☆蔦豆☆
そのエルフの少女は、急に走ったり止まったりしながら森の中を進んでいた。
手入れが行き届いていれば、流水の様な艶を帯びた美しさであろう長く豊かな黒髪は
山野の藪の中を駆けずり回って遊んだせいで所々跳ねたり毛羽立ったりしている。
身に着けているのはまっさらな布で拵えたタンクトップに似た肌着と、
パレオの様に布を腰に巻きつけただけの簡素なスカートのみで、時折走り出す度に
脇の隙間やスカートの裾から薄い胸や小さな尻が垣間見えた。
たまに足を止めるのは疲労のためではない、
追跡している「相手」に歩を合わせているのだ。
相手は大きなお腹を揺するようにして歩く、若い雌の羚羊であった。
既に陣痛が始まっているのか、その歩みはどこかフラフラとしてぎこちない。
「森エルフ」あるいは「ドロー・エルフ」と呼ばれる森を住み家とするエルフ達は
人間がそうするように、家畜を飼いならすような事はしない。
森や自然は彼らにとって最も尊重するものであり、牧畜は動物の自然な姿を
「阻害している」と感じるからだという。
しかし、彼らも肉や毛皮、そして乳を得なければ暮らしてはいけぬ。
では、肉や毛皮は狩猟で手に入れるとして乳をどうするか、という疑問に対する答えが
この追跡なのであった。
出産直後の子連れの鹿や羚羊、水牛などを見つけた場合、その乳を分けてもらうのである。
エルフと彼女らの間にはすでに数百世代にわたる信頼関係が築かれており、
近づいて乳を搾っても決して攻撃される事はない。
また、各種の動物の子育ての季節はそれぞれの種に対する禁猟期となっており、
動物達にも危険はなかった。
そして、出産直後の個体を先に見つけた者は、優先的に乳を得る事が出来るのである。
それこそが、少女が出産直前の羚羊を追跡している理由であった。
◇
「んふふ〜早く生まれないかなぁー」
こみあげる期待感を込めて、少女が呟く。
彼女の視線は、ただ一点に羚羊の尻……赤ん坊が出てくる「そこ」を見つめていた。
羚羊は既に断続的に呼吸が荒くなっており、出産が間もないことを感じさせる。
少女は羚羊から搾ったミルクの味を想像して舌舐めずりした。
冷蔵庫などないこの森では、ミルクはすぐにチーズなどの保存食品に加工されてしまう。
新鮮なミルクの味は、発見者の特権なのだ。
少女が甘い夢想に心を弾ませていると、不意に前方からタライをひっくり返したような
「ジョバッ」という水音がした。
「あっ!ようやく破水した!もぅ、いつまで待たせんのよう!」
そう言うと、少女はすぐさま羚羊のところに近づき、今しがた羊水を吐き出した性器に顔を近づけた。
基本的には何もかも自然のままにすることになっているが、
赤子の足を引っ張って助産する位は許されている。
少女もそのつもりで近づいたのだが
「えっ…?」
不意に、予想だにしないモノが目の前に飛び出して、少女はびっくりしてその場に尻餅をついた。
てっきり羚羊の仔が飛び出してくると思っていた性器からは、
大人の拳ほどもある鮮やかな緑色をした「豆」が半ばほど顔を出している。
それは膣圧で押し出されると、自身がせき止めていた羊水とともに地面にぶちまけられ、
さらに二個・三個と大地に転げ落ち、その度に飛沫が少女の顔と言わず体と言わず汚す。
その異常な光景に、少女はしばらく放心状態に陥っていたが
逃げよう
不意に直感的にそういう考えが思い浮かんだ。
速やかに身を起こし、踵を返して…
そうしようとした、いやするべきであったというべきか。もっと早くに。
◇
「キャッ!!」
とっさに駆け出そうとした少女、だが、その逃走は三mも走らないうちに右腕を淡緑色の細い蔦に
絡めとられることで止められてしまう。
「イヤッ!放して、放してよう!!」
半狂乱になって手足を振り回す少女、だが、そうすればする程それは複雑に絡みつき、
やがては残りの手足にも新たな蔦が巻きつき始めた。
やがて完全に四肢を拘束され、両手首を胸のあたりで一つに縛られ、
両足を左右に広げられた状態であおむけに転がされた少女が見た物は、
さっきまで羚羊が産み落とした豆が転がっていたところから生えている、少女の背丈くらいの苗であった。
産み落とされてから実に三分足らず、恐るべき成長速度。
それは今度は螺旋状に少女の足に蔦を這わせて行き、足首からふくらはぎ、
そしてふとももから足の付け根までをがっちりと捕まえて上方に引き上げ始めた。
外そうと身を起そうにも、右足だけがまるで犬の用を足す時のポーズのように掲げられて
上手く立ち上がれない。
ただ一枚でそこを隠していたスカートがめくり上がり、
まだ発毛していない初々しいクレパスと、かわいい尻の穴まで露わになった
そして、蔦が生えているよりも上の方から、さらに一本の太い蔦が下りてきた。
それは先端に、有機的に歪んだ円筒形の莢(さや)を有していた。
太さは人参ほど、しかし長さは30p近くもあり…そして、その全体図は
それは少女の方に「頭」を向けると、少女の足と足の間へと潜り込んでいった…
「ひゃうっ!!」
すべすべした冷たい触感が、不意に下腹部と内股を撫でる。
その気味悪さとくすぐったさが入り混じった感覚に、少女は思わず声を上げる。
まるで盲人が物を探すように、莢は少女の隠し所をまさぐった。
「あうっ!あっ!あん!もっ・もうや・やめてよう。」
莢による愛撫が続けられ、羞恥か快楽か、次第に少女の肌色が上気して朱を帯びる。
そして莢はついに、すでに潤み始めていた「入り口」を見つけ…
自身を捩じり込むように侵入を開始した。
「#$%&@¥*〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
少女が声にならない悲鳴を上げる。無理も無い、自慰の経験すらなかった秘所に
いきなり異物をねじ込まれたのだから。
与えられた感覚すら、痛みか快感かも理解できまい。
だが、莢は意に介さず、揉み錐の様に右に左にゆっくりと回転しながら侵入を続け、
少女の膣壁を擦り上げてゆくのであった。
やがて、自身の長さに対し浅すぎる少女の膣を埋め尽くし、莢の先端が子宮口に到着した。
同時にそれまでゆっくりではあるが休まず動き続けてきた莢の動きがぴたりと止まる。
「お…終わっ…た?」
そう呟き、少女が涙目の顔を後方に向けようとすると、
「ひゅわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ――――――っ!!!!!!!」
不意に小刻みな、それでいて強烈な振動が体内より発せられた。
今までとは強さも質も異質な刺激に、少女は涙と涎を垂れ流しながらかぶりを振る。
そして、彼女の意識を限界まで満たしていた性感が頂に達すると同時に、彼女の胎内で何かが爆ぜた。
ひんやりとした半ゼリー状の物体が、容赦なく胎内の秘奧の座…子宮へと流れ込んでくる。
あたかも水風船のように少女の下腹部を膨らませたソレは、
しかしレモン大の膨らみをこしらえた所で小さな体に入りき
らず、結合面から溢れ、ボタボタと滴り落ちた。
◇
少女が解放されたのは、もはや夕暮れに差し掛かった頃であった。
最初に少女を犯した莢は、内容物を吐き出して見る影もなく萎んでしまった。
だが、一つの苗にまだ莢はたくさんある。
そして、最初に羚羊が産み落とした豆もまた、一個ではなかった。
結局、少女は何度も何度も犯され、とっくに限界に達していた胎内に新しく半ゼリー状の物体を
注ぎこまれ続けたのであった。
最初に注ぎ込まれた物体に何らかの作用があったのか、
それ以降は苦痛より快楽を強く感じるようにはなったが、
それでも強烈な感覚は、しばしば未成熟な精神を焼き切り失神せしめた。
意識を取り戻した少女は、ふらふらと頼りない足取りで自分の集落を目指す。
だが少女は知らなかった、羚羊の体に起こっていたことが、自身にも起こっていたことに。
集落まであと一息
そう自分に言い聞かせる一方で、一足ごとに少女のお腹は膨らみ、足取りはよりおぼつかなくなっていく。
それはまさに、あの羚羊の姿そのものであった。そしてようやく集落についたその時、
少女は心配して集まってきた住人達の前で、破水とともに十個近い豆を出産してしまうのであった。
☆
◇生物概要◇
☆蔦豆/クリーピング・ビーンズ(Creeping beans)☆
生物の胎内に寄生して増える、不可思議な植物
本来は報告例より南方の地域の植物であるらしいが、どうやら行き来する隊商がつんできた家畜にくっついて
やってきたらしい。
他の種子植物と違い、この植物は雄株や雄花に相当するものが存在せず、宿主の胎内から産み落とされると
そのまま発芽・成長を経て花を着けないまま実を着け、新たな宿主を待つ。
この実の中身は、種子として構成される以前のネバネバした原形質で満たされており、
胎内に入ると、そのまま種子を構成し始めるとともに根を一本伸ばして毛細血管に
割り込み、擬似的な臍の緒を繋げてそこから宿主の血液を引き込み急激に成長する。
以前この特性は、種子を育てるための養分を摂っているものと思われたが、
注入された原形質に既に十分な養分が含まれている事や、そも胎内や発芽後の
爆発的な成長を補うのに、宿主の養分では不十分 (少なくとも、事後に歩いて立ち去れるほどの体力が
残っているかは
疑わしい )事から、宿主の遺伝情報を取り込むことで
移動先の未知のカビや細菌に対する抗体を獲得しているのでは?という説が現在では有力である。