ゆっくり振り返った先にいたのは、使用人が着る動き易いシャツ,ズボン姿のリオ。手には「聖霊の刃」
「ああ。・・・・・・早起きだな。」
「うん。何か眠れなくなちゃった。」
「そうか・・・。やるか?」
アレスは「風羽」を片手で、リオは「聖霊の刃」両手で持って、当たり前の様に近づき
ブンッカンッカカン!カンカンカンッガリガリガリィブンッカンッカカン!カンカン
アレスの回し斬りをリオがバックステップで回避した事で演習は開始。
お互い、攻撃の癖,戦法,力量を心得ているので、
防ぐ事が出切る攻撃は自然に吸込まれる様に、ソレが出来ない攻撃は寸止めで撃ち込み。
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しばらくして剣戟に数人の観客が集まっても二人は気にせず続けていた。
観客達はその演習をかなり激しい動きに関らず安心して観る。
流石に仮想で、リオが撃つ気弾をアレスが斬り防ぐ事等の動作は理解できなかったが。
そして、お互い居合の外まで出た処で二人の動きは止まり、演習は終了。
「「有難う御座いました。」」
観客は二人が一礼した事で演習が終わった事に気付く。
「お嬢様,アレス様、食堂に朝食が出来ております。」
「うん、ありがと♪」
若いメイドの言葉にリオの返事。どちらも当たり前過ぎて少しも厭味でない。
「・・・わざわざすまない。感謝する。」
「はいぃ〜〜(惚)」
困ったアレスの物言いにその若いメイドはメロメロ。その事にリオは気付きもしない。
それは果していい事なのか悪い事なのか・・・
食堂にはこれから食事のメイドとディ。リオの両親は既に食事を済ませてしまったようだ。
「ディもこれから食事なの?」
「はい、僕も自分の部屋から姉様とアレスさんの訓練を見ていたので。
・・・・アレスさん。」
「ん?」
「もてますね。くれぐれも他の娘にチョッカイを出さないように。もし浮気したら・・・」
「君は小舅か? ・・・俺はそんなに器用じゃない。」
「??? 如何したの、二人とも?」
リオもまさか朝っぱらから自分の事で弟と恋人が火花を散らしているとは思わない。
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リオ,アレス,ディと使用人達の穏やかなお茶の時間は突然破られた。その男の訪問によって。
「お久しぶりです。会いたかったですよリオさん。
・・・き、貴様は、『孤狼』アレスっ!!! 何故、貴様がココにいるっ!!?」
その男はアレスを見て興奮、リオ,ディと使用人達は慌て、アレスは一人冷静。
「随分とまあ懐かしい渾名を・・・。貴様こそ何者だ?人にモノを尋ねる前に名乗るのが礼儀だろう。」
「貴様っ、騎士学校でリオさんと貴様と共に主席争いをした私を知らないのかっ!!?
私はクロード=ギース。この地方の現領主でリオさんの婚約者だぁ!!!」
正確には、主席争いはリオとアレスだけであり、この男はそれ以下で屯(たむろ)していた。
「い、いたのですか(汗)?」
グサッ
「知らん。 ・・・確か、元 婚約者じゃなかったか?」
クロードの目前、アレスの質問に素直に頷くリオ
グサッ、グサッ、グサッ
騎士学校では、二人とも自分の順位には興味無かったのでルームメイト以外知らない。
もっとも、アレスに関してはルームメイトすら覚えていない。
「・・・大丈夫か?」
「クッッッ、貴様何ぞに心配される筋合いはないっ!!
それより何故貴様がココにいるかを答えろ、『孤狼』アレス!!」
「アレス=ルバード、都市シウォング極星騎士団の騎士。同、騎士リオ=クラウスの相棒(パートナー)。
『孤狼』の呼び名は止めろ。他人の戯言を持ち出されるのは不愉快だ。」
アレス圧勝
クロード=ギースは領主とはいえ、騎士学校卒業後どこかの騎士団に所属していたわけでは無いので
騎士の資格しかない。
つまり田舎領主如きでは己自身の誇りが無い限り、アレス&リオより格下。
「・・・・・・(汗)。 そうですね、リオさん、これからの御予定は?」
逃げやがったコイツ。 で、行き成り話を降られたリオは堪ったものではない。
「えっ、え、ええ!!? と、当分、用事は無いかと・・。」
「それは良かった。折角なので、我城で貴方の帰郷パーティーを催しましょう。
明後日、使いの者を来させます。楽しみにしていてください。では。」
本気で帰郷パーティーを催すつもりなのか、
クロードは返事も聞かず強引に話を打ち切ると帰って行ってしまった。
「・・・僕は大人しく家で留守番しています。姉様とアレスさんは楽しんできて下さい。」
「ああっ、ディずるい!! 私だって・・・アレス君どうしよう。勿論、着いて来てくれるんでしょ?」
「俺に聞くな。誘われたのはリオだろう? リオが行くなら俺も行く。
俺はパーティーに着ていく服は持って来ていないから、お前の従者でもするさ。」
「それなら心配しないで。お父様の若い時の服借りちゃおう♪
サイズが合わないところは手直せは大丈夫だから。」
結局、リオは行くつもりらしい。自分で礼服の手直しをするつもりかアレスのサイズを測り始める。
・・・完全に、アレスに自分のエスコート役をさせる気だった。
「・・・それなら俺は剣を綺麗にするか。」
こういうパーティの場合、騎士は礼服に自分の剣を携えるのが礼儀。
準備は順調に整っていった。 疑問が何一つ解消されていないにも関らず。
「・・・何故、ディはパーティに来ない?」
「最近、あそこに行くと気分が悪くなるんです。 みんなは大丈夫みたいなんですけど、僕だけ・・・」