我が国と神殿を結ぶ街道が整備されたことにより、転送門を使えない低所得者も
神殿に行くことができるようになリ、これは喜ぶべきことである。
ただ一つ、街道の一部が魔王ヴェイベルの魔層圏(魔力影響範囲)を横切っており、
(要らぬ刺激を与えぬよう)注意が必要である。
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魔王ヴェイベル
―――左手に掴むは誓約の裁定の魔剣。 汝を裁く最初の剣(ツルギ)なり―――
―――右手に掴むは復讐の牙。 汝を穿つ最後の剣(ツルギ)なり―――
呪帝真書第402章、 鉄雨の七日間より
七界を統べる魔王が一人であり、最強の剣魔であり、人に魔力を与え、第二層天界を崩落させた。
冠する言葉は「真理」と「裏切り」。
魔王の中でも異質の存在であり、領土と眷族を持たない孤独の魔王。
現在人が持つ魔力は、全てヴェイベルが己の魔力を与えたものであり、
「全人類の総魔力 =< ヴェイベルの魔力」である。
これにより、己自身は絶対魔力以外(全て人に与えたため)ほとんど魔力を行使することができなくなっており、
これは全魔族をみても例がない。
―――だが、彼女を侮る者には、滅びが待つのみである。
今の彼女が持っているのは二振りの魔剣と破滅のニ翼。
右手には魔剣「黒」。 左手には邪剣ボルザック。 共に聖剣レーヴァティンを凌駕する魔剣。
それは一撃目で大海を割り、二撃目で破滅を刻む。
破滅の二翼は一打ちで大地を薙ぐ。
―――魔力を行使できない彼女が、魔王で在るという事実を、認識すべきである。
―――魔力を行使できない彼女が、天界を崩落させた事実を、認識しなくてはならない。
―――魔力を行使できない彼女は、最強の魔王が一人なのである。