∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 04 ■
----------------------------------------------------------------------------------------------------


木柵の外、村前には細長い広場がある。それが各路に通じているのだが、

その中央に一人 重装戦士カインがいた。

(・・・向い1時,9時,4時方向の順に間を置くことなく同勢力が接触します。)

「うん、ありがとう。」

聞こえる精霊戦乙女ヒルデ=ヴァルアの声。

カインの四聖獣の武具の特殊な力は武具そのものが有する力であり、

その管理者である戦乙女ヒルデとそれほど密接な関係はない。

だからこそ白虎牙が無くとも戦乙女ヒルデは健在なわけなのだが、それはさて置き

この武具を有する最大の利益は戦闘時に戦乙女ヒルデが憑いてくれる事にある。

つまり戦闘のナビゲーション。

「観客は君一人だけだけと、それだけで僕には戦う価値がある。」

カインの独言に戦乙女は応えてくれない。

月天の下、押寄せる魔獣の群れにカインは凰翼を構え戦いは始った・・・

 

一体、何体魔獣を斬っただろうか・・・カインと村表の間、幾つも倒れる魔獣の骸。

カインが位置を変えずとも居合は広い+斬撃による衝撃波で広場横幅は覆える。

直接向って来たモノ,無視し村へ向うモノをただ斬り続け、

玄武甲により直接的なダメージは無くとも、疲労により攻撃威力低下は否めない。

不意に、

(6時方向 村より攻撃魔法、来ます)

と、ヒルデの声と共に夜空に上がる光の玉。それが十分な高度に達すると同時に

爆っ!! 轟轟轟轟轟

破裂し、広場に無数に降り注ぐ焔の矢。

撤退の合図であるルーの攻撃魔法なのだが、それはカインも巻き込み

「ルーも無茶してくれるね・・・」

(武装,カイン貴方ともに直撃によるダメージはありません。

・・・さらに12時方向より無傷の魔獣勢力、来ます。)

今ので一体の魔獣は片付いたが土煙の向う、

その無傷の勢力は既に視界に入っている。

「まったく・・・柄じゃない事はするものじゃないね。」

(・・・・・・・・・)

今撤退してもその魔獣と共に村へ入ってしまうのは確実。

気を取直し凰翼を再び構え、それを確認したか村は半球状の結界に覆われた。

「流石魔女、薄情・・・」

漏らしつつも本当に薄情とは思って無いし、ルーの力量は認めている。

ルーもカインなら自力で生残るだろうと判断したからこそ結界を張った。

尖兵の大口を開けて向かって来た魔獣に対し、

斬ッ!!

「っ!!?」

撃後、両断されたソレの向うからやって来た魔獣が

瞬間 無防備になったカインに襲いかかり、胴に噛み付き押し倒した。

「女の子に押し倒されるのはイイんだけどね」

と腕に装備した龍爪でソレを切り裂いたまでは良かったが、動けない。

その上、やって来た魔獣に次々と踏まれ蹴られ

「・・・いやはや、ついてない」

コレだけの攻撃を受けても酷いダメージは無いものの、もう動く気にはなれない。

もっとも動かなければ返り血に匂いが消えているカインは見逃してもらえる。

(・・・強力な一個体が接近中)

「強力な一個体? ・・・どれくらい強力かな?」

(・・・恐らく、私達に匹敵すると思われます)

強力ではないとは言え魔獣群+カインに匹敵する一個体。

つまり結界が持たなくなり、村が・・・。

「ふぅ、随分と僕も人が良くなってしまった。ライに毒されたかな・・・」

再び起き上がったカインに対し襲いかかろうとする魔獣群。

(来ます)

「っ、早い!!」

だが、ソレに散ったのはカインではなく

「間に合ったかっ!!」

「・・・ライ、君という男は・・・本当に良いトコロを奪ってくれるね」

「減らず口を叩ける様ならもう小半刻程遅れても大丈夫か?」

両雄、二人の前の魔獣群。

一騎当千が二人協力するだけでその戦力は相乗的、大幅に上がる。

例えそれが戦闘と強行軍に疲れた二人であっても・・・・・・

そして夜が明けた。 

暁の勝者はまたもや二人。

「「・・・・・・・(疲」」

脚を投出し背中合わせに座ったまま無言でピクリとも動かない。そこへ

「おおおおっ、ライ〜っ!!」

先陣を切ってテッテッテッと駆けて来るルーと

その後を笑みを浮べつつアルシアが追う。他にも村人達がちらほら。

そのままルーはライにタックルを掛け

「うわっ、オマエ、クサっ!!!」

抱き付くや否や力一杯突き飛ばし離れてしまった。

「そりゃ、急いでいたから帰りは一度も身体洗って無いしなぁー―」

ライのその一言に何時の間にか背を預けていたカインまで距離を取って・・・

「血で汚れる段には一向に構わないんだけど、やっぱりね?」

「カイン、お前な〜〜〜」

「はい、これ。二人とも綺麗に身体をからって帰ってきてねぇ」

と、アルシアが投げ渡したのは石鹸

「・・・折角急いで帰ってきたのに汚物扱いですか?」

「何で僕まで・・・」

「だって二人とも返り血塗れじゃなぁい?」

御尤も。

すったもんだありつつも二人とも装備の内外を新品同様に綺麗にし、

朝っぱらから広場で 建前 ライの祝還会と言う名の祝勝会で

「・・・取り敢えず俺、飯食ったら寝たいんだけど。」

「同じく僕も・・・」

「そう言うナ。御主の見せろ、コノ」

既にルーさん酔っていらっしゃるようで頬が真っ赤。

誰だ? 幼女(注:外見)に酒渡した奴はぁ?

ルーは勝手にライの得物「神狼牙」,「龍腕」を奪い、分析して

「・・・ほっほー、凄いなコレ。組織がまるでモノホンの生物みたいだぞ。

まったく御主の一部だナ。 どこで見つけてきたコンナ代物?」

「んや、鍛えさせられた 剣の方は。 腕甲は鍛冶師のオヤジからのプレゼント」

「プレゼント? ・・・もしかして、そのオヤジの名は」

「ブラミス。 知り合いか?」

「はぁー―、世の中狭いものだナ。私の魔杖もあの頑固オヤジのオヤジが造る時

その場に立ち会わされたゾ。 まあ、御陰でサイコーの物が出来たがナ」

可也大昔の話である。

「ふぅ〜〜ん。・・・そう云えばカインの装備、凄くないか」

「ん、まあね」

ライと同様のカインの反応もまた何処吹く風

「ちょっとライ、私のも見て頂けるかしらぁ?・・・」

アルシアの自慢話に二人ともうっつらうっつらと舟を漕ぎ、

もう聞いちゃいやしない。


----------------------------------------------------------------------------------------------------


■ EPISODE 04 ■

Copyright 人丸2022
HITOMARU All right reserved



----------------------------------------------------------------------------------------------------