∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ エセルの神殿日記 ■
作: 文月様
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エセルの神殿日記

エセルは神殿にいた。

神殿の中には人がいたが、エセルは何とか座るスペースと机を確保した。

エセルは机の上にノートを広げた。

そしてペンを取り、インクを付けてノートの表紙に大きく字を書いた。

『エセルの神殿日記。 エセル』

エセルが書き終わり、「フゥ・・・」と一息ついた時に、横から伸びてきた手にペンを奪われた。

奪い取った張本人は、『何やってんのよ』と言いながら、言葉を書き加えた。

『エセルの神殿日記。 エセル(ロリ)』


「・・・ひぇ?」


突然の降って湧いた災難に目が"点"になるエセル。

その後、文字を書いた当人は新しい標的を見つけ、去っていった。

エセルは何とか消そうとしたが、やはり無理だった。

ちょっと涙が出てきた。

インクで塗り潰そうかとも考えたが、不調和なことになるからエセルはやめることにした。

エセルは仕方なくノート一ページ目を開け、今度は気を付けて書き始める。

 


○月×日。晴れ。

今日からこの日記を書き始めることにしました。

と言うのも、どうやらエセルはこの神殿の看板娘らしいからデス。

それは理由になっていないと言う人もあるかもしれませんが、

何だか看板娘と言うのはある程度は神殿に出入りしなければならないらしく。

何時もというわけではないらしいのですが、

ある程度と言っても何の理由もなしに来るのは気が引けてしまいます。

だからここに顔を出す理由を作ろうと思ってこんなことをしてみます。

男もすなる日記を、女もしてみんとてするなり。

最後の一文は余り意味はないデス。

ふぅ。日記を書くと言っても、何を書けばいいのでしょうか。

とりあえず、周りの描写でもしてみましょう。

シーヴェンお兄ちゃんが攻撃されています。ユエ様に荷物をあさられているようデス。

お菓子が出てきたみたい。信者の方に手渡そうとしています。

お兄ちゃんは取り返す気もないみたいデス。

信者の方達は椅子に座って談笑していて。

あぁ、お兄ちゃんがまた何か奪われてしまいました。

何だかかわいそうなので、これ以上の記述はしないことにしておきます。

あ、神殿騎士のニー様とスドウ様がやってきました。

ユエ様が大きな声で、『筋肉!』と叫んでいます。

周りに聞こえていないでしょうか。いやたぶん神殿中に聞こえているのでしょう。

いつもの事デス。

座ってすぐに、スドウ様はニー様に首を絞められています。

聞くところによると、どうやら何かの報復らしいデス。

スドウ様の首が後ろに反っていました。

どうしてこの二人が仲良しなのかな、と不思議に思っていましたが、今、何だかわかったような気がします。

今日初めて書いたのですが、けっこう難しいデス。

毎日こういう内容ばかりになるような気がして、先行きが不安。




○月△日。くもり。

今日は何を書こう。

個人的な事を書くのはあまり好きではないので、やっぱり神殿の中を書いてみようと思います。

この神殿の中にはエセルには分からないものが多いデス。

例えば、地下室へのドアはどうして何時も鍵がかかっているのか。

悪魔族の紋章が彫ってありました。エセルはもう少し可愛い方がいいデス。

そんなことは小さな事なのですが、あと、大陸的朝の体操、という張り紙が壁に張ってあります。

いつからあるのか誰も知らないらしいデス。

他にはマグネ・・・・

いもうといもうといもうといもうとさまなーあくにんこえがあくにん♪

あぅぅ・・・・

またしても、ユエ様にペンを奪われてしまいました・・・・。

↑のほうな事を書き残していっちゃいました。

文章が途中で止まったので、続きを書く気が無くなっちゃいました。

だから、別のことを書きます。

マスターと、初めて見る人が『転送機』の周りで話をしています。

マスターを見るのは久しぶりデス。

エセルがお兄ちゃんの家に遊びに行っているからかも。

二人は専門的なことを話していて。簡単なことかも知れませんが、エセルには分からなかったデス。

スドウ様の首がまた絞められています。

今日はニー様ではなく、ユエ様でした。

スドウ様がムキになって鋭い目を向けると、後ろからニー様に髪を引っ張られました。

女性に手を挙げるな、と言うことらしいデス。

ユエ様はあはははは、と不敵な笑みを浮かべていました。

どうやら孤立無援で、スドウ様には敵が多いみたい。

これから大変だな、と思う。でもエセルは看・・・

でびるさまなーシーヴェンいもーともえでびーるさもなー♪

今日二度目。もう何だか頭がぐるぐるするのでこれでやめておくことに。




○月□日。小雨。

今日は神殿に人が少ないデス。

いるのは神殿騎士の二人と、お兄ちゃん、ユエ様、マスターだけ。

マスターが手紙を書いています。今思ったけど、マスターって何だか不思議。他意は無いデス。

スドウ様がニー様にちょっかいを出しています。ひじうちを貰いました。

でも痛くなさそう。ユエ様が横で笑っています。

あ、そう言えば今日、お隣のお婆さんが野菜を分けてくれるのでした。

ついでにお料理も習って、栄養不足気味のお兄ちゃんに沢山食べて貰いたいデス。

仕方が無いので今日はこれだけデス。では。

・・・・

エセルが日記を忘れていった。なのでみんなで落書きしやふ♪

こんなことをして良いのか……しかし、タイミングの悪い。

さまなー♪

それじゃ誰が帰ってきたのか明白だと思いますよ。

一行交換詩でもしよう。

お題。エセルに贈るポエム。

柑橘蜜でご飯を炊いた

万人が避けて通るようなブツになってしまった

無理して食べようと思う

素で泣けてしまうかも

目分量で塩をふった

えもいわれぬ薫りが漂ってしまった

戦闘態勢をとれ みなの衆

累々たる屍 夕食の時間

ちょっと待て いい処理法を思いついた

やんごとなき御方に贈ればよかったのだ

こんなことして本当に良かったのでしょうか?

エセルよ、これは嫌がらせではないぞ。

……何でしょう、コレは。

てんてんてん、と書きたくなるほどデス。

これからは忘れないようにしようと思いました。




○月◇日。快晴。

今日は誰にもじゃまされないように頑張る。

今日は暑いデス。とってもとっても暑いデス。

よくマスターはこんな中でも汗をかかずにいられるな、と思います。

エセルが分からない方法で、涼を取っているのかも知れないデス。

ユエ様がこっちを獣の目でながめています。危険を感じます。

今日こそこの日記を死守しないと。

これで何日連続で書き込まれているでしょうか。

スキを見せたらいけないんです。

じーっと視線が。

あ、シーヴェンお兄ちゃんが来てくれました。ユエ様がそっちの方へ行きました。

助かった。ありがとう、お兄ちゃん。

エセルの日記はこれで守られました。お兄ちゃんには悪いことをしましたけど。

お兄ちゃんがエセルに声を掛けてくれました。

どうやら昨日のことが気になっていたみたいデス。

でも、そのせいでまたユエ様に何か言われています。

えっと、シーヴェンのくせに……って、それは関係ないと思います。

あ、しまった。油断してました。

インクを取られて。

ユエ様がとても書きたそうな目でこっちを見ています。

お兄ちゃんも何も出来なさそうでした。このままだとインクは返ってきません。

お兄ちゃんの家に出かける直前まで返ってこないような気がします。

・・・・・

仕方が無いので本を明け渡すことに。

エセルは●●●●だ♪

うぅ・・・・、そんなことだろうとは思いました。

塗りつぶしたけど、まだ上から読めそうな気がしてなりません。

やっぱり今日もダメでした。

どうやったらこの日記を守ることが出来るのでしょうか。

案を出してみますデス。

@ 端の方で分からないように書きます。

→う〜ん、逆に目立つかもしれないデス。

A ノートに鍵を付ける。

→意味がないデス。

B 書いたら消えるペンで。

→エセルが見えません。

C ノートにイヤな匂いを付けます。

→だからエセルがイヤになります。

D 書くときにはついたてを立てたり。

→怪しいし、書いているのが分かっちゃいます。

E エセルにしか見えない、エセルだけのノートに。

→何でしょう、これは。

F ここ以外の場所で書く。

→それは、神殿日記の意味がないデス。

う〜ん、どうすればいいのでしょうか。

わからないけれど、また明日も頑張るデス。

いもーともえ。

ああ、また書かれました。

 

《了》
2001/09/28



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