あれ以降、ライは変装をやめた。
俺の首を獲りに来るがいい。何者の挑戦もうけてやろう。
完膚なきまで叩きのめす。だが殺さない。何度でも攻めて来るがいい。
何度でも叩き潰し、完膚なきなで打ち砕く。
そんなある日
「お願いします傭兵の方々、我々の村を助けて下さい。」
「いくら出せる?」
「え?」
「肉や野菜,酒で誤魔化そうとするなよ。それなりの額を用意しろ。話はソレからだ。」
「え? え?」
「当然だろ。コッチは赤の他人のために命張っているんだ。
第一人に頼ろうなんて甘過ぎる。自分の家族を自分で護らなくて如何するんだ。」
「あ、相手は山一つ一瞬で消してしまう「漆黒の魔王」とその配下,下僕達なのです。
そんなのを、私達で如何にか出来るはずありません。」
「・・・「漆黒の魔王」・・・多分、魔導師か。 尚更に尚更、手におえない。
奪われるのが嫌なら逃げろ。」
「私達にはもう逃げる事すら敵いません・・・」
「そんなのでよく、傭兵を雇おうだなんて思ったな。甘い。甘過ぎる。 諦めて死ねっ!!」
「うっ・・・(泣」
結局、4人の野営地にやって来た近所の村人はライの突付けた現実に消沈して帰って行った。
「で、結局助けるんだね。」
「捨てて置けないだろ。 それにこれが俺達の仕事だ。
今から偵察に行って来るから留守頼む」
あれ以降、ライと周囲の人間に壁が出来た。
「相手が魔導師なら私の力も少しは役にたつわねぇ。付いて行ってもいいかしらぁ?」
「・・・勝手にしろ」
しかし結局、砂の壁。非情になりきれない。言葉はキツくなってもする事は変らず・・・・
深夜、ライとアルシアはその城がある小山の麓の森までやって来た。
直近くには助けを求めに来た村人の村がある。
「・・・もう結界か。」
「そうねぇ、「魔導封じ」かしらぁ?」
「・・・ん〜〜分らん。 明日一度攻めてみるか」
そして翌日、ライ達は迷い込んだ冒険者を装い、攻めてみた。
・・・惨敗だった。
正確には、森の結界内には俗霊魔(死霊と低級悪魔の中間の存在)がうろつき攻撃してきた。
「魔導封じ」の結界が働いている中にも関らず。 現にライとアルシアは魔法が使えなかった。
俗霊魔撃退には魔法が不可欠。
それで卯も言わずみんな揃って怪我する前に退却。
そもそも魔法とは、精神力と魔力を用いて魔導回路(魔方陣)を形成し何らかの作用を起させる。
「魔導封じ」の結界は魔力を拡散させ魔導を成立させなくするモノ
だから、魔力の塊といえる俗霊魔が「魔導封じ」の結界で存在出来るはずがない
のにいるということは、任意の存在に魔素が集中する・・・
要するに、半端じゃない魔導師がいるはずということ。
「の、割にはする事がちんけなんだよな。」
「普通の野盗が遺跡とかを利用しているんじゃないのかな。」
「ワシはぁ分らん。御三方に作戦はまかせるわい。」
そうゆう頭脳戦に関しては初めっからゴリアテはアテにしていない。
「結局、村の人に話を聞くしかなさそうねぇ、ライ」
アルシアの笑みにライは苦い顔をするしかなかった。
村人の話を纏めると
「漆黒の魔王」は随分昔から存在した。しかし実際、村を襲い始めたのはここ最近・・・
そして「漆黒の魔王」と対になる存在「沈黙の魔女」の話。
同様に随分昔から存在し、迷いの結界が張られた森に館を構え住んでいるという。
「・・・一度、その「沈黙の魔女」とやらに会って見るか?」
「なんであれ、現状打開ぐらいにはなるかもしれないね。」
「今回、私は無力だから貴方達に任せるわぁ。」
「・・・z・・・z・・・z・・・」
「「「・・・起きろっ!!!」」」
「ぐはっ!!」
こうして一同はゴリアテを叩起こし「沈黙の魔女」の元へと出発した。
が、
「・・・同じ所、グルグル回ってるよな」
ライの言うと通り、朝 森に入ってからずっと、もう日が暮れかけになっているのに
一同は同じ処を歩いていた。
何故なら目の前の樹が、アルシアの付けた印(口紅)塗れ。
「どうしたものかな。如何するライ」
「なぁライよう。今回は諦めんかぁ?」
ぷちっ
「聞いているか、沈黙の魔女っ!!! 貴方に助力願いたいっ!!!」
突然のライの絶叫に驚くメンバー。
で、さらに驚く事にライの絶叫に応え 割れる森、出来る一本の道。
「初めっからこうすりゃよかった(怒」
いや、普通はそういう発想にはならない。呆れるしか出来ない一同だった。
その館の一室、ライ達の様子を観る者,館の主がいた。
よくもまあ一日中飽きもせず・・・
「聞いているか、沈黙の魔女っ!!! 貴方に助力願いたいっ!!!」
・・・ここで観られていると発想、否、気づくとは。・・・暇つぶしに丁度いい。
その者の合図で館までの道を示す森。
「初めっからこうすりゃよかった(怒」
館の主は笑った。
今まで彼女を求めて来た者は数多くいたが、こんな反応は初めて。
恐れず謙らず本音を出しまくり
これは一体どんなおもちゃになってくれるやら・・・
森の中に立つ館。樹々とそれ以外他は何もない。
ゆっくりと開く玄関扉。出向えたのは
「当館によくいらっしゃいました。私、沈黙の魔女、様に仕えるルーといいます。
話しは明日聞かれるそうなので、今日はここで御休み下さい。」
フリフリのメイド服に身を包み、腰辺りまである長い髪を無造作に背中で纏め、童顔
その手の人間なら一目で襲いかかりそうなロリ美幼女メイド。
「か、かわええのぅ・・・」
今ココに気を抜けば襲いかかりそうな筋肉大男。それは無視して
「その申出は有難く思うが先に用件だけは言っておく。「漆黒の魔王」とやらが暴れている
が、奴の居る周囲には結界があるから手におえない。だから助力願いたいというのが用件だ」
「・・・・・・・・・・・では此方へどうぞ。荷物はゴーレム達に運ばせますので」
一瞬、間があったもののルー美幼女がライの物言いに全く怯えた様子は全くない。
ルーの言葉と共に出て来たルーより少し大きめの可愛らしい(?)ゴーレム
見た目からして荷物運び作業用か?
沈黙の魔女がライ達を憚ったところで何のメリットもない。だから素直に荷物は渡す。
そこそこに美味しい夕食,美味い酒。
すべてゴーレム達が準備するのかルー美幼女は片時も離れない。
そのルーをずっと膝に乗せ至極満悦のゴリアテ。たわいもない世間話で時間を潰し
「ルーちゃん、今夜はワシといっしょに寝んかぁ?」
「えー、どーしよっ(プリプリ)」
「お楽しみの処悪いけど、そろそろ寝たい。」
「では直、案内させます」
館に入ってから感じる違和感はまだぬぐえない。危険とかいうのではなく・・・
ゴリアテはそんな事より美幼女を触り捲れて嬉しそうだが。
そして一同はゴーレムに案内されそれぞれ別々の寝室へ
「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・z・・・」
うも言わずライは眠りに落ち・・・