■騎士団side.ep■
「緋の銀狼,燐翼天使」







僕の名前はカイン、カイン=クラウス。 お姉さんの名前は?

・・・・・・・・・・・・

ヒルデ、聞いて欲しい事があるんだ。僕は四聖の武具の主となり、君の相方になりたい

・・・・・・・・・・・・

久しぶりだね、ヒルデ。約束を果たしに来たよ

・・・・・・・・・・・・

いずれまた会おうよ。 ・・・その時に・・・さ。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

夢、それは幼き頃に彼女と出会ってから 彼女との記憶。

彼女に出会ってからは、彼女といる為だけに生きてきた。

嘗て彼女についての記憶を一切失おうと・・・失ったものを求め。

そして今・・・

「・・・・・・やぁ、おはよう」

 「・・・すみません、起こしてしまいましたか?」

「いや、夢を見ていたよ。 走馬灯のような・・・ね」

 「私の夢は・・・貴方だけ。 ・・・子供の貴方だったり、今の貴方だったり」

「僕も似たようなものさ。 こうして君を抱締める事をどんなに望んでいた事か・・・」

 「あ・・・(照」

抱擁に、二人は再びまどろみ・・・

カイン=クラウス。 金髪の優男で一見さっぱりしたナンパ師だが

その実、都市国家シウォングのエージェント、極星騎士団の重装騎士。

ヒルデ=ヴァルア。 達観した聖職者の気配を放つ金髪の美女だが

正体は元 精霊戦乙女。しかし その実、運動神経が鈍い娘でしかない。

この二人の美男美女のカップルをみて羨ましがる者は多いだろう。 しかし

その心の奥にある悩みまで察する事が出来るものは殆どいないに違いない。

「行ってくるよ・・・」

 「いってらっしゃいませ」

数日間の任務に出るカインを見送るのはただ一人、ヒルデのみ。

彼女を手を彼は包み・・・

「行ってくるよ・・・」

 「いってらっしゃいませ」

別に見送りは彼女一人さえいれば十二分。

寧ろ全てを捨てて片時も離れず彼女と二人っきりで暮らしたい。

何を求めて生き何のために生きてきたかと問われればその答えは

彼女のため だから。

しかし、今の立場を捨てて生きていく事は出来ない。

彼の親友や弟分ならば何処でも生きる事が出来るだろうが、彼はシティボーイ。

哀しいかな、欺き戦う事しか出来ないと自覚しているから。

「行ってくるよ・・・」

 「いってらっしゃいませ」

彼女と離れたくないのなら、彼女も任務に連れて行けばよい。

却下。連れて行けば身を護る術のない彼女に危害が加わるのは必至。

しかし屋敷にいる限りは何があっても仲間が護ってくれる。 屋敷にいる限り・・・

「じゃ、いってくるよ」

 「はい、いってらっしゃいませ」

今度こそ、名残惜しみつつ彼女に背を向け出発した。

きっと後ろを振り向けば姿が見えなくなるまで彼女が見送っていてくれるだろう。

だが、それに応える事はない。 見れば、一時の離別すらより辛くなるから。

組織が大きくなる以上、如何しても不正が生まれることは否めない。

だから多少の不正がある程度はかえって健全な組織だといえる。

しかし上流階級の僅かな者により中下流階級を搾取するとなると、それはもう

不正なのではなく・・・しかもそれは世間では常識であり、都市では許さない。

都市へ属することを申し出る以上、それを弁え自粛すべきなのだが・・・

それでも続ける以上それなりに処罰せねばならない。

当然、向こうも処罰されたくないので様々な手段を高じ抵抗してくる。

挙句、調査すら出来ないようにまでして。

以外に侵入さえ出来れば調査など容易。 カインの侵入の手口は毎度決まっている。

先ず、標的の身近な女に取り入る。 標的が女性ならば標的自身に。

今回は、その妻。

 「あら、お客様とは貴方かしら?」

「はい奥様。私の取り扱うものは香水に宝石等でございます」

 「等?」

「はい奥様、私が取り扱うものは貴女様の寂しさを紛らわすものですから」

と女殺しの眼で、じっと婦人の目を見続ける。

それで向こうが頬を染めて慌てて眼を逸らせばこっちのもの。

 「・・・こ、ここでは人目がありますから奥で」

「はい、失礼します。 奥様」

心の隙間に潜り込んでしまえば任務の大半が終わったも当然。

弄び、思考が虚ろになった女性から引き出せるだけ情報を引き出し・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

結局その一族は今までの罪を問われ、それでも家財,権限没収のみとなった。

代理人としての権限 恩赦で、細々と暮らすなら十分なだけの財だけは残されて。

用が済めば後は屋敷へ帰るだけ。だが、カインが村を出て直ぐに立塞がった一つの影。

それは前とうって変わり質素な衣装の女性。

 「カイン、貴方は・・・」

カインの本心を隠す笑みが彼女に希望を持たせているのだろうか。

「・・・・・・お帰りなさい、貴方の旦那様の処へ。」

 「やはり私をっ!!!」

「ええ、端より利用するつもりで近づきました。

だから貴女と交わる事はなかったでしょう?」

 「貴方はっ!! 貴方の、貴方のせいで私たちはっ!!

 貴方を殺して私も死ぬわっ!!!」

短刀腰溜めに飛び込んできた婦人を避けるまでもなく受け止め

その脇腹、内臓にダメージにならない場所に刺さる短刀。

しかし素人目には、それは恐ろしく血が滲み

 「あっ・・・」

「・・・今更僕を殺しても何も返ってきませんよ。

折角残ったもの、貴女を愛してくれる者のために御使いなさい」

己の所業に呆然とする婦人を残し、カインは感慨を残さず去る。

いつの頃からだろう・・・

弄び逆上した女性に襲われ刺される前に反撃するようになったのは。

そう、それが己の為ではなく任務の為に行うようになってから・・・・・・

都市へ帰ってきたカインは直ぐにライへ挨拶することはない。大抵は少し休み戻る。

しかし今は最愛の人がいる。だから真直ぐ屋敷へ。

「ただいま、ヒルデ」

 「おかえりなさいませ。 ・・・大丈夫ですか?」

物干し場に洗濯物を干している時、行き成り背後から声をかけられても驚く事無く

ヒルデは笑みで出迎える。 心理的にも肉体的にも苦痛の笑みを浮かべるカインを

「ふふふ、余り大丈夫じゃないかもしれない。

応急的にしか傷の手当てをしていないんだ。手伝ってくれるかい?」

 「はい、では直ぐに・・・」

物干しソコソコにヒルデは肩を貸し二人は屋敷の中へ。

それでもヒルデが慌てないのは、当人の資質か カインへの信頼か・・・。

当人が当人だけに傷自体はたいしたことはない。ただ強く包帯を巻き直せば終わり。

「聞いてくれるかい、ヒルデ。 これは任務の為とはいえ

 弄んだ女性に刺されたものなんだよ。」

 「・・・何故、そのような事を」

「罪悪感、かな? 君に対する・・・ それに、彼女の罪は知らない事 だからね」

その優顔へ浮かぶのは、他者に決して見せる事がない悔恨と自嘲の笑み。

 「・・・そうですか」

「今更、僕に良心があったこと自体お笑い以外何ものでもないんだけどね」

 「そういうことおっしゃらずに」

そして、二人の影は重なり・・・

ヒルデは元々、普通の村娘だった。

ただ特殊だったのは、その愛する者が勇者だったという事。 そのため

彼の力になろうと死んでしまった彼女は周囲の力により、精霊 戦乙女になった。

様々な戦いを彼と共に戦い・・・しかし、彼は他の娘と結ばれ子を残し・・・

彼女一人、時の流れから残された。  精霊と自縛霊は紙一重。

もしかしたらは四聖の武具の試練とは彼女の呪詛なのかもしれない。

だが全てを知ってなお、少年は乗り越え青年となり彼女を求めてやってきた。

そして、偶然とはいえ彼女に再び肉体を与え人生を謳歌する機会を。

もはや最初の勇者を思い出そうとしても、出てくるのは今側にいる最愛の人。

しかしこのままでは・・・

ヒルデにとって最も身近な者はルーといってもいいだろう。

もしかしたら先にヒルデが生きていた時、ルーも生きていたかもしれない。

お互い、その当時の記憶がまともに残っているかは別として。

ルーの部屋ではない私室に礼儀正しく来たのはメイドなヒルデ。 衣装はリオ提供。

 「ルーさん、少し御相談にのっていただいても宜しいでしょうか?」

 「お前か? まぁ、いつか色々教えてやると言っていたしナ。 暇だし構わんぞ」

 「ありがとうございます」

ルーの私室・・・言ってしまえば本やら瓶やら小魔動機が乱雑に散らばった玩具部屋。

空いている場所といえば、中央の低テーブルとその周辺のみだけ。

ヒルデはルーの向かいに、先ずは携えたバスケットから菓子や茶葉やらポットなどを出す

 「・・・・・・先に一つ質問しても構わんか?」

 「魔女で魔導師たるルー様が私に質問ですか?」

 「茶化すナ。  如何考えてもバスケットから出てきた物の方が体積が多いゾ」

 「リオさんから教えて頂いたメイドの極意の一つでして、私も詳しくは・・・」

 「ナヌっ? 魔導も使わずそのような真似をするとは、恐るべしメイド」

兎も角、菓子に手をつけお茶を啜り一息。

 「・・・それで何だ、相談というのは?」

 「はい、私はカインの為に一体何が出来るのかと思いまして・・・

 私、帰りを待つだけの女には成りたくありません。常に彼の支えになりたいのです」

 「気持ちは良くわかるが、お前はドン亀だからナー・・・一体何が出来るやら」

多分、ルーですらヒルデに素手の喧嘩で勝ててしまうだろう。

それくらいにヒルデの運動神経は鈍い。 手先は割りに器用なのだが

 「分かっています。 でも、何もしないわけにはいきません」

 「フム、人を攻める性分でなさそうだし頭脳労働専門なのは眼に見えとるからナ

 ・・・取り合えず知識の肥やしでも増やしてミロ。  本は選んでやるから。」

 「はい、宜しくお願いします」

そして、二人して菓子を摘み茶を啜ること暫し

 「・・・処でお前、待つ女になりたくないなどと変な言い回しをしておったが?」

 「はい、リオさんに貸していただいた恋愛小説に」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・まぁ何だ、己とって有効な情報か否かは己で判断するしかないナ」

 「はい? そうですね・・・」

数日後、ヒルデは驚異的な速さでルーの示した本を読破していった。

だが、幾ら知識を詰め込めようと使えなければ全く意味がない。だから・・・

呼び出しに地下魔導実験室でヒルデを待っていたのは魔導師ルーと

 「わん〜♪」 ひるで〜♪

銀狼少女のルナまでにこやかに手を振って居たり。

精霊の頃から割りと自由に意思疎通出来ただけあって仲はいい。

 「ウム、行き成りだが今日はお前たちに戦ってもらう」

 「わうっ!!?」 ええっ!!?

 「・・・本気ですか?」

 「冗談だ。やらせた処で力有り過ぎで見物にすらならん。折角、野生の精霊士も

 いる事だしな 元精霊戦乙女とやらの力量を存分に発揮して頂こうか(ニヤリ」

ルーの意図を理解し、ヒルデの精霊眼が更に美しく赤紫に輝く。

禁忌など気にせず、思うがまま持てる全ての力を使ってみろと。 

そうでない限り人として人の支えになる事など出来はしない。

嘗てカインは、親友がその娘達とHをするわけでもなくだたマッタリ時間を過す事を

理解出来なかった。 しかし今はその何もしない時間が非常に貴重なものと解かる。

だから二人っきり日の照る部屋で、優雅にお茶を

 「カイン、一つ頼み事してもよろしいですか?」

「ん? 何か欲しいものでもあるのかい?」

 「いえ、そのようなことではなく・・・次の任務、私も連れて行ってほしいのです」

ぴしっ と目に見えてカインが凍りついた。 それでも辛うじて還り

「それだけは・・・聞けないよ」

 「どうしてですか?」

「第一に、ヒルデを連れて行っても僕は君の安全を保障しきれる自信はないんだ。

常に側に居させるわけにもいかないしね。それに・・・僕自身、僕のしている事を

恥じているんだよ。弱き者たちの為とはいえやっていることは・・・人の心の隙に

突け入り欺く事だからね。  そんな僕を見てほしくないという事が第二」

 「あら、では問題ないじゃありませんか」

「???」

 「カインが気にしていらっしゃる第二、確かに気分が良いものではありませんが

貴方の心は私に下さったと分かっていますし、貴方が見目によらず真面目な事も。

だからこれはもう問題ありませんね?」

「う、うん、そうだね(汗」

 「後は第一ですけれども、火中のまで連れて行って欲しいとは申しません。せめて

直ぐにカインを支援・・・連絡が出来る所、同じ村の宿まで辺りにはいけませんか?」

「しかし・・・村というのは直、話が伝わっていくものだから」

 「では、こうしませんか?」

・・・・・・・・・・・・

「しかし、それでも君に危険が・・・」

 「その時は私を助けに来てくださいね、私の勇者様」

「あ、あはははは(汗」

恋する女性は時として、何者よりも強く恐れを知らない。

親友がよく、彼の女子達に迫られて情けない顔をしているが・・・

その気持ちが良くわかったカインだった。

「・・・でも、女性を玩ぶのが楽しいって事もまた本音なんだけどね」

 「・・・・・・」

ぎゅぅ〜〜〜〜

「あはははは、痛い、痛いよヒルデ」

ヒルデには決して隠し事はしない。それがカインの誠意である。

結果、どんな目に合おうと・・・

早速、次の任務からヒルデは付いてきてしまった。

着いてきてしまった以上如何しようもなく、村の宿屋の手前

「僕はこれから行ってくるけど・・・危ないからヒルデはくれぐれも注意するように」

 「・・・カインって意外に心配性だったんですね」

「あー―うん、まあ・・・」

 「大丈夫です。カインこそ御気をつけ下さい。

もし困った事が起きた時は私が支援いたしますので」

「・・・君がかい?」

 「はい」

と返ってきたのは満面の笑み。 とてもウソをついているようには見えない。

以前に、嫉妬こそすれウソをつくことなどは有得ない。

「・・・考えてみれば、僕一人で全て形がつく事が最も無難のはずなんだけどね」

 「いってらっしゃいませ」

ぼやくカインを以前と違い笑みのまま見送り、姿が見えなくなるや否や

危なっかしいくも急ぐ足取りで宿へ己の部屋をとりに。 彼女なりの戦いをする為。

・・・・・・・・・

「・・・ふぅ、いやはや参ったね」

まさか問答無用に抜け床で地下迷宮に叩き落されるとは思わなかった。

恐らく、元々あった遺跡の上に屋敷を建てたのだろうが・・・

そんなことより今はカインの存在が標的 敵にばれていた以上、ヒルデの身も危ない。

登るには険しい石壁の遥か上からは、抜け床の隙間から僅かに射す光。

左右にはポッカリ口を開ける闇。

焦ってはいけない、焦ってはいけない、焦っては・・・

「って事自体無理な話なんだけど・・・」

と携えていた鞄を蹴散らかし、隠し底から取り出したのは組み立て式の斧槍。

今はヒルデに預けてある「凰翼」より劣るものの、これも立派な業物。しかし

この手の迷宮は罠もある上に魔物も放置、脱出に時間が掛かる事は必死。

「ヒルデ・・・無事でいてくれ」

(はい?  お呼びになられましたか?)

「・・・・・・」

(・・・・・・・・・・)

「今、ヒルデの声が聞こえた気がしたと思うんだけど?」

間抜けだとわかっていながらもあえて口に出し聞いてみる。

まさか声が聞こえただなんて・・・

(はい、お応えいたしましたから)

「・・・・・・」

(・・・・・・・・・・)

「・・・一つ質問してもいいかい? 何故僕にヒルデの声が聞こえるのだろう」

(長くなりますが、よろしいですか?)

「出来れば手短に」

(・・・カインの手助けがしたくて出来るように修行をしたのです)

「それは・・・、直ぐその場から離れるんだっ。 そこは手が回る」

(ええ、そのようで・・・あっ、今、前にお客様が)

「!!?」

(お帰りになられました)

「・・・・・・」

(あの、何か?)

「・・・いや、ところで何が出来るんだい? 僕はココから脱出したいんだけどね」

(基本的には精霊 戦乙女だった頃と変らないでしょうか。 後、他にも・・・)

「詳しい事は後で聞かせてもらうよ。今は、ナビゲート宜しく」

(はい、かしこまりました)

所詮、片田舎地主が扱える魔物などカインの敵などでななく、罠はヒルデが見抜き回避。

その日、非常にキれていてもポーカーフェイスな笑みな優男の手によって

屋敷は地下迷宮諸共、瓦礫の山へと壊滅させられ・・・

・・・・・・・・・・

さっさと任務に決着をつけたカインは早々にわき目も振らず宿へ。

しかし、綺麗に片付いている部屋には やはり居るべき者の姿はなく・・・

「ヒルデ・・・一体何処へ」

既に声は返ってはこない。 喪失感にへたり込む。

一方で、冷静に己を見ているカインが

だから人を本気で愛することなどしなければ良かったのに と。

「・・・でも、やはり人は人を愛してこそのモノなんだよね」

 「そうなんですか?」

と、カインの目の前に気配が明白になると共に姿が認識出来るようになったヒルデが。

「・・・ヒルデっ!!!」

がばっ

 「きゃっ!!? ・・・この方法は本当に確実だったんですね」

「無事で良かったよ。 でも次からはこんな真似は止してほしいな。」

 「・・・はい。」

精霊というものは、こちらが可也強く意識するか精霊の方から干渉しようとする

意思,意図がない限り御互い相見える事はない。精霊士など一部例外はあるものの。

精霊の瞳。この、見えざるモノが見抜ける千里眼の如き力と元精霊という立場を生かし

ヒルデは肉体を持ちながら半幽体離脱で精霊 戦乙女になるという術を編み出した。

この状態になれば元媒介であった四聖の武具が無くともカインを支援できる上に

肉体そのものはその場から動かせずとも人には精霊のように認識出来なくなる。

もっとも、知って狙われれば打つ手が無い事や時間の如何に関らず消耗が激しい

有効距離が限られているなどの欠点や条件も多いのだが・・・

 「・・・これで私も本当に貴方と共に生きる事が出来ます」

「そんな無茶をしなくても・・・」

 「無茶しなければならない時に無茶しなければ一生後悔することになりますから」

「・・・分った。君の好きにすればいいよ。」

端よりカインに勝機はない。

女に強いナンパ師より強い女性は、その惚れてしまった女なのだから・・・

屋敷の執務室、リラックスチェアに咽喉を曝し無防備体の若い男が一人。

秘書嬢がその男に跨り座り、手の良く砥がれた刃物を男の咽喉に着き付け

ジョ〜リジョ〜リジョ〜リ・・・・・・

無精ひげをそってもらっているだけだった。 ・・・否、だけではない。

男の手が秘書嬢のタイトスカートな尻に

さわさわさわ、むぎゅぅ〜〜

 「あ・・・んっ。 オイタは止めて下さい。危ないじゃないですか」

「危険と隣り合わせの悪戯ってのも中々興奮しないか?」

 「んっ・・・本当、おバカさんなんでからぁ・・・(惚」

「と、言いつつ・・・(ニヤリ」

秘書嬢の手からすべり落ちる剃刀に二人は済崩しに・・・

 「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・あっ、僕のことは気にせずドウゾ続けて」

「気にするわいっ!!!  つか、止めろやっ!!!」

「いやいや、何処までするか見物だったしね」

ツッコむ男にカインは悠々と応え、秘書嬢はさっきの艶姿は何処へやら麗美に立ち

 「態々、私達の邪魔をしてまで何の御用ですか?」

「大したことじゃないんだけどね、僕のヒルデの事」

「ヒルデ? お前の相方が何?」

「彼女を員数に入れないようにって言いにきたのさ。

確かに、彼女には数に加えるだけの実力はある。だけど・・・」

「余りにも不安定すぎる上に運動神経鈍すぎて当人は戦力外だから、か?」

「本当の事だけどね・・・怒るよ」

「大丈夫。端っから彼女はカインと一括りで考えてたから」

「それはそれで全然大丈夫じゃないんだけどね」

「彼女の処遇はカインの好きにすればいいさ。代わり、その分の給料は出さないけど。

 つまり、嫁さん扱いということで」

「おーい、僕らはまだ結婚してないよ」

「でも、予定なんだろ?」

「処で、君はどの娘を本妻にするつもりなんだい?」

「カインお前、昔は随分女の子を泣かしていたよなぁ?」

「二号さん,三号さん,四号さんは如何なるんだろうね?」

「くっくっくっくっ・・・・・・(攻」

「ふっはっはっはっ・・・・・・(攻」

二人は悪友。 冷笑と熱睨、繰り広げられる凄まじいばかりの攻防。

 「・・・(この二人、怖い)」

「よしっ、これで如何だっ!!! もう一銭も譲らないぞっ!!!」

「メイド扱い・・・幾ら何でもこれは無いんじゃないかい?」

「彼女に病気されたり死なれて恨まれたんじゃ堪らないからな

彼女の諸々装備含めて提供したるわいっ!!! 馬の乗方ぐらいは自分で教えろよ」

「ふぅ、それじゃあ・・・いいかな」

納得したカインは未練なく去っていった。 後はどうなろうと知ったことではない。

 「・・・処で、どなたが本妻になるのですか?」

ぎくっ

「・・・。 ・・・。 ・・・裁判長、黙秘権を行使します」

 「却下します。 答えて下さい」

付合が長いとなれば猫娘嬢だし、心の内が知れているのは幼娘嬢

肉体関係で云々なら艶麗嬢だし、仕事を支えているのなら秘書嬢

「・・・未定というのは?」

 「却下します」

「その場しのぎのウソというのは?」

 「偽証罪で、皆に言いふらします。」

「う〜わぁ(汗」

何であれ、絶体絶命。 秘書嬢も男が答えられないと分って、やっているから・・・

「だから、これからは君にも色々便宜は図られるから」

 「そうなんですか? ありがとうございます」

カインといるときは終始ニコニコと微笑のヒルデは何処まで喜んでいるか分りにくい。

「部屋もちゃんと一室を使っていいから・・・」

 「夜一緒に眠ってはいけないのですか?」

「あっ、いや、君さえよければ僕は構わないよ」

 「それは良かったです・・・」

一瞬悲しみで泣き顔へ歪んだ顔に再び笑みが戻る。 本当に喜んでいたらしい。

「安心して。 僕の心はヒルデ、君だけのものだから」

 「はい、私の勇者様。」

「・・・勇者様はやめて欲しいんだけど」

 「えっ・・・」

「神話では勇者と戦乙女は結ばれる事はないからね。

だから僕は・・・戦乙女の恋人っていうのは如何かな?」

 「あっ・・・はいっ!!!」

ヒルデの顔に広がる照れに満面の笑み。本当に見たかったものはこれなのだと思う。

勇者という称号。以上に彼が求めたのは戦乙女の恋人という立場。

それでも・・・策士の優男は今日も戦乙女を連れ暗躍す。


(03.09/21〜03.09/27)



2007/12/30
「SH
RINE」