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途中通った人家はすべて散々たるものだった。
眠った人々は叩いても起きようとしない。血痕があり、誰かが殺された事を物語っている場所もあった。
恐らく耐魔力の高い者が居て、眠ることなく妖魔に殺されたのだろう。
屋敷のメイドも相変わらずベットの下に隠され寝たまま。
装備を回収した二人は再びディの隠れ処へ戻り、その時まで休息を取る。
そして深夜
ディの目の前、アレスはバトルスーツを着、手甲,ブーツを装着、懐に霊薬三つを入れ
背中に荷物を背負い、マントを身に付けた。 両手には「風羽」「聖霊の刃」
「・・・アレスさん、その荷物は何なんですか?」
「これか? これは・・・・・・リオの装備。俺はまだ諦めていない。諦めて・・・たまるかっ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ディ、多分2,3日すれは落ち付くだろうから、それから助けを求めに行け。」
それはアレスが敗れた場合の話。
「じゃあ、俺は行く。」
アレスはディを其処に残し出発した。
城までは妖魔に出会うことなく到着する事が出来た。しかし、城の中までは そうはいかない。
城門で出迎える妖魔の群。 そして一斉射撃。
シギャァァッ、シギァッ、シギャァァ!!!!
「・・・・・・・・・・・・・」
アレスはソレをまとめてマントで絡め取り叩き落す。コレくらいの芸当アレスでもやって見せる。
あわてて、妖魔の群れは更に一斉射撃。
シギャァァ、シギァッ、シギャァァッ!!!
空中に広がったマントがアレスの姿を隠し、マントに弾が吸い込まれる。
舞う様にマントは地に落ちたがそこにアレスの姿はなく荷物が転がっているだけ。
シギァッ!!?
「俺の・・・・・・・邪魔をするなあああああああああっ!!!!!」
妖魔の死角から二刀流の猛撃、ほぼ一列状に並んでいた妖魔をまとめて粉砕
そして、後はもう己の心が指し示すままリオの居場所に向って突き進むのみ。
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その部屋に乗込んだ焦燥のアレスの見たものは、疲労困憊な虚ろ顔で肉壁に埋め込まれたリオ。
その状態全てが、もう事が終り、リオが助かりそうでない事を物語っていた。
アレスの背後には妖魔の群、肉壁からは侵入者迎撃のための触手群
「・・・う・・おおおおおおおおああああああああぁぁぁぁっっっ!!!!」
悲哀のアレスは止まらない。アレスは自分が泣いている事にすら気づかず戦い続けた。
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アレスは敵を叩き潰し、肉壁を切り裂いて、リオを傷つけることなく救い出す。
恐る恐る、優しくリオを抱き上げ・・・
「リオ・・・じゃない!!? リオのそっくりさんか!!!」
そう、邪神の生贄になったのはリオではなくリリア。 アレスの叫びにリリアの瞳に意志の光が戻る。
「・・・・・な・・ぜ・・私が・・・リオで・・ないと?」
「それは・・・(悩)・・・やはりリオじゃないからな。 これを飲め。身体が楽になる。」
懐から出した霊薬をリリアは顔を振って拒否。
「うふふ・・・いいの。・・・これは自ら望んだ事。・・・私がした事の当然の報い。
・・・リオちゃんは、・・・更に奥・・・隠し部屋にいるわ。
・・・貴方がリオちゃんを愛するように・・・私もあの人に愛されたかった。」
多分、本当の「花嫁」ではないリリアは生贄になったことでその生命力を全て吸出されたのだろう。
アレスの腕の中、哀れな娘リリアはその人生に幕を閉じた。
唯一の救いはリリアの顔に笑みが浮んでいた事。 結局、その意味は分からない。