◇淫夢鬼(ピロウデーモン)◇
魔物や妖物の中でもかなり下級に位置する、両腕がコウモリの様な膜翅になった小型の魔物。
猫背の中途半端に人間めいた体躯に、目も鼻も無い縦に裂けた口のみの、
女陰を思わせるしわくちゃの頭部が乗っているのを見た者ならば、
これがこの世の真っ当な生物ではない事を疑う事は無いであろう。
その実はいわゆる夢魔や夜魔の類であり、夜の闇やそれに人が抱く得体のしれない不安や恐怖から
実体化してくるのだとも言われる。
それ故か、この魔物が報告されるのは人口の多く多彩なストレスが存在する大都市が圧倒的に多い。
子供程度の背丈の同等以上にも伸びる長い舌の先端は、注射器の針の様な鋭い竹槍状になっており、
それを就寝中の生き物の皮膚に突き刺して生き血を吸う。
だがこの生き物が必要とする血液の量は大した事が無く、
せいぜい体の小さな獲物が次の日多少ふらつく程度であるが、
問題なのは淫夢鬼が被害者に性交を含む性的な刺激を与えながら吸血する習性である。
なぜなら淫夢鬼の目当ては血液そのものよりもそれに溶け込んだ被害者の情欲・快楽であり、
むしろそれがメインの糧であるからだ。
まず被害者の寝所に忍び込んだ淫夢鬼は、起こさないように慎重に夜着や寝具をどかし、
露になった肌にその舌先を差し込む。
(うなじや乳房の裏などの目立たぬ場所を選ぶ)
この針が刺さっている間は、被害者は何をやっても起きる事は無い。
やがて血の味を頼りに相手のもっとも感じる場所や刺激を探り当てると、
一見不器用そうな膜翅の端の手指や、象の鼻の様に器用な長い尻尾を使って体の隅々を愛撫し、
時には性交渉すら行って被害者の体を意識の無いままバラ色に火照らせてゆく。
本質が霊的・精神的な実体であるため、体内に精液などが残る事は無く、
大抵の場合、被害者は犯された事に気付く事は無いが、もし仮に覚醒時に遭遇してしまった場合、
たとえ心が恐怖や拒絶を感じていようとも、既に肉体に快楽を刻み込まれた被害者は
無意識に抵抗を止めてしまう事があるという。
◇
とうに夜半を過ぎ、家々の明かりも落ちた頃。
一件の家の窓が、何故か明かりも漏らさずに開いていた。
その窓は二階の子供部屋のものであり、そこにいるのはこの家のまだ幼い姉妹のみであるはずだった。
その中から、微かなうめき声が聞こえてくるのを聞き咎めた人間はいなかった。
不意に吹き込んできた夜風の冷たさに目を覚ました幼い少女は、
ふいに二階建て寝台の下の方から聞こえてくる物音に気付いた。
そこには少女の、三つ年上の姉が眠っているはずである。
明るく清楚で、そしていろんな事を教えてくれる姉は彼女にとってのあこがれだった。
最近ようやく肩にかかる様になってきた髪も、彼女の美しい金髪にあやかって伸ばし始めた物だ。
だが下を覗き込んだ少女が見た物は、安らかに寝息を立てている姉の姿ではなかった。
「……!!」
思わず息をのんだ少女の目の前で繰り広げられていたのは、涼やかな寝息を立てる寝顔の下で、
寝間着を最近急に膨らみ始めた胸が露になるほどめくり上げられ、
成長途上の女体のなだらかな稜線を露にした姉の姿とその下半身をショーツの絡み付いた両ひざを
右の肩に担いで持ち上げ、剥き出しの臀部に腰を密着させて腰をゆする淫夢鬼の姿であった。
深く突き込んだまま、下腹部でクリトリスを摺りつぶすように腰を使い、
膜翅の先端の三本の指を白い臀部や腰に這わせて愛撫するたび、
意識の無い姉の口からは微かな、しかし悩ましげなうめき声が漏れ出してくる。
さらに苔色をした尾の先端は吸盤状のパーツに変形し、
成熟しかけの二つの胸のふくらみに交互に覆い被さっていた。
それが離れたり付いたりするたびに見える吸盤の内側の部分には無数のミミズの様な肉色の紐が
のたうちまわっており、それがその下で何をやっているかなど、幼い子供の想像力では及ばぬか、
おぞましさに考えるのを忌避するかのどちらかであろう。
若木の様に華奢な少女の肉体が、本人も知らない内におぞましい快楽を植え付けられてゆくたび、
淫夢鬼は右腋と乳房の中ほどに差し込まれている肉色の蛇の様な舌から、
淫らな肉欲の味と香りを感じ取り悦に入っていた。
(何コレ……お姉ちゃんに何をしてるの……?そうだ、はやく起きてっおねえちゃん!)
そう思い、大声を張り上げようとして息を吸おうとして……
吸おうとして、少女は自分のすぐ背後から、生臭い臭いが漂ってくるのを感じた。
次の瞬間、彼女の下腹部と脳裏で、むず痒い甘美な未知の衝動が爆発し、
少女は腰が砕けて立っていられずにその場に膝を落とし、諸手をついて犬の様にへたり込んだ。
「あ…れ………な、なんでぇ……?」
頭では寝台から飛び降りてでも逃げるか助けを呼ばなければならない、と思っているにもかかわらず、
少女はまるで諦めたかのように動きを止め、淫夢鬼が少女のパジャマのボトムをずりおろし、
既にショーツ越しに肌色が透けるほど濡れぽそった一本筋を、
卵状の尾の端でぺろりとひとなぞりされようとも、為すがままに顔を真っ赤に赤らめ、
這うようにして上体を寝台の桟に預けて辛うじて体を支えるのみであった。
その体がほんの三日前に、やはり眠っている間に勝手に刻み込まれた肉欲を思い出したのは、
パジャマに潜りこみ、少女の上半身に巻きつくようにして衿元から飛び出した淫夢鬼の舌先が、
少女の柔らかな赤い髪をくぐって首筋に這い、そのうなじの瑞肌に突き立てた時だった。
◇
「んっ!んふうっ!あっ、やっ…!?〜〜〜〜〜っ!!!」
二階建て寝台の上の台で、今まさに少女が声を押し殺しながら淫夢鬼に犯されている。
両手を胸の前に縮め、パジャマの袖を噛み締めながら必死に声を押し殺す少女に、淫夢鬼の長い舌が
そこから吸い上げた僅かな血液が、針のごく先端を周囲の肌と同じ色にほんのり染めていた。
一見コウモリの様な不器用そうな膜翅に両ひざをすくい上げられ、
背中を預けた格好になった少女の下半身は、
パジャマとショーツを膝までずり下げられて剥き出しになっており、
そのまだ発毛していない裂け目には既に硬く勃起したどす黒い陰茎が突き刺さっている。
それは厭らしさすら感じる粘着質のリズムで果肉を思わせる股間のふくらみを
餅の様に搗きたてながら潜り込み、
ピンクの秘肉を僅かに引きずりながら引きぬくのを何度も繰り返していた。
そして更におぞましい事に、
臀部の丸い表面を這いずる様にして淫夢鬼の尾が割れ目の下にあるもう一つのつぼみに
吸盤にも変形する卵状の先端をぐりぐりと押し付けている。
それは完全な挿入こそ果たしてはいなかったが、
まだ幼い性感にとっては可憐な菊座をつつかれるだけでも十分すぎるほどの刺激であり、
そこへ卵状の肉球が半ばめり込んではまた引き抜かれるたび、少女は切なげな吐息を強くした。
「んっ…むぷっ……ま、また…またきちゃううっ……んっ?むぐっ、くぅ――――っ!」
少女が絶頂を訴え、実際に笛の鳴くような声をもらしながら達すると同時に、
淫夢鬼の方もその粘つく精液を、歓喜にひくつく子宮口から少女の小さな子壺へと勢いよく流し込んだ。
それはもはや半固形といってもよい代物で、
チューブから押し出したようににるにると狭い産道をとおりぬけると、
まるでおぞましい寄生虫の様に子宮内にとぐろを巻いて蝟集してゆき、
やがて先に出されていた精液とくっついて一つの粘土状の塊となり、
少女のまだ腹筋の締まっていない丸い腹部を、更に不自然に膨らませていた。
「んっ、うっ……はーっ、はーっ……きもちいい……」
少女は涙と昂ぶりで赤くはらした顔を袖に埋めながら、口元をだらしなく開き、絶頂の余韻に浸っていた。
淫夢鬼の与える肉欲に体のみならず精神が屈する、それがどのような結果をもたらすかも知らずに。
◇
その少女は、床の中で不意に小さな暖かい重みを感じ、目を覚ました。
彼女にはその正体に馴染みがあった、最近ようやく風呂に一人で入れる様になり、
ようやくお姉ちゃんっ子の甘えん坊も卒業かと内心寂しくも思っていたが、
やはりまだまだ甘え足りない年頃か。
そんな諧謔が脳裏をよぎる。
だがそれは、彼女のネグリジェが慣れた手つきでめくり上げられ、
まるで授乳される乳児の様に右半身にしがみついた妹の小さな唇と舌が、
露わになった桜色の突起へ被さってちろちろと這いまわり始めたと同時に、
疑問と混乱へと一気に塗り替えられた。
頭では制止しようと思っても、乳首を熱く湿った口腔内で転がされたり、
小さな手が下腹部や太ももを這いまわる度に体に電流の様な衝撃が走り、
何より体の奥底でこの刺激に抗いたくない、身を任せていたいという、
全く身に覚えのない感覚が既知の物として存在している事に、少女は一層の戸惑いを覚えた。
やがて少女の身体に馬乗りになり上体を起こした妹の、
月明かりに照らされ青白く光る未成熟な裸身のその腹部が、
あたかも熟れた果実の様に丸々と張り出しているのを目にするに至り、それは最高潮に達する。
それはあの夜以来、毎夜のように妹の胎内に注ぎ込まれた、淫夢鬼の精の変じた物であった。
通常、霊的・精神的な実体である淫夢鬼は体内に精液などが残る事は無く、
全ては朝になって被害者が目を覚ますとともにあたかも一晩の淫夢のごとく霧散して消えてしまう。
しかし今回のケースでは、被害者である妹が覚醒状態のまま習慣的に淫夢鬼と交わった事により、
その記憶に残ることで完全に消えず、
ペースト状になり子宮内へたっぷりと溜まっていった淫夢鬼の精が、
未熟とはいえ母胎を獲得した事により擬似的な妊娠状態を作り出し、
数個の卵を含む卵塊と化したのだった。
そのいくつかは既に体内で孵化した物と思われ、妹の腹部は荒い呼吸とは別に、
時折中で何かが外からも判るほどにぬるりと蠢いているのが見て取れた。
「もうこんなになっちゃって……これならもう、いつでも挿れられるよね」
いつしかショーツの中に滑りこんでいた右手を引き抜いて、
糸を引くほど愛液で濡れぼそった様をうっとりした顔で見つめる妹。
その左手は自分自身の股間へと伸び、膣内に薬指と中指を差し込んで激しく自涜行為を行っていた。
やがてその声音が一段高く上ずり、
妹が激しく気をやりながら自らのクレバスを目いっぱいピースサインの要領で左右に押し開く。
その年不相応に淫らに濡れぼそった肉裂から、二十日鼠程の大きさの、目の無い有翼の生き物がずるり、
ずるりと這いだして姉の腹部に滑り落ち、きいきいと産声を上げた。
「……今度はわたしが教えてあげるね、きもちいい事を……」
そう艶然とほほ笑む妹の背後から、鳥やコウモリではありえない大きな羽音が聞こえてくるのを、
彼女は聞いた。
その心は必死にこの悪夢的な現実を否定し逃げようとしていたが、
すでにその体は快楽への期待に縛され、動く事は無かった。
こうしてまたひとつ、少女にとっての長い夜が幕を開けたのだった。