数日後、王都守護騎士団執務室
コンコンコン
「鍵は開いている、入りたまえ。」
オーディスの対応に入室してきたのは最高司祭フェフ
「おひさしぶりですね、オーディス。」
「確かに久しぶりだな。で、一体今日は何の用かね。」
「まずは、この間の礼を・・・」
「この間? ああ、「薬草取り」の件かね。別に礼を言われるほどの事はしていないと思うが?」
「・・・彼女が、以前より優しい顔をするようになったんですのよ。彼のおかげで・・・」
「彼・・・か。 根本的に我々とは価値観が違い、常に自然。そして己のみならず人も成長させる。
・・・確かにアレは稀に見る掘り出し物だな。」
「そのような言い方、彼に悪いですよ。オーディスも彼には助けられているのでしょう?」
「まあ・・・な。しかし甘やかすのは良くない。アレにはモットモットがんばってもらわなければならん。」
「あらあらあら、彼も大変ね。オーディスにそんなに期待されるなんて。」
一方、話題の当人は・・・・・・
「のおおおおおおっ!!!」
「らいっ、往生際っ、悪いよっ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
VSフェイ&エンジェ戦で訓練中。余りの手数の多さに、ライは姑息に逃げ避けの防戦一方。
エンジェも謝りながら氷凍弾を連射。
その状況で悲痛な雄叫びを上げながらでも有効打を一発も喰らっていないのは、ある意味凄い。
「やめやめやめー−っ、俺の負けだー−っ」
「それなら喰らえーーっ、落ちろっ、堕ちろーっ、オちろーーっ」
それがいけなかったのか興奮したフェイは降参を許さない・・・・・・
「ふーー、やっぱり二対一じゃキツイな。言い出しっぺが俺とはいえ」
「でも、らい、全然ダメージ受けてない(悩)」
「実際の話、それって凄いことですよ(汗)」
結局、フェイのスタミナが尽きてライが逃げ切ったことで一旦訓練は休憩。
木陰で三人は休憩をしているのだが・・・ライに近づく不吉な影。
「(ぞくっ)殺気っ、いやこれは妖気か?」
「あらぁいやん、妖気だなんてひどいわねぇ。」
「・・・別に間違っちゃいないと思うぞ? まあ、元気そうで何よりで。」
背後から首に絡み付くアルシアに無愛想な返事。
そして、見知らぬ妖艶な女の登場に顔が険しくなるフェイ。
背中に押し付けられるアルシアの胸の感触が嬉しいやら目の前のフェイの殺気が恐ろしいやら
「らい、その人はどちらさま?」
「ライ、このお嬢さんを紹介して頂けるかしら?」
アルシアとフェイ達はそう年が変わらないはず。
「フェイとエンジェ、俺の・・・チームメイト。 アルシア、・・・・・・単なる知り合い。」
「単なる知り合いだなんて・・・あんなにも愛し合った中なのにぃ。」
しな垂れ掛かるアルシアとその台詞に一帯の温度が下がった。 少なくともライはそう感じた。
「らい〜〜、今度はその人も入れて2対2で試合しよ〜よ(笑)」
「いやです。今日はコレで訓練を終わりです。」
「いいわね、それ。 早速やりましょぉ(笑)。」
二人の間、ライの目前の空気が軋む。
「だから、いやです。 エンジェ、何とか言ってくれ(ガタガタブルブル)」
「・・・ライさん、ごめんなさい(泣)」
のおおおおおおおおおおっ!!!
「のおおおおおおおおおおっ!!!」
前からはフェイの攻撃,後ろはアルシアがライを盾にしつつそのライに関係なく攻撃を撃ち咬ましてくれるため
状況は2対1よりもっと性質が悪い。
なんせ味方が一切援護をしてくれず、自分を巻き込む攻撃しかしないのだから。
さりげなくエンジェが援護をしてくれているが・・・焼け石に水。
「ぬああああああああああっ!!!」
コレ以降続くライの女難はアルシアに出会った事で始まったかもしれない。
「ひょえええええええええっ!!!」
合唱(チーン)
最近ライは一人の黒耳黒尻尾猫人の少女と知り合いになった。
そのためか、つい知り合いを動物に例えてしまう。
例えば、
キリトは鷹、攻撃力があるが打たれ弱い処より。そして何より孤高。
ゴリアテは・・・これは鬼熊以外何者でもないだろう。攻撃力があり堅い、が鈍足。そして見た目も・・・
カインはキザで軟派野郎だがソレは別に嫌味ではない。・・・鳳凰しかねーよなぁ
オーディスは獅子、絶対これ以外ありえない。
最高司祭フェフは、この人は動物に例えるより優母そのもの。
エンジェは白鳥、偶に背中から翼人が如く白翼のような力場を出すし・・・ いや、天使の方がいいかも。
アルシアは見た目も中身も金狐以外例えられるモノがあったら聞いてみたい。
本当は結構可愛いんだけどね。
そして、目の前でカップを両手で支え持ちお茶を飲む少女フェイは・・・
「・・・子犬?」
「うに? ワンちゃんがどうかしたの?」
「んや・・・な、フェイが子犬っぽいなぁと思ってさ」
特にダブルポニテで首を傾げる処が。フェイ、小っこいし。 思わず頭を撫でてしまう。
「ふにぃ、ありがと(照)」
別に褒めているつもりはない。
「ん〜〜、俺は動物に例えると何になるんだろうなぁ・・・」
「ん〜〜、何だろねぇ。狼・・はちょっと違うし、龍・・は行過ぎかなぁ。 でも如何したの、行き成り?」
「フェイは孤児院に行かないからなぁ(笑)。」
正確にはさせてもらえない。子供が一人増えるだけなので。
取り合えず事のあら回しの説明。その黒耳黒尻尾猫人の子供シエルが女の子だということ以外は。
・・・・・・
そして、フェイは孤児院へやって来た。目的は単なる好奇心からライの弟分シエルに会う為に。
ライの言った通り、シエルは屋根の上のその場所で昼寝をしていた。
「君が しえる? 私、らいのチームメイトでフェイっていうの。よろしくね。」
「・・・ふんっ(プイ)」
一瞥し、また居眠りの再開。フェイも折角ココまで来たのでコミュニケーションを取ろうと必死。
「あ〜〜(汗)。 ねえ、耳触ってもいい?」
沈黙を肯定と受け取り、
フニフニフニ
「わぁ凄い。本当にコレ耳なんだぁ。可愛いなぁ。」
フニフニフニフニフニフニ
パンッ
瞬間、フェイが弄ぶ猫耳が消え、その手に猫パンチが炸裂。
「ふにぃっ!!?」
「カーーーッ!!!」
怒る猫のフォームのシエルの威嚇に、フェイは後ずさり。
「ご、ごめんね。私何か気に障るような事したかな?」
「フーーーッ!!!」
シエルは答えずただ威嚇するのみ。 訴えることはタダ一つ。
邪魔するな、さっさとこの場から失せろ。
「な、なにも、そんなに怒らなくてもいいじゃない(泣)」
「フゥゥゥゥ!!!」
「う、うえええぇぇぇぇん(泣・泣・泣)」
フェイ、そのまま屋根から飛降りて遁走。 流石、守護騎士というべきか、守護騎士のくせにというべきか。
「・・・・・・フン」
邪魔者がいなくなった今、シエルは丸まり居眠り。
・・・・・・
「ふぇ、ふぇぇ、ふぇぇぇ(泣・泣・泣)」
「あ〜〜〜つまり、シエルと仲良くしようと行って来たけど、
昼寝の邪魔したことを怒られて泣いて帰ってきた・・・・と」
泣きながら帰ってきたフェイは一直線にデスクワーク中のライの処へ急行。
他のデスクワーク中の方々の視線がいたい。
何、女の子を泣かしているんだ(怒)とか そのまま一気に畳込め(嬉)とか ヤるなら他所でやれよ とか
「ここじゃなんだから向う行こうな?」
まだ泣くフェイの肩を抱いて出て行こうとするライの背中にさらに追い討ち。
キャー不潔よー(嬉) とか いいよなぁ彼女のいる奴ぁ とか ごっつぉーさーん とか
最近ココはガラが悪くなったような気がする・・・朱交われば赤くなるのいい例ともいう。
「ほらほら、コレで顔を吹いて。 可愛い顔が台無しだぞ。」
「えっぐ、チーーン。・・・らいの嘘吐き。しえる、弟分て言った。でも、女の子。」
「おおっ良く解ったな。俺は初めシエルは男の子だと思ったぞ。」
同様の勘違い者多数。ちなみに全員、男。 女性はすべて、シエルを一目で女の子と判断。
少女シエル容姿に関してもうこれ以上何も言うまい。
「それ、失礼だよ。 しえる、可愛い女の子じゃない。」
「わはははは、まあな・・・・・・シエルは昼寝しているのを邪魔されるのを嫌うからな。
寝てる時は頭を撫でてやると尻尾振って喜ぶんだけどね・・・・。」
ライのシエルを思う目は限りなく優しい。兄が妹を想うように。
それを見るフェイの心境は複雑。自分もそう見られたいと思う以上にソレ以上の存在になりたい・・・
・・・・・・
「・・・って言う訳なの。えんじぇ〜私如何しよう。」
「そ、そういわれても、私には如何しようもないんだけど・・・」
フェイ襲来、恋の悩みをされたところで本人以外しか如何しようもない問題をエンジェには如何にも
出来ない。
ただ、本人が満足するまで話を聞いてやるだけ。
「いいよね〜えんじぇは、きりととラブラブで。」
矛先は目の前のエンジェの方に。 というより秘密にしていたエンジェとキリトの関係がバレている?
「ふぇ、フェイちゃんは何を言ってるのかしら(汗)」
「別に誤魔化さなくてもいいよ、前から知ってるから。
だって、えんじぇ、きりとの前だと態度変わるんだもん。すぐ分かるよ〜。」
「そうなの?・・・・・・怒らないのキリトさんの事。」
「怒った。・・・それでも、・・えんじぇを愛してるっていわれたら私には何もできないもん。
それに、その時半殺しにしたからもうイイ。」
ヲイヲイ(汗)
「あの時の重傷ってそれが原因なのね・・・(汗)」
・・・頼りないても、姉は姉なりにしっかりと妹を見守っていた。そしてこれからも。
「あるしあ美人だし、しえる可愛いし・・・らい取られちゃう。 如何しよう」
やはり、目下 既に事が済んだ妹の事より自分の事の方が優先。
「大丈夫、フェイちゃん負けていないくらい可愛いから。」
「本当?」
「本当よ(笑)」
「本当に本当?」
「本当に本当(笑)」
・・・エンドレース
彼女達はこの幸せな日々がずっと続くものと思ってた。
ずっと・・・・・・
それが・・・・・・
よりによって・・・・・・
あの様な形で・・・・・・
「あっ・・・もういやああぁぁ」
闇の中、無数の触手が少女を貪る。
その股間には触手が群がり、その胎内に潜り込んだ触手そのままにお腹が波打っていた。
触手が少女の口を塞がないのはソレが淫声を楽しむため。
「あひっ、お、お、お尻に入らないで、苦、苦しいっ」
一本の極太触手が少女の腸内に潜り込んでいく。
しかし、今まで嬲られていた少女の菊口は裂けることなく柔軟に飲み込んだ。
「ふぅ、ふううぅ、もう、無、理、入らない、助け、て、何でも、する、から」
既に自分が助からない事を知らない少女はその苦痛から逃れるために懇願する。
出鱈目に少女の菊口から体内に這いずり進んでいく触手。
当然、進み続ければ腸を抜け胃を通過し
「ふぐぅ、う、うげ、うげええええ、が・・・はっ」
少女は苦痛に悶えながらそれを吐き出す。
菊口から潜り込んだ極太触手の・・・先。
「あがが、がああ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ」
訳も分からぬまま少女は粘液と共に吐き出し続け
否、排泄口から侵入する勢いそのままに唇から押し出され
「・・・ーーーーーっ!!!」
極太触手の先端の先端に付いた顔,目と口だけのモノと少女の目が合い、
少女がソレが自分の中を貫通している事と自分の運命を理解した少女は
声にならない悲鳴を上げつつ、
人外の快楽に二度と帰れぬところまで
・・・イった・・・永遠に
「くっクッくック、やハり女の命ハ美味イ。男は喰エたモノじゃナいガ」
少女を喰べ終わりソレが独り言を呟く。
ソレは元々はそこの末端研究員の一人だった。
その存在を知った彼は己の自己満足を満たす為その存在と一体化し
・・・その欲望のままイドの怪物と成り果てる。 無限の生命力と自由に進化できる力を持ちながらも。
そして、欲望のまま、一人を残してそこにいたすべての人を喰らい尽くした。
元々そのためにいた贄,研究員を含め。
今、神に等しくなったソレには恐れるものは何もない・・・と思いたかった。
しかし、ソレは己に「力」があっても「技」がない事を知っている。そして、「技」が己を滅ぼしかねないことも。
だから・・・
「なゼ、御前を最後まデ残しタか解るカ?」
ソレが語りかける相手は元上司の女性研究員。
その姿はタイトスカートの制服の上に白衣と凛々しいものだが
知的で高飛車に部下を叱り付けていたその美貌も今や目の前で繰り広げられていた惨劇に脅え泣き
散々たるもの。
いつも自分が実験台の少女達にしている光景とほとんど変わらぬモノなのに。
今回はそれが自分の身に降りかかるであろう出来事だと理解してしまっているから。
「そンなに脅エるな傷ツく。質問二答えロよ。」
「私の知識が必要なのでしょ?」
今やこの女が持っている程度の知識必要ない。ソレには今まで喰らった研究員全ての知識があるのだから。
「違〜ウ。俺ガ好きナ物を一番最後二食べる主義なダけダァ(ケタケタケタケタ)。」
「い、いやあああああああぁぁぁっ!!!」
その女性研究員は逃げられぬと知りつつも恐怖に駆られ走り出す。しかし
ズルズルズルズルズルズル
「やああああああっ、助けて、助けてぇ」
逃がす訳もなく、後一歩というところでその片脚に触手が絡みつき扱けた彼女を引き摺り戻す。
タイトスカートは捲れ上がり、ガータータイツは破れ・・・
「いツのも威勢ハ如何しターー」
ピシッ、ピシッ、パシッ
「ひいいいいいいっ、ひっ、いやぁっ、痛いっ、痛いーーっ」
触手が女を鞭打つ毎に服が破け、白肌に赤い線が走る。
そしていつの間にか服が破けボロ布と化し、大人な黒い下着の濡れた股間。
下着に一切傷が付いていないのはソレの趣味だろう。
「ギャハハハハハハハ、お前、痛めツけられテイるくセに感じテイるのカぁ」
「あ、あ、あ、あ・・・」
ほとんど下着のみ、脅え、恥辱に赤面する女に無理やり身体を曲げさせ己の濡れた下着を見せ付ける。
元来プライドの高い女はソレを濡れているとも漏らしたとも言えない。
その女の頬に押し付けられる男根型触手。
「舐メろ。口淫だァ。」
「うぅ・・・」
女は少しでも微かな希望を求めソレに奉仕する、自分の全てのテクニックを使い。
出来るだけ淫靡に、ブラの中 乳房の間に触手を挟み、裏筋や鈴口を舌先でチロチロと舐め
「おオっ、おおゥっ、オおおおオお」
ソレが口淫に喜んだ事で女に希望の光明が見えた。
「うふふっ、(ぺロっ)、凄いでしょ私のテクニック(チロチロ)」
そう、伊達に女がてらこの地位まで上り詰めてきた訳ではない。
色々な男を手玉に取ってきた女に自信が蘇る。
ソレも手玉に取り自分の手駒に。
しかし女は甘かった。ソレにとって性欲と食欲は既に同意義である事を見て理解していたくせに。
ハムッ、アムアムチュパチュパ
女は触手を口に含み、舌を絡め嘗め回し、飲み込みそうな勢いで己の喉奥に男根の先を擦り付けた。
これで射精しなかった男はいない。しかし
「いッ、イっ、いイぞおオおおオっ!! モっと、もっト、飲み込メええエエえっ!!!!」
「ウグッ!!? う!? ううんっ? うーーーーっ!!!!!???」
女が止めようと力いっぱい触手を握り締めても もう遅い。
女が目を白黒させながらも触手を握り締めているにも関らず、触手は自ら女の口へと飲み込まれていき、
のたうち回りながら食道を通過、胃ではその出口を求め女の身体が跳ねるほど暴れ、さらに腸へ突き進む。
不意に女を襲う耐え難い便意。
そう我慢出来るものではなく、女の苦悶に関係なく触手は飲み込まされ続け、次第に女の腹は張っていき
ズルルルルルルルルルルル
「うっ!!!!??? うっ、うっ、う〜〜〜〜っ、うっう〜〜〜〜!!!!」
ビクーンッ、ビクビク、ビクンッッ
女の排泄穴から飛び出したのは、腸液を纏わり付かせた 口から女の身体の中に入ってきた触手。
女は下着を液で汚しながら絶え間ない排泄の快感に肢体は痙攣。既に頭の中は絶頂の白い光で思考できない。
よりによって、尻穴も使い慣れていた女にとって直腸も性器の一つだった。
下着を避け出続ける触手はその先をもだけ、下着を寄せその女陰へ
ずんっっっっっ!!!
「うっ 」
脚が空に浮くほどの勢いで一気に最深部まで突かれ女の躯が硬直。一瞬すべてが止まる。
その凍結を解いたのは
ドクッ
「!!!!!!!」
子宮奥天井に叩き付けられる直出しの射精
ではなく女の胎内に注ぎ込まれる粘液はスライム状と化したソレの一部。
そして、子宮内一杯に満たされたソレは女の胎内から喰らい始めた。
じっくりと子宮から滲み出し、内臓を侵食し、生かさず、殺さず、
苦痛ではなく狂おしいほどの快感を与えながら
女は口からお尻まで刺し貫かれたまま死の快楽に溺れ・・・
・・・他の贄の娘達と同じ処まで・・・・・イった。
・・・・・・
オ・・オオ・・・オオオオオオ
最後の御馳走を喰べてしまったソレに理性は残されていなかった。
ただ一つ、「貪る」という意思以外は。
緊急招集にオーディスの元、麒麟のほとんどのメンバーと他の部署からも手空きの騎士達が集まる。
心なしか騎士達の前に立つオーディスの顔色が悪い。
「先程、王立の魔導研究所で召喚実験が失敗、異界の神が降臨、暴走しているとの報告が入った。
これより我々は事態の収拾のため出動する。今回「神」が相手だということもあり神官戦士団と共同作戦だ。
出撃っ!!!」
「「「「「オウッッ!!!」」」」」
・・・・・・
王都の心部に近い場所。魔導研究所だった建物は異様なスライム状の物質に包まれていた。
その前に集う王都守護騎士団,神官戦士団,そして総司令部指揮下の騎士団達。
その対策本部では
「あのようなもの、魔法で一気に焼き尽くせば事足りる。王都守護騎士団と神官戦士団は無用だ。」
「休眠状態であれそれが出来ぬから我々が出動せねばならなかったのだろう?
それに、あれが本当に神ならば少数精鋭で直接 核を叩かねば意味はあるまい。
あそこに乗り込む面子は我々が決めよう。貴方がたには周辺住民の避難誘導を願いたい。」
「オ、オーディス、貴様、我々を使いっ走り扱いするつもりかっ!!!」
「今はそんな事を言っている場合ではないっ。あれは今も徐々に規模を拡大していっているのだぞっ。
する気がないならそれはそれで結構。せめて我々の邪魔をするな。
フェフ、避難誘導を神官戦士団に頼めるかな?」
「ええ、既にそのため神官戦士団の皆様には動いていただいております。」
「流石だな。痒いところに手が届くその動き。」
「くっ・・・」
表向き三大長会議。既にする事は決まっているのだが、総司令部が主導権を握ろうと大モメ。 一方、
「・・・嫌な予感がする。 今回は厄介な事になりそうだな。」
「そんなもの気にするな。我々は如何なるものであろうとだた討ち砕くのみ。」
嫌な寒気が止まらないライと相変わらず強気なキリト。
「がはははは、安心しろライ。この面子じゃよっぽどの相手じゃない限り負けん。」
「今回の相手はよっぽどの奴なんだけどね・・・・・・」
ゴリアテは相変わらず能天気。
「あらぁ、随分と弱気ねぇ。気付けに私特製の興奮剤なんていかが?」
「謹んで遠慮させていただきます、はい。」
「そーだよ。こんな時に らいに変なものを飲まさないでッ!!」
「フェイちゃんもアルシアさんも、場所が場所ですから・・・」
フェイとアルシアが喧嘩に成りそうなのをエンジェが宥めるという何時もの光景が
こんなところでも繰り広げられるおかげでライは少し楽になった。
「相変わらず君もモテルね、ライ。 ところで何故僕もここにいるのかな?」
「それは、テメーも守護騎士だからだ。偶には真面目に仕事しろや!!」
「ん〜、僕は何時も大真面目だよ。」
「・・・大嘘つきメ。それは女の事に関してだけだろうがっ」
ライを中心に人が集っていく。
そう、何を弱気になる事があるだろうか。コレだけの仲間がいるのに。
ソコへオーディスとフェフもやって来た。
「うむ、丁度いい面子が揃っているな。申し分ない。 私とフェフも出る。
完全に活性化していない今のうちに強襲をかけるぞ。」
異論はない。頷く一同
そして、王都守護騎士団神官戦士団混合少数精鋭部隊のチームが出撃。 地獄の穴へと・・・
・・・・・・
自ずとリーダー格のオーディスとライが先行、その後ろを一行が付いて行く。
「まるで巨大な生き物の内臓を進んで行くみたいだな・・・」
そう、元魔導研究所の建物の内側、その壁はまるで肉壁のようになっていた。
まるで生き物のように脈打ち・・・・・・
「うむ、思ったより事態は急を急がねばならんようだ・・・」
「・・・オーディス団長、これについて一体何を知っている?」
「今は時間がない。 後で話そう、必ず。」
後で必ず話すと言われた以上、今はするべき事をするしかない。
「・・・・た・・すけ・・て・・」
微かに聞こえる声。すかさずそれに反応するライ。
「待てライ、一人出過ぎるなっ!!!」
止めたところで、既にライは二人の遥か前方に出て来た哀れな女性の所へ駆け出していた。
そして、仲間が駆け寄ってくる足音を聞きつつ、ライはその倒れた女性を抱き上げる。
「おいっ!!」
「あっ・・・・・・ゲボァ!!!!!」
一瞬の間を置き女性から吐き出されたスライムがライを襲い、ライは避ける間もなくスライムに包まれた。
「くっ!!? コレでは手が出せない。」
「ここは私達にまかせてっ!! えんじぇっ!!」
「ええッ!! 氷竜で凍らせます。後はフェイちゃん、お願い。」
スライムの中ライは仲間達がその身を救出しようとしているのを頑張っている姿を理解しつつも
スライムから自分の中に流れ込む怒涛の情報に身動き一つ取れなかった・・・・・・
・・・・・・・
上から覗き込む面々に見守られる中、ライは意識を取り戻す。
様子からして意識が吹っ飛んでからさほど時間は経っていないよう。
「気分はどうだ、ライ。」
「・・・・・・いいハズないだろう、あんな胸糞悪い見せられて。
俺が見たものがなんなのか。オーディス団長、貴方は知っているな。」
「・・・何を見た?」
「結界の中、人で・・・子供で壷毒マガイが行われていた事だ。それで出来上がったアレは一体何だ?
人を化け物に変え・・・ソレが生きたまま人の全てを喰って・・・くそっ!!」
メンバーに動揺が走る。その中でオーディスとフェフのみが冷静。
「・・・人が神を創るにはどうすればいいか分かるか、ライ?」
「知るか。俺は神さん何かに興味はない。 第一、人が神を創る? ばかじゃねえの。」
「確かに正気の沙汰ではないな。だが本気で神を創る事を考えた男がいるのだよ。
あまたの人命を集積,凝縮して昇華すれば神に等しきモノが出来る・・・神の創造を。
神の元、万人が平等であるために。 しかし、上の連中はソレを己の延命にしか見ていない。」
「で、やる事は陵辱と殺戮か。」
「・・・皮肉なものだ。 事を急ぐ余り、手段そのものが目的となってしまったのだ。
ライ、お前はココから引き返せ。そんな状態では満足に戦えまい?」
「いや、大丈夫。あれは俺達を弱らせてからじゃないと喰えないみたいだ。 俺達は生命力が強いからな。
それに、もう引き返せない。」
「!!?」
「既に退路は塞がれた。俺達が生き残るためには神モドキを倒すしかない。」
どちらにしろ、その話を聞いた以上引き返すつもりはないけどな。
手を汚してまで良かれと行った事が目的通り使われないのはのは悲しすぎる・・・それはそれで嫌だけど。
ガアアアアア、ギャオオオオ
響き渡る獣の声に、物思いにふけるチームメンバー達に緊張が走った。
「な、何だ??」
「・・・言い忘れたけどココに保管されてた獣魔兵全部、神モドキの手下。」
「「「「ちょっと待て!!!」」」」
先の大戦で人を素体として開発された獣魔兵。一体で並一騎士師団に匹敵する強さを有する。
しかし本能そのままに行動し、贄として若い娘を与えなければならないなど制御が難しかったため
戦線投入は見送られた。 開発された十数体中数体を除いて。
実際、ライもソレを目の辺りにして自分が属する傭兵部隊を戦略的撤退をせざるえなかったことがある。
その後でしっかりハメて集団でボコり、きっちしオトシマエはつけてやったが。
「来るぞっ!!・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・やっぱりアレは馬鹿だな」
彼らが今使っている通路は資材搬入路。それなりの広さはある。 人のサイズにとっては。
身長3mサイズの獣魔兵が一気に大挙して押し寄せればどうなるか。
ギャオオオオ、シギャアアアア
「・・・詰まってるね〜〜」
「・・・・・・詰まってるな。」
戦線投入は見送られた最大の理由。 それは獣魔兵が『バカ』であること。
詰まって身動きが取れない苦しさに獣魔兵同士で攻撃し合う始末。
「・・・モメてるわね〜〜」
「・・・・・・モメてるな。 ・・・・・・行くべ。」
わざわざ決戦前に小物相手に消耗する必要はない。チームは気を取り直し再出発。
そして辿り着いたのは最下層、最要注意危険実験場 のはずの大部屋。
そのドーム状の空間の最奥、入口の反対側に辛うじて人型の化物 イドの怪物が床に壁に根を生やし、いた。
オーディス,ライを中心に左右に戦闘メンバーが、その後ろにアルシア,エンジェ,フェフが展開。
対し、イドの怪物も数十本と刃物の様な触手を構える。
「我々は神など必要としない。我々の未来は我々が決めるっ!!!
行けっ、守護騎士達っ!! 人の世を守るためっ!!!」
オーディスの口上と共にその破壊剣「獅皇」が刀身に力を纏い、撃ち放たれる闘刃の烈撃波。
ズガガガガガガガッ!!!
猛烈な勢いで突き進む烈撃波は本体を庇う為に差し出された触手群を粉砕しながら切迫。
「フェイ、行っきまーすっ。」
烈撃波を追うように「加速」を掛けたフェイとその後ろにライが特攻。
「ガアアアアアアアアっ!!!」
烈撃波が本体表面を切り裂き、そこへフェイが高速接近を掛けつつ魔法弾で射撃。
一瞬、イドの怪物の胸部中央に核らしき光球が見えたが、復元の方が早く直に肉に覆い被されてしまった。
フェイはさらに近接で
「てえぇいっ!!!」
ザスッザクッ
「ガッガアアアアァァ!!」
魔法大剣で斬撃。斬った側から徐々に修復されていくが確かに効いている。
しかし
「!!? ええっ!!!??」
その醜悪な手で握り止められる魔法大剣。何モノも切り裂き透過しダメージを与えるはずが。
フェイの目の前、本体の身体表面がよろいのように硬質化。
さらに魔法大剣の光も消え、フェイが今手にしている得物は魔法の力が消えた短剣。
「ガアアァ(笑)」
ドスッ!!!!!!!
「きゃぅ!!!」
その一撃に、フェイの細い身体が空に吹っ飛ぶ。
見取り稽古のおかげか、その一撃にダメージを負っている様子はないが
このままでは地面に叩き付けられて負傷は必死。 それに
「ちぃっ!!」
駆けるライ。 そのままスライディングで滑り込み、フェイを受け止め
トス、ポイッ!!
「ふにゃっ!!? お尻打ちゃったよぉ。お・・・・」
その光景に続く言葉を飲み込むフェイ。
フェイを脇に投げ捨てたライは、フェイに止めを差そうと襲い掛かっ来ていた触手を薙ぎ払い護っていた。
フェイが空に吹っ飛び叩き付けられ、そこに触手が殺到した
と、人と触手が邪魔でそうしか見えなかったエンジェは
「よ、よ、よくもフェイちゃんをおおっ!! ・・・・・・許さなくってよっ!!!」
キれ、その性格が、慈しみ癒す『慰撫』から 高圧,攻撃的な『威武』へとシフトチェンジ。
エンジェもフェイ同様、唯一無二の肉親の危機に性格が変わる。 良かれ悪かれ。
精神集中と共に法杖先のクリスタルから走る召喚魔方陣。
「行けっ、氷竜! 我が敵を滅せよっ!!!」
召喚魔方陣から顕れた氷竜は触手群を蹴散らしながら本体へ凍結光を叩き付ける。
「よしっ!! ナイス、エンジェっ!!! ・・・???」
効いているのかコレは。
いつまで経っても凍結光が撃たれる本体にダメージが与えられている様子がない。
「エンジェっ、氷竜を引けっ! こいつは魔法力を吸収するっ!!」
ライの叫びにエンジェは応えない。 遠目では集中しているように見えるが。
ライの矛先は触手群から氷竜へ。
「何をするっ!!?」
「黙って俺を信じろっ!!」
仲間の制止を振り切り一撃で氷竜を粉砕。それとともにエンジェが卒倒しかけた。
「!!!」
「・・・やはり、喰われかけてたか。」
氷竜=エンジェ。
このまま攻撃を続けさせていたらエンジェは氷竜を通して生命力を吸い尽くされていただろう。
「みんな、神モドキに魔法は使うなっ!!!」
あちこちから了解が帰ってくる。
しかし、これで攻撃魔法から喰われる事がなくなったが、攻撃の有効手段が半分以下になった。
「何だあれは?」
上がった疑問にその方を見ると、
刃状の触手群とは別に新たに生え始めた 先端が目の様にレンズ状の触手群・・・
それがすべて此方の方を向き、中央に光が点り・・・
「みんなっ、散れぇ!!!」
ライの叫びに全員が反応。 間一髪、触手群から放たれた破壊光が避けたその場を薙ぎ払う。
「ば、化け物め。魔法じゃなく、生体で破壊光をだすか!」
この世で、生体だけで破壊光を放つ芸当が出来る生き物は竜辺りのみ。
「・・・友よ。 貴様一体、何というものをつくってしまったのだ。」
呆然となるオーディス。
正直、彼は『神』を甘く見ていた。 守護騎士団で掛かれば勝てると。
しかし現実は、攻撃を封じられ、打つ手もなく、消耗の果てに全滅を待つのみ。
そのオーディスに駆け寄るライ。一つの策のため。
「おい団長、頭がボケっとするなっ。体勢を組み直せっ。」
「・・・だめだ。」
「?」
「・・・我々ではアレに勝てない。」
「ぼけてるんじゃねえっ!!!」
ドズッ
鉄蹴制裁、オーディスに踵落し。
「ぐっ!!!??」
「みんなまだ頑張っているんだ。頭のアンタが諦めて如何する。」
「・・・手がないのだよ。全くな。」
「・・・・・・・手はあるぞ、一つだけな。」
「何っ!!!??」
「俺の未完の切り札。 生か死か。成功すれば皆生き残るし、失敗すれば・・・
だから時間が欲しい。少しでも多く。」
「・・・ふっ。ライ、君が皆に命令したまえ。
気づかなかったか? 指揮中枢が私ではなく君に移っていた事に」
「それでも頭はオーディス団長、貴方だ。 だから皆に命令してくれ。俺のために時間稼ぎをしろと。」
「良かろう。皆、聞いての通りだ。ライに命を預けろっ!!!」
「「「「「おうっ!!!!」」」」」
興奮しすぎていたらしい。二人の会話は全員に筒抜け。
「・・・成功したら王都守護後騎士団団長の座、ライ、貴様に譲る。」
「んなモノいらねぇ。万人の平和は俺には重すぎる。 だからボーナスくれ。」
「団長の座をんなモノ扱いか。考えておこう(苦笑)。」
触手群をチームの戦闘のど真ん中までライは進み出る。
ここが成功と失敗のぎりぎりの居合い。
これ以上遠すぎれば届かない。これ以上近すぎれば触手の集中砲火を浴びる。
ライは鎧を解除し、軽装で構え神経集中。
精神に感応し、魔力が空中に立体魔方陣を走らせ始めた。
渦中のど真ん中、ただ突っ立っていれば当然狙われる。
呪文を紡ぐライを標的にしたレンズ触手。
動けば呪文は解除、失敗。だから動く事は適わない。 そこへ、
「我が刃は光をも斬る。 ライ、安心して続けるがいい。」
それからライを護るように立つキリト。
破壊光が放たれた瞬間
ーー
居合い抜き一閃、煌く銀刃が光を真ッ二つ明後日の方向へと切り分けた。
「ん、我に斬れぬモノはなし。」
成果に納得するところを見ると、未確認でやってみたらしい(汗)。
しかし、キリトがライを護った事でレンズ触手群の標的は二人へ。
「これは・・・これまでか(汗)?」
対一なら迎撃する自信はあるが無数となると・・・・・・ その二人を救ったのは
ズンッッ
二人の後方から高速で撃ち込まれて来た砲弾。 文字通り、戦斧「獣皇砕」で床を砕いて作った石製の。
次から次へと砲弾が打ち込まれ、触手が千切れ吹っ飛ぶ。
「がははははは、魔法が駄目なら石投げりゃいいんじゃぁ。 ふんっ。ふんっ。ふんっ。」
それは豪力を持つゴリアテ、貴方だからこそ言える台詞です。
普通の戦士が出来るのは弾の飛礫程度なのでそんなもの求めないで下さい。
無数に迫る刃触手群。遠距離攻撃のレンズ触手群はゴリアテの砲弾が牽制しているが。
今のところ、ライを身近で護れるのはキリトのみ。
「僕を忘れてもらっちゃこまるな。」
〜〜っ〜〜っ
バルバードが鳳凰の翼の如く舞い、迫り来る刃触手群を一気に薙ぎ払った。
やはりこの男はおいしい処をいただかないと気が済まないらしい。
知将、斧槍の優男カイン登場。
「エンジェちゃ〜ん、フェイちゃ〜ん、僕の勇姿見てくれたか〜い。」
と、魔法が使えないので自分の身を守るだけの観戦組となったエンジェ&フェイ&アルシアの方に向いて
手を振りウインクして見せるのは余裕か、軟派男のサガか。
「へぇ、あの変態男、バカのくせに意外に強いんだぁ。」
「ホンとカインてバカねぇ。身内に格好付けてもしかたがないのに。」
珍しく気があうが合うフェイ&アルシア
「皆さん、何故こんな状況で寛いでいられるのでしょうか。(泣)」
愚痴りながら触手群を潰すエンジェもその皆さんの同類。
「う〜ん、エンジェもフェイも可愛いなぁ」
「カインとやら、貴様いい加減にしろ。 殺すか?」
「いってくれるね、キリト君。ケリつけるかい?」
実はカインとキリトは犬猿の仲。その性格の差から接近すれば必ずいがみ合う。
「「しかしっ」」
「世のため人のため、ライに免じて」
「決着を着けるのは後だっ!!」
それでも、今この時だけは未来のために手を組んだ。
「ねぇ、オーディス。貴方の頑張りは決して無駄ではありませんでしたね。」
「ああ、人の歩みを止めるのは絶望ではなく諦めというが・・・私はこの絶望の中、希望の光を見たっ!!」
「はい・・・。」
「若者達だけには任せては置けない。私も彼の者の礎となろう。」
「御随意に・・・(微笑)」
オーディスが前線、ライの防護壁に加わった事で形勢は騎士団側へ盛り返す。
それでも、本体までは近づけない。
だが、それもこれで終わり。
魔方陣が完成すると共に凝縮、ライの身体に吸い込まれる。
「いいぞ。 みんな、どけっ!!」
「おう、ライよ。道を突き進むがいいっ!!」
ズガガガガガガガゴッッ!!!
離れ際、オーディスが撃ち放なった闘刃の烈撃波が触手を消滅させ、本体まで到達。そのまま吸収される。
しかし、道は出来た。 ライから本体まで、勝利の道が。
未完の奥義発動。
ライは大剣を振り被り駆ける。 時が止まった中、空気の圧力に身体が軋み肌が裂けるにも関らず。
一瞬の無限の時の中、イドの怪物まで切迫したライは振り上げた大剣を一気に振り下ろす。
鎧状硬質の表皮を打ち砕いた大剣は振り下ろされるまま地面に当たる前に砕け散った。
元々拾いモノの大剣。強化の魔法は掛かっていないこの状態でよく持ったほう。
剣が砕け散った今、残された武器は己の身体。拳を振り被り
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、
肌が切れ、肉が抉られ、骨が砕けていく。
それでも、核らしき光球は見えてこない。もう魔力は尽き掛けているというのに。
このままでは失敗し、皆が死ぬ。 それだけは絶対許さない。
ならば、俺の魂を使うのみ。魂を魔力へと変換しつつ奥義魔法を維持、攻撃し続けてやる。
俺を舐めるなよおおおおおおおおおっ!!!
音にならない戦叫を上げながらさらに
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、・・・・・・・・・・・・
終に、目の前に無防備に剥き出しとなった光球が現れた。
あと一発打ち込めば終わる。
しかし、腕が動かない。 原型を留めていない腕では成す術がない。
脚も身体を支えるだけの棒と化している。
魂を削り続けるライには策を考えるだけの気力、思考力は残っていなかった。
自分の頭を振り被り、光球へ。
ライは聞えるはずのない何かが砕ける音を聞き・・・・・
ライの奥義発動と共に起こる、音速衝撃による爆発。ドーム内は土煙に覆われ何も見えなくなった。
「何が起こった!!?」
「せ、成功か?」
声だけでしか確認できない中、目の前の触手がズブズブと溶けていくのを見ると自分達は生き残った
勝ったと思える。
「・・・?」
「如何したの、フェイちゃん?」
「ん、チョとだけ・・・今、らいの香りがした。」
「あらぁ奇遇ねぇ。私もよぉ。」
「・・・あるしあと同じなんてちょっと嫌。」
次第に収まる土煙。 神モドキがいた所に立つ、一つの人影。
全員が全員、それに歓喜し駆け出し、人影の正体を目視して硬直した。
見るも無残ボロボロの身体、血まみれで憤怒の形相ままのライ。
その身体がゆっくりと ゆっくりと倒れ
ドッ
身体が床にぶつかる非常識な音に全員の硬直が解けた。
ある者は駆け寄り、ある者は足元が覚束無いまま歩き
その中、ライの治療をするために慌てて駆け寄ったフェフとエンジェ。
血で汚れる事もかまわず抱き起こし・・・半ばミンチと化した両腕、出血多量、頭蓋骨陥没
・・・結論は既に出ていた。
「え、えんじぇ、早く らいの治療してよぅ。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「い、今死んだばっかりなんだから『復活』で」
『復活』・・・条件さえ満たしていれば死者を蘇らす事が出来る魔法。
だたし、そのためにはそれ相応の代償が必要。
「そうだ、俺らの命を分け合えば誰も犠牲にならずに出来るっ!!」
誰が叫んだか、確かにそれは正しい。
しかも、それを提供するのは疲れ果てているとはいえ守護騎士達。 これでも超高確率で期待できる。
「無意味です。例えそれが成功し、ライさんの肉体が復活されようと・・・」
フェフの口取りが重い。その重すぎる現実を告げる事が余りにもつらいから。
「既に、ここに魂が存在しません。
これでは、ライさんの肉体が復活されようと直に生きたまま腐り始め・・・
だから、・・・ライさんは・・・・・・完全に・・・死にました。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「守護騎士ライ=デステイヤーは死亡しました。」
沈黙が支配する中、自分の言っている事を確かめるように繰り返す。
「・・・・・・い、 いやあああああああああああっ!!!!!」
To be continued to 「episode02」