創世紀末、神々の戦争が最終局面を迎えた頃に第三の勢力が現れた。
そこには神のみではなく竜も天使も、そして地上の生物達もいた。
群を守る為,愛する者を護る為、絶対者に逆らう意志を発現させた者
神の奇跡を受け付けず、竜,天使同様に神の命を奪う者
神威、その個体が群に在するだけでその群も神に叛く事が出来る。
そのため神々は決着付ける事無く天への帰還を余儀なくされ・・・
蜘蛛女神の神殿への道は誰に知られることなく封印,閉ざされたが、
「・・・これ如何しよう?」
ライ達4人の目の前、ドンと積まれた蜘蛛女神の糸。
幸いルーの縮小魔法を受付けた為、その量にも関らず簡単に持ち出せた
まではよかった。 しかし村人程度では加工出来ない。
結果、ライの家で野積み状態で占領。
「私の知る限り、ライの望む通りにコレを加工出来る奴は一人しかおらんナ」
「奇遇だな、俺も一人だけ心当りがあるけどぉー―、量と其処までの道程がなぁ(悩」
野積み山の蜘蛛女神の糸・・・
例え一人分でも、可也の体積になる糸の塊を持っていくのは骨が折れる。
それに折角そこまで行くなら持って行きたいモノもある。 故4人の得物。
姉妹二人のモノはただ異常が無いか見てもらうだけで良いが、
刀と斧は完全に破損し修理しなければ使い物に成らない もとい
この破損したままでは余りにも哀し過ぎる。
「何、そんな事ならイイ方法があるゾ (ニヤリ」
「???」
「あらぁ、折角 名鍛冶師の所に行くなら私の頼みも聞いて貰えないかしらぁ?」
「・・・なんでそこで媚びるかね?」
「・・・アルシアだからね」
「・・・私の頼みを聞きなさいっ(ぴしっ)!!」
「・・・なんで女王様モードになるのかね?」
「・・・アルシアだからね」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「と、言う訳なんだけど、頼まれてくれないか?」
「行き成りやって来て何を言っている、小僧」
まあ結局、鍛冶師ブラミスに相談するしかない訳で
ライ一人、ルーの用意した魔玉×2をもって速攻やって来た。
持っていく事だけを考えれば使い捨ての魔玉化も便利である。
一つの中身は勿論、ブラミスに見てもらう物 全て。
「じゃあ、やらないのか?」
「誰がやらないといった? これだけのシロモノを見せられて
ワシが黙って帰すと思ったか(ニヤリ」
「そうこなくっちゃな(ニヤリ」
「あらあら、まあまあ、お茶入れなおしましょうか?」
「あっ、済みません。お願いします(ペコペコ」
「うむ、頼む(グイ」
やはりスイさんがいると折角の渋い雰囲気ですら一撃粉砕され
和やかになってしまうようで・・・気を取り直し
「小僧の要求は、得物四本の修復,メンテナンスと小僧様の戦闘服
それと女用の鎧でいいな?」
「おう。で、俺の戦闘服だけど・・・」
ライはブラミスへ戦闘服についてのアイデアを全て話し
「・・・フム、小僧の割りにイイ考えだ。小僧のはその方針でやってやろう。
それで、小僧のコレの鎧だが」
ブラミスが言う「小僧のコレ」とは勿論、アルシアの事。
「あ〜〜渡したサイズ通りで、後は適当でいいや」
「そうはいくか。造る以上その小娘だけのモノを造る。
その小娘の使う得物,性格,見た目、全てを詳しく話せ」
やる気になった職人を誰も邪魔は出来ない。
渋々ながらアルシアを頭の中で詳細にイメージし、それを伝え
「随分と癖がある娘だな(汗」
ライもそう思う。
ブラミスのアルシアの呼び方が「小娘」から「娘」に変った事を思うと
頭の中に女王様のイメージは出来たらしい。
「・・・っと、最後にコレは何処に設置すればイイ?」
とライが示したのはもう一個の魔玉。入っているのは或る魔方陣を描くための魔法。
「よこせ。それは此方でしておこう」
確かに。ものがものだけに使わなくなるまでずっと場所を取るため
そこに住む人が自身の都合のいい場所に設置したほうがいい。
後は全てブラミスに任せライは村へ速攻帰った。
夜間強行最短直線旅路のため、滞在(半日)往復合わせ十数日。
更にライの帰還から十数日後、ルーの元にその連絡が来、
床一面、魔方陣が描かれた空家に4人が揃った。
ルーが受けた連絡とは向こう側の魔方陣に荷物が設置されたというもの。
向こう側とは無論、鍛冶師ブラミスの処。
魔玉に封じられていたある魔方陣とは物質転送用のものだった。
これの御陰で態々重い荷物を運ばずに済む。転送成功のため一応重量制限はあるが。
「じゃ、始めるゾ?」
ライの頷きにルーは詠唱開始。それと共に魔方陣が発動し・・・光柱が上り
入れ替わった向こう側の黴臭い空気と共にドンと木箱が物質化した。
「お〜凄いな、コレ。コレで一々旅せずに済む(悦」
「やめとけ。コレはナマモノの転送は出来んからナ、やったら死ぬゾ」
「・・・・・・(哀」
木箱の中身は、揃いのマント4人分+α,注文通りライのための戦闘服,
アルシアの為のチャイナドレスの様な鱗鎧 銘は「艶龍鱗」
「・・・俺のは銘無しか」
「おーほっほっほっ、残念ねぇライ。 これ似合うかしらぁ?」
銘が無いくらいで誰が悔しがるか。
そして残りは綺麗に磨かれた故姉妹の得物二本と
「・・・太刀?」
「鬼哭」よりも更に強い気を放ち、ライの身長と然程変らない頑丈な造りの大太刀。
同封の手紙を読んでみると
「何々? 二本を単に復元なんぞ非常につまらん。
だから合わせて一本の刀にした? 銘は「獣皇鬼・砕刃」
追伸 ワシが注文通りに仕事すると思ったか、小僧。
・・・・・・じ、ジジィー――――――っ!!!」
割増の闘気に一瞬プッツン。
「こ、こんなモノ、危なっかしくて誰も使えないじゃないかっ!!」