ポタ、ポタポタ
顔を打つ水滴の感触。 ゆっくりと瞼を開けると、逆光の中に
「・・よぉ、フェイ・・おはようさん。・・・・・・泣くなよ・・俺もつらい。」
出ない声を絞り出しながらフェイの頬を伝う涙を拭おうと思うが、
やせ衰え動く事を忘れた腕は反応こそすれ上がらない。
「うにぃ・・・」
ライが目を覚ましたら言いたい事はたくさんあった。でも・・・やっぱり・・・
「あぁ〜〜、・・・ごめん・・・ごめんなぁ」
フェイの少し脹れた片頬と服の切り裂かれた胸元が痛々しい。
朦朧とした意識のライでも謝っても意味がないことを重々承知しているのだが謝らずにはいられない。
「違うんだよ。これは らいがやっと・・やっと・・やっと起きてくれたから、嬉しくって・・・」
今になってようやくフェイの 涙に濡れた笑顔に希望が満ち満ちているのが見えた。
「そっ・・かぁ。・・・・・なぁ、フェイ」
「うに?」
「安心したら・・・少し・・・眠い。・・・寝て・・・いいか?」
「うん。でも明日、朝になったら起きてね」
「応〜〜〜」
ライはフェイに膝枕をしてもらい極上の微笑みに見守られながら自覚できる眠りに堕ちる。
そして約束は守られた。 多少破られ気味、ぎりぎりだったが。
「ねーーもう直、昼だよーー」
「ん・・・・z・・・」
「起きてよぉ(泣)」
・・・・・・ちゃんと反応を返すだけマシと思いたい。
やせ衰え目覚め際に多少傷ついたとはいえ、起きてしまえば後は全快を目指すだけ。
しっかりと身体を起こし、しっかりと食事をとり・・・
しかし、入る量が増えれば当然出る量も増える。
「・・・(や、やばい。トイレ行きたい)」
「うに? 如何したの?」
「んや、ちょっとな・・・えっと、ん〜」
「???」
「あ〜、肩かしてくれない? トイレ行きたいんだ。」
「その身体で動き回るのはちょっと無理だと思うよ。」
例えトイレに行けたとしても全身の筋肉は衰え、手は不自由。一人で用を足すのは難しい。
そうこうしているうちにさらに強くなる尿意。このままではいい歳して漏らしてしまう。
幸い、飲む事しかしていないので大の方は出る様子はない。
「た、頼む。急がないとちとヤバイ(汗)」
「うにっ、これっ」
差し出されたのは変な形をした陶器の瓶。
「尿瓶でもなんでもいいや。貸してっ」
ライは尿瓶の取っ手を手に引っ掛け、毛布の中で定位置に設置・・準備完了。
「・・・・・・・」
横に座りぼ〜とじっと待つフェイ。
「・・・あの、フェイさん?」
「ふぇ?」
「俺、用を足したいんだけと?」
「うん。」
「・・・恥ずかしいので外に出ていただけないでしょうか」
「あっ・・・・(ぼっ)」
トタトタトタトタトタトタ、バタン
山小屋の中一人になった事でやっと用を足せたライでした。
「ね〜〜らい、身体拭こうか?」
「んーーいいや。そんなに汗かいてないし。」
それ以前にまともに身動き出来ない以上、フェイにすべてをやってもらわなければならないのが照れくさい。
「ダメだよ。らいは身体が弱ってるんだから清潔にしなくっちゃ。」
湯を沸かし、布,桶を用意しながら湯拭きの準備をしつつフェイは話す。
初めっからするつもりだったらしい・・・
程よい湯で身体を拭いてももらうのは大変気持イイ。
しかし同時にそんなことをしてもらうのは申し訳なくもある。
「迷惑かけるな〜、こんな事までしてもらって。」
「ううん、気にしなくてもいいよー」
起こした上半身の背中から聞こえるフェイの声には喜びが聞き取れる。
「・・・すっかりガリガリになっちまった」
ライの身体は今やほとんど皮と骨のみ。体重にいたってはフェイより少し重い程度に違いない。
その頼りない身体を恥ずかしく思う。
「それでも らいの背中、広いね。」
「そっか、広いか」
会話は続かずそれでもお互いの考えている事が分かっているような気がする中、作業は続けられ
・・・残るは下着の中のみ
「・・・・・・うにぃ(照)」
「あ〜、そこは自分で何とかするからいいや。」
「でも、大丈夫?」
「ふと思ったんだけと・・・俺、結構長い間寝てたよな。・・・もしかして、ずっとフェイが?」
「・・・(コクコクコク)」
それは聞くべきではなかった。恥ずかしさの余り真っ赤に俯いたまま動くなくなってしまうフェイ。
二人の間に何とも気まずい沈黙が流れる・・・
「・・・あ〜〜、僕ちゃん」
「???」
「もうお嫁にいけない・・・」
「・・・・・・プッ、それを言うならお婿さんだよ(クスクス)」
「そうとも言うな(ニヤソ)」
「そうとしか言わないよ(クスクスクス)」
つぼにはまったかフェイの笑いが止まらない。
しかし、そういう照れるような場面がある毎に思い出すため恥ずかしがることなく順調に事が進むのはいいが
「・・・(ミスったか? 何か俺自身がが笑われてるみたいだ)」
さて、どちらがいいでしょう?
ライが尋ねてもフェイは起こった事態に対して悲哀のような憤怒のような複雑な表情をするだけで
何も語らない。
しょうがないのでリハビリをしようと思うのだが一人では身体を起こす事すら一仕事なので
何も出来やしない。
「なぁフェイ、俺、気分転換したい。」
「ん? 私、ココの掃除したいし・・・らい、外に出る?」
「おぅ、肩貸してくれ。」
「うに。」
フェイはライの横にしゃがみ、肩に腕を回してもらってから力を入れて立ち上がろうとしたが
思った以上の軽さにバランスを崩し
「キャっ!!?」
「おわっ!!?」
天地逆転。気付けば、ライがフェイを押し倒し、
フェイを抱きしめながら太股の間を割って布越しにフェイの股間に自分のモノを押し付けるという格好。
お互いに接した頬の感触が気持イイ。
「あ・・・・・・(照)」
「お・・・・おおおお(慌)」
ライがどんなに慌てた処でその腕はフェイの下にあり、フェイごと身体を起こす筋力はない。
もっともそれが出来たところでさらにヤバイ体勢になる予感がしなくもないが。
ジタバタジタバタジタバタ
「あっ、やぁん」
「うわあああっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい(慌・慌・慌)」
慌てれば慌てるほどモノは押し付けられ、その感触にモノは元気になり・・・悪循環
フェイが如何にかすればいいのだが、
痩せたおかげでさほど重くはないとはいえやはりライの身体はフェイにとっては大きく
そして色々な意味で手荒に扱える対象ではない。
「ぬをぁっっ!!」
ゴロン
起死回生、渾身の力を振り絞り転げ形勢逆転。仰向けに横たわったライの上にフェイが跨り抱きつく格好に
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ふぅ(疲)」
でも、もうライは疲労困憊で死掛け。その上でフェイはライの胸に顔を当てたままうごこうとしない。
しばらくして、やっとライはフェイを気遣う余裕は出た。
「フェイ、ごめん。大丈夫か?」
「うん。・・・・・・ねぇ、私ずっと・・・ずっと、こうしてたい。」
「・・・もう動く気力もねーし、どうぞ随意に」
体力を使い果たした拍子に何かをする気力すら抜けてしまった。
このままフェイに襲われても抵抗出来ない・・・そんな事をするような娘でもないが。
「う・・・ん・・・(嬉)」
ライは夢現にフェイの柔かい感触と温もりを楽しみながら、
このままフェイとやっちゃって腹上死しちゃってもいいかもなんて思ったりする。
しかし、そんな幸せな時間も長くは続かなかった。
バンっ
「こんな所に人の気配があるから妙だと思ったが」
「可愛いお嬢ちゃんと・・・死二損イかい。」
「嬢ちゃんよう、そんな死二損イといちゃついてないで俺達と遊ぼうぜ。」
ガラの悪い武装した男達。つまり
「・・・野盗・・・くっ。俺を置いて逃げろ、フェイ」
緊張を漲らせたところで身体が元に戻るはずもなく、
あの力・・はホンの僅かでもフェイを巻き込む事は確実。
つまり今のライではどうやってもフェイを守れない。
「ダイジョーブ、らいは安心してココで寝てて(怒)」
気付けば既にフェイはライから離れ、守るように仁王立ち。
「もしかしてフェイさん、怒ってらっしゃいマスカ?」
「うにっ!!!」
「何をゴチャゴチャ ヘゴバァッ!!!?」
一番近くにいた野盗と一瞬で居合いを積めたフェイの、鳩尾への双掌撃。さらに
「はっ!!!」
どんっ!!!
「がっ!!??」「おぁっ!!?」「うっ!??」
その状態から魔法弾を打ち込み、後ろにいた野盗をまとめてドアの外へ弾き飛ばした。
「・・・・・・・(目が点)」
「うにっ、うにっ!!」
およそミニスカという全く戦闘に似つかわしくない格好で
やる気満々鼻息荒く腕を振り回し外のへ向かうフェイの背中が女の子なのにとてつもなく巨大に見える
「・・・フェイ、ほどほどにな(汗)」
「うんっ!!」
フェイの姿が山小屋の外へ消え、
ドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカ
「「「うぎゃあああああああああぁぁ」」」
ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱん
「へぶっへぶっへぶっへぶっへぶっへぶっへぶっへぶっへぶっ」
凄まじいド突く音やぶん殴る音,ど突ク音,往復ビンタの音が開いたドアから聞こえ
「お覚えてろよチグジョー(泣)」
両頬をトマトのように脹れさせた男が泣きながら気絶した仲間達を引き摺り逃げていくのが見えた。
多分彼らは二度とココに来ないだろう。
少なくともライなら見た目も可愛い娘にボロ負けしたなど恥ずかしくって二度と来る気はしない。
うっかりすると、仮にもフェイは守護騎士(だった?)だから
そこらのぱんピーが束になっても敵う筈がないことを失念してしまう。
「楽勝♪楽勝♪ ただいまー」
・・・可愛らしい上に一騎当千の娘に好かれて俺はなんて幸せ者なんだ。 と、今は思う事にした。
「おかえりなさいませ、ごくろうさまです。」
「ん? らい如何したの?喋り方へんだよー」