〜転送門〜
損失技巧の中でも、もっとも早くに解析が終わり、実用に回されたもの。
ただし、その調整には師級(マスタークラス)の魔術師が24時間ついている必要があり、
一部の特権階級のみが使用できる物だった。
しかし、賢者の石の発掘により、より容易に、誰もが扱う事が出来るようになった。
賢者の石を触媒として使うことで、通常の魔術師が一日数時間ついているだけで
維持する事が可能となり、経済活動の発達を促がしたのだ。
だが、自然法則を無視して空間を接続することが、予想できない事故を招いてしまう事もある。
今回発生した事故は、新たに定期接続される事になった「神殿」への、
安定した空間接続のための調律中に発生。
空間接続と同時に"時震"が発生。 一時的に魔界と接続されてしまった。
調律を行っていたのは、まだ正式認定を受けたばかりの魔術師であったが、
辛うじて接続を遮断する事に成功した。
だが、その時既に転送門のある一室は魔層圏に汚染され、一匹の魔物が潜り込んでいたのだ。
正式な"式"を用いずに現われた魔物がする事。
それは、己の存在因子を固定させる為の"捕食"行動である。
対象の獲物を捕縛、獲物の体組織の一部をを吸収。 その遺伝詩情報を用いて
己の遺伝詩を環境に適したように書き換えるのだ。
それと同時に、獲物の体内に"異伝詩"を注入、侵食することで自分専用の"浄化装置"とする。
浄化装置にされた対象は自我意識が希薄となる。
そして不特定多数の人間と性交渉を行う事で相手の生体エネルギーを吸収。
その体内において生体エネルギーを自分の”主”用に調整するのだ。
魔物は、浄化装置となった対象と性交渉と同様の行為を行う事で、
生体エネルギーを食い、無瘴気状態での活動が可能となる。
調律を行っていたのが師級の魔術師ならば冷静に対処できただろうが、
認定されたばかりの魔術師ではそれは不可能に近く、成すすべなく"捕食"されてしまった……。