「はぁ・・・・・・団長、無意味に説得力在り過ぎだ。」
結局、今は自分専用カスタマイズのバトルスーツの上から更にマント(無論、特殊)で身を包み、
自分の大剣「風羽」と布で包んだリオの長剣「聖霊の刃」を鞘の上から抱締め寒さを耐えていた。
馬車の中に入らないのは、周りの状況がはっきりせず落ち付かないため。
ここに来て初めて自分が臆病者で、屋敷では寛いでいた事を理解するアレスだった。
・・・誰かが、馬車後部扉から出て来て上がってくる。やって来たのは
「う〜〜、寒いよぅ。アレス君もいっしょに中に入ろうよぅ。 くしゅんっ!!」
やはり、リオ。こザッパリした旅人姿なのに気品が溢れているような気がする。
「・・・俺は今回、御前の荷物持ち兼ボティーガードだからココでいい。風邪引く前に中へ入ってろっ」
「(カチン)う〜〜〜〜、私アレス君に命令される筋合いないっ!!」
リオは四つ這で進み、マントの裾を掴むとアレスの脚の間に潜り込んできた。
「こ、こら!!? 変な悪戯するなバカ。やめろッ!!」
出てきたのはマントの中、アレスの眼前にムクれたリオの顔面ドアップ。
「ぷはっ、私バカじゃないもん。・・・コウすれば二人とも温かいでしょ(微笑)?」
そのままアレスの方に背を向け、自分の背中をアレスの胸にくっ付ける。
「・・・リオには負けるよ。(ぎゅっ)」
・・・・・・・・・・・
当る風で顔が冷えるが、お互いの熱で温まり火照った身体には心地よい。
「・・・最近、私、またあの夢を見るようになったの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私が、ライ団長に助けられた時の夢。でも少し違う。 何が違うと思う。」
「・・・・・・・・・・・・分かるか!」
「ぶぅぅ・・・・襲われているのは今の私、助けに来てくれるのは・・・・・」
「俺はシウォングに来てからの事しか夢に見ない。でも、何時もそこに・・・」
・・・・・・・・・・・
馬車の中 仲むつまじい老夫婦の会話
「お嬢ちゃん、全然戻って来んなぁ、ばあさんや。」
「戻ってきませんねぇ。多分ずっと戻って来ないのではないのでしょうかねぇ、じいさんや。」
「上の若いのとラブラブかのう。青春じゃなぁ、ばあさんや。」
「ええ、若い時の私達みたいにねぇ、じいさんや。」
そして二人は馬車で四日近く掛けてリオの村に到着。
山の上の小城が見下ろす村外れ
降りた二人はリオが先にその3歩斜め後を、荷物を担いだアレスが歩き始めた。
「・・・アレス君、やっぱり悪いから自分の分くらい自分で持つよ?」
「俺は荷物持ち兼ボティーガードだといってるだろ。気にするな。
・・・リオ、俺達、ここで一番大きい家に向って歩いてないか?」
「うん、アレが私の家。」
・・・数十分後、極星騎士団屋敷と規模は同じかもしれないが遥かに豪華な屋敷の門前
「・・・ここ、本当にリオの家か?・・・どう考えてもコレは地主の家だ。」
「いってなかった? お父様、この辺りの地主なの。」
そう行って、リオは門を少し(と行っても大きい門に対して)開けて我が物で入っていく。
仕方がアレスも着いて行く。そうこうしている内に庭を抜け、玄関。そしてドアを開け、
「ただいま。 リオ、今帰りました。」
玄関ホールに響くリオの声。
直に屋敷の中が騒がしくなり、リオは使用人達に集られてしまった。
流石リオというべきか、みんなに好かれている事がよく分かる。両親らしき人物も現れ何か話しこんでいる。
その様子をまるで別世界の様に、離れた所で眺めるアレス。
・・・気付けば一人の少年が隣に立っていた。
「・・・君はあの輪に加わらないのか?」
「構いません。姉様とは後でゆっくりと話すから・・・。お兄さんは、ライとか言う人?」
「ライっていうのはウチの騎士団長だ。俺はアレス=ルバード,リオの同期の同僚。君は?」
「ディオール=クラウス。弟,長男です。ディと呼んで下さい。・・・姉様は本当に騎士に成れたのですね。」
「・・・ああ、俺の大事な相棒(パートナー)だ。」
お互いが同じ匂いを感じるが警戒している為に話が続かない。
そうこうしている内に話し終わったかリオの父親らしき人物がやって来た。
向こう、リオの側では母親らしい人物がオロオロしている。
「ワシはダラス=クラウス,ココの地主だ。君は?」
なるほど、個人を指して悪く言わないライが、毛嫌い理由がよく分かる。
自分の保身のためだけに、臆病で自分より目下の人間に威張り多分地位の高い人間に媚び諂うタイプか?
「私は、都市シウォング極星騎士団 騎士アレス=ルバード。騎士リオ=クラウスの相棒(パートナー)です。」
アレスの凛とした態度にリオの父親はたじろぐ。 直感は正解らしい。
「・・・後、これはお土産です。」
渡された土産を受け取り、袋の隙間から中を確認した父親の顔色が警戒から友好的なモノへ変った。
確か、袋の中身は各種香辛料,銘酒,香水,等々々、都市では珍しくない物。都市シウォングでは。
「う、うむ、君も滞在中ゆっくりと我が家と思って寛いでくれたまえ。直に部屋を用意させよう。」
地位権力に屈しないタイプは苦手か、父親は行ってしまった。
「・・・ごめん、お兄さん。」
自分の親の嫌なところが見えるのか、ディが謝る。
・・・余り言いたくないが、クラウス家の子供達は親の良い所を+して×2で生れてきたらしい。