「あ〜〜つれぇ〜 この間の事といい・・・最近キツイなぁ。
何で人はささやかな幸せで満足しないのかねぇ」
「本当に、ささやかな幸せで満足しないのかな?」
「・・・カイン、貴様が言うと全く説得力ねぇ。 それ以前に何でここにいる?」
「そんなつれない事いわないでくれよ。君と僕は見も心も・・・ 今日は僕も、君と同じデスクワークさ。」
ある麗かな午後、休憩室でダベるライとカイン。
ライがデスクワークに疲れ果て休憩室に来たところ、同じくカインもやって来たのだ。
ライもカインが鬱陶しいなら他所へ逃げればいいのだが、困った事に
自分のギャグに、打っては響くように返って来るその反応が心地よい。
「あ〜〜、天気もいいし、ここまま更けようかな・・・ カインも一緒に更けるだろ?」
「どうかな。仕事はサボるべきではないと僕は思うよ。じゃっ(シタッ)」
あっさりとカインは行ってしまった まるでその場から逃げるように・・・
「なんだ? いつもは乗るくせに・・・・・・ふけるか。」
「・・・それは困る。私の部下管理能力が問われてしまうではないか」
「うをあっ!!? ど、ど、ど、どこから沸いて出てきたっ!!」
若くとも歴戦の戦士であるライの背後を取り全く気づかせない。流石、オヤジでも王都騎士団長。
「ふっ、仮にも私は王国最強の騎士と言われた男だそ?
若いものには未だマダまだ勝ちを譲るつもりはない。
ライ、デスクワークに疲れてきたようだな。」
「疲れてない疲れてない疲れてない」
「そんな御前に任務を与えよう。」
「いらない、いらない、いらない」
「神殿から薬草取りの手伝いに一人出してほしいと話が来たのだが・・・」
「行きたくない、行きたくない、行きたくない」
「若い神官の娘を一人で『森』に行かせるのは忍びないとの最高司祭フェフの親心だ」
「・・・・・・・・・チッ」
最高司祭フェフ、聖母の異名を持つ女性。オーディスと昔イイ仲だったとの話があるが
現在に至るまで二人とも未婚。 二人とも仕事と結婚し、部下が子供みたいなもの。
それはともかくとして、
ライはこの最高司祭フェフが苦手であった。
嫌いというわけではない。はっきり言って好感が持てる部類に入る。
ただ、彼女のそばは心地よすぎる。 それは子が親に感じる居心地の良さ。
その上、彼女の『お願い』は断り辛い。 『お願い』事態は大したことはないのだが、
それを断ると、少し悲しそうな表情で「かまいませんよ」と謝るところが良心を酷く苛む。
ちなみにオーディスが困ることは一向に構わない。
残念な事に大抵オーディスが困る事はライもそうなのだが。
「で?」
「ん?」
「その任務受けるって言っているんだ。さっさと詳細話せよ。」
「うむ、そんなに気負う必要はない。 内容は軽い身辺警護と荷物持ち。
要は普通に三日程、彼女に付き合えばいいだけの話だ。」
「それだけ?」
「うむ、それだけだ。 たまにはこうゆう楽な任務もよかろう。 後、出発は明後日,待ち合わせは・・・だ。
先方は御前を知っているから時間にその場所で待っていれば問題ないだろう。」
余りにも話がうま過ぎる。 例えば、その「若い神官の娘」が気○い・・・とか。
でも、神官である以上そう的外れとも思えない。それに最高司祭フェフからきているので信用もできる。
「むううううぅぅぅぅ・・・・・・(悩)」
「では、よろしく。」
ライが悩むのをよそにオーディスはさっさと行ってしまった。
どうやら彼の中でこの任務をライにさせることは決定事項だったらしい。
「ふぅ〜〜〜、まっ、いいや。 如何にかなるだろ。」
最近、行き当たりばったりの生活に完全に順応してしまったライでした。
当日早朝 待ち合わせ場所、傭兵スタイルで待つライ。
後はその「若い神官の娘」とやらと合流して馬でサッサと出発するだけ。
なぜ王都守護騎士スタイルではなく傭兵スタイルなのか。それは『森』の環境に対抗するため。
守護騎士スタイルは硬いが俊敏性に欠ける。その分、傭兵スタイルは硬さはともかく,俊敏性に申し分ない。
普通の森に紛れこむように存在する『森』は妖獣,怪物,怪奇な植物が跋扈し、立ち入りは危険きまわりない。
尤も、普通の森と『森』の境界は容易に分かるのだが。
困ったことに『森』が危険である分、その内には貴重なモノを多く内包している。
目の前を行きかう人々、それを何をするまでもなくボ〜っと眺めるライ。その前を何者かが立ちふさがった。
多分同年代の若い女性。漂ってくる香水の香り。 そのイデタチは旅の商売女っぽい。荷物は少ないが。
「おにぃ〜さん、私と付き合ってくれなぁい?」
「悪いけど人と待ち合わせ中。 それに俺はそーゆー遊び、あんまりしないから他所当たって。」
「あら、女性のお誘いは断るものじゃないわぁ、ライ。」
「・・・初対面の人間に行き成り名前を呼ばれるのは気持ちいいモノじゃないよな。」
「でも貴方の名前、この業界じゃ結構有名よ?」
この業界じゃ結構有名らしい。そういう遊びは全くしていないのだが・・・
「何でもいいけど他所行ってくれ。俺の待ち合わせの相手は神官の娘なんだ。
アンタがいるせいで入れ違いになったら困る。」
「うふふふふ、その心配は無用よ。 私が約束の相手だ・か・ら。」
いや、確かによく見れば、目の前の女性(あえて娘,女の子とはいわない)が着ている服は
法衣の変形したものだが
・・・神官でこの夜の雰囲気はちょっと・・・ねぇ?
清楚な法衣のはずが、スリットが入りーの胸を強調しーの・・・妖艶な衣装に
「・・・・・・・・・・・・・人の主義を言うのは如何かと思うけど、神官でコレは無いんじゃないかい?」
「みんなからよくソウ言われるわ。でも私、神様信じていないからいいのよ。」
「神官で神を信じなくて仕事が成り立つんかい?」
「王に忠誠を誓っていない騎士がいるんだから神を信じない神官がいてもいいんじゃない?」
・・・たしかに。 それを言われるとちょっとつらい。
「ふぅ・・・最近こんな奴ばっかり。 出発する前に名前教えてくれよ。俺の名前はいいよな?」
「アルシア=フォアスタ。アルシアって呼んでね。」
そういってウインクする所なんかまさに商売女。どうやら自分は色物キャラの相手担当にさせられたらしい。
なんというか、ある意味予想通りの展開に思わずゲッソリとしてしまう。
「・・・いらん御節介だと思うけど、初対面の相手にそういう態度は止した方がいいと思うぞ。」
「ダイジョーブ、チャンと相手を見てるから。」
「・・・さいですか。 もう、貴方については何も言わないです(泣)」
そして二人は馬上の人となった。
カッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポ・・・・・・
昼の長閑な街道に響く馬のひずめの音と
「・・・あふっ・・あっ・・・あ、あん・・・馬って素敵。肉体は逞しいし、振動が気持ちいいわぁ・・・」
ソレに全く似つかわしくない、馬の上で悶えるアルシア。馬の身体に抱き付き撫で回すの手が艶まかしい。
心なしかアルシアの馬はスゴく迷惑そう。 実際、迷惑なのだろうけど。
ライはそのアルシアから少し距離を取り無視、他人の振り。
そのせいで傍目ではライが人目を憚らずアルシアを調教しているように見える。
本当、街道に人影が全く無いのは不幸中の幸い以外なにものでもない。
「・・・・・・・・あっ、あっ、あっ、もうイきそぉ。」
そうですか。イきますか。 ライもプチ切れ。
ピシッ・・・ポカッ
「いつまでもお馬鹿な事やっているんじゃないっ!! いーかげんにしないと泣かすぞコラァ!!!」
「痛ぅぅ〜〜、普通女の子をグーで殴る? 正気を疑っちゃうわ(泣)」
「そりゃこっちの台詞だ!! 全くっ冗談にも程が過ぎる!!」
「だってぇ〜ライはかまってくれないし、暇なんですもの。 だ・か・ら、お話しましょ?」
「じゃあ、具体的に採取の手順、俺は何をすればいいんだ?」
「あら、私が囮をするから、貴方は後から追っ駆けて来て私に群がる方々を綺麗に始末するだけ。」
「はあ? 何か随分と物騒な事するんだな。」
「安心して、物騒な目に遭うのは貴方ではなく私だけだから。
このフェロモンでP.R(プラントローバー)を呼び寄せて一気に刈り取るわけ。
それで、これは『森』に溶け込むフェロモン。貴方はコレをつけて私を守ってね。」
取り出された二種類の香水瓶。
実は出発前、アルシアはこの香水瓶を洗浄し入れ直して来たのだが、後々それが・・・
「ほら、呼び寄せるフェロモンの方ヨコセ。」
「えっ!!?」
「あのなぁ、俺が女の子に囮をさせて平気な性質に見えると思うか?
精神衛生上俺が囮をした方がよっぽどいい」
見た目かなりアダルトなのに女の子扱いされてしまうとは。 かなり新鮮。
思わず目を点にして自分を指してしまったアルシア。
ライはそのアルシアからそのフェロモンの瓶をひったくりその中身をチャポチャポ揺らしながら仰ぎ見る。
「そ、それは『森』に着いてから着けてねぇ。」
「おう、了解。 まあタダだけどしっかり仕事はしてやるさ。 サポートよろしく(笑)」
「・・・貴方、私を信用していいの?」
「それ以前に俺を嵌めてアルシアに何の得がある? 危険なのはアルシアも同じだからな。」
自分を偽るため今の妖艶な姿,軽いノリをするようになったが、
同時に初対面の人からは信用されなくなってしまった。
そのことは別につらくはない。幼い頃から謀略の世界で生きてきたから。
もっとも、その世界がイヤで実家を飛び出し 神官になったのだが。
ライに心の奥底まで見透かされそうで思わず目をそらす。
それ以降、森の入り口に到着までアルシアは大人しかった。
・・・・・・
「途中から行き成り大人しくなったけど・・・大丈夫か?」
「大丈夫よ、ちょっと考え事していただけだから気にしないで。
今日は森の中の広場で野営して、明日の早朝『森』へ出発ねぇ。」
「・・・ここでわざわざ降りたっつ〜事はソコまで歩き?」
「今からだと・・・夕方までには到着できるかしらぁ。」
「往復で二日,取るのに丸一日、そのためのフェロモンか。」
アルシアの返事は妖しい微笑だけ。
何であれ、今回ライは補佐でしかなく従うだけで、それ以上の事はするつもりはない・・・疲れるから。
日が暮れる前にその広場に辿り着いた二人がすることを済ませると、後はもう寝るだけだった。
「ねぇライ、こんなモノあるんだけどぉ、飲まなぁい?」
地面を転げる数本の酒瓶
「こういう所でアンマリ感心出来ないなぁ。」
「あらぁ、飲まないのぉ(悲)。」
「少しだけ頂きましょ(笑)。 しかし、こんなところで飲もうなんていい神経してる。」
「うふふふ、貴方もいい神経してるじゃない?」
「まあね、美女のお誘いは受けることにしているんだ。」
「お上手ねぇ。それが貴方の常套手段?」
「いやいや君だけさ。 酔っているんだよ俺は、君の美しさに。
焚火に、月光に照らされた君の美貌が俺にしゃべらせる。
ああ、君はなんて妖艶なんだ。 君を思うだけで俺の心は奮い立つ・・・・・・」
言い切って俯くライ。その肩が微かに震えている。 そして我慢の限界突破。
「わはははははっ、やっぱだめだぁっ、お、俺のキャラじゃねぇっ(笑)」
ライの爆笑で折角の大人の雰囲気が台無し。 しかし、そのことに対しアルシアが気を悪くした様子はない。
「あらぁ、そうでもないわよぉ。
この私でもクラッって来そうになったんだから、いい線いってるんじゃない?
どうせならこんなところじゃなくて感じのいい酒場でやってほしかったわぁ。」
「そりゃ、今度の機会に(笑)。俺が火遊びする気になったらなっ(笑)」
「うふふふ、期待しているわ。」
結局、ほろ酔いでいい感じの二人。
木漏れの星空の下、宵は静かに更けていく。 多分ここ数日は気持ちよく晴れるだろう・・・
「・・・んっん〜〜。・・・ありゃ?」
早朝、目を覚ましたライは違和感を抱いたまでも気づかない アルシアがソコにいないことに。
森の野営地(キャンプ)の最適な場所の条件に開けていて地面が平らであることなどが上げられる。
さらにもう一つ贅沢を上げるなら、近くに清流があること。
そして、二人がキャンプした場所の割と近くには清流があった。水浴びに程よいサイズの清流が。
「〜〜♪〜♪〜〜♪〜♪〜〜〜♪」
年相応少女の様相でご機嫌に水浴びをするアルシア。
常日頃の夜を纏わり着かせている雰囲気とは異なり、白い絹肌に光輝く水滴を纏うその姿はまるで妖精。
多分、いつもの彼女しか知らない人が今の彼女を見れば別人と勘違いするだろう。
果たしてどちらが本当の彼女か。 どちらも本当のアルシア。
元々いい身分出身の彼女は年相応の少女を妖艶な女で覆わなければ世間を渡れなかった。
それはさておき、昨夜純粋に会話と酒を楽しむ事ができた事が機嫌のいい理由。
神殿ではその妖艶な風貌から人は寄り付かないし、酒場では下心あるバカしか近づいてこない。
「うふふふ、・・・また・・・彼とは呑みたいわねぇ。」
不意に、森の中から近づいてくる気配。
それはアルシアの手前を通り過ぎ、
ガサガサガサ、テクテクテク、バシャバシャ
茂みから出来たライは水浴びしているアルシアに気づく事無く川に歩み寄ってそのまま洗顔。
「くぅ〜冷てぇ〜〜 !!!・・・・・・」
そして二人の視線が交差、ライが 大事な処を腕で隠したアルシアを上から下まで確認、
水の流れる音だけの静寂の中、つかぬ間の時が流れ
「・・・・・・おはようさんアルシア。 今日は気持ちよく晴れそうだね(笑)」
何故爽やかに言う、ライ?
「おはようライぃ(微笑)」
いまさら裸を見られて騒ぐほどアルシアはウブじゃない。 しかし
ライの目の前、アルシアの雰囲気が妖精のような純粋なモノから淫魔のような妖艶なモノへと変わっていく。
「あははは、女性は化けるといいますが・・・・・・もしかしてアルシアさんご機嫌ななめ?」
既にアルシアは腕でその美乳と黄金の蔭りを隠すことをやめてその豊満なナイスバティを日元にさらし、
その手にはアルシアの得物 鉄鞭が。
「機嫌は凄くいいわよぉ。ス・ゴ・クねぇ。
で、いつまでそうしている気? 私の身体は安くないのよぉ。」
「わははは、その鉄鞭は何ですか? アルシアさんその笑み、凄く怖いです。
ちょ、ちょ、うっひょおおおおおおおおぉぉぉ・・・・・・」
静かな森に響き渡る壮絶な男の悲鳴・・・と鞭の切裂音に小鳥が怯え逃げていった。
「全く、普通本気で鞭打つか? 全く、シャツ一枚ダメになちゃたよ。」
「その割にはイイ声で啼いてくれたし、乗り気だったじゃなぁい?」
「・・・逃げ回らんとヤりゃよかった。」
出来ないくせに口だけ。この場合、雰囲気に流されたライ 貴方の負けです。
一騒動の後、落ち着いた二人は気まずい雰囲気もなく冗談をいいながらサッサと出発。
そして今、二人の目の前には陰気を放つ『森』が現れた。
「さてと、冗談はここまで。 俺、暴れていこうか?」
対P.R中和薬を呷り大剣を抜き放ち準備。
大剣を振り回しながら進むことで『森』の中に道を作ろうという発想。
「あら、いい考えねぇ。お願いしようかしらぁ。」
「じゃ、後で。」
ライは自分の身体にフェロモンを吹付け、大剣を振り回しながら歩き出した。
沈黙の『森』に草木が千切れ飛び倒れる派手な音が響き渡る。この調子だと今回は大量になるだろう・・・
・・・・・・
半分駆け足気味に進んできたので可也深くまで来た。
後ろを見れは自分が作った道があるが、この道も二週間もすれば綺麗さっぱり消えてしまう。
それがこの『森』
しかし、遅い。 派手に来たから多少速めに進んでも直ぐにP.Rが現れ、アルシアが悠々と追い付く。
そのつもりでやっていたのだが。
ライは動きを止め、辺りの気配をみる。 こうしているだけで自分が『森』と一体化していきそうだ。
・・・周りに気配は一切ない。 明らかにおかしい。
『森』においてP.Rは動き回るあらゆるモノに反応し襲い掛かり毒で麻痺させ、養分,苗床とする。
多分、一体のP.Rが獲物を見つけた時 直に何体も集まってくるので、
そのフェロモンを利用しているのだろうが。
となると今身に着けているフェロモンは『森』に溶け込む方で、アルシアが囮のフェロモン。
「・・・やばいな。」
『森』に進入してから随分たった気がする。
そして、さっきの感じからしてアルシアはさほど強くない。少なくともP.R 十数体と戦って生き残れるほど。
それはアルシアが本気気味で打った鞭をシャツ一枚を犠牲にしただけで回避していた事から分かる。
ライは来た道を疾走し戻る。 アルシアを死なせないために。
ライが出発して暫く経ち、暴音が小さくなり始めたのでアルシアも出発の準備。
完全に溶け込むためフェロモンをタップリを自分に吹付け、
帰りは一杯になるであろう空の大麻袋を片手に出発。
・・・ライが綺麗に草木を払っておいたおかげで随分と進みやすい。普通の道を歩く程に。
だからアルシアの歩調が落ちる。 十分に集まっていないうちに追い付いても仕方がないから。 しかし、
「あらぁ?・・・少しやばいかもぉ(汗)」
不意に道が消えている。振り返ってみると自分の歩いてきた道も消えている。
つまり、自分はP.R に囲まれた。そして、自分が着けていたのが囮用のフェロモン。
さぞかし自分はおいしそうな獲物に見えることだろう。そして、今回約束された応援はこない。
さらに『森』が迫ってくる。静かに囲みが小さくなる。
そしてそれはやってきた。木々の間から蔦の様な根っこの様な触手群がアルシアに忍び寄り触れ様とした瞬間
シュパーーンッ!!!
「私の身体は高いわよぉ。気安く触らないでね。」
鉄鞭一閃、千切れ吹き飛ぶ触手。だが、アルシアが不利であることは変わりない。
特製の薬(万能中和薬&興奮剤の効果があるもの)を呷り、荷物を捨てる。
この実力を120%出せる状態でどれだけもつか・・・。
「さぁいらっしゃい。可愛がってあげるわぁ。」
パァンッ!!!
鉄鞭が地面を叩く直後ざわめき始める『森』。その姿を現したP.R。
木の切株みたいな胴体に、下からは根っこ,幹からは蔦のような触手を生やしていたものが20弱
いつもの倍々の数が集まったのはライが派手に暴れて、動き易いよう道を作っていったからだろう
これはもう、ライが間に合わなければアルシアが嬲り殺されることは確実・・・
・・・・・・
ほんのわずかな時を無限に感じる中、
アルシアは触手をまるでタンゴでも踊るかのように軽快なステップで避け鉄鞭の一撃を与えていた。
彼女ほど戦っている様子がこれほどそそられる女もいないだろう。
しかし、見た目ほど彼女調子は良くない。疲労は溜まり、動くものに反応する状態。
だから足元に押し寄せていた触手に気づかなかった。 そこを踏んだ瞬間
「!!? あっ、あぐっ!! こ、このぉ、助平!! くああぁぁぁッ!!!」
アルシアの両脚それぞれに根のような触手が絡みつき
ガコッと股関節が抜けそうな勢いで真横一文字に引張ぱられ空に浮く。
鉄鞭で捕縛していた触手を切断しても、
既に数本がアルシアの下着の中、股の内筋に沿って,股間の三穴から身体内に潜り込み、
先端から膀胱,膣,腸内へ毒 本来なら身動きすら出来なくなってしまうほどの強烈な媚薬を流し込んでいた。
「全くもう、はぁ、気持ち、悪い、わねぇ。お腹の中に変なモノ、たぁっぷり流し込んでくれちゃってぇ」
脚に絡み着いた触手が今もアルシアの中に残滓を吐き出し、
溢れた毒液が下着を濡らし脚を伝って服を汚し 粗相をした様相を見せるが、
アルシアは多少動きを鈍らせながらも戦い続けた。
脚に絡み付いた触手は絡み付けたまま、取る余裕はない。動きを止めればやられてしまう。
身体の中を触手がのた打ち回る感触と流し込まれた毒液にも関らずアルシアは戦い続けた。
これが特製の薬の効用。 しかしコレは諸刃の剣。
一本、また一本とアルシアに絡みついたままの触手が増えさらに動きを鈍らせていく。
そして最後の抵抗が終わり
「あっ・・・・・・」
膝が地に落ち、手から鉄鞭が転げ落ちた。
本来の力以上で動き続けスタミナが尽きたアルシアには指一本動かす力は残されていない。
アルシアにタカる触手。 あっという間に四肢を絡まれ、空中に大の字に固定された。
陵辱の宴が始まった。
その陵辱される当人、アルシアの中を巡るさまざまな思い。
(ああ、やっぱり私は寂しく死んでいくのねぇ・・・あっ・・でも・・
・・触手がのたうって・・・あんっ・・たくさん液を出されて・・あっあっ・・・
・・お腹の中で・・掻き回わされるの・・・いいかも・・・あっ・・・あっ・・・)
生きていることが楽しいと実感したばかりで死んでしまうのは余りにも惨め過ぎる。
(・・・もう、もたない・・こ、れいじょうは・・身体が・・裂ける・・死ぬ・・
・・まだ・・まだ・・・死にたくない・・まだ死にたくない・・・助けて・・助けて)
「・・・た、助けて、ライ。」
肉を貪り、粘液が噴出し叩きつけられる音が響く中、アルシアの唇から紡がれる想い。
でも、それ以外の音はしない。
半ば諦めに似た絶望の中 アルシアの身体からかけなしの力が抜けた瞬間
バキメリメリバキッ、ドカーーン!!!
「すまんアルシアっ!!」
全力疾走の勢いそのままにオカ屑を撒き散らしながら登場したライは
勢いを殺すことなく大剣を振り回しアルシアの呪縛を切断、抱き抱えP.Rの群れを通過。
少し離れた処でアルシアを(普通の)木の幹に凭れさせた。
タップリとぶっかけられた粘液と絡み付いたままの触手がより一層、焦燥したアルシアを妖艶に映えさせる。
「ふふ、少し遅かったけど・・・ぎりぎり間に合ったわぁ。」
「そりゃ・・・・・・で、如何する? このまま逃げるか、それとも最初の目的を果たすか。」
「私の身体は高いのよぉ。しっかりと代金を取り立てて頂〜戴っ」
「了解、姫様っ!!」
アルシアは己の実力と正規の戦士 ライの実力との差をまざまざと見せ付けられた。
後はライの独壇場。繰り広げられる一方的な破壊・・・
・・・・・・・・・・・・
「・・・はっ・・はぅん・・・こんなところ・・ライには・・見せられないわねぇ・・・」
こんなところ・・・一糸纏わぬアルシアが清流に浸かり自分の股間を弄っているところ。
勘違いしないで頂きたい。
アルシアは自らを慰めているわけでなく、自分の中に入り込んだ触手片を取ろうとがんばっているのだ。
集まったP.Rを殲滅したあとキャンプ地まで二人は戻ってきたが、
場所が場所だけにアルシアはライに自分を介抱させる訳にもいかず、
有無を言わさずライにP.Rの種子を採りに生かせ、自分は回復薬で少し回復した身体で自分の治療。
といってもすることはお腹が張るほど注入された毒液の洗浄。
だからすることは清流の中に座り込み自分の身体の中を指で弄り・・・要は自慰そのもの。
「いやぁねぇもう、こんなところまで・・・ん・・ん・・あん」」
ズル、ズルルルルルル
「あっんんん・・・ふぅんんん、んっ・・・・はぁ、はぁ、もぅ」
最後の一つ、膀胱にそのほとんどが潜り込み尿道口から端を少し覗かせていた細い触手を
指先で弄り摘み引き抜いてまたイってしまった。
引き抜こうとすれば柔壁を叩き擦るのでこれは仕方がない。
しかし、全部が全部、膣,肛穴に潜り込んだものまでもこの調子なので今やアルシアの腰は腑抜け状態。
おかげで身体は清められたが。
・・・
火照った肢体には清流の冷たさが心地よい。
その快感にアルシアはウィンディーネが如く清水に身を委ね、まどろむ。
いい加減にライの帰還に備えたほうがいいのだが
法衣,下着はクズ布と化しココに着替えが無い以上、なにも出来ないという説もある。
「なあ、アルシア」
「きゃっ!!? あ、あら、ライ、早いわねぇ。どうしたのぉ?」
気が抜け切っている所を不意に声を掛けられたため乙女っぽい,らしからぬ悲鳴を上げてしまったアルシア。
そして、その悲鳴をアルシアの姿を聞きライも少し動揺。
「ああ、袋が全部一杯になったから戻ってきた。 後、着る物ないだろ? これ、使ってくれ。」
そういって茂みの上に放り投げられるシーツの塊。
「使わせてもらうわ。 ちょっとそこで待っていただけるかしらぁ?」
返事はない。しかし、茂みの向こうに後姿が見えたまま。
・・・
「いいわよぉ。こちらにきてもらえる。」
シーツが衣装に イブニングドレスに化けた。
「こんな布よくあったわねぇ。どうしたの?」
「・・・・・・・えっ? それか? そーゆー布は何かと便利だからな、包帯とかタオルとか色々。」
「へぇ、そうなの・・・・・・」
そのままフラ〜と倒れそうになるアルシア。
地に付く前に抱留めると、その肌は透けるように白い上に疲労のためか若干体温が低い。
「・・・どんな戦い方をすればこんなになるんだ(驚)。
こりゃ今夜はちゃんとした所に泊まらないとダメだな。」
「もう・・・、貴方の好きにして」
「ああ、それなら。よっ」
アルシアをお姫様抱き。同然のように抱かれて、驚きすらしない。
「・・・意外に軽いな。」
「び、微妙な言い方ねぇ(汗)。」
「ま、気にするな。褒めているんだから。で、もう撤収していいんだな。」
「ええ。袋が全部、種で一杯になったんでしょ? それだけあれば何時と比較にならない利益が出るわぁ。
何時もは一袋しか一杯にならないの。それで残りは他の薬草を採って・・・」
「ふぅん、あんなものでねぇ。」
「色々採れるから。痛み止めに解熱剤,睡眠薬,興奮剤,媚薬・・・それに麻薬。」
「毒も使い方によっては薬、んや、毒も薬も元は一緒と言うべきか。」
「うふふふ、私、頭の回転が速い子は好きよ。」
「・・・子、ね。 俺達、年あまり変わらないと思うけどなぁ。」
仲良くワキャワキャ会話をしながら
荷物は馬に運ばせ、アルシアを抱いたまま二人は森を抜けた。
ある意味、問題はここから。
「・・・一人で乗れそうか?」
と言ったもののアルシアは一人で立てそうにない。こんな状態で乗せれば落馬の可能性も高い。
だから、片方の馬に全ての荷物,武器,武具を移し
「ちょ、ちょ、ちょっと、馬ぐらい一人で乗れるわよぉ。」
「・・・ココまで運んでもらって今更何言っているんだ。 大人しく俺の好きにされなさい。」
「あっ、そんな、こんなところでいけないわぁ・・・」
馬に、後ろからアルシアを抱きしめるように二人乗り。
耳後やうなじに若干息が吹きかかるかもしれないが、別にそれ以上の事はしていない。
「・・・恥ずかしい気持ちは分からなくもないけど、アルシアは身体の調子が悪いんだからな。」
そのとおり。 本来、アルシアは主導権を握られる事を好まない。
しかし困った事に、コノ青年に考えていることを見透かされている上に身を任せるのは心地いいと来た。
これは今までどの男に対しても有得なかった事。 それが恥ずかしい。
「・・・貴方って不思議な人ね。一体、何者なの・・・」
「さぁ。 何者もないも、俺は俺以外何者でもないんだけど?」
「うふふ、貴方らしいわね。 凄く純粋で自分を偽らない・・・」
もう、私が失った輝き。 だからソレに憧れる・・・
「??? 俺は嘘も尽くしズルもするぞ。」
「・・・ん、ちょっと違うけど・・・いいわぁ、それで・・・・・・」
それっきりライの懐に収まったアルシアはその温もりに身を任せたまま・・・
「アルシア?」
「・・・z・・・・z・・z・・・」
帰ってきたのは気持ち良さそうな寝息。 見れば、安心しきった 少女のような寝顔。
ライは知らない。アルシアがココまで無抵抗な姿を人に見せたことがない事を。
・・・・・・・・・
夕方、近隣の村に到着した二人はそのまま酒場へ。(普通の村では酒場が宿を兼用しているため)
ライは、まだ人気のない これから賑う酒場に足取りが覚束無いアルシアを抱きかかえ
「主人、今夜二部屋借りたい。」
「主人さん、一部屋だけ貸して頂けるかしらぁ?」
同時に言われ、硬直する酒場の親父。・・・ふつー逆だろ。
「二部屋っ!!」
「一部屋で十分よぉ。」
ライは必死。男女が意味なく一部屋で寝るものじゃないから。
しかし、アルシアから発せられるは殺気。酒場の親父に対して。
「一部屋しか空いてないといわなければ・・・」と
「も、申し訳ありません本日はご予約が一杯で、もう一部屋しか開いておりませんので・・・(怯)」
「・・・ちっ。」
「うふふふふ・・・」
あっという間に日は暮れ、するべき事(夕食と荷物の整理)は済み後はもう寝るだけ。
「俺は床で寝るから」
「あらぁ、それなら私も床で寝ようかしらぁ」
「・・・・・・それの何処へツッコめと?」
「まぁ、ライのえっち(照)。」
「アルシアはベットっ、俺は床っ、以上っ!!!」
心身共に疲れた身体でこれ以上付き合ってられない。
ライはそのまま床の寝床で不貞寝。いきなり始まる穏やかな寝息、熟睡モード突入。
「あん、ライったら早いのねぇ」
返って来るのは寝息のみ。 アルシアも諦めベットに横になり・・・・・・再び身体を起こす。
眠れない。くすぶるように身体が疼き始めて。
よりにもよって、身体の中に中和し切れないほど注入された毒が今になって効き始めてきてしまった。
ちゃんと身体の中を洗浄し、今の今まで大丈夫だったので安心していたのだが・・・
コレではもう中和出来ない。かといって切なさを我慢するには辛過ぎる。
なら、目の前にいるライに慰めてもらえばいい。
しかし、それはそれで偽りの自分を見抜いたライを裏切ったようで・・・
「もぅ・・・私はどうしたら・・・」
アルシアの意志は己の心を貫くほど強くなかった。
力が入らない身体のまま、艶やかな吐息で肌を高揚させたまま自分の荷物をあさり
引っ張り出した睡眠薬を眠るライへ吹付け・・・
「・・・ごめんね、ライ。」
所詮この謝罪は少女の自慰でしかない。
・・・・・・・・・
「はぁ、はっ、はっ、ふぅん」
闇の中、妖精が細い身体を仰け反らせ、横たわる男の胸に自分の美乳の先端 桜色の乳首を擦り、
男の怒張の幹に滴る秘裂を押し付け摩擦し、珠にエラをぶつけ、切なく喘ぎ悶える。
妖精が・・・・・・
まどろむ快感に目を覚ました男は朦朧とする意識でそう感じた。
瞬間、近距離で妖精の青瞳と男の眼が合い。
「あっ・・・・・・」
妖精の身体がその状態で硬直。麗しの表情に浮かぶ、驚愕と怯え。
男は妖精を知っていた。誰かは思い出せないが。
だから、その表情の意味する事が分からなくとも妖精が辛い事は男も辛い。
「だい・・じょうぶ・・だ・・から・・・な?」
動かない唇から紡がれる言葉。 それから妖精は男の意図を察し、喜びの涙を浮かべる。
男は力の入らない身体ながらも腕を上げ、妖精の頬を触り、流れる涙を拭った。
暫くはされるがまま。そして、妖精は男の手を取り指をしゃぶる。
指に舌を絡め、吸い、しゃぶり
「はふ、んっ、ちゅっ、んふぅ」
切なく、いとおしく、男の一部を、まるでそれが男の怒張かのように。
照れて頬を染めながら尽くす妖精を男は愛しく思う。守ってやりたいと思う。
今、その存在が余りにも儚いことが分かっているから。
「ど・・う・・・した?」
妖精が指をしゃぶるのを止め、潤んだ瞳で何かを訴えていた。
妖精は嬌声を漏らす事はあれ、一切話さない。
まるで、掛かった魔法が解けてしまう事を恐れるかのように。
話さない以上、男が妖精のすることを理解しなければならない。
視線のみ動かし、恥ずかしる妖精を上から流し見て・・・
「あっ、・・好きに・・・しろ」
既に愛液でびしょ濡れになった男の腰の上、素股で金の恥毛に包まれた恥丘から覗く怒張。
さっきの妖精の行為のせいですでに超激怒状態。
男は頭が惚けていたので自分の状態がさっぱり分からなかった。
おそらくそれは、じっと動かない妖精の秘裂に挟まれたまま脈打ち成長を続け、
彼女に生温い快感を与えていたのだろう。 それに妖精自身、我慢の限界。
妖精が腰を浮かした事で垂直に聳え立つ怒張の真上に、妖精は自分の身体を位置させ、
一気に落とした。
ずんっ!!!
「っっ!!!!!!・・・・ふっくぅぅぅ」
「・・あまり・・・無茶・・するな・・・」
コクコク
快感か苦痛か目に涙を浮かべ頷く妖精。
何らかの罪悪感から妖精が自分より男自身の快感を優先しているのは理解できた。
「んっ、んっ、んくっ、あんっ、」
月光を纏い妖精の金髪,白い肢体が闇の中で煌き踊り、その胎内で怒張が抉り子宮を叩く。
その幻想的な光景,自分が儚い存在を犯しているという事に、迫る男の限界。
「も、もういい・・・で、る。」
フルフルフル
踊り、甘い吐息ながらも顔を横に振り拒否のゼスチャー
いいの、貴方のを私の中に出して
聞こえるはずのない妖精の声が男の心に響く。
そして、射精の瞬間
妖精がその股間を男の腰に押し付け、妖精の子宮口に減り込む怒張先の鈴口
その快感が加速し
「ぐっ・・・うう・・・」
ビュル、ビッ、ビッ、ビク
「あ・・・・・・」
凄まじく噴出す白濁液、それが子宮口を通過しソノ奥を生暖かく染めていく感触に
妖精の身体が強張りながらもビクッビクッと痙攣。
膣が液を絞り取るようギュッと締まり、お互いに快感を与えた。
妖精自身も目を閉じ、それに身を委ねる。
「すまん・・・中で・・・」
男の謝罪の返事は、妖精の微笑と唇への接吻。
妖精の長い金髪が男の顔に掛かり、
男は薬と花のような香りが入り混じった心地よい匂いを感じつつ、さらに深い忘却の夢へ・・・
・・・・・・・・
カッポカッポカッポ・・・
「〜〜〜〜〜」
微風か吹く晴天の街道に響くライの大欠伸。
「眠そうねぇ。今日は私が支えてあげましょーか(笑)?」
「けっこーーです。」
隣からご機嫌なアルシアの声。その格好は村娘。
ライが酒場の親父に頼み用意してもらったものだが、どんなに本人が否定していても良く似合う。
今日は、アルシアの体調が回復したようなのでもう別々の馬に乗っていた。
「ふーーー眠っ。」
「昨日は一人でさっさと寝ちゃったくせに・・・如何したのぉ?」
「・・・よく寝たと思うんだけど、眠りが浅かったみたいだ。淫魔(サキュバス)にでも襲われたか?」
冗談気味に言った言葉は、アルシアに刃物を突き付けられた・・・気にさせた。
「多少ならくれてやってもいいけど、次の日に支障がない程度にしてほしいよ・・・な〜んてな(笑)」
この男に心配は無用らしい。アルシアに微笑が戻る。
「貴方なんてミイラになるまで吸われちゃえばいいのよぉ。」
「わははは、その機会があればなー。」
二人の間にあるものは恋か友情か・・・・・・奇妙だが実に楽しい関係