∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 03 ■
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会議室、基

ライの家にライとその仲間,村長,村の守りの主となる人々が集まった。

人数が人数だけにその中でも更にリーダー格の人間がある地図を中心に円陣に座り、

さらにその周りに残りの人が立つ状況。

「忙しい中、集まって申し訳ない。行き成りだがコノ地図が何か分かるか?」

村周辺の地図の模写なのは一目瞭然。

だがソレを更に幾つも色分けされ・・・村とその周辺は無地。

「色の境界線は道?」

後ろから掛る声。ソレに頷く一同。

道とは人が森を切り開き作った舗装の道。それ以上、開発は進んでいないが。

「その通り。因みに村周辺の色のついていないところは俺達人間のテリトリー」

ということは色毎に種の違う魔獣ということになる。

「・・・この地図が何か?」

村人達の疑問はもっとも。ライ達が何を言いたいか解ろうはずもない。

「俺が初めに疑問に思ったのは何故魔獣が都合よく襲ってくるかということ。」

「・・・魔獣は人を襲うモノだろう?」

「それは結果論。コレは俺の推測だが、元々魔獣は種毎にそれぞれ競合い

拮抗していた。そのバランスを崩したのが境界をハッキリさせた俺達人間。

道は全てこの村に続いているからなさぞかし襲いやすかっただろうな」

「アンタ、それは村が魔獣に襲われるのは自業自得だといいたいのかいっ!!」

どんな友好的な人の集まりであろうと、新参者を快く思わない人々がいる。

その幾つかあるグループのリーダー、血の気の多いアーチャー娘。

「・・・太古、神の時代、魔獣なんてモノは存在せず精獣が身近にいたと言う。

しかし、神が姿を消し人が栄誉を極めた時代に魔獣は現れ、人を襲いはじめた。

魔獣は・・・自然が生み出した人への対抗手段かもしれない。」

ざわめく室内。

「このまま魔獣に滅ぼされてしまえっていうのかっ!!!」

「まさか、俺はそんな事を言うつもりはないよ。まだ死にたくないし。

これは戦争だ、俺達人間から仕掛けたな。魔獣との和平は有り得ない。

あるのは生か死か、殲滅か全滅か・・・二つに一つだけ。」

ライの口調はまるで夕食のおかずはどっちかしかダメといった感じに穏やか。

「・・・何故、そんな事を?」

「魔獣に怯え開発は進まない。今のままだとジリ貧だからさ。

俺は結構せっかちでね、まどろっこしいのは嫌いなんだ。

事態を進展させるには魔獣を滅ぼすしかないということ。」

「ア、アンタの言っている事が、この地図が正しいと言う証拠は何処にあるっ!!」

「行って確かめてみればいい。」

「そんなバカ事出来るはずないだろっ!!」

「俺達は実際やった。」

その一言に室内が一気に静まり返った。

昼間とはいえ、森に深入りすれば魔獣が跋扈し危険。

夜に至っては普通の時でも村周辺には魔獣が現れる。

しかし、村人達にはライの行動に心当たりがあった。

深夜に棍を何本も持って姿を消し、明け方近く魔獣の返血塗れで帰ってくる。

その時に棍はほとんど持っていない。

ライだけではない。カイン,ゴリアテも偶に明け方近く返血塗れで帰る事をする。

「・・・結局何が言いたいんだね?」

「別に、いずれその時が来たら覚悟を決めろって事。」

一体何の覚悟・・・

「あの・・・一つ質問いいですか? こっちの空白は何でしょうか?」

恐る恐る別の村人の質問。

地図上にある村から遥かに離れた地点、山の麓ちょっと上がった所。

殆どの種の領域が其処に接してる半ば円状の空白。

同様の疑問は他の村人もあったが、聞ける雰囲気ではなかった。

「・・・色んな奴がいて如何にも判別出来なかった。」

「魔獣の凄い奴になると他の種の卵をポロポロ産む奴がいる。

ソイツがココにいるんだろうナ。 さしずめ、魔獣の聖域か?」

ライにあっさり応えるルー。意外と全て予想範囲内なのかもしれない。

「そいつが御大か・・・。ボス格は俺達で如何にかする。

ただその後の殲滅戦になった時、村人も討って出てもらう。

未来が欲しけりゃ己で勝ち獲るしかないんだ。・・・もう御託はいいかな?」

ライのおどけた態度がソレが決して夢物語ではない事が解る。

そしてライの言いたい事が終った以上、村人がココにいる必要は無かった。

だがそれでアーチャー娘が納得出来るはずが無い。

「アンタ、一体何を企んでいる。」

「さっきいった事そのまま。それ以上でもそれ以下でもない・・・かな?」

「・・・何を企んでいるか知らないが、絶対化けの皮はいでやる」

で、行ってしまった。残るはライの仲間の面子のみ。

「・・・・・・なんで突っ掛かってくるのかね?」

「余りにも順調に行き過ぎているからじゃないかしらぁ?」

「まあ、健全は反応じゃないかな。」

「諸手上げて歓迎されるよりかはすっきりしてていいけど・・・

それでも、あそこまで嫌わんでもいいと思うけどなぁ。」

「なんだライ、あんな気の強そうな娘が好みなのかぁ?」

ルーといい、アルシアといい・・・周りにいるのはやたら気の強い娘・・・。

「それは置いといて、ボス格とヤり合うには如何しても戦力が足りない。

だから暫く武器探しの旅に出でたいと思う。出来れば俺一人で」

どの種でも何体かボス格が存在する。このボス格を始末できれば

その種自体を一気に弱体化出来るが、そのためには戦力が足りない。

つまり、手持ちの武器ではボス格には対抗出来ない。

ルーの極破壊魔法を使えば一発なのだが、同時にそこにある資源までお釈迦。

結局、個体撃破。

そしてこの武器探しの旅、ライが攻勢に出る。故に後は気にせず護りはいらない。

ただ、攻めて攻めて立ち塞がるモノは撃ち貫くのみ。

「じゃが、その間の村の護りはどうするんじゃ?」

夜の魔獣の総攻撃の時、正直ライ,ゴリアテ,カインで前衛は一杯一杯なのだ。

前衛なしで最小限以上の犠牲は否めない。

「それについては策がある。 アルシア、魔獣が襲いたくなる匂い作れるな?」

「ええ。でも、そんなのでどうするのぉ?」

「簡単、ボス格にぶっ掛けてやるのさ。それで一年・・・否、半年は稼げる(邪笑」

魔獣の順応性も計算に入れ半年とは言ったが、それでも過小評価かもしれない。

「何であれ、直その準備は始めた方がいいのう。」

嬉々とするゴリアテ。性格的に功性、護りだけというのは向かない。

アルシア指示の元、早急かつ慎重にそのフェロモンの生成は進められた。

何せ、代物が代物だけに匂いが外に漏れればとんでもない事になる。

それなのに・・・

アルシアの家、壁一面に様々な種の薬品瓶が並ぶ棚が占める。

それとは別に部屋の一角を占領する同種の貴重なガラス瓶数十本。

口を蝋漬で完全密封され・・・中身は例のフェロモン。

「・・・やっぱり良からぬ事を企んでいるんだ」

アーチャー娘がそこまでライに盾突く理由。気に食わない、単にただそれだけ。

自分達の苦労を無駄にするかのように問題をさっさと解決していく。

だが世の中そう巧くはいかない。 だから一本盗み出し・・・

昼間 雑用で働くライに、不意に

バシャッ

「!!?」

頭から叩き付けられる液体。香り立つ独特の香り。

「アンタ、何でも自分の思い通りにいくと思うなっ!!」

「・・・貴様、自分が何をしでかしたか分っているのか」

怒りを通り越して、もうそのアーチャー娘に構う気すら起きない。

取り敢えず通りかかった村人へ

緊急にアルシアに例のモノを掛けられたと伝え仲間を呼んでくるように頼む。

被害を拡大させるわけにいかないためライは移動する事も適わない。

それを見てあざけ笑うアーチャー娘

直にアルシアが中和剤を持ってやって来たが、

同時に近くにいたのか大型犬以上のサイズはある甲虫型魔獣数体襲来。

真昼間から堂々と魔獣が横行する有り得ないその出来事にざわめく村。

フェロモンを相殺しても既に遅く、ライに対してのみ執拗に

「ライッ!!」

「行け、アルシアっ!! ちっ、このっ!」

襲い掛かる角や爪を右へ左へ交わし避けるが、

得物なしの攻撃で有効打が与えられないため所詮時間稼ぎでしかない。

アーチャー娘は娘で自分がしでかしたことを自覚したのか

乱闘から少し離れた処で腰を抜かしたまま動けない状況。

数だけにライは瞬く間に傷塗れで動きが鈍くなる。

心を狙い突攻して来た魔獣の角の前にライは避け切れず、

無理でも受止めようとした瞬間

ドンッ!!

横に吹っ飛ばされた。

見れば、入れ替わりに魔獣を受止め、その鍛え上げられた背 中央から生える角

「ご・・・ゴリー――っ!!」

メキッメキャメキャ

絶叫に、腕の中で魔獣は抱き潰され、

立つゴリアテを狙う魔獣を咄嗟に地に捨てられた獣皇砕を拾い

斬っ!!

両断。慣れない物とはいえ得物を手にしたライに魔獣達は敵ではなく・・・

ルー,カイン,アルシアが駆け付けた時 既に事は終り、其処に立つ影はたった二つ。

「なんでだろう・・・全然哀しくない。 寂しいのになぁ・・・」

獣皇砕を手にライが漏らした一言で仲間はゴリアテが逝った事を理解した。


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■ EPISODE 03 ■

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