☆戦場蝿☆
大型の蝿の一種、大型哺乳類の死骸に好んで集まり、特に戦場の虐殺跡でよく見られるためこの名がある。
平均的な大きさでも中型犬ほどもあるが、そのサイズは幼虫時の食餌によってかなりの個体差が生じる。
最大の物になると、その大きさは通常の二・三倍ともなり、これは個体の生存には有利に働くが、
体のサイズが違いすぎて繁殖相手を見つけられないという弊害も生じる。
そうした個体は、雌の場合普通に同種の雄と交尾して食餌となる死骸に卵を産み付けるが、
雄の場合は「托精相」と呼ばれる。
形態に変異し、もっとも多く摂食した生物の雌と交接し受精させるようになる。
無論これは自らの遺伝子を残すための工夫であるが、餌が豊富になり過ぎ、
一ヵ所で一斉に繁殖を開始すると同時に猛禽などの天敵も呼び寄せるため、
異なる形態で子孫を残すことでリスクを分散していると見られている。
なお、托精相になると相手を押さえつける為に手足に硬い毛が生え、
性器には表面に無数の流線型の瘤が発達し、膣を割り裂き侵入し易くすると同時に、
粘膜との接触面積を増やすことで性的刺激を高め、発情を促し受精率を高めている。
◇
教王歴429年、第一次ライデン戦役における主教国の兵士たちの所業は、
その進軍先の住民たちにとって戦火と暴力、虐殺と強姦に塗れた悪夢の記憶となった。
敵国どころか教国側の領地内においてさえ、
彼らはより弱い物を探して徴発と称しては略奪と殺戮を繰り返し、
若い娘は無惨に犯され、翌年には多くの父無し子が生まれた。
しかしそれでもなお、「人間」に対する扱いは、それ以外のエルフを始めとする亜人種と比べれば
まだしも生易しい物であったと言えよう。
「深き森」と呼ばれる森林地帯に住まう彼らを、教国の兵たちは現地調達の名目で重点的に狙い撃ちし、
同じヒトに対するそれに数倍する貪婪さで食い散らかしていったのである。
丘をくりぬいて作られた家々が並ぶ長耳族(パノティエ)の集落も、そうした惨禍に襲われた一つであった。
まず若者と壮年の男が犠牲になり、続いて老人と子供、若い娘達は慰み者にされた分長く生き延びた。
牧歌的な美しさすら感じられた、田園と丘陵が織りなす集落の佇まいは、瞬く間に血と炎で紅く彩られ、
更にその上を屍が覆った。
やがて侵略者達は去ったが、長耳族への襲撃の際、何人かの子供たちが家屋の地下に設けられた倉庫の中に
匿われていた事に侵略者たちが気付く事は無かった。
やがて襲撃者たちが去ったのを見計らい、地上に出てきた子供たちのある者は、眼前の凄惨な光景に怯え慄き
またあるものは家族を思い号泣し、そしてまたあるものはひとまずの脅威が去った事に安堵した。
しかし子供たちは気付いていない。
遠くの空に、黒雲と見紛う程の無数の戦場蝿が、こちらに向かって飛んできている事を。
あらゆる種類のヒトの肉を喰らい、ヒトを孕ませる胤を有し、
しかしそれを植え付ける胎すらヒトに殺し尽くされ雌にあぶれた魔性の蟲達が。
◇
それから数時間後。
地獄と化した長耳族の集落は、再び別の地獄へとその姿を変えていた。
地獄から来た蝿どもは、そこかしこで長耳族の少女達に圧し掛かり、
これ見よがしに腰を上下させて湿った音を立て、
既に何人かの少女の腹部にはしっかりと蝿の子胤が宿り、丸々と膨れ上がっていた。
異種の仔を宿した影響で悪阻に悩まされているらしく、時折激しく嘔吐したり、
高熱を出して譫妄正体に陥っている者もいる。
苗床にならない男児は雌蝿に消化液の滲む舌で舐め溶かされ、卵の養分として啜りあげられた。
蝿はただ雌と見れば見境が無いようで、
まだ乳歯も抜け始めていないような小さな子供にすら小型の蝿が圧し掛かり、
瘤だらけの性器を窮屈な肉穴へ注送していた。
蝿のペニスは敏感な膣壁をその瘤で引っ掻き苛むだけでなく、
引き抜くときにも幼女の内臓を僅かに外側へと引きずり出す。
その動きに引っぱられて幼児特有の薄いが柔らかな尻肉が、抜き差しするたびに餅のように変形し、
長耳族特有の綿毛の様なしっぽが、刺激を与えられるたびに愛らしくひくついた。
「いぎぃぃっ!あっ、ああんっ!あひゃ、ひぃぃぃい!!」
黒い垂れ耳を振り乱しながら声にならぬ悲鳴を上げ、傍目に壊されそうなほど乱暴に犯される幼い少女。
蝿はその肉穴にひと際深くペニスを埋め込むと、
腹部をぶるぶると振動させながらまだ仔を孕む用意が出来ていない少女の子宮へ、
激しい興奮と動作で高まった熱を宿した精液を無遠慮に吐きだした。
「ふひゃぁっ!いきぁぁぁぁあっ!あつい、あついよおっ!!」
初めて味わう膣内射精の、その人外の異常な量と熱に、少女は得体の知れない未知の恐怖を訴える。
だが、おぞましい魔胤の溶液がその胎内に馴染んでいくと同時に、少女の肉体にもう一つの未知の感覚が
生じ始めていた。
「は―っ、は―っ…んぁ?なんだかおへそのおくがむずむずするよぉ……んっっつ!?んひいぁああっ!!」
少女は再び始まったストロークの衝撃に、今までとは違う感覚を覚え嬌声を上げる。
「托精相」と化した雄の精液は、繁殖相手となる生物の性フェロモンや、
その分泌を促す酵素が含まれている。
それを直接胎内に注がれれば、たとえ繁殖の準備が出来ていない年齢であっても躯が排卵を始め、
子宮は雄を求めて激しくのたうつ。
今の少女の体は、未熟な身体と精神に対し、
無理やり雌としての機能と欲望を機能させられたアンバランスな状態だった。
「ひぃぃ―――っ!あっ、はあっ、んはぁああ――んっ!!!きもちいいよぉ、おまたずぼずほするのも、
おへそのしたこんこんされるのも、ぎもちよすぎるよ゛ぉぉぉぉぉおっ!!!!」
もはや襲撃の恐怖も凌辱の苦痛も忘れ去り、
蝿が腰を使うたびに自ら腰を左右に振ってより快楽を貪ろうとする少女。
やがて初めての絶頂に達するも、それで覚えたての幼い情欲の炎が消える事は無い。
構わずに腰を振り続ける少女の胎内に、二回目の精液がぶちまけられた。
「んにゃぁぁぁぁっ!!これっ、これすきぃぃ!あついの、いっぱいでてるよおっ……」
胎内に広がり腹腔を圧迫する熱い汚液の感触に、蕩けた様な笑みを浮かべる少女。
その胎内では、時ならず無理やり子宮に引きずり出された卵に、
忌まわしい遺伝子を乗せた精子が群がっていた。
◇
異種の胤である托精相の精子は、受精しても体内に着床することは無い。
その代わり精子自体が遺伝子と同時に養分を卵子に運び、受精後も無数の精子が突撃して卵と同化し、
巨大な卵細胞へと成長させてゆく。
やがて精子と精液の養分で成長した卵細胞は分裂を始め、数個の受精卵へと成長し、
やがて孵化して外へと這いずり出してくるのである。
ゆえに蝿たちは一度射精して孕ませた後も性交を止めることなく、より養分を凝縮した粘りのある精液を、
少女たちの孕み腹に注ぎ込んだ。
「はあっ、はぁっ……うっ、うううぅぅ――っつ!」
少女の一人が小用を足す時の様に爪先立ちにしゃがみこみ、木の幹に右手をついて激しくえづいている。
「うぁ……中で暴れて………うぐぁ、で、出てくるうぅうぅああぁぁあっっ?!」
声にならぬ叫びが喉をついたのとほぼ同時に、少女の陰門を内側から割り裂いて、
巨大な蛆が身をよじらせながら這いだしてきた。
「うう…ああっ、は、早く全部、全部出ていってぇぇ……」
木に体重を預けながら、少女は一刻も早くこの悪夢が終わってほしいと必死に体内から
全ての蛆をひり出そうとしていた。
やがて一匹、また一匹と地面に産み落とされ、その度に少女の腹部はほぼ一回りずつ萎んでいった。
やがて最後の一匹が地面に落ち、出産の苦痛と疲労で疲れ切った少女を相手に、
新たな蝿が子作りを開始したのは言うまでも無い。
◇
ライデン戦役が「主教国側の完全壊滅」という形で決着した後。
主教国側の兵士による略奪は、あわや周辺亜民族の主教国との協定の破棄という形でその影響力を
「深き森」から排除するかに見えた。
しかし、この地の主教国側のスポークスマンであるところのニーヴル自治区教会が、
独自に虐殺事件の主要人物を確保するなど
事件の解決と信頼の回復に努め、また教会長自身の周辺部族からの信頼もあって、何とか現状維持に近い形で
その勢力を維持する事となる。
そして襲撃された村々の復興や被害者の救済、そしてその障害となる危険生物への対処は、
主教国の超戦闘部隊「血十字聖堂騎士団」の者が当たる事となった。
彼らが長耳族の集落に到着したのは、実に襲撃から数カ月が経ったころ。
そこで見た物は恐るべき地獄絵図であった。
近隣の村々にある死骸を食いまくり、巨大になり過ぎた蝿たちの群れ。
そしてここからどこにも行き場が無く、気まぐれに蝿たちの繁殖奴隷として犯され続けていた子供たちの姿。
既に性交にも出産にも慣れ切ってしまったのか、どの少女も壊れきった笑顔を浮かべて、
自分たちの子孫でもある蝿たちの寵愛を受けている。
年端もいかぬ子供たちが、丸々とした孕み腹を揺らしながら異形の蟲達の下で愛液を滴らせて
嬌声を上げる様は、無惨に壊された「日常」の姿を発見者達にまざまざと見せつけたという。
その後、蝿たちの掃討と生存者の救助が行われたが、
長時間にわたり性交とフェロモン漬になっていた少女たちの心身の回復には
かなりの時間を要すると思われる。
また、蝿の中のもっとも巨大な個体は破壊されずに標本として保管されており、
この蝿の生態のメカニズムを知るのに貢献したともいう。