瞬間、居合を詰めた執事が神狼牙でライの首を刎ねようとするが
!!?
剣がソレを拒むように刃が肌に接したままピクリとも動かない。
「俺の剣じゃ俺は殺せない。 相棒は返してもらうぜ、執事さん。」
適わないと思ったか執事は剣を鞘に戻して返し
「如何したっ、その男を殺せと言っているのだっ!!」
「私は貴方だけに御使いしているわけではございません。
ライ様を殺したくば己の手を御使い下さいませ。 失礼します。」
「お、おのれええええっ、無能があああっ!!」
斬っ!!
天井を穿つ真空刃に押し黙る御老達。
「俺を殺したいなら自分の手を汚せよ。で、俺の手配を解いて騎士に戻すくらいだ。
肝心の話はこれからなんだろ? まどろっこしいのは抜きで単刀直入にいこうぜ」
「ふむ、よかろう。では単刀直入に、君は内に「神」を持っているな。
元々それは我々のモノ。返して頂こう」
「・・・代りに町には手を出さないってか?
年食ってるだけあって交渉がヤらしいな。 で、誰に渡したらいい?」
言葉を理解出来なかったか空間を支配する沈黙。
「欲しいんだろ、コイツが。やるよ」
金龍眼のライが差し出す右手、その中には輝光体が。
「そ、ソレをよこせええっ!!」
我を忘れ飛出して来た老人が一人、ライに近づき
「一つ注告しとくけど、己の欲望に喰われるなよ」
その忠告も聞かず老人は輝球体を手に取り、身体に吸収され
「おおおお、こ、これは、すゴイイイイイ」
見る見るうちに老人は変貌をとげてイドの怪物に。
「ホンの少し渡しただけなのにもう化けたか。凄い欲望だな。
使わなけりゃ大丈夫だったのに・・・」
「モット、モット力ヲオオオオッ」
ライは距離を取り右へ左へ逃げ回り、イドの怪物が暴れる様を眺め
彼等がその一言を発するのを待つのみ。
「もういいっ、ソレを始末したまえ!!」
「やだね。 まあ放っておけばそのうち自壊するさ」
「・・・わかった。もう我々はこの件に関与しない。それでいいか」
「・・・・・・正直、俺は今アンタ達を滅ぼしてしまいたいくらいだ」
裂っ!!
黄金のオーラを纏う剣で一突き。
それだけでイドの怪物は硬直しボロボロと崩れ始め、残ったのは塩塵の塊。
「さて、もう帰ってイイよな?」
沈黙を肯定と受け取り、ライは悠然とその場を立ち去った。
・・・・・・・・・・・・
「あの男、危険だ。始末せねば」
「・・・私は降りる。 あの男に関れば滅びるのは我身」
「私も同意見。 まだまだ長生きしたいのでな」
「殺す、殺す、殺す、・・・」
「君等個人で行うには一向に構わん。しかし我々まで巻き込まないで頂きたい」
そして賢老院の灯りは消えた・・・。
一人ヤキモキするクリスティンを他所に
「コノ菓子、もっとクレ!!」
「ん〜イイ香りねぇ・・・」
「お嬢さん、僕とイイ事しないかい?」
ルーは菓子を強請り、アルシアは優雅に御茶、カインは若いメイドをナンパ・・・
「み、皆様はライ殿が心配ではないのですかっ!!」
「・・・今更ね」
「ココで遅れをとるような連中なら既にライは生きておらんヨ」
「そうそう、貴方も少し落ち付いたらどぉ?」
「しかし・・・」
「しかたないナ。これを見ろ」
ルーは魔杖で床を突くと同時に展開する転移魔方陣&探査型魔方陣。
「ライの位置,状態は捕捉済み、本当に危険ならいつでも行けるって事。
最も、その必要はもうないんだけどね」
「そだナ」
ルーが魔力供給を断った為、魔方陣は崩壊。
「えっ、何故っ!!?」
「だって、ナァ?」
「俺、帰ってきたからな」
クリスティンの背後に現れたのは、普通に普通のライ。
「えっ、えっ、ええっ、何故っ!!?」
「さっきから驚いてばっかりだな君は。
今更俺があんな死に損ない達に屈するかよ(邪笑。
ま〜、これでジジイどもは大人しくなるさ」
清々したと伸びをするライを呆然と見、察したのかクリスティンに浮ぶ笑み
「じゃ、俺達は帰る。 余り留守には出来ないから」
「・・・はい」
帰ろうとするライ達に贈るのは別れの詞ではではなく敬礼。
それは戦士として騎士として、先輩達に対するモノだった。