∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 03 ■
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深森の道、

「追われてぇ〜〜♪思えばぁ〜随分遠くへぇ〜〜♪ 来たもんだ〜〜♪」

相変わらずに相変わらず暢気なライの鼻歌が響く(作詞作曲:ライ)

「本当にそうよねぇ・・・」

今、一行がいるのは国の隅。

王都からはその遠さから国土とすら認識されていない場所。

三角状に二方、北東西を三つの山脈に囲まれ東西の山脈は豊かな川を生み、

豊かな大地の深森を育み・・・のはずなのに人気はない。

その訳は村に着いて分った。

周囲を要塞の様に丸太杭の塀で隙間なく取り囲み、物々しい雰囲気

・・・・・・

・・・・・・

ここは一同を代表してライが

「たのもぉーーー」

しばらくしてゆっくりと開き始める門。武装した門番らしき人が現れた。

「この村に何用ですか?」

「我々は旅をしているのだが、宿を貸してもらおうと思って来た」

「・・・イイ判断です。 どうぞ」

外と違い塀の内側はそれなりに賑っていた。

その中身は種の坩堝。純人,獣人,翼人,亜人等々々。

何らかの理由で住んでいた土地を追われたのだろうか。

残念ながらこの国の獣人の地位は高くない。

何であれ情報収集。さっきの門番に

「イイ判断というのは? 外は全く人気がないな?」

「ココは様々なモノがすむ地なんですよ。魔獣とか死霊とかが数多くね

だから滅多に旅人は来ない。村も大きく出来ない。祝福された大地なのに」

「・・・・・・・・・」

それで全てが納得。

端っから元々多少物騒でもライ等には問題無い。なんせ出鱈目に強い一行だから。

そして朝、この地に入ったばかりで一番危険な時間帯である夜の事まで

分るはずもない。

しかし、普通どんな豊かな大地でも「祝福された」という言葉は使われない。

例えば異常なくらいの収穫率を叩出さない限り・・・敷地内の半分が田畑。

つまり、それだけでココの人口を賄なえるだけの収穫量があると。

連れて来られたのはソコソコのサイズの一軒家。

「この村には宿屋がないので私の家にお泊り下さい。狭い処ですが・・・

それと日が暮れたら決して外に出ないよう。では私は夜番なのでコレにて」

確かに、一人で生活する分には十分・・・一応全員横になれる程度?

それでも折角の好意、甘える事にした。

深夜、響く獣・・・いや魔犬か? それの叫声。

サイズ的には大型の犬程度。その見た目,本性は凶悪

群れて無意味に貪欲に他の動物を襲い、その肉を貪り食らい尽くす。

ただ名目上、魔犬と呼ぶだけの魔獣の。

それだけではなく他に色々な魔獣の叫声が聞こえる。

鳥型、蜥蜴型、蟲型、羽虫型 数え始めたらキリがない。

不意に、

「来たぞおおおおおッ!!」

響く雄叫び、騒がしくなる村。

「・・・さて」

「助っ人に行くんだね」

「お前らもな(笑」

既に、ライを筆頭にミンナがミンナがフル装備。

ライはレザーアーマーに棍。 ベストと言い難いが仕方がない。

カインは斧槍にプレートメイル。敏捷性は低い代りに攻防重視。

ゴリアテは上半身裸に肩当、戦斧「獣皇砕」それだけ。・・・それだけ。

アルシアは鎖鎧に鉄鞭。流石に今回ばかりは重くて嫌いな鎧装着。

ルーはコスプレみたいに魔導師ローブを腰で締め、魔杖を手に。

 

一定期間毎に必ず、まるで申し合わせたかのように魔獣達は襲ってきた。

その度に幾人も犠牲になり・・・それでも彼等は其の地から離れない。

故郷を追われ、ここが最後の場所。

そして今夜も・・・

「来たぞオオオオオオッ!!」

見張りの声に男女,大人子供関係なく戦える者は手に武器を取り、戦う。

空から来る魔獣には矢を射掛け、

塀を登り侵入しようとする魔獣は塀の上から得物で叩き落し、

それで侵入した魔獣は数人掛りで、

今夜、夜明まで乗り切れば当分は大丈夫。夜明まで乗り切れば・・・

「あぐっ!!」

魔獣の爪を受け一人が倒れる。それに蟲の魔獣が襲いかかり・・・

バランスが崩れ、正に一気に犠牲者が出ようとした其の時

轟っ!!

疾風が駆け抜け、魔獣がまとめて吹き飛び肉片と化した。

「まだ戦えるかっ!!」

「は、はい。 貴方は?」

その村人は、村人同士認識はあったが今日来た旅人達までは知らなかった。

「俺達が撃って出るっ!! 村人は護りを固めるようっ!!」

卯も言わさない説得力ある口調にその村人は頷き、

その戦士達、ライ一行は魔獣の群れの中へ。

外でライ,カイン,ゴリアテが前衛、地を行く魔獣を蹴散らす。

内でルーが魔法「火炎の矢」の連発で空を行く魔獣を叩き落し、

アルシアは怪我人の治療。

その日初めて、村はわずかの犠牲者だけで夜明け前に魔獣を退却へと追い込んだ。

魔獣の返り血塗れのライ達に近づく一人の村人。ライを村へ入れた門番。

「ありがとうございます。大変、大変助かりました。

貴方達は一体・・・」

「流しの傭兵といったとこかな。一泊の恩義、確かに返した(笑」

返されたのは一泊の恩義どころではない。それを平然と・・・

「村長に会っていただけませんか? そして出来れば・・・」

「・・・まあ、断る理由はないわな。」

取り敢えず先に身をサッパリさせたライ一行はその門番に案内され村長の家へ

村長の家と言っても他の家屋と大差ない。

出迎えたのは正に辺境の男と感の中年。肉付きからして実力派リーダーだろう。

「まずは助けていただき礼を言わせて頂く。ありがとう。」

「いやいや、来掛けのついでさ。泊めてもらった義理もあるしな。

それより何故危険な目に会ってまでココにしがみ付くか聞きたい。」

「・・・貴方がたには話しても良さそうだ。

我々は故郷を追われた。コレは村人達を見ていただけたならお分かりだろう」

頷くライ一行。でもそれだけではそこまでしてココにしがみ付く理由にならない。

「それにコレを見ていただきたい。精密性は折紙付きですぞ。

我々の仲間が命と引き換えに作ったものですからな」

テーブルの上に広げられる一枚の地図。可也詳細な。

この地図通りなら山脈の間を行けば国内最短でそれぞれ隣の国に行けるだろう。

「この地を征する事が出来れば、三つの国を繋ぎ

我々は新しい町を、文化を築く事が出来る・・・」

男が熱く夢を語る。

これに対する反応は様々。在る者は嫌悪を示し、在る者は馬鹿にする。

ライは

「・・・面白い、オモシロイじゃないか。 この村、俺達が護らせて貰う。

いいよな、みんな。」

「僕は異論ないよ。」

「ワシャ大賛成じゃっ!!」

「いいんじゃないかしらぁ? 元々当ての無い旅だったんだからぁ」

「御主の好きにせい。私は楽しければそれでいいぞ。」

「しかし、貴方がたは傭兵ではないですかな。

我々は護衛料を払う余裕がない・・・」

「銭なんか問題じゃない。俺達は貴方達を・・・

いや、可能性を護るべきだと思ったから護る事にした。

ここにいる間、俺達の住居と飯さえ提供してくれればいい。」

「・・・その語り、まるで騎士のようですな。

改めてお願いしたい、我々を護っていただきたい。」

「心得たっ!!」

固く握手する二人。


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■ EPISODE 03 ■

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