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∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ 焔の魔剣 ■

■作者:nao 様/ 紅乃鳥飛鳥 様■
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焔の魔剣  -The Knight's daily Another story-

 

 神剣。神の武器、神を滅す力。

その存在はある神の眷属であったり、神の使用に耐え切った人のモノだったりする。

聖剣。争いを終息せし力。

その力は治癒など特殊効果にあり、殺人なと破壊の為に有らず。

魔法剣。闘いを補助せし力。

その存在は一時的なものであり、

闘気,魔力が、剣に宿ったものであったり剣の形を形成し、ソノ力をみせる。

そして、魔剣。

その区分分けは難しく

例え神剣であろうと魔神のモノである事によってそう呼ばれる場合もあるし、

聖剣もその敵対側にとっては破滅の力、魔法剣であっても解らぬ者にとっても同様。

その存在として、何らかの破壊の力を備え明確な意識を有するモノがある。

その求めるものは、「血」「殺戮」「快楽」「混乱」「力」、そして より「高み」

司るは破壊の力。

 

 

とある森の奥深く、人知れず神殿があった。 その神殿の主は、神 ではなく封印。

そして、その神殿の管理人はたった一人の巫女。

彼女の一日は祈りから始り、神殿の掃除などの日常業務、そして祈りで終る。

祈りを捧げていた正にその時

(・・・力有る者が来た。我を使うに値する力有る者が。)

彼女の神の掲示ではなく 封印の主の声

神殿の地下奥深く、何重の封印のさらに奥、地底湖中央封印れさしモノ

焔の魔剣「フランヴェルジュ」

如何いったモノかは彼女自身、よく知らない。

ただハッキリとしている事は、

ソレは、彼女が生れる何十年も前から其処にいて、

封印されなければならないほと強力な力を有し、

幼き頃に彼女が先代からその任を賜ってからずっと、死ぬまでこの日常は変らないという事。

「・・・(貴方を解放させるわけには参りません

それ以前に、何人も結界を越え貴方に会う事は敵わないでしょう)」

(・・・この程度の結界、我を縛るに値せず。 されど、それでは汝は納得しまい

・・・彼の者は我を手に入れるためココまでやって来る。これは賭けだ)

「・・・(その時は私が諦めろと?)」

返事は返ってこなかった。

焔の魔剣が解放されるということは、同時に彼女自身その任より解放される事を意味する。

しかし、焔の魔剣を解放させるわけにはいかない。世界の平安の為にも。

封印を掻い潜り魔剣を手にした者を、彼女が止める事が出来るか甚だ疑問でもあるが。

「あの〜〜、済みませ〜〜ん。誰かいませんか〜〜」

突然、静寂を打ち破る青年の声。

この神殿に参拝者は来ない。やってくるのはわずかな神殿関係者のみ。

・・・もしくは、魔剣を狙う者。

もっとも彼女自身多少なりも武芸に秀でているので並の戦士なら迎撃する自信はある。

「・・・この神殿に何用でしょうか」

神殿の玄関にいたのは一人の旅人。

棍と荷物を持ち鍛えられた身体をしているが、気の良さそうな青年で

・・・およそ彼女の思う限り、魔剣が言っている「力有る者」ぽくない。

「あのですね・・・えっと・・・」

何を恥ずかしいのか口篭もる青年。 そしてやっと意を決し

「ここ、何処でしょう?」

「は?」

「いや、道に迷っちゃって・・・

どっちの方向に一番近い街道があるか教えてもらえればヒジョーに助かるんすけど」

・・・・・・

「この神殿を・・・・・・と行けば半刻程で街道に出られるでしょう」

「そうですか・・・いやいや、どうもありがとうございました」

「貴方に旅の御加護がありますよう・・・」

結局は、魔剣の脅しから始まるささやかなハプニング。

何度も頭を下げ行く青年を見送りつつ、巫女は己の心配が杞憂であったことに安堵した。

しかし、これはそのハプニングの序章でしかでないことに彼女は気づいてない。

ポツ、ポツポツ、ポツポツポツ、ザー――――――

青年が去った直後、振り出した雨はすぐに滝のような豪雨と化した。

しかし、その頃には彼女は既に青年の存在を忘れ

心配することなく日常業務(神殿の掃除とか、読書とか・・・)へ  が、

「あの〜〜、済みませ〜〜ん。」

凄まじい雨だれの中、再び響く青年の声。

巫女が再び玄関に行ってみると、そこにはさっき分れたばかりの青年が

「如何なされたのですか?」

「実はですね・・・雨宿りさせて下さい。この雨が止むまで(泣」

「どうぞ(汗)。 多分この雨は今日一杯降り続くでしょうから、泊っていかれますか?」

「本当に済みません。ヒジョーに助かります(泣」

 

 

彼は己の武器を探すため、一時的に仲間達と離れ旅をしていた。

並の量産された武器では彼の使用に耐え切れず直に壊れてしまう。

だから、名立たる銘剣を求め西へ東へ。

その時ある町の神殿で見付けた一つの記録。別の神殿奥深くに魔剣を封印したというもの。

正直、彼は既にその神殿が廃墟となっているだろうと思っていた。

ところがどっこい、神殿は今も健在。おまけにしっかり管理人までいた。

まあ管理人と争ってまで魔剣は欲していないし、

いざとなったら所有している武器で諦めて使えばいいかと

別の処へ行こうと思ったのだが・・・

ところが計算違いはソレに留まらず、突然振り出した豪雨に結局神殿に戻らざるえなかった。

そして、現在にいたる・・・

「ホント、助かりました。 ああ俺、ライといいます。お姉さん、お名前は」

「エル=プリス エル とお呼びになられても結構です」

・・・・・・

微妙に居心地の悪い沈黙。元々エルは一人でいたのが長く話すことが得意ではない上に

出会ったばかりの二人に共通の話題などあるハズもない。

ライは静かな事は嫌いではない。

しかし、ココに来た理由だけに沈黙は自分が責められている気にさせられる。

「あの、エルさん。ここは普段エルさんしか居られないんですか?」

「・・・ええ、本来ここは人が神に助けを求め来る場所ではありませんから」

ええ、よく知っていますとも。 しかし管理人が一人だけというのはちょっと意外ではある。

恐らく、上のほうが魔剣の危険性を甘くみているのだろう。

まあ、こんな所に何人も置いておいても仕方がないという説もあるが。

「女性ひとりじゃ色々困る事があるんじゃないですか? 

俺に出来る事があったらなんでも言ったってください。ココにいる間だけでも手伝いますんで」

ライが色々申出ているのはやましい気があるからではなく、元々の地。

彼女が、エルが何処となく助けを求めているような気がしたから。

「申出、大変感謝します。 でも、今はこれと言って・・・」

「あ〜、そりゃ残念。」

エルはずっと一人だった。思い出したかのようにやってくる人間は敵だけ。

時折様子をみにやってくる神殿関係者ですら彼女を壊れ物扱い・・・

それも当然、この神殿に封印されしモノは彼等にとって忌むべき物であり

彼女はソレと意思疎通をする者なのだ。

それがこの男は初めてあったはずなのに何処か懐かしく・・・

そして、偶然訪れた彼女の事情を何も知らない者。

「・・・あの」

「ん?」

「・・・私は物心ついた頃からこの神殿から離れた事がありません。

私は外の世界の話を聞いてみたいと・・・」

「外の話し? ん〜、魔物が跋扈し、小悪党が幅を利かせ・・・

うわぁ、言ってて自分が悲しくなってきた。」

「・・・酷い世界なのですね。」

「んや、そうでもないかと。俺が辛い旅を続けて来れたのも仲間達の御陰だと思うし

まあ確かに酷い世界ではあるが、面白いし結構捨てたもんじゃないんじゃないのかな。

この辺りは百聞は一見に如かずかと。」

何時の間にか化けの皮が外れ、地丸だし。

「・・・私はココから離れるわけにはいけませんから。」

「あっ・・・すまん。」

人慣れしていないエルはライが既に事情を知っている話し方になっている事に気づいていない。

「気になさらないで下さい。・・・貴方は何故旅を?」

「ま〜〜、色々あってね。 時間稼ぎにこうダラダラと」

「お一人で?」

「今はね。元々俺の性で仲間を旅させてしまっているんだけど。

今回はさらに俺の私用だから」

「如何いった御用件で一人で旅を?」

「ん〜〜、俺にあった武器がナカナカ見付らなくてね。

並の武器じゃ直壊れてしまうし、銘剣探して西へ東へって・・・あっ」

「貴方も・・・魔剣を狙う者なのですね」

抜き放たれるエルの凶刃。レイピア。

「ちょっと、待った、俺は、君と、争って、まで、魔剣は、欲して、ないっ!!」

突き込まれる切っ先を避け交わし、逃げ回り。床に転がっていた棍を蹴り上げて手にした処で、

罪悪感があるライにはエルを攻撃できるはずもなく

「黙れっ、黙れ、黙れぇ!! そうやって、私をあざけ笑っていたのだろうっ!!

さあ、その棍で私と戦うがいい!! 」

逆上した少女に何を言っても火に油を注ぐだけ。

このままではジリ貧。ニッチもサッチもいかない。 ならば

ポイッ

「!!?」

棍を捨て、目を静に瞑り

喉に突き立てられるレイピアの切っ先がチクチクと痛い。

相手の信頼を得るには、こちらもそれなりの誠意を見せなければならない。

結果、自分が死ぬことになっても。 結局それは自分の見る目がなかっただけなのだから。

「・・・俺は君と争う気はない。 そこまでして魔剣は欲してない」

「・・・出て行って下さい ・・・二度とココに来ないで下さい」

目を開けると既に少女は一歩下がり  泣いていた。

こうなったらもう黙って出て行くしか他に手はなく、

ライは荷物をまとめ、一瞬豪雨に躊躇しつつも神殿を出て行った。

 

 

 「・・・楽しいですか?」

(・・・・・・)

誰もいなくなった神殿に響く少女の慟哭。それに誰も答えない。

「フランヴェルジュ」にとっても彼の反応は意外。

てっきり彼女を屈服させ、結界を越えてやって来るものと思ったが

彼にとって無用の戦いを避けるために己を曝け出し出して見せた。

彼女の攻撃を楽々無傷で避け続けたので腕は可也立つ。

度胸と覚悟、心の強さは十二分。

そして彼が行く所、何らかのトラブルが生れる。彼が原因ではないにも関らず。

彼は騒動の女神に好かれているらしい。

(・・・まだ、終ってはいない)

三度訪れる人の気配。 今度は複数。

やって来たのは明かに妖しいマントの一団。

「当神殿に如何いった御用件でしょう」

「女、ここに焔の魔剣があるな。我々に渡して頂こう」

単刀直入で非常に解りやすいしかし、漂ってくる気はライと正反対で非常に不愉快。

「お帰り下さい。当方にそのようなものは有りません」

しっかりと調査済みらしく得物を解き放つ一団。

「ならば直接、その身体に聞くとしよう」

望まざる訪問者は迎撃する。

巫女もレイピアを解き一番近くにいた者へ瞬撃。 しかし

バシュッ、キンッ

返ってきたのは異様な感触。

切り裂かれたマントが飛び散り中から出てきたのは

「・・・メタルゴーレム」

バッ

二名を除き、マントを脱ぎ捨てたその中から出てきたものも同様。

およそレイピアというものは対人の物でありモンスターやゴーレム系と戦うには不向き。

それでも彼女は戦える。

「ハッ!!」

気合一発撃込まれる気弾。

しかし、それはゴーレムを弾き飛ばすことなく表面で分散吸収。

「女、貴様の事は調査済みだ。」

集るメタルゴーレム。

「あっ・・・」

そして巫女は押し潰され・・・

 

「起きろっ!!」

ぱんっ!!

意識を取り戻すと目の前には一人の男。魔導師らしくないこの男がボスらしい。

無論、巫女は抵抗できない。ゴーレムに頭高く腕を拘束され、

脚もゴーレムの脚に結わえ付けられているのか少し開いたまま閉じる事が出来ない。

ゆったりとした白の貫頭着のスカート部、両スリットから覗く素脚は恥ずかしい。

「・・・好きになさい。私は何をされようと何も話しません」

「何も話していただかなくても結構。寧ろ、どこまで耐えられるか楽しみだ」

男の顔に浮ぶ好色の笑み。

その後でもう一人の男、多分魔導師がまたかと呆れ・・・

つまり、この男のしようとしている事は

がしっ

「んくっ・・・」

薄布の上から力一杯、乳房を鷲掴まれ股間を勢いよく握られ思わず悲鳴が漏れた。

巫女を弄り甚振るつもり。言う言わない関らず、多分巫女が力尽きるまで。

「一つ言っておくが舌を噛もうと思うな。即死しない限り何度でも蘇えらせる」

不意に、

「あの〜〜、済みませ〜〜ん。」

凄まじい雨だれの中、三度響く男の声。

「ちっ、こんな時に。 おいっ!!」

男に魔導師が頷き、動き出す一体のメタルゴーレム

それが玄関の方へ姿を消し、しばらくして

ガシャンっ!!

破壊的な音が一回だけ響き響き訪れる静寂。

そして、ゴーレムの代わりに来たのは

「ど〜も約束破って悪いね、エルさん」

肩に棍を担いだライ。微妙に濡れていない。

「ど・・うして」

「んやね、せめて雨が止むまで雨宿りさせてもらおうと其処の軒下にいたら

エルさんを助けろって声が聞こえてな・・・ま、ちょっと気になったし、

間違えだったなら一回ド突かれてから帰ればいいかな と」

「き、き、貴様っ!!  おいっ、このふざけた奴を始末しろっ!!」

逆上したボス(仮)に対して魔導師は冷静にライを確認し

「今は一旦引きましょう。今の我々の戦力ではこの男に敵わない。 あれが本当なら」

「この男を知っているのかっ!!?」

「可也有名ですが・・・。さあ、これで足止めしている内に・・・」

立ち塞がる、そこにいた全てのメタルゴーレム。巫女を拘束しているものを除き。

「ニ、四・・・もつかな」

瞬間、

がすっ!!

破壊音に一体のゴーレムが唐竹割り。

「次っ」

ずがっ!!

胴薙ぎで頭と脚が泣き別れ・・・

・・・そしてあっという間にラスト2体。だが同時に棍も砕けライは素手。

エルを襲う絶望。素手であの装甲を打ち砕けるはずがない。

だか、ライは嫌そうながらも余裕の表情。そして

がんっ!!

姿を消した、いや、魔法加速による高速移動でゴーレムの前に姿を現したライの

勢いがのった闘気を纏う拳がゴーレムの装甲を貫通。

拳を抜くとそのゴーレムは崩れ落ちた。核を一撃で破壊したため。

「エルさん、少し目を瞑っててくれ」

「はい。」

そして

がんっ!!

エルの脇腹後辺りから聞こえる貫通音。

恐る恐る目を開けて見ると目の前にはライ。

その腕は巧くフックを描きゴーレムの脇を撃ち抜いていた。

腕を抜くのと同時にバラバラになるゴーレム

「きゃっ!!?」

ライは落ちるエルを抱き受止め、解放し

「お〜痛え〜〜」

プルプルプルと振る拳は赤く腫れている。

「それは?」

「ああ、気と魔力で強化してても相手が相手だからな。

だからいい武器が欲しいんだけど・・・あ〜〜、魔剣は奪う気はないので」

「はい(笑)。」

この男は自分を偽らず、素で接する。だから、信用できる。しかし

「・・・貴方は何者なのですか?」

魔導師はこの男を有名人のような事を言っていた。

何について有名かはさっきの戦い振りから大体想像はつくが。

「・・・・・・はぁ、・・・賞金首。高額の」

「えっ!!?」

何処かの騎士か何かではないかとは思ったが、全く正反対の犯罪者とは。

・・・しかし、全く犯罪者らしくない。

ということは、仇敵に貶められたか・・・

「俺の事よりエルさんは今後如何するんだ?」

「???」

「さっきの連中はまた来る。俺もずっとココにはいられないし・・・」

「私は逃げるわけには参りません」

「ふぅ・・・・・・いっその事、破壊するか。魔剣を」

「!!?」

記述によると水を苦手とする以上、人の手で破壊できないはずがない。

破壊できないなら再び、より強固に結界を張ればいい。

いざとなればこの神殿ごと地底湖の空間を破壊して・・・

「行きましょう、魔剣の処へ。」

・・・・・・

「祭壇を退ければ地下への階段・・・う〜〜ん、もう少し捻りが欲しい」

「はぁ・・・(呆)。

着きました。最初の扉,封印です」

踊り場に扉。そして、その扉には何らかの魔方陣。

「解き方解る? いや、いちいち面倒だから・・・はい、自分でやります。」

巫女の呆れた睨みを背に作業開始。

「・・・・・・こうかな?」

がこん

解放され、ゆっくりと開いていく扉。

「・・・次に行きましょう」

そして、次々と解いていれていく封印。

「・・・やはり対炎爆,水と大地の封印。中のものを逃さないためのものだな。

これで、最後っ!!!」

「何故、こんなに簡単に・・・」

「ここの経典と封印が作られた当時の時勢の記述、読んで来たからな。

所詮、人が作ったもの。 後は、世の理さえしっかり理解していれば簡単だ。

う〜ん、一通り何でもこなせる自分の才能が恐ろしい。」

何かこの男の性格みたいなものが見えてきた。

「・・・さあ、扉を開けて中に入りましょう。」

面白いが適当に無視した方が物事は順調にはかどる。

扉の向うに広がる光景は

「おお、・・・凄」

「・・・はい、本当に」

蒼き優光にてらされる巨大な地底湖。その中央には小島と何かの台座が見える。

光源は天井から生えるクリスタル・・・神殿へ繋がっていて、其処から採光しているのか。

何であれ、凄い技術力

それはさて置き、

「・・・どうやって中央まで行きゃいいんでしょうかね」

湖は綺麗な水を湛えているが可也深そう。泳げばいいという説もあるが。

「・・・水の橋」

「何?」

「いえ、先代様の口伝の一つの節に 地底の鏡、水の橋一本 と。

私は何か物語だと思ったのですが、今思えば魔剣までの道程かと」

「そんな重要なこと今まで忘れていたんかい。 君って・・・」

心に余裕が出来た御陰でその考えにいたったのだろう

まあ、今更責めてもしょうがないので

「問題はその水の橋とやらが何処にあるかだな・・・」

口伝には水の橋の詳細な位置がないのか巫女は考え込み押し黙ったまま。

ライは右へ行き・・・左へ行き・・・立ち止まり

不意に、足元の砂利を掴み派手に湖へばら撒いた。

「一体何を?」

「まあ、君もやってみな。 答えは直に出るかもよ?」

今度は二人いっしょに

バラバラバラ、バラバラバラ、バラバラバラ

静かな空間に響く水跳ねの音、幾重も生れる波紋。

「これは・・・意外に楽しいですね」

「そりゃ・・・・・・あったぜ。 中々しゃれた事をしてくれる」

水の橋とは水の中にあるクリスタルで出来た橋。

湖のそこに一本、水面に砂利の沈まないところがあった。

「封印の解除と案内、御苦労。焔の魔剣は我々が頂こう」

響く、折角の雰囲気が台無しになる声。

地底湖の入り口にさっきの二人。そして、増援。

「懲りない連中だな」

「今度は先程の様にいくと思うな」

増援はストーンゴーレムだった。  確かにこれは一筋縄で行かない相手。

例え武器があってもそれが並である以上・・・

「確かにこれはキツイな。 エル、後に下がってろ」

「えっ!!? はい。」

「セイッハッ!!」

ドンっ!!

一番近いゴーレムに左手で掌抵、さらにその上から右手で掌抵、その上で零距離気弾。

撃込まれた衝撃波がゴーレムの中を駆け巡り、破壊し、一体粉砕。

しかし同時に、当分左手は使い物にはならなくなった。

「ほら、一体倒したぜ。これでもまだ続けると?」

余裕ぶっているが内心、可也切迫。 やはり得物なしでは戦えない。

「ふ、ふん。粋がるなっ。

例え貴様がどんな力を持っていようとこれだけの数、敵うわけがないっ!!」

確かに。それでも男にゃ引けない時がある。 それ以前に、こいつ等好かんっ!!

(・・・力が欲しいか)

「??? さっき俺に話し掛けて来た奴か?」

「・・・魔剣(怯」

「「!!?」」

(・・・力が欲しいか)

「・・・俺が望むは最後の最後まで俺に付き合えるモノ。大事なものを護り切れる力。」

(・・・よかろう。我力、使うがいい)

轟っ!!!

地底湖中央、立ち上る火柱 その中に浮く一振りの剣

(我名を呼べ、主よ。我名は)

 

 

 

焔の魔剣「フランヴェルジュ」

 

 

瞬間、火柱から生れた焔の塊はライの右手に吸い込まれ

「・・・へぇ、いい感じだ。」

その剣は炎を纏い燃えているのにまったく熱くはなく、切っ先まで神経が通っている感触。

その背後に腕を広げ迫るゴーレム。敵もライの隙を見逃すほど甘くない。

斬ッ!!

そのゴーレムが振り向きざまの一振りで、熱いナイフでバターを切るかのように真っ二つ

・・・ライに隙というものがあったならの話

剣から生れた焔はライの気に呼応し、全身に纏わり着き、

負傷した左手にはそれを護るかのような焔の篭手

「これなら・・・いけるっ!!」

もうライに敵無し。ゴーレムの一撃を避け、受止め、薙ぎ払い・・・

ゴーレム達はライの試し切りの相手とかした。

「「あわわわわ・・・・」」

「命までは奪わない。うせろ」

尻餅を着く二人に警告。

しかし・・・腰を抜かしてしまい、動けないようだった。

「エルさん」

「えっ、は、はい。」

呼びかけられ、我に返る巫女。如何やらライの戦いっぷりに見惚けていた様。

「これ、如何しよう。」

炎を収めつつ剣を掲げ・・・

「・・・如何しましょう。」

ライの戦いぶりは素晴らしく、正直魔剣を破壊するのは勿体無い気がする。

それ以前に封印自体役を足さないことは既に証明され、破壊することも難しいそう。

ズ、ズズズズ・・・

「じ、地震?」

「・・・!!? いえ、これはっ!!」

最後の封印、蛟。

湖の水が塊、その姿を巨大な蛇へと。

シャー――

「「うわああああっ!!!」」

ベキッグシャ!!

蛟は腰を抜かしたままの二人に襲いかかり・・・

次に蛟が狙いを定めたのは巫女。 その前に立ち塞がるライ。

「エルっ、逃げろ!!  ここは俺が食い止める」

「・・・こ、腰が(泣」

・・・蛇に睨まれたカエルが如く蛟の眼光に腰を抜かしてしまったよう。

ボコボコと波打つ蛟の表皮。そして放たれる水の矢。

「っ!!」

ドンっ!!

咄嗟に剣を振り下ろし、焔の柱を発て、相殺。

「破っ!!」

闘気刃のつもりで撃出した火炎真空刃が蛟に襲いかかるが

「ちっ、これじゃ無理か」

(・・・主よ、火球を撃て)

「うおおおおおおおおおっ!!!」

ドンっドンっドンっ

切っ先から生み出された火球が蛟へ撃ちこまれるが牽制程度にしかならない。

「もっと力をっ!! もっと火力をっ!!!」

(・・・ぬっ!!)

ライの闘気が魔剣へ流れ込み、切っ先の火球がさらに大きく高温へ成長。

「いけええええああああああっ!!!」

(おおおおおおおおおおおおっ!!!)

轟!!

火球から生れた炎龍が蛟へ襲いかかり

「う・・そ・・・・(茫然)」

(・・・やるな、主)

一瞬で蛟を消滅。そして炎龍はゆっくりと空へ昇華した。

しかし、

ズズズズ・・・

「地響き止まってないぞ・・・つか、ここ崩れ始めてるっ!!」

(・・・逃げろ)

「「うわああああああああっ!!?」」

 

・・・外はすっかり雨がやみ、今や見事な夕焼け

あの後、危機一髪逃げ出した二人の後ろで神殿はアッサリと崩れ落ちた。

多分、蛟が発生することで自壊する仕組みだったのかもしれないが・・・

今となっては如何でもいい事。

そして、焔の魔剣フランヴェルジュはライの手に。

「これ、本当に貰って行ってもいいのか?」

(・・・これと言うな。我名は)

「ヴェ・ル・ジュ 、連れて行ってもいいか?」

(・・・・・・・・・)

「はい(笑)。 力は正しき者と共にありますから。」

「ま〜、別に俺は正義の味方を気取る気はないんだけどね。多少お節介かもしれないけど。

よろしくな相棒。ライと呼んでくれていいぜ。」

(・・・よろしく、ライ)

「で、エルさんはこれから如何するんだ。」

「この事を報告しに本部の神殿へ参ります。

盗人に魔剣が盗まれそうになり、神殿が崩壊してしまった。と

その後は・・・旅を続けながら私が何をすべきか探したいと思います。」

「そっ・・・んじゃ、俺行くわ。 あんまりもたもた出来ないし。」

「はい、ライさんに旅の御加護がありますよう・・・」

(・・・さらばだ、娘。・・・エル=プリスに加護があらんことを)

「・・・・・・(驚)」

ヴェルジュにとって、巫女が孤独に封印を護る姿は好感の持てるものだった。

「縁があったらまた会おう」

巫女が見守る中、ライの姿が夕日に溶け込んでいく。あたかも燃えるかのように。


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