■ Heaven ■
我々は この広大な世界において、
未開の地として知られる 「朱角山」へ来訪した。
独自の文化を尊重するにあたり 外界との接触を断ち、
かたくなに 「幸神(さちがみ)」を祭るだけの民として
留まり続ける種族。
開拓途上の地域には 珍しくもない話だが、
我々が この地の人間から聞けた言葉には、
いくつもの疑問が生じた。
この集落では、
その哀しい結末で 「生き神」と成った者の世話をする為、
毎年 「巫女」として、気高く そそり立つ山々へ
数人の生娘が歩みを進める。
この地に住まう者にとっては最高の栄誉であり、
少女等もまた、この役を 自ら申し出るほどで、
親は愛娘を手放すのに 躊躇しないと云うのだ。
ここで 最も不可解なのは、
山深くへ分け入るのを 許されたのが
「巫女」だけと云う点である。
何故 巫女だけが?
神事を務めて史実を語り継ぎ、
祝詞(のりと)を上げる神官ですら山を登らない。
そして 何よりも解せないのは、
巫女が山を下りる事が無いと云う、信じられない事実。
彼女等は、一体 「何を」しているのだろうか?
村の住民が 崇拝して止まない「幸神」とは?
巫女以外の者が山へ入ることは 堅く禁じられている為、
我々は密猟者に同行し、山腹の裏側へと迂回した。
険しい獣道に 鬱蒼と生い茂る樹木を くぐり抜け、
神の社と云うよりは、あばら屋に近い
寂れた建造物へと辿り着く。
そこで我々が見たものは・・・