っ!!?」

空高く跳び上がり、押し潰さんが如く落ちて来た巨体を辛うじて回避。

しかし空かさず撃込まれた打上げ鉄拳をモロに受け、今度はイリアが空高く舞う

が、空で体勢を立て直し必中の爆裂弾を射込み、魔操鎧闘士は爆煙に包まれた。

そして皆の前、イリアはダメージを思わせず優雅に地に降り立ち

「決ったな・・・(ふっ」

「あらあらイリアちゃん、油断大敵ね」

煙が引き、其処に立つのは無傷の魔操鎧闘士。

「おいおいおいおい(汗」

魔法を受けつけないのか? 

試しとばかりに投じたリボン状の魔法剣を魔操鎧闘士は手首で受け止め絡み付く。

イリアは其処を空かさず引き

「・・・成るほど、耐魔装甲か」

本来ならそこで魔操鎧闘士の手首は斬れ落ちてもおかしくないはずだが、

瞬間、表層に魔力を吸収する魔導回路が走るのを見た。

今度は私が攻撃する番とばかりに魔操鎧闘士はドスンドスンと走り接近し・・・

以外に素早さは低い。それでも怪力で堅固だから侮れないのだが。

迎え撃たんとイリアは長く長く伸ばしたリボン状の魔法剣を手首のスナップを利かせ

クルクルクルとまわし螺旋状に、魔操鎧闘士が居合に入った瞬間

「うおおあああああっ!!!」

戦叫一発、切先を魔操鎧闘士の胸中央に向けて突貫。

それが回転し、装甲を貫かんとするその姿は


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■ EPISODE 08 ■

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