ライですらコレだからよっぽどの使い手で無い限り
狂戦士化するのは目に見えている。というわけで「獣皇鬼・砕刃」は封印決定。
一帯の魔獣種の減退を確認し、もう必要ない木杭の塀を片付け、かくして
遅れ馳せながら村を上げて祝勝会を装備の御披露目を兼ねて開く事となった。
大酒樽並ぶ村の広場に村人ほぼ全員が集まり、
村長の長い挨拶に始り、村の浅いながら怒涛の歴史が語られ、
そしていよいよ立役者であるライ達の紹介。
「我々のこれからの発展が約束されたのは一重に彼等がこの村を、村人達を
護ってくれたからといってもいいでしょう。皆様御存知」
司会者の紹介に広場前舞台に現れたのは
制服の様な燻黒銀色戦闘服に燻銀色腕甲、片刃直破壊剣を携えマント姿のライ,
全身燻銀色の鎧に腕に長爪盾,冑を脇に抱え、斧槍を携えマント姿のカイン,
恰も闇の妖精の様に魔導士ローブを腰で締め、ごっつい魔杖を携えマント姿のルー,
袖無彩紫色旗袍服の様な女性用鱗鎧に鏡円盾,凶悪茨鞭を携えマント姿のアルシア。
「こうして一同揃って頂くとまるで騎士達のようです。事実その活躍は
騎士のようでした。ではリーダーのライさん、挨拶をどうぞっ!!」
「え〜〜どうも紹介に預かりました。 もう野暮な事は言いません。
後日の新たな戦いは、仕事は忘れ、今日は命一杯楽しんでくれっ!!!」
それに村人達の乾杯が起り済崩し的に宴会は始った・・・
武装を脱ぎ片付け、ラフな格好で酒を飲むライのところへやって来たのは村長。
「やあ、ライ殿。 楽しんでいるかね?」
対し、手のグラスを上げ笑みを返し
「こんな時に何だが、いや、こんな時だからこそ あの返事を頂きたい」
「あれ・・・あれね。それは皆だけ頼む。俺は訳ありだから」
「3人が3人とも、君が受けるならイイといっているのだが?」
「あ〜〜まいったなぁ。申出は嬉しいんだけどね。
場合によっては村に迷惑がかかるからなぁ・・・」
「ふむ、では返事は当分保留という事で。
いずれハッキリさせねばならぬ時まで・・・」
意味ありげな笑みを残し村長は他所へ。
「・・・・・・もしかしてバレてる?」
「今日の議題だが、「忘れられた地」を征した者達がいる。」
「なんとっ!! あの、魔獣が横行し何者も手出し出来なかった地をかっ!!?」
「うむ、しかも着々と開発が進んでいるとの事だ。
間も無く隣国との貿易も本格的に・・・」
「それだけではない。あらゆる地からその地へ人が集まっている」
「早急に誰か領主を送り込まねば・・・」
剣探しの旅の道中にライが宣伝していた事もあり
以後 各地から若手の技術者達等が続々と集まり急速に開発は進むが
そんなある日の事、王都から武装した小部隊やって来た。
「今後、我々がこの町を護」
ゲシッ!!
「帰れ、間に合ってる。」
こういった連中、中央のやり方はいつも決っている。
折角人々が苦労して開発した土地を外敵から守る等と言い
領主,騎士団などを据え置き、税を取って搾取する。
「き、貴様っ、自警団如きが・・・」
ケリ倒された隊長が見たのは彼等以上に立派な装備の四人。
そして武装した自警団と各々武器を手にした町人達。
「黙れ。全て事が済んでから今更出て来て偉そうな事を言うな。
自分達の場所は自分達で護る、以上。」
「だ、だが、騎士団が・・・」
「必要無いといっているんだ。何なら実際ヤり合い、試して見るか?
俺一人 対 貴様達で。」
構えるライに対して引く部隊。
ここ数年、腕が立つ者達の殆どは己の田舎などに戻り
総司令部以下 軍を構成しているのは戦場を知らない者達が大半。
対し、村側はライを筆頭に死境を切り抜けた者達。端から覚悟が違う。
「こ、この場は一度引く。だが、これで終わると思うなっ!!」
「サッサと帰って上の奴に伝えろ。俺達は何者にも屈しない。
欲しいなら力ずくで来いってなっ。」
退却していく部隊に町人達から歓声が上がる。
「・・・今、俺、完全に顔見られたな」
「もうバッチリ」
「まあ、いままでバレなかっただけ御の字なんだがナ」
「もう反撃に回ってもいいんじゃなぁい?」
「・・・ああ、さらば我平穏の日々よ(泣」
何事も無く十数日が過ぎた。だが再びより武装した部隊が来訪した時、
それに付いて来たのは完全武装の虹凰騎士団。
向い合う、王都側虹凰騎士団&部隊とライ達を先頭に町人側。
「貴様、謀反人『ライ=デステイヤー』だな」
前と違う気配に、ざわめく町人側。
「・・・・・・ふぅ、端っから俺を逮捕するつもりなんだろ。
なら いっそうの事、貴様等を皆殺しにして また逃げるか?」
「おもしろそうだナ。祭りか?」
「本当に悪者になっちゃうのも悪くないかしらぁ?」
「僕も付き合うよ」
構えたライに並ぶ3人。
「貴様、抵抗するかっ!!?」
王都側がざわめき武器を構える。それに町側も
「おっしゃぁーっ、中央と戦争だぁっ!!!」
「やぁーってやるぜいっ!!!」
「き、貴様等、邪魔するなら切り捨てるぞ(怯」
皆が皆、手の得物を構えやる気満々。
「それじゃあ意味ないだろうが。俺等だけが立ち回れば・・・」
「ここで恩人のライさんを見殺しにしちまうはずないだろう?」
その叫声に次々と応声する町人達。何処をどう見ても王都側の方が旗色が悪い。
ここで特殊部隊なら卯も言わさず攻撃するのだろうが、生憎彼等は真っ当な部隊。
衝突が避けられそうになくなったその時、後から出てきたのは元村長 もとい町長。
「私はこの町の長だが、我町の騎士を逮捕だとは一体どうゆう了見かな?
いくら中央と言えどそんな横暴は許されませんぞ。
そちらの上官と直接話をさせていただきたい。」
それに出て来たのは女騎士クリスティン。
先の事もあり直接対決したくなかったのだろう。場合だけにそうもいかない。
「私が虹凰騎士団騎士団長クリスティン=リ=ラプレス。
彼が・・・ライ=デステェイヤーがこの町の騎士と言うのは本当ですか?」
「うむ、このライ殿は町の騎士団長。幾ら「王都」と言えど、
おいそれと連れて行かれては困りますぞ。それ相応の理由があったとしても」
「勿論です。いずれ王都から正式な召喚状が来るでしょう。
その時は、ライ殿が王都へ頂きたい。この町の騎士団長として。