■ とある騎士団の日常 ■
〜The Chivalry,s daily〜
EPISODE 03
力をその手に
新しくパーティーに加わった魔導師にして魔女の美幼女ルー。
見た目と違いその本性はとんでもないものだった。
長年生きているだけあって老獪の上に、すぐ疲れた背負え,肩車しろと
ライに駄々を捏ねる。
例えゴリアテが志願した処で、肩が固いだ背が高すぎるだで一蹴。
その上、朝低血圧のルーはちゃんと起きない。
だから起きるまでライが背負って行かなければならない。
どちらにしろ起きれば肩車・・・
要はダダッ娘なわけで、その事はライが我慢すればいいので別に問題ない。
いやそれはそれで大いに問題だが、それ以上に最大と言える問題があった。
その容姿。
別に可愛いは罪などというつもりはない。問題は衣装。
カインやアルシアですら見た目重視の妖艶(?)な格好でも一応旅人姿。
しかし、ルーはいかにも魔導師といったローブ姿。
知らない人が見ればまるでコスプレ。はっきり言ってこの上なく目立つ。
「なぁルー、その姿 如何にかならないか? ・・・って荷物もってないしな」
「ん、ちょっと待て」
ライから飛び降り路肩へ。そして懐から取出したのは一面だけ色が違うキューブ
ソレを地面に置き、呪文を唱え
「・・・・・『解除』」
と見る見る内に大きくなっていく。
・・・大人4抱え分コンテナを縮小していたと言うべきか。
「イイな、それ。俺に教えてくれ」
「やめとけ。無限に近い魔力を持つ私だから出来る芸当だ。
普通の御主なら三日もしない内にミイラだぞ?」
これは術者の魔力を吸収し対象物を縮小し続ける魔法。
理論的には極めて単純だが、対象物の収縮率に合わせ常時魔力を消費するため
便利な割りに意外に使手は少ないという。
普通のライならルーの言う通りもって2日
「・・・・・・」
皆の前、ルーはコンテナの扉を開け中に入り
ゴソゴソゴソゴソゴソ
「これならどうだ?」
「却下。 取り敢えず旅に向くヤツないか?」
即答。パーティドレスみたいなモノが旅に向くというなら一向に問題ない。
「むぅ、わがままな奴メ。」
ルーだけには言われたくない気がする。
ゴソゴソゴソゴソゴソ
「これなら如何だ?」
「・・・・・・却下(呆)。 メイド服は家事等に向く物であって、
旅に向いているという話は聞いたことないぞ。 アルシア、ちと見てやって」
数分後、再び魔導師姿に戻ったルーと共に出てきたアルシアは諦め顔を横に振り
「ふぅ〜〜〜〜〜〜。 次、大きめ目の町着いたら服屋行くぞ。」
アルシア,カイン,ゴリアテは苦笑い。
何故、こんなにも疲労を感じるのだろうか・・・
カインは子供(?)の世話など嫌、アルシアは町到着と共に消え、
ゴリアテに任せると如何なるか解らない。結果
ライがルーを何故か肩車して町をひね歩き、
「俺が付いて行くしかないわけね・・・」
「ん、何か不満か?」
「不満と言うより、世の中の不条理について」
「却下っっ!!」
速攻でやり返された。まあいいけど。
そうやって二人が到着した服屋はソコソコに大きく、それなりの品揃え。
「いらっしゃいませ」
「この子に旅向きの服、数着選んでやってくれ」
「この子というなっ!!」
ライはルーの抗議は無視し、懐から出した数枚の金貨をその額に驚く女店員に渡し
「じゃ俺、外で待ってる」
「何だ御主、見んでいいのか?」
「柄じゃないよ」
笑みを残し店を出、喧騒の中 壁に背を預ける。
一服したいところだが、残念ながらライは喫煙者ではない。
そのまま腕組したままボーっと天を仰ぎ、青空を流れる雲を眺めて時間を潰し
不意に前に立つ気配に見てみると
一人のダブルポニテの少女。
瞬間、ライからすべての音が消えた。
「 」
そのライの口が既に存在しない少女の名を紡ぐ。それに少女は笑みを返し
「それでもライは笑っているんだね」
はっきり響く、粉う方ないその少女の声。 何故なら最も大事な人、そして・・・
他人が聞けば全く訳の解らない一言。 しかし当人へは必殺一撃。
だからその一言にライは身も心も呪縛され全く動けず、
その少女がゆっくり立ち去り人波へ消えてゆくのを見送るしかなかった。
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