∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 02 前編 ■
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「よう、キリト。 調子はどうだい?」

ライが突然来たにも関らずキリトは全く驚かない。 ある意味この日が来る事は既に決定済みにだからだ。

「・・・これと言って対して変わらん。俺がエンジェに手助けしてやれる事はなにもない。

毎日する事といえば己の鍛錬のみだ。」

「お〜、見事なダメ親父ぶりだな。」

「ぬっ、お前も差ほど変わらぬはずだが。」

「俺の場合は身体自体動かなかったからなっ。あの時ほど健康がいいものだと思わなかったぜ。」

「ふむ。 ・・・わざわざ、こんな処まで雑談しに来たわけではあるまい?」

「まぁ・・・な、ちょっと込み入った話が」

「・・・家の中で話そう。」

・・・・・・・・・

「茶は出せんぞ。・・・ライ、身体の方はもういいのか?」

今さら聞かなくても見れば分かる。

常人の倍のスピードで回復していっているのは本人の努力以外何物でもない。

「大体、6割強だな。 もう十分に旅に耐えられる。 でな、さっきカインが戻って来た。

一つは、総司令部軍が本格的に俺を捕縛するため動き出したという事。 高額賞金まで懸けてな。

もう一つは、この近くに新兵器実験部隊が来ているという事。 こっちは時期的に多分偶然だな。

アルシアとカインは旅の準備のため町にいってもらった。で、ここからが本題。」

「・・・休暇はもう終わりという事か。しかしアルシアを使わずとも俺を使えば良かろうに。」

「いや、本題はそれと違う。 単刀直入に言おう。キリト、エンジェと共にココに残れ。」

「何故ッ!!」

「エンジェのお腹には子がいるんじゃないのか? これからお腹が目立つようになる娘を連れていけない。」

「ぬっ!! 確かに、戦えない者はダメだ。しかし俺がついて行く事に何の問題がある?」

「エンジェと子を置いて行って如何する気だ?

・・・子を護り、愛する人ともに生きていく事も十分に戦いだと思うぞ。

俺はその戦場で戦える貴様が羨ましいくらいだ。」

まさか、自分の気にかけていた事を先に切出されるとは思わなかった。

「・・・・・・・・・」

「もう、何も言うなよ。」

「・・・・・・・・・すまん。」

「謝るなよ(笑)。考え様によっちゃ俺より貴様の戦いの方が過酷なんだから。 じゃ、俺帰るわ。」

傾いたキリトを他所にライは帰る体勢。そして帰り際に一言。

「そうそう、エンジェからはキリトから話してくれ。」

「なぁっ!!???」

厳粛な空気が台無し。既にライもそこに居ない。 今更追いかける気にもなりゃしない。

少なくとも今はエンジェに如何話すかに悩み、罪悪感に苛まされずにすむ。

・・・・・・・・・

「遅れて済みません、キリトさん。 すぐに夕食の支度をしますね。」

アルシアがいないせいでエンジェ一人、すべての業務を捌かなけれならなかったのだろう。

そういう時に限って商売繁盛。

エンジェが戻ってきたのは日暮れ直前だった。

「いや、その前に話がある。」

ライから聞いた通りの話を、キリトはほとんどそのままエンジェに話し・・・

返ってきた反応は困ったやら怒ってるやら安堵してるやら複雑な表情。

「・・・ライさんにカリが出来てしまいましたね」

「ああ、いずれまとめて数倍にして返す。 ・・・俺の本題はここからだ。」

「??? はい、何でしょう?」

「色々手伝いたい。家事,業務を含めて。 愛する女一人に全てをさせるわけにはいかない(笑)」

「・・・はい。さし当って、今からいっしょに夕食作りましょう(笑)」

「むっ(困)」

 

数日後、満月の夜

「悪いなゴリ、ココの撤収まで手伝わせて。」

「がはははは、気にするな。 どーせ、村におっても何も出来んし丁度ええわい」

「ん〜〜私、エンジェの結婚式、出席したかったなぁ・・・」

カイン,アルシアが戻ってくるのは多分、明日,明後日。そして既に二人の荷物は撤収済み。

キリトとエンジェの結婚式は一月後。 今もう既にエンジェのお腹は可也目立っており、

出来ちゃった結婚が村人達にバレるが、そんな事ライ達には知ったこっちゃない。

「・・・フェイ、別に」

「やだよっ!! 何があっても らいに付いていくって・・・側で守るって決めたんだもん。

それに・・・ココに私の居場所はないし、二人がイチャツく姿ちょっと見たくないし(笑)」

「・・・・・・(ポリポリ)」

「んじゃ、二人ともキリがいい所でさ」

「「ね・る・の・っ!!」」

「〜〜、二人とも健全じゃのぅ」

ゴリアテが毎晩毎晩酒の飲みすぎとも言う。

彼らが早々に寝ようとしていた、まさにその時

ズ・・・ン

「か、雷?」

「いや、コレは・・・結構近いぞ」

慌てて外に出る3人が見たものは、村がある方向 赤く光を移す夜空。

そして断続的に響く轟音。

「戦争でも起こったのかぁっ!!?」

「えんじぇ・・・」

「・・・俺が様子を見てくる。 二人は街道沿いに逃げて、途中で隠れてろっ!!」

駆出したライを二人は止める事が出来ない。

何故なら 今3人中総合的にもっとも強いのはライであり、

コレが追手であった場合一人の方が逃げ切れる可能性が高くなるからだ。

「ら〜い〜っ、必ず戻ってきてね〜っ!!」

ライがフェイの叫びに拳を上げ返した事を確認してから、二人もライの指示に従い村の逆方向へ。

 

時は遡りライ達が轟音を聞く少し前

和やかなキリトエンジェ宅では、二人がお茶を啜りつつ

「・・・明日か、明後日か」

キリトが言わんとす事は、ライ達の出発が,別れが である。

「本当はキリトさんも・・・・・・」

「今更・・・俺は、エンジェと共に生きていく事を決めた。

それにアイツ等なら俺如き居らずとも巧くやっていく(笑)」

「・・・きっと直、会えます。 フェイちゃん、この子に会いに来ると約束してくれましたから」

そう言いつつ己の腹を撫でるエンジェの笑みは限りなく優しい。

それはまだ生れぬ我子を思ってか、恋人が出来てシッカリしてきた愛姉を思ってか。

「しかし、それだとあっという間だ・・・(汗)」

「・・・・・・(汗)」

・・・ズズズズゥー

ツッコミの気まずさの沈黙に響く茶を啜る音×2

ズンっ!!!

「きゃっ!!???」

「!!??」

不意をつく重音。 まるですぐ近くに砲弾が撃込まれたかのかのように。

外にでた二人はそれが事実である事を理解した。

燃え上がる家屋。逃げ惑う人々・・・

「化け物っ、化け物じゃああああ、へぶっ!!」

二人の目の前、逃げてきた村人の胸に大穴が開き、倒れる。

村人が倒れた事で二人の視野に入ってきた一体の巨人。

いや、正確には甲冑を着込んだ巨人のような姿をし、肩にそれぞれ砲身とシールド

そのシールド中央に描かれているエンブレムは

「・・・総司令部軍。 確か、魔導装動鎧?」

総司令軍の一部隊が大戦時に開発を進めていたが終結と同時に経費削減のためその計画は下火になったはず。

魔導装動鎧。これの売り文句は、一体で守護騎士1チーム(4〜6人)に匹敵の戦力

その魔導装動鎧の砲身に輝く怪光。

「エンジェっ!!!」

「はいっ!!!」

ズンッ!!

キリトの意図を察し、二人は家に飛び込む。 直後、その家に魔導砲の破壊魔弾が直撃。

しかし、

「・・・?」

倒壊した家から現れる青い光、否、青い壁、エンジェが作り出した護法壁。

それに二人は傷一つなく守られていた。

「エンジェ、俺がコヤツ等を食止めている間に村人をまとめ、避難しろ。 すぐに後を追う。」

「はい。・・・・・・キリトさんに御武運を」

エンジェの祈りに、キリトの周りを取り巻く法陣輪。 コレがあると無いでは戦闘の流れが可也変る。

そしてエンジェ自身、手には法杖,背には光翼の姿はきっと村人の希望となるだろう。

「・・・そして俺は、天女を護る鬼となろう。」

キリトの呟きに妖光を放ち応じる「鬼哭」。

居合抜き一閃は破壊魔弾を明後日の方向へ真っ二つに切り裂き、キリトの攻撃は始まった・・・

・・・魔導装動鎧、確かに守護騎士1チームに匹敵の攻撃力ではあった。

しかし、所詮使手が使手。その能力を生かしきれてない相手に苦戦こそすれ負けるキリトではない。

「・・・看板に偽りあり。 ・・・ぬっ、数で攻めるか。」

だが、さらに十数体集まってくる魔導装動鎧。 恐らく魔導装動鎧同士で念話が出来るのだろう。

それらは一体がキリトに倒される間、まったく援護することなく観測しつづけていた。

キリトがこれ以上戦う必要は無いと判断し、遁走に移ろうと考え始めたその時、

どさっ

一体の魔導装動鎧が手に持っていた襤褸切れらしきモノをキリトに対して投げ捨てた。

全く動く事のないソレから地面に広がりゆく赤い染み。

ポニーテールだった長い髪が解け身体に纏わり、服と肌は煤汚れ、

水々しかった肌は今は陶器の様に白く生気がない。

ささやかな幸せが、たわいも無い夢が、この瞬間、脆く砕け散った。

「・・・・・・鬼哭、我命を喰え。 そして、敵を滅ぼせえー――――っ!!!」

修羅の形相に血涙。 鬼が吼えた。


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■ EPISODE 02 前編 ■

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