10日後、リオとアレスは粉雪舞う旅路の人となった。
大型乗合馬車の屋根の荷台、アレスは一人自分達の荷物に背を預け、物思いに耽る。
リオの荷物と ソレと同量、アレスの数回分着替えとリオの新装備 +リオの荷物と同量の土産
リオ出発前夜、深夜にアレスは突然執務室に呼ばれた。
執務室にいたのは、ライ,レイハ,カイン,アルシア,ルー。この面子で良い事があった覚えは何一つ無い。
「夜遅く、突然悪いな。 今、リオは如何している?」
「? ・・・ぐっすりと寝ています(俺の部屋で)」
「オシッ、先ずこれは、お前とリオの新装備・・とお土産だ。明日、お前もこれを持ってリオに付いて行け。」
ドン
そう言って机の上に置かれた荷物。
「・・・話しが突然過ぎて何が何だか分からないですが?」
「だろうな。 さてと、何から話したものかなぁ
・・・昔、俺がリオを助けた事を知っていても、その内容までは知らないよな?」
本人から聞いた事が無いので知るはずがない。
「あの時俺は王都騎士団で邪教集団を追っていたが、
連中、そこの先代領主を誑かして封印されていた邪神を復活させようとしやがった。
まあ実際、邪神というより、具現化した神の一部に人の思念が取り憑いたものだと思うんだけどね。」
「「「「「・・・・・・・・・・・(汗)」」」」」
さすがライ、自分の中に似たようなモノが在るだけあってその辺りは詳しい。
「邪神が「神の花嫁」とか言う生贄にリオを求め、親は使用人の子供を代わりに差し出そうとしたが、
子供のリオはその子を守る為に入れ替わって邪神の成り損ないと戦おうとしたが敵うわけがなく、
沫やという処で、俺達が邪神の手下やら邪神になる前の奴を難とか倒して助けた。っと言う訳だ。
・・・あー、自分で言って訳分かんなくなってきたー。」
ライが言う「俺達」とはこの事件の時、ライを含めた守護騎士団の対邪神班。
「僕が代わりに説明しようか?」
「カインは対邪教班だっただろ?俺が続けるよ。で、何処まで話したっけ?」
「団長がリオを助けた処までです(汗)」
「で、その時俺がリオに対してもった最初のイメージが、親に似合わず出来た娘 だったからな。
あの親が、婚約蹴っ飛ばして家飛び出したリオを許すはずないんだよな。」
「・・・婚約?・・・リオが?」
「ああ、領主の息子とな。・・・・・破談になったらしいから安心しろ。」
「は、はい。 話、続けて下さい。」
「で、少し気になったからレイハに調べてもらった訳だ。 レイハ、結果報告してやって。」
「・・・結論から言うと、何もありませんでした。異常なくらいに。
普通、何もなくても変な噂話の一つや二つ在る物です。例えば、ココ極星騎士団はハーレムだ・・とか。」
話が妙に説得が在り、現実的過ぎる。ライは否定できないところと レイハの視線が痛い。
実際在った 極星騎士団がハーレムだという噂、あえて何処でとは言わないが。
「結局、リオの村の情報は何も手に入りませんでした。いたって平和で平凡な村だという以外。
何者かの意志が働いていると考えても差し支えないかもしれません。」
その事について情報がないということもまた一つの「情報」
「まあ、何も無いなら無いでそれで良し、アレスも楽しんで来い。間、任務扱いにしておくから。」
「・・・任務、了解しました。」
そして、アルシアがズズイッと前に進み出て自分の胸の谷間を探りつつ
「一応念のため、これを渡しておくわ。霊薬(エリクサ−)よん。飲んでもチャンと瓶はとっておいてね。」
そう言って取出したのは4つの小瓶。
霊薬は、服用するだけで体力魔力を回復させ,あらゆる毒の解毒,傷の治癒を促進させる。
しかし、効力に見合うだけの貴重品でありめったに手に入らない代物。
その上、専用の小瓶でなければ直に変質してしまう。それなりに小瓶自体も高価。
「・・・!!? ちょっと待てアルシア。この前の実験、試作霊薬の効力を試すものじゃなかったか?
何で、こんなに直に完成するんだよっ!!!」
ちなみに、霊薬の精製には軽く2,3週ぐらいかかります。
「あらん、霊薬なんて最初っから造れるわ。この前のは霊薬の原料滓にドレだけの効果があるかって実験♪」
・・・・・・・・・(汗)
「・・・で、私は何故呼ばれたのだ(怒)?」
眠いのか機嫌が悪いルー
「意見聞こうかと思って。・・・結局、必要なかったかな?」
「・・・ライ、御主、後で覚えておれよ。」
・・・・・・・・・・・
そして出発前、アレスはライに呼び止められた。
「今回お前達の旅はきっと大変なモノになる。何があっても、無くてもな。もう俺がしてやれるのは忠告だけだ。
自分が信じられない時は、自分を信じてくれる人を信じろ。
自分が信じるモノの為に戦え。例えその時、嫌われる事になっても。
どんな絶望的な状況でも諦めずに行動し続けろ。必ず活路は開ける。
後、何があっても護り抜いて生残る覚悟をしろ。死ねば愛する人が哀しむと知れ。
・・・と俺がいっても説得力ないなぁ。」
それを決めるのは言った本人ではなく聞き手。