愛し合う二人にとって長い時ですらほんのわずかなものでしかない。
例えそれが実際の行為に及ばず、まどろみ稚拙な愛撫だけだったとしても。
既に時は昼を回ったにも関らず未だに着乱れたまま床に転がるライとフェイ。
「んにゃぁ〜〜、らぁい〜〜♪」
「はいはい、よしよし」
べた甘えのフェイが抱き付き人肌を堪能し、ライがそれを許し撫でる状況
奇襲者達がもうそこに迫っているとも気付かず。
バンッ!!
「「・・・・・・・・・・(呆然)」」
「「「「「・・・・・・・・・・(唖然)」」」」」
一瞬、状況に内外問わず凍りつく
「きっきゃあああああああああ!!」
我に返ったフェイが悲鳴を上げ、服装を直そうと慌て転げ・・・
そのハチャメチャになった一名を脇にあえて無視し、くつろぐ一同
「よう、おひさしぶり♪」
「とんでもない目にあったのに・・・君は相変わらずだね(笑)」
「あらぁ、よかったじゃなぁい? 元気そうで・・・本当によかったわぁ(ぐす)」
「何であれ、これでフェイは大人しくなるな・・・」
「あ〜〜、先にライさんの検診をすませますね(汗)」
「がはははは、酒じゃ、宴会じゃぁ」
「だから何で酒なんだよ」
・・・・・・・・
「さてと、落ち着いた処で、」
「宴会じゃああぁっ」
「酒から離れろや、ゴリ。 ・・・あの後、俺に何が起ったか話してくれるな?」
和やかな雰囲気が一変、緊迫したものになる。
「キリト、僕はこれ以上ライに隠す意味はないと思うね。」
切り出したのはカイン。さすがは心の悪友(とも)。
「エンジェ」
「はい。ライさんの身体は衰えてしまっていますが、精神的には一切問題ありません。
正直、・・・凄いと思います。」
「むぅ・・・言わざるえないのか?」
「なぁキリト、俺の性格は知っているはずだよな? のんびりは好きだが後手後手は好まない。」
「故に、常に必要最小限の準備は怠らない。 ・・・分かった。」
そして語られる一連の事実・・・
・・・・・・・・
「重傷で伸びてただけだと思ったんだけど・・・マジで死んでたとはなぁ。
つー事は、変な処で変なオッサンに説教されたと思ったのは夢じゃなくてあの世か」
「・・・意外にショックを受けんな。 らしいと言えばらしいが(呆)」
「十分にショックは受けてるぞ。」
「ふむ。 で、如何なんだ。やはり、それはお前の中に・・・」
それ・・・魂の結晶,聖魔の神の力
「それ、ね・・・それらしきものは確かに感じるぞ。俺の中にな。」
「つ・・・使えるのか?」
「・・・例えばココに出鱈目にでっかい剣があるとする。」
「「「「「???」」」」」
「その剣を使うためには伝説の巨人のような身体が必要だ。」
「・・・気が狂ったか?」
「まあ話は全部聞けよ。
そのでっかい剣と人の身体をその剣を使えるサイズにして使わせるのが 神とやらの力」
「なるほど・・・使えるのか。」
力が何たるかを理解していれば、当然使えると考える。
「可不可云々は別として、むしろ使いたくないな。自分が別の存在に変わってしまうんだぞ?
例えば、俺達が倒した神もどき・・・とかな。それに多分、一度変身してしまうと二度と元に戻れない。
精神構造が綺麗さっぱり変わっちまうはずだからな。」
全員が全員、あの時の死闘を思い出し顔から血の気が引いていく。
「そんなくだらないモノのために・・・」
「そのくだらないモノに俺は助けられたらしいんだけどねー。」
「むっ・・・すまん。」
「まっ、こうなった以上嫌がらせに逃げ回ってやるさ。最後の最後まで、なっ(邪笑)」
一体どちらが被害者やら。この笑みほど頼もしいものはない。
「小難しい話が終わった処で宴会じゃぁっ!!」
・・・話中ずっと鼻ちょうちん作ってたくせに。
「「「「「「「もう、えっちゅうねんっ!!」」」」」」
「ぐはっ!!? ちーむあたっくぅ?」
ライを初めとした全員の突っ込みがゴリアテにクリティカルヒット。 もう、息はぴったり☆
・・・うららかな晴れの日。村外れでキリトは一人鍛錬中
エンジェ&アルシアは医師&薬師で,ゴリアテは樵で村人達と親睦を謀り、
カインは村と町を往復して情報収集(表向き)、フェイはライの世話
そしてキリトはエンジェの用心棒・・・もとい、平和な村では用心棒は必要ないため正真正銘宿六。
「よぅ盛が出るな、キリト。」
キリトに声を掛けたのは急速に回復していっているライ。
杖をついて歩いている処を見るとリハビリがてら山小屋から散歩してきたようだ。
「・・・身体、もう動いていいのか?」
「おお、だいたい前の3,4割がた回復したかな。だから動いたほうがいいんだけどね。
運動させてもらえない。・・・・・・フェイが過保護で困るよ、ホント。
だからちょっとキリトに頼みたい事がある」
「ふむ。 丁度俺もお前に相談したい事がある。・・・先にお前の用件を済ませよう」
「そりゃありがたい。 で、頼みというのはだな、手合わせ願いたい。手加減なし、本気で。」
日々鍛錬し続ける者に、つい先日まで床に伏していた者が挑戦する。
「・・・・・・正気か。」
「勿論。俺だって伊達にダラダラ過してたわけじゃぁないさ」
「・・・闘気だけは完全回復か。 ・・・後悔するなよ。」
木刀を手に向かい合う二人。 これでも一撃必殺は可。キリトがライに対してのみ。
キリトは構え、ライは全身力を抜いた無形。
「・・・・・・ぬぅ」
どんな攻撃も当る気がしない。それどころかライが段々大きくなってく感覚。
このままでは闘わずして・・・
「っ!!」
一瞬でライとの居合いを詰めるキリト。そこから必殺の居合抜き。
ブゥン
ス
一歩下がられただけで避けられてしまった。
さらに追い縋り、刀の乱舞。
ス、ス、ス、ス、ス、ス
当らない。 木刀同士で掠りはするものの、その毎に自分が打ち込まれているような悪寒が走る。
ライの息が上がり始めている事が幸いだが、反して研ぎ澄まされていく闘気。
次の瞬間、キリトが打ち込んだのと同時にライが攻撃に動き
「・・・おしっ、勘は衰えてないな。」
「・・・・・・俺の負けか。」
キリトの咽喉元に突き付けられたライの木刀の切っ先。
キリトの木刀はライの胴を打つ寸前。
二人は木刀を納め、取りあえず身近な場所に腰を下ろす。
「油断しまくりだな、キリト。」
「否、それは敗因にはならん。問題は最後の一撃のみ」
「・・・キリトは負けを恐れ一歩下がり、俺は勝つため半歩進んだ。ただそれだけさ。」
「・・・随分と大きな半歩だ。 これだけの力が回復しているなら、もう他の者とイイ勝負が出来るな。」
「いや、今勝てるのはキリトだけだな。」
「ぬっ!!? その言葉聞き捨てならない。」
「そうゆう意味じゃなくってな。ゴリに勝つためにはどうしても今の倍の筋力が必要だろ。
カインは・・・置いとこう(汗)。アルシアとやるといいように弄ばれるのは確定(泣)。
フェイは、・・・俺はもう絶対勝てないし(諦)。」
「ほぅ、お前はそうゆう口か。 それで、そのライ殿が俺に絶対勝てると思ったのは一体どうゆう了見だ?」
「全盛期の俺なら五分五分だっただろうな。 キリト、お前さんは技で勝負するタイプだ。
油断と必要以上の警戒は技を鈍らせる。」
確かに、キリトは無形のライに必要以上に警戒してしまった。
そして、それでも最初の一撃は今のライには回避不可のはず。
それを避けられ逆上してしまったのかもしれない。
結局は油断に始まる敗因
「攻撃パターン、相変わらずだしな(ぼそ)・・・」
ぎゃふん
「・・・俺が負けて当然か。だが二度と貴様からは黒星は貰わない」
「どうだろな。 次やる時は色々小物用意させてもらうし。」
「いつまでもホザいているがいい。」
おのずと二人から漏れる不敵な笑み。この二人の組み合わせにはこの笑みが一番良く似合う。
「ところで、キリトが俺に相談したい事というのは?」
「行き成り話題を振るか? ・・・ぬぅ」
「・・・随分と口ごもってるなぁ。そんなに言いにくい事か?」
「・・・実は、エンジェの事だ。」
「??? いや、俺にエンジェの事相談されても(困)」
「正確には、俺はエンジェに・・・・・・愛の告白をした事がない。」
「・・・その手の事はカインにだな」
「あの男は必ず笑いものにするっ!!」
「・・・・・・確かに」
かと言って、アルシアも同様。 ゴリアテにいたっては相談以前の問題。
おのずと二人から漏れる苦笑い。この二人の組み合わせにはこの笑みが一番似合わない。
「つーかよう、お前とエンジェって付き合っているんじゃないのか?」
「・・・その言い方をするならば、付き合っていることになる。」
「??? 因みに、事の始まりは?」
「・・・酔った勢いで犯した。 処女だった。」
「をいコラ。ちょっと待て。」
「本当にするつもりはなかった。 エンジェが嫌がれば止めるつもりだった。
まったく抵抗されなければそのままやらざるおえない。違うかっ!!」
「落ち着け、むっつりスケベ。フェイにチクるぞ?」
「・・・話を戻そう。今、エンジェと同棲しているのだが、けじめをつけたい。」
「で、告白か。でもなぁ、俺、そうゆうの苦手だしなぁ。 ん〜〜〜
結局、お前さんはエンジェの事を如何思っているわけだ?」
「あ、あ、あ、愛しているぞっ!!!!」
「その愛しているっていうのがなぁ、ちょっと・・・具体的に。
例えば、もしエンジェがいなくなってしまうとお前はどうする?」
「ぬっ・・・・・・生きてはいけない。」
「それをそのまま言葉にすればいいんじゃないのか? そうだな
俺はエンジェの事を愛している。エンジェがいなければ生きていけない。だから・・・ てな感じで。」
「そんなに短くていいのか?」
「へたに飾るより単刀直入の方がよっぽどらしくていい。というのが俺の考え。
直接口で言うのが恥ずかしいなら手紙を渡すのもソレはソレで一興だな」
「ふむ・・・・・・やはりお前に相談して正解だった。感謝する」
まだ休憩を続けるライを残し、キリトは軽やかに家へ戻る。
そして、その日。 キリトとエンジェの夕食後のひととき。
「・・・あの、お茶入れましょうか?」
「むっ・・・頼む。」
異様に空気が重い。だからお互い話が切り出せない。
「「話が・・・」」
間がいいのか悪いのか。同時にしゃべり始める二人。
「出来れば、俺の用件から先に済ませて欲しい。で無ければ言う勇気がなくなってしまう。」
「は、はい。 私は後でいいですからキリトさんから先にどうぞ。」
「うむ、・・・・ぬ・・・あ・・・ぬぅ」
「き、キリトさん?」
やはり、口で言うのは無理のようである。 だが用意万全。
「これを読め、エンジェ」
「はぁ・・・???」
キリトは手紙を手渡した後そっぽを向き、腕組み仏頂面。
・・・・・・・・・・・・・・
「・・・キリトさん、これは?」
「読んでの通りだ。 返事はっ!!」
「はいっ。私も・・・ぐすっ(泣)」
「泣くなっ、泣くんじゃない (慌)!!」
「・・・ふふっ、そんなに慌てるキリトさん始めてみる気がします」
「ぬぅ、泣く次は笑うか。 ・・・で、エンジェの話というのは?」
「はい、済みません。ちょっと待ってください・・・・・・(ゴシゴシ)」
顔の涙を拭き服装を正し身を改めるエンジェに、キリトも圧倒され緊張。
「・・・随分と大層だ。 そんなに重要な話か?」
「少なくとも私にとっては重要な話です。実はですね・・・随分前からアレが全く来ないんです(照)」
「・・・アレ?」
「えっと、その・・・月のモノが全く来ないんです。 それで調べて見たんです。
そしたら、私・・・妊娠していました。」
まるで他人の話を聞いているような感覚。
「・・・つまりだ、エンジェのお胎の中には俺とエンジェの子が居るということか。」
「あの・・・驚かれないのですか(悲)?」
「驚いている。かつて無い程に。これでもかという位に。多分一生分。
さしずめ・・・驚き過ぎて返って冷静になったのだろう。だから些細な事は気にするな」
「それで、如何なんでしょうか? この子を産んだらいけませんか(怯)?」
「何を言うっ!! 誰が産んではいけないといった? いや、むしろ俺から頼みたい。
俺の子を産んでくれっ!!!」
「はいっ!!」
同時刻頃、山小屋のフェイ&ライは・・・
「そわそわして、如何した?」
「うにぃ、胸がドキドキして凄く不安。何でだろ?」
「ふぅん。 ちょっとコッチおいで。」
「うん、何?」
ぐいっ
「きゃっ!!?」
毎度、毎度が如く無防備にライに近づいたフェイは、座っているライに腕を引っ張られ懐に
「俺、しぱらくこうしてたいなぁ。」
「うん・・・(だきっ、ぎゅっ)。」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・落ち着いたか。」
「うん、いま凄く幸せ♪ ありがとね、らい。」
「おう。この程度でよけりゃ何時でも。(今更って気もしなくもないんだけどね。)」
「何?」
「んや、フェイの知らなくてもいい事。」
「変なの。でも許しちゃう♪」
彼らは謳歌する。 束の間の幸せを。