■ とある騎士団の日常 ■
〜The Chivalry,s daily〜
EPISODE 01
少年傭兵ライ=デステイヤーは王都守護騎士団(ロイヤル)団長オーディスの強烈なアプローチに根負けして
ついにその申出を受けてしまった。
先の大戦決戦で無能な指揮官をぶちのめし、
傭兵部隊丸々率いて終結の要因の一つになってしまったのが運の尽き。
というかヤリ方が強引。
その功績にも関らず傭兵部隊を除隊、逮捕とのどちらかしかなければしかたがない。
もっとも、本人が本気で嫌がったのならタップリ報奨金を頂き自由になったのだが
「うむうむ。 ライ君、申出を受けてくれて私は大変嬉しい。」
「・・・・・・そりゃどーも(怒)」
守護騎士団駐屯地執務室、至極満悦のオーディスに対してライは苦虫を噛み潰したような顔。
それもそのはず、今までその申出を断り続け、ついこの間、傭兵部隊除隊されたところを
王都守護騎士団に逮捕された上、ここにしょっ引かれたのだから。
王都守護騎士団団長オーディスは熱血強引で有名だったが、まさかここまで強引な手を使ってくるとは。
「で、俺みたいな若輩者が行き成り守護騎士まで昇格してもいいのか?」
元々、さっさと戦争を終らせるために傭兵部隊に入ったライには宮仕したい気は一切無い。
「ライ君、君が配属される部署は麒麟(シィリン)だ。そこで君自身がみんなを納得させたまえ」
王都守護騎士団は団長オーディスの元、大きく5つに分けられている。
青龍(シーロン) … 主に対諸外国監視
朱雀(バーミリオ)…主に王国内警察職務
白虎(バイフー) …主に王都内警備警察
玄武(サンル) … 主に要人警護
麒麟(シィリン) … ・・・予備戦力?
状況に応じて別の部署の援護に回わったりするがほとんどコレで動く。
「・・・・・・散々人を誘って、捕まえてまで入れる所は予備戦力かい。」
「着いて来たまえ。君が入るチームメンバーを紹介しよう。」
そして団長直々に案内されたのは敷地内の訓練場。
そこで待っていたのは脳天気マッチョマン&ニヒルな燻銀男&
ミニスカートのダブルポニテお元気小娘&ロングスカートの大人し系ポニテ清純娘
男二人はいかにもツワモノだが、女の子二人は明かに場違い。
ライより年下そうで、(良心的)酒場の看板娘でもやっている方がよっぽどシックリくる。
「・・・・・・牢屋どこ? 遠慮無く逮捕でも、牢獄でも放り込んでくれ」
人の話を聞かず団員の紹介を始めるオーディス。
キリト=ジングウ 刀使いの剣士 太刀「鬼哭」 ニヒルな燻銀男
ゴリアテ=ケルベル 大戦斧の戦士 戦斧「獣皇砕」 超筋肉大男
フェイ=フェリア 魔法剣士 短剣「愚者慈」 ダブルポニテ元気小娘,
エンジェ=フェリア 魔導士 法杖「光晶槍」 大人し系ポニテ清純娘,
対し
ライ=デステイヤー 魔法戦士 銘無しの大剣
「ふぅ・・・よろしく。」
「がはははは、よろしく頼むたのむぜぃ。」
「よろぴくね〜〜♪」
「はい、宜しくお願いします。」
諦め混じりのライの挨拶にゴリアテ,フェイ,エンジェは好意的に返すが
やはりというか、当然というかキリトは
「・・・団長、コレは使えるのか?」
「それは君自身が確かめてたまえ。」
オーディスにしてみれば、 ライが使い捨て当然だった傭兵部隊の生存率向上や
先の大戦終結要因であることから総括力,戦闘力,状況把握力等々が申し分無い事を
知っているからこそ仮入隊無で行き成り入隊させたわけで、
そういう事を一切聞いておらず、世間の苦渋を知り尽くしているキリトからしてみれは
人が良さそうでその心に理想を秘めていそうなライは自分の仲間にしたくない人柄の
上位に入るわけである。
「・・・ゴリアテ」
キリトの目と合図に筋肉大男がライの視界の邪魔をする。
「と、言う訳だ。これも運命だと思って諦めてくれぃ。」
「何を諦めるか知らないが、コッチの方が分りやすくてイイな。 得物はなし?あり?」
ゴリアテはニッと笑い、拳を目の前に突出す。それを合図に距離を取るライ。
それなりに長身で引き締まった戦士の身体のライに対し、
ゴリアテはその身長の1.5倍,体重2.5倍ぐらいか。
一瞬の空白の間の後
「・・・うおおおおおおおおおおおっ!!!」
ライ、戦叫を上げつつゴリアテに突貫猛攻。
ひたすら拳を蹴りを 銅像の様に突っ立っているゴリアテへ打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ!!!
しかし、一向に効いている様子がないどころか打っているライの方が鋼塊を打っているかのように痛い。
「がはははは。そんな攻撃、鍛え抜かれた俺の鋼の筋肉のは効かん効かん。フンッ!!!」
ゴウッ!!!
ライは唸り来るゴリアテの豪腕を紙一重で避け距離を取り態勢を整える。
そして目の前、ゴリアテはポージング
ムキッムキムキ、ムキ
「・・・・・・・・・・・・・・・・(泣)」
マッチョマンを指差すライの無言の問いに、一斉に目を反らす一同。
「身体が温まったことだし、今度はこっちからいくぞぉ!!!!」
ズドドドド、ブン、ブン、ゴウッ!!!
ゴリアテ猛進、豪腕が唸る唸る。
それを右へ左へ後へヒラリヒラリと避ける・・・というか、こんなものを一撃でも食らいたくない。
そこへライの胸中央、避けきれない一撃。
「ぐっっ!!!!」
ドゴォッ!! ドッ ドッ ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・
モロに食らったライは吹っ飛ばされ、水切り石の様に数回地面を跳ねた後転がり・・・停止。
「フンっ、かつてないほどに決ったぁ。・・・こいつぁ、死んだかぁ?」
「あ〜あ、殺しちゃった。 まだ若いのに可哀想にねぇ?」
ゴリアテとフェイがボロクソに言いまくり、エンジェは治癒をしに行くべきかオロオロと迷い。
「・・・では、この件はなかったということに。」
言い切って帰ろうとするキリト。 しかし、オーディスは怪しく笑うだけ。
「・・・・か、勝手に殺すなや、オッサン。 痛っ、バカ力め、アバラがいかれちまった。」
「オッサン〜♪ オッサン〜♪」
「オッサン? 俺のことかぁ? がはははは、オッサンて言われちゃったぞ。」
「・・・・・・・・(汗)」
ゴリアテを指差し喜ぶフェイと、オッサンと呼ばれ照れるゴリアテ。この二人どこかずれている。
フラフラと立ち上がるライを見て、エンジェは安堵の溜息を漏らし、振り返ったキリト驚愕。
やはりオーディスは見切っていたか腕を組み当然といった表情。
インパクトの瞬間、ライは身体を浮かし衝撃を身体全体で受けていた。
だからこそ派手に吹っ飛ばされ転がり、
埃塗れになってまでして衝撃のエネルギーを逃がす必要があった。
「オッサン、次のでケリつけようや。 最高の一発撃って来いっ!!!(クイ、クイ)」
「いいなぁ、そういうの。俺は大好きだぞぉ!!!」
ゴリアテの筋肉がさらに盛り上がりパワーが充電されていく。
それに対しライは全身の力を抜き、軽く構えるだけ。
オオオオオオオオッ!!!
次の瞬間、重低音を立てながら筋肉の弾丸が発射。
居合を詰めたソレからライの顔面めがけて絶対流し切れない必殺の拳が撃ち出される。
訪れるであろう惨劇にエンジェは目を背け、フェイ&キリト&オーディスはライの動きを見切るため刮目。
そして拳がヒットしようとした瞬間、標的は消え
ドー−−−−ン!!!
空を舞ったゴリアテの巨体は勢い良く地面に叩き付けられた。
殴り掛って来たゴリアテのエネルギーで投げ飛ばしたわけなのだが、
当然、ゴリアテの巨体はそのエネルギーがなければ投げ飛ばせないし、一つ見間違えば頭が吹っ飛ぶ。
「・・・・・・おおぅ!!?」
勝ちを確信した瞬間、天地が逆転して地面に叩き付けられたゴリアテは目をパチクリ。
自分が投げ飛ばされた事も分からず寝転がったままライを見上げる。
「大丈夫か、オッサン?」
差し出された手も掴まず(この場合、体重比的にライを支えに起き上がるのはチョトキツイ)起き上がり
強引に握手。
「がははは、完敗だぁ。気に入ったぜぃ、ライとやら。 というわけだぁキリト、俺は降りるぜぃ。」
一方、フェイが駄々をこね,甘えエンジェとオーディスを赤面させていた。
「私、あの子とスる! シたい!! ヤリたいよぉ〜ん♪」
・・・・・・で、何をですか?
「闘いたい! 闘いたい!! 闘いたい!!!」
「と、フェイ君は言っているが、どうかねライ君。」
「あ、ああ・・・・・・身体も大丈夫そうだし・・・OK。」
それを聞いて、フェイはその手に自分の得物とライの得物を持ってテテテと駆けて来る。
「フェイちゃんは俺より強いぜぃ。何せ『戦闘妖精』の異名を持つくらいだからなぁ。」
ゴリアテは一言残し、フェイと入れ替わりに戻って行ってしまった。
・・・多分、純粋にゴリアテの方が強い。 異名からしてゴリアテが苦手な戦い方をするだけで。
「はい、コレ。 私、魔法使ってもいいよね?」
「どうぞ、俺も使うから。・・・余り闘いたくないタイプだな。」
「ん? なんが?」
「嬢ちゃんがな、傷つけそうで恐い。
嬢ちゃんみたいに可愛い子に傷付けるのは俺の主義じゃないからな。
・・・命と引き換えでも(微笑)」
「わ、私と君そんなに年変らないと思うよ。それに・・・(照照)」
「まっ、やるとなった以上手抜きはしないけど。」
「それって無茶苦茶〜〜、ヒキョーだぁ〜〜」
フェイの抗議を無視してライは距離を取る。合 間見えるとフェイの顔は少女から戦士の顔に変化。
鞘から抜いたショートソードは諸刃中央が割れていてその付根にクリスタルが輝やいていた。
そして、フェイの気合とともに剣から放たれる光。ソレが「愚者慈」を元に大剣を形作る。
「・・・魔法剣? 伊達に守護騎士団にいるわけじゃないか。」
「ふぇい、いっきまーっす!!!」
掛け声と共にフェイは足から魔法効果の燐光を残しながら突っ込んでくる。
そのスピードはとてつもなく速い。
かなりの距離を一瞬で抜け、ライが防御のために大剣を振り上げる時間しか与えない程に。
勢い良く振った魔法剣が大剣に接触した瞬間
スルリ
「うをぅっ!!!??」
魔法剣が大剣を素通りし、今にも首を刎ねそうな魔法剣を大剣を捨て身体を退け反らす事で回避。
ブリッチで地面に頭をぶつけ、視界が逆転した中、
ライはフェイが土煙を上げながら足ブレーキで身体に乗った勢いを止める見た。
「麻痺するだけだから安心して斬られてもイイよん♪」
ミニスカートの中身、瑞々しい太腿の根元は純白・・・じゃなくて、
「・・・それって、俺の負けじゃん」
口調は余裕を漂わせてみるもののライに策はない。この魔法剣の防御は不可。
倍速の魔法では追い着けない。
・・・ポイントはフェイの身体が軽過ぎるため勢いが付き過ぎる事か。
「さて、どうしたものかねぇ〜〜〜」
自分の左側、地面に大剣を斜め突き刺し徒手空拳。こうすればフェイは自分の右側しか通過できない。
「ふぇい、もう一発いっきまー―す!!」
狙い通りフェイは魔法剣を振りかぶりライの右側を通るラインを取って来る。
そこへ、振るわれる魔法剣を避けフェイ目掛けてタックル。
「みゃっ!!???」
ドン、ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ・・・
転がる二人を覆い隠す土煙。 それが止むとライがフェイを上に懐に抱締め倒れていた。
「大丈夫か、嬢ちゃん?」
「・・・・・・嬢ちゃんは止めて、フェイでいい(照照)
・・・・キリトぉ、私負けちゃったーーー。」
フェイは可愛らしく埃を払った後自分の得物を拾い、そのままエンジェの方へ。
「えんじぇ〜〜、あの人、イイ人(照照)」
「フェイちゃん、貴方・・・」
「うん、・・・・・・好きになっちゃったかもしれない(照照)」
「???」
姉妹はライの方をチラリチラリと覗き見ながら内緒話。
男族は男族で
「どうかねキリト君、観察力,思考力,戦闘力ともに申し分ないと思うが?」
「モット楽に勝てる方法があったのに俺らの安全、優先しおった。俺はライの入隊に賛成だがのぅ。」
確かに、対ゴリアテ戦では目や金的など急所狙いもあったし、
対フェイ戦ではタックルを掛けずとも足掛けでフェイを転がしても良かった。
勿論その場合二人の負傷する確率が高くなるが。
「分りました。オーディス団長の申出通りに・・・」
ソレを遮る声、3人の所へやって来たライ。
「納得出来ないなら初めから人を使わず自分で確かめろや、キリト。」
「粋がるなよ、小僧。 貴様程度、俺がでるまでもないだけだ。」
「ふっ、如何だろうな〜。本当は恐いんじゃないのか、一介の傭兵である俺に負けるのがぁ〜。
意外とこの面子で一番弱かったりして。そんな貴方は女のケツに隠れているのがお似合いで〜す。」
「・・・・・・弱い奴ほどよく吼える。」
二人の遣り取りを見守る一同。険呑な空気に一人オロオロするエンジェ。
「「ははははははははは(笑)」」
笑い合う二人にエンジェは安堵。しかし
「「貴様だけは絶対、血反吐吐かして地に沈めるっ!!!!!!!!」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いやぁ〜、やっぱり思った通りの結果になったねぇ〜」
「何だカンだ言って二人とも似てるからのぅ。近親憎悪というやつかぁ?」
「フェイちゃんもゴリアテさんも寛いでないで二人を止めてください。
あの二人、今なら本当に殺し合っちゃいますよっ(泣)!!!」
「ふむ、確かに今この程度で死なれても困る。
キリト君,ライ君 決闘ならコレを使いたまえ」
オーディスの投げた訓練用長剣をその方向を見ず、自分の得物を持っていない方の手で取る二人。
既に闘う前から二人とも本気状態。得物を隅に預け再び対峙する。
刃を潰した訓練用長剣といえど、使い手の二人にとってそれはやはり武器。
これで人を叩き斬るには十五分に事足りる。
距離を取り構えた二人はピクリとも動かない。
お互い色々な戦闘パターンを思考しているのだろう。 如何すれば相手を殺せるか、と。
静かに・・・息を深く吐き、・・・深く吸って、それが止まった瞬間
「「 (ギリッ)」」
牙ムキだし歯を噛締め無言で切迫する二人。剣戟だけが不気味に響き渡る。
カンッ、キンッ、ガリガリガリ、ブン、キンッ、キンッ
二人の実力は拮抗、一歩も引かない。
カリポリポリポリポリ
エンジェに、剣戟に+聞こえ始めた変な音。横を見ると
「・・・エンジェも食べる?」
フェイがお菓子を食べていた。ゴリアテもゴッツい指で器用に摘み食べていた。オーディスまで食べていた。
「こんな時に皆さん何をやっているんですかー―っ(泣)」
「ふむ。観戦にお菓子は付物だと思うが? 麦酒も欲しいな・・・」
「(ボリボリボリ)これ、ナカナカうまいぞぉ。」
「そう言う事を言っているんじゃないです(泣)・・・・・・」
ガキーーーーーーン ザク
激音に全員が再び決闘に注目
既にキリト&ライの手に長剣はなく遥か後方に吹っ飛び地面に突き刺ささり、両者は茫然と自分の手を見る。
しかし、それは一瞬のこと、
「ウヲラッ!!!!」
ガスッ!!!
先に我を取り戻したライの拳がキリトの頬にヒット。
「グッッ・・・ゥオオォッ!!!!」
ドスゥ!!!
「ガ・・・はっ」
踏んばりり耐え切ったキリトの膝蹴りがライのみぞおちへ
「んぬぅあっッ!!!!」
ゴンっ!!!
「うっ!!!!」
一瞬笑みを浮べたキリトに頭突きのアッパーカット
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕日の中、二人でガチンコファイト・・・とソレを茶を飲みながらぼ〜〜っと見物する人々。
「いやぁ、青春だぁねぇ。 男は拳で語り合って友情を育んでいくんだぁねぇ。」
「これは当分、終りそうにないかのぉ?(寂)」
「ふん、無様だな、騎士が単なる喧嘩とは。 二人とも減棒2ヶ月・・・と。」
「・・・・・・・・(泣)」
ミシッッッ!!!!
交差する腕、お互いの顔にめり込む拳。
「あっ、だぶるクロスカウンター・・・」
そのまま白目でモンドリ打って倒れる二人
「こりゃ、二人とも完全に決ったなぁ。どちらも暫く起きんぞぉ。」
「+1週間トイレ掃除・・・と。 それとエンジェ君、二人とも傷の治癒しないように。」
「はい・・・・・・(泣)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・