■とある騎士団の日常■
〜The Chivalry,s daily〜
EPISODE 11
中編
屋敷の生活は余程の事がない限り規則正しく、屋敷の家事(趣味)に携わっているか
各種軍事顧問に軍,自警団に出向するか、院で教鞭を取っているのが常である。
王たるライとその秘書 補佐レイハ,お子様なルナを除いて。
各々の予定は緊急事態も想定しているので多く余裕をもって作られているが
それでも、恋人同士のアレスとリオが当時に休日を取れる機会は意外に少ない。
常日頃から家事から顧問,教授,任務までよく一緒にやってる事はさておき。
毎度、夕食後 居間の気だるい時間。 皆思い思いに寛ぎ・・・
皿洗いを終えたアレスに嬉しそうに駆け寄るリオ。
「アレス君、明日の休日なんだけど・・・」
「あっ・・・すまない。 明日は一寸予定があって休日は取消しになった」
「えっ!!? そんなぁ、久しぶりの一緒の休日なのにぃ・・・」
「・・・ふぅ、わがまま言うな。 子供じゃないんだから」
「そんなこと言っても、最近一緒の休日は殆ど・・・(泣」
「・・・・・・(困」
他の面々我関せずに二人だけの世界へ突入か? と、乱入者。
「お〜〜い、惚気るなら向うでやってくれい」
「団長、最近アレス君を働かせ過ぎてませんかっ!? 労働基準法違反ですっ!!!」
「それは皆と一緒で変らないぞ。個人の予定まで俺に文句をいうな」
「えっ!!? それって・・・あっ」
リオがワケを聞こうと振り返ってみれば、既にアレスの姿は見事なまでに掻き消え
気配を探ってみれば急速に離れていっている感。追って慌ててリオは飛び出していった。
捕まえ追求した処で圧倒しニャンニャンに誤魔化されるのは目に見えているのに・・・
「・・・姉さん、知らないんですか?」
「アレスのヤツ、言ってなかったのか・・・て事は
知らないんだろな。 ディ、お前が言ってやれば?」
「嫌ですよ。そんな残酷なこと・・・」
と何がしたかったのかチャチをいれたディは読書再開。
「わう? わん?」何? なんなの?
「ふぅ、何なんだろうなぁ・・・」
無邪気にルナが聞いてもライは苦笑いに頭をクシクシ、他の面々を見ても素知らぬ顔。
この件に関しては関りたくないという気配がアリアリと漂う。
「・・・。 がうっ、ディ、話せっ!!!」
かぷっ カジカジカジカジ
それでも、黙して語らず散ったディは見事であった・・・
結局、相方は謎の急用のまま,弟は重体(?)で仕方なくデートの相手は
「リオ、元気無い。 元気出す、わん♪」
「うん、分っているんだけど・・・ね・・・」
能天気な銀狼娘だけ。 まぁそれでも居ないよりはましで
一人で悶々としているよりかは余程良く気分は晴れる。
「よしっ、今日は散発するぞぉーっ!!!」
「わおーっ!!!」
街中にも関らず空元気でも気合を入れる微笑ましい娘を傍目に通行人達は通り過ぎていく。
例え騎士で軍の将あろうと普通の娘として町に下りた以上、一介の娘でしかないのだ。
デートと言ってもする事など御決まりに、店に入って服を見たり屋台で軽食を取ったり
疲れたら公園で一服に、目前
「ワン! ワンワンワン♪」
狼なルナが元気に小動物と戯れちゃったりしてるが癒し効果は十二分。
それはそれで可也楽しいのだが・・・それだけ。 寂しさ倍増という気がしなくとも
ベンチに座ったまま思わず切ない溜息をもらすリオの前、ルナはテッテッテッと駆寄り
人目も憚らずピカーと変身。
「リオ元気ない、ルナ哀しい。 大丈夫?」
「うん・・・元気はあるんだけどアレス君がいないから寂しくて」
「ルナ、ダメ?」
「・・・うん、ごめんね。ルナちゃんと一緒にいるのはそれで楽しいんだけど
やっぱりアレス君の代わりにはならないから・・・ルナちゃんの代わりがいないのと同じ」
「くぅ〜〜ん」
寂しい笑みのリオに頭をクシクシと撫でられては、能天気なルナも流石に成す術無し。
「・・・帰ろっか? 今日の夕食の材料を買って」
「わん♪」
ただ時間を潰すよりかは家事に追われるほうが増しと。
「ルナちゃん、今夜何が食べたい?」
「わぅ〜〜(悩。 ・・・肉っ!!!(シタッ」
「だから、お肉ばっかりじゃダメ。お野菜もちゃんと食べなきゃね?」
「・・・」え〜〜〜
仲のいい姉妹の如く手を繋ぎ二人は商店街へ。
イイものを安く沢山買い漁り、二人とも両手を買物袋で占領で屋敷に帰ろうと
ふと、リオが見た人ごみの その向う。
通りを歩くアレスが。 若い娘と和やかに話をしながら
「えっ・・・・・・」
瞬時、全ての喧騒が消え何故かアレスの声の断片だけが僅かに聞こえる。
本当なら聞こえるはずが無いのに
結婚相手 本当 俺 いい
・・・何で、アレス君が私以外の人と結婚するの? 何で? 何で? 何で? 何で?
ガシャっと買物袋をおとしたまま唖然と硬直。
「わう? リオ?」
ルナがその姿を見ようとしても、既に去って居らず 何?何?と首をかしげるだけ。
ゆらりと幽鬼の如く買い物袋無視で歩き始めたリオに
「わ、わん!」えっ、待って〜〜
+買い物袋を抱えて急ぎ追っかけていった。 何故、リオの顔を見た人ごみが
見事なまでに割れ道が出来たかど理解出来ようはずもなく、それでも決っして
前に回りってリオの今の表情を見ようとしないのは野性の感・・・
帰って来たリオはそのまま居間に居座り、ソファに座ったまま虚空を凝視。
ゴゴゴゴゴゴと周囲が揺らいでいる気もしなくもない。
「ルナ、リオに何があったんだ?」
「きゃうん・・・」分んない。
流石の能天気犬娘(誤)も義姉の機嫌が宜しくないと分ってか、怯え気味に耳が寝てる。
なんであれ居心地が悪いことこの上なく、かといって自室に戻れと言えるはずもなく。
千戦練磨のツワモノ達ですら いや、だからそこ遠巻きで見守しかなかった。
触らぬ神に祟り無し。
リオがツカイモノにならなくとも料理を作れる人なら屋敷に他にもいる。
その面々で夕食を作り未だ帰らぬアレスを他所に、空間凝視でも黙々と食事するリオ
がいつ暴れやしないかと戦々恐々としながら夕食を食べ、早い時間にも関らず
主を差し置き四姫+犬娘以下即撤退。 残されたのはライとディのみ
「「・・・(し、しまった・・・逃げる間を)」」
普段ならリオにまかせっきりでもいいのだが、今の状態では伝えなければいけない事を
伝えずにいるのは目に見えている。かといって二人とも人に押付けができる性分でない。
重い空気の中、三人(主に二人)は茶を啜る事暫し・・・・・・
「遅くなって済みません。ただいま帰りま・・・した???」
兄貴分と弟分にすがる目で見つめられたらアレスでなくとも引く。
「・・・夕食は食べてきたので、今夜の夕食は夜食に頂きます。
それと当分休日は出向く事になるので、リオにはくれぐれも・・・」
ギクッ
と二人は慌てて周囲を見回し・・・居た筈のリオの姿はかき消したように居ない。
・・・・・・はぁ
「如何したんですか、二人とも?」
「・・・いやいや。まぁ良く分らんが頑張ってくれ、程々に」
「はい? はい。」
アレスは自分の夕食を盆に載せ行ってしまった。自室で仕事を済ませるために。
しかし、リオは一体何処へ行ってしまったのだろうか。
と、アレスがさった後のドアの前で空間が揺らぎ
「アレスくぅ〜〜〜ん(泣」
「「おおうっ!!?」」
滝涙にヨヨヨ泣くリオが。 態々姿消しの魔法で隠れていたのか?
「アレス君・・・やっぱり浮気を・・・」
「ね、姉様・・・」
「そ、それは幾ら何でも軽率じゃ」
ぎろっ
「「・・・・・・(固」」
もはや何も言えない 言わせない。 圧倒的な威圧感でリオは幽鬼の如く去って行った。
「・・・これから、どうなるんでしょう?」
「それに関しては、俺よりディの方が推測が立つだろ」
「そんなの・・・分るわけ無いじゃないですか。知る限りアレスさんが初恋人なのに」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「降るかな、血の雨・・・」
「その程度で済めばいいんですけど・・・」