アレスは自分のマントで遺体を包み、黙祷。
「・・・そう言えはリオのそっくりさんの名前、聞いていなかったな。」
再びリオを求めて廊下を走る。
そして、リリアの言った通り奥の隠部屋、座敷牢にメイド服のリオは眠らされていた。
診たところ、リオの身体に多少の擦り傷はあるものの異常はない。
ペシペシペシペシユッサユッサユッサユッサ
しかし、引っぱ叩いても強揺すっても起きない処をみると強力な睡眠薬が使われているようだ。
アレスは魔法「解毒」を使えない。 リオの鼻を摘み口を開けさせ霊薬を少し流し込んでみるが
「ケフッ、ケフッ・・・・・・」
咽て咳き込み、アレスは顔に吹付けられてしまった。
余り強引な事も出来ないし、霊薬は貴重なので勿体無い使い方はしたくない。
「・・・・・・口移しか? 参ったな。」
困った事(嬉しい事)に誰も邪魔してくれそうにないし、本人は拒否のしようがない。
片手でリオを抱き上げ、霊薬を口に含み接吻。
・・・コク、コク、・・・
さすがに今度は素直に飲んでくれた。
効果覿面、飲み終わって十も数え終わらない内にリオの眉がピクピクと反応しゆっくりと開く
が、何処か虚ろ。何も見ていない。心を閉ざしてしまっている。
「リオ、俺が分かるか?」
「うん、アレス君。・・・・・・私が殺したの。」
「・・・勝手に殺すな。俺はちゃんと生きている。」
「うん、だからこれは夢なのね。 ごめんね、ごめんねアレス君。」
虚ろな瞳から流れる涙
ゴンッ
「ふえっ!!? い、痛いよう。」
額へのアレスの頭突きにリオ、本気で衝撃に驚愕し涙目
「奇遇だな。俺も凄く痛いぞ。元気に生きているからな。 そんなにリオは俺を殺したいのか?」
ブンブンブン
「でも、私の剣がアレス君のお腹に刺さって、その後ベランダから落ちて・・・」
余りモノ聞き分けのなさにアレスの米神に浮く青筋。すかさずリオをヘッドロック。中指突出した拳で
「まだ言うかお前は? もしも―――し、起きてますか? 起きてますか―――っ?」
ゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッ
「ふみゃっ!!? 痛っ、痛、痛いよアレス君! ごめんなさい!! 生きてます!アレス君は生きてますぅ―――」
ヘッドロックを解いてもリオは胴に抱き付いたまま離れない。
「温かい。 よかったぁ。アレス君生きてる、生きてるよぅ。あ――、アレス君の匂いがするぅ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「もう、そろそろ離れてくれないか? 本気でリオに刺された所が痛い。」
痛いというより焼ける様に熱い。まるで焼けた鉄棒が入っているかのように
「あっ、ごめんなさい。・・・傷、大丈夫?」
何に対してか怯えまくるリオ。
リオに見えないようにバトルスーツの前を開け、中を覗き込む。包帯のその部分に血が滲んでいた。
当然、貫通していた傷が3日程度で完治するはずもなく、動き回っていれば塞がった傷も開く。
「・・・まあ、大丈夫だろう。 それより、邪神が復活した。」
今度はリオが慌ててアレスに背を向け、胸元を覗き込んだりして自分の身体を確かめる。
「生贄になったのはリオじゃない。 ・・・リオのそっくりさんだ。」
それを聞いてリオの顔に浮ぶのは明らかな戸惑い。
「リリアちゃん、私が嫌いなのに何故・・・」
それを聞いて、アレスの頭に浮ぶ一つの仮説。
邪神に取り付かれていたのはクロードで、リリアはその事を知っていた。リリアはクロードを愛していた。
だからクロードはあそこまでリオに固執し、リリアにとって邪神=クロードだから生贄になった。
多少順番は違うかもしれないが、今となっては些細な事。
「いや、きっと嫌いじゃなくて羨ましかったんだ。自分で運命を切り開くリオが。 だから、せめて・・・
・・・クロードももう生きていない。他に何人も死んでいる。俺達が止めなけれはこれからもっと人が死ぬ。
ここで奴を倒そう。」
「うん、命に代えても。」
「・・・違う。 俺はリオと生きていきたい。これからもずっと。
だから絶対、奴を倒して生残るんだ!!!!」
「・・・うん、絶対生残ろうねっ!!!
あっ、でも、私の装備ココに持って来てない。 どうしよう・・・」
「これ、団長からの預かりモノだ。 リオの新装備(ニヤリ)」
その荷物を心境複雑で受け取るリオ。
これがココにあるということは、自分だけ蚊帳の外に居た訳であり、
自分が帰郷を楽しめるよう気を使ってくれたことでもある。
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部屋を追い出され、部屋の前で一人アレスは見張りをする。
当然、城奥の隠部屋なので容易に妖魔はやってこない
「今更、恥ずかしがらなくても・・・なぁ?・・・・・・・・・・・・」