「・・・行くぞ」
御舘の合図に霞みが如く消える忍達。そして御舘も一瞥し消えた。
残ったのは唖然と目を見開いたままピクリとも動かないレイハと
茫然と立ちすくむライ。
「何故・・・何故・・・何故殺さなきゃならないんだあああああっ!!!」
慟哭が森響く。だからそれに気付かない。
声にピクッピクっと反応する指に。
「うおおおおおっ・・・おお・・・ぉぉ」
哀しみに己の無力さに雄叫びを上げる気力も失われていく。
「・・・・・・」
そのまま地面に膝を付き、頭を突っ伏したまま動けない。
そのライの側に誰かが立ち、しゃがみ背を優しく撫でる。
ライが顔を上げるとそこには
「・・・レイハ?」
うんうんと泣顔を縦に振り答える。
「・・・生きてるのか? 幽霊じゃない?」
ただ、うんうんと泣顔を縦に振り答えるのみ。
「・・・・・・・なんで喋らないんだ?」
パクパクと口を動かし、指し示したその背中には
「うげっ」
多分胸まで達している深々と刺ささったままの短刀
「・・・抜いても大丈夫か?」
と言うか、抜いて下さい。そのままだと満足に動けないので。
静かに握りに手を沿え、傷を広がせないためずれないよう一気に抜くっ!!!
「んっ・・・・・・もう、大丈夫です。」
その傷痕、血は滲んでいるが大した事はない。
多分主要な血管,骨,臓器を縫って刺さっていたのだろう。
「済まん。俺、頭が混乱して事態を把握できてない。説明してくれ」
「簡単です。 御舘様が私を死んだ事にしたのです。
これで、もう自由です。里には帰れなくなっちゃいましたけど。」
「あ〜、それは問題無い。屋敷にいれば済むだろ。
あ〜、そうか・・・・・・眼鏡無くて大丈夫?」
その顔、絶対理解出来ていない。
「・・・伊達ですから。屋敷へ帰りましょう?」
ライを先に行かせ、レイハは後を振り仰ぐ
「・・・ありがとうごさいます御舘様・・・父上様」
・・・・・・・・・
翌朝、レイハから大凡の事の経緯が話され
「皆様、改めてよろしくお願いします。諜報,戦忍としても。」
「・・・・・・・・」
皆の視線が一斉に向いた先には傷塗れの顔でテーブルに突っ伏し
死んだ振りをするライ。
「・・・本来なら誉めるべきなんだろうナ」
「本来ならねぇ・・・またライ独りで頑張ったからぁ」
「でも、そんな気になれないのは何故だろう」
「あ、あの、皆さん?(汗」
「御前は黙ってろ!!」
ルーの指差し一喝に押し黙るレイハ。
「・・・皆でやさし〜〜く傷の治療して上げなぁい?」
「賛成。」
「イイ考えだな、ソレ」
後姿、ダラダラダラダラと汗が流れ動揺しているのが目にみてわかる。
「・・・合掌(ナ〜ム〜)」
「つ、謹んで遠慮させていただきますっ!!!」
飛跳ね逃げようとしてももう遅い。がっしりとシエルに腕を掴まれ
「謙虚にならなくてもいいぞっ(ニヤリ」
「やさしぃくしてあげるわねぇ(ニヤリ」
「まあ、楽しめ。 ゆっくりナ(ニヤリ」
「うっうおああああああっ!!?」
その光景に乾いた笑みを浮べるしかないレイハだった・・・
温くても、ここにはレイハ個人としての居場所がある。
そして理由はどうであれ必要としてくれる人も。
これで彼の者に四の力が揃った。
そして物語は first story『ある騎士団の日常』へ
episodeW
"そして…"
over...
Presented by NAO
02.11/09〜03.01/26