∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ 焔の魔剣 ■

■作者:nao 様/ 紅乃鳥飛鳥 様■
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■ 焔の魔剣 ■
5. Crimson Edge(後




「どっ、どどどどどうしよう!?私、ドラゴンなんて見た事も無いし戦った事も―」

(そう焦るな。…奴とて不老不死では無い。恐らくは衰弱している筈だ。
ここは一つ、修行も兼ねて…敵討ちと赴こうでは無いか?)

「やだやだやだ、赴きたくないよぅ〜!!」

端から見れば誰も居ない街道で駄々をこねる少女。

そこに現れる、ひとつの人影。

がつがつ、がつがつ…

「ほれなひゃ、ほれはへふ……んぐっ。…それなら、俺が手伝ってやらん事も無いが…?」

「はえ?」

訂正する。

暫く前からそこに居て、少女の作ったスープの匂いにつられて勝手に食事を始めた者一名。

「あ、あのー……どちら様でしょうか?」

「……(ふきふき)…レッド………レイバード=フォルシュタイナーと名乗っている」

「あ、私はフォウエン=フレイルです。愛称はフォウ―」

ごんっ

「…レッドさん。ちょっと目を離した隙に貴方とゆう人は…!」

食を中断し、口を拭いていた男に襲い掛かる神官杖。

「…いや、旨そうな匂いがしたからつい。」

つい、で鍋にあるスープは半分以下にまで減っている。

「あ、あははははは……」

「…………。申し遅れました。私、エル=プリスと申します…
…………って、若しかして…その脇に刺してある剣は…」

Crimson Edge 後編 "腐れ縁"

(ふむ…久方ぶりだな、エル。)

これもまた数奇なる命運の巡り合わせか―

「ふぇ?…ヴェルジェさん、お知り合いですか?」

(知り合いも何も、―)

"旧友"とでも言うべきか。
かつて己が為にだけ存在し、己を封印する事にのみ自らの存在価値を見出していた少女。

「魔剣 フランヴェルジェを封印していた者です。…こちらが、旅の途中で知り合った」

「……流離いの竜殺し<ドラゴンスレイヤー>だ…」

すっかりと"場"にとけこんでいる彼が言う。
見かけは20歳前後といった所か…

(……しかし、"運命"とはまたも奇妙な事を仕出かしてくれるものだな…)

「ええ……しかしまさか、貴方とまた会う事となるなんて……」

「………。どうでもいいんだが、お前達…誰と喋ってるんだ?」

常人からしてみれば、最もな会話である。

「え?あ、あの、これは、そのー…」

「レッドさん、以前お話した事はあると思いますが…之が魔剣フランヴェルジェです。
…しかし、ライさんが持っていかれた筈ですが……」

之…と指された魔剣は、少女の側に突き刺さっている。

「ほう…これが………。…それで、貴女が使い手に選ばれている訳だな?」

何か懐かしげな瞳で之を見ながら、側の少女へと問い掛ける。

「う、うん…まぁ、一応そうゆう事になってます」

(されどまだ我を使い切る力量には有らず。自惚れるなよ?)

「わっ、わかってますっ!これから、幾らでも強くなってみせます…!」

「…成る程、な。」

「…?あの…レッドさん?どうかしたんですか?」

「ん……嫌何。何でも無いさ」

「??」

『グォォォォォォン!!!』

飛竜の咆哮が聞こえる。

「おっと、そういえば飛竜を狩るんだったな。スープにつられて忘れていた。」

(…………(この男…よもや……いや、まさかな…。))

「……。レッドさん、(ぐぅ、きゅるるるる)………う」

「…あ、あの…良かったら、エルさんも食べますか?まだ、半分……ってあれ!?」

既に空の鍋に対し、

「ああああああ!折角作った酒場のマスター直伝秘伝のスープがぁ!!」

悲鳴を上げる少女と、

「うん?…嗚呼、旨かったぞ。ご馳走様゛ッ」
ゴンッ

「貴方とゆう人は………!」

其の原因を戒める少女。

(案ずるな。まだ食材は残っているだろう、もう二人分追加だ。)

飛竜狩りはどうした、魔剣よ。

「あう〜…作ります…エルさん、ちょっと待ってて下さいね」

「あ、はい…分かりました。…申し訳無いです。
…それと、何故貴女がフランヴェルジェを持っているのかについても―」

「………どうでもいいが、飛竜は狩らんのか?」

お前が言うな、お前が。

「…レッドさん。暫く黙っていて貰えないでしょうか?…さもないと鎖でしばりつけますよ、木に。」

淡々と至極普通そうに言う少女。…恐らく、彼と彼女が出会ってからはそう短い付き合いでは無いらしい。

「悪かった。……俺は満腹になった、先に様子を見てくる」

「えっ?…って、一人で…危険ですっ、そんないくら難でも!!相手が悪過―」

「…俺は竜殺し<ドラゴンスレイヤー>だ。竜相手に死にはしない、"絶対に"。」

その瞳は確固たる信念を表す決意の炎に燃えている。
男は、その得物である大剣「舞天使」を背負い一人発つ。

「あ、あの…レッド、さん」

「…何だ?」

「……方角が、違いますけど……?」

―暫し後、フォウ自作キャンプにて

「あの人、本当に大丈夫なんですか…?」

スープを啜りながら、年は然程離れていなさそう―しかし雰囲気が全然違う彼女に問い掛ける。

「……ええ。腕"だけ"は確かですから。…何考えてるのか全然わかりませんけど…」

(……。確かに、腕"だけ"は確かな様だな)

魔剣と神官が相を打つ。

「…??…エルさんは兎も角、なんでヴェルジェさんまで分かるんですか?」

(………娘。我が立場を忘れたか?)

「立場?…えーっと……」

「使い手を選ぶ意志在る魔剣…
…それ故に相手の力量を見抜けずに如何するものか、といった所でしょうか?」

(その通りだ)

「あぅ…」

「クスッ…」

「…?どうかしたんですか、エルさん?」

「いえ……魔剣に選ばれた方ですから、どのような方かと思っていましたが…
あ、それと私の事は"エル"で構いませんよ。」

それはつまり、想像していたよりも遥かに御転婆で、あまりにも可愛らしかったから。

「ええっ、そんな………えーっと、エルさんってお幾つです?」

「えーっと、17歳……もう少しで18になる所ですが。」

「嗚呼っ、やっぱり年上じゃないですかっ。…私、呼び捨てにするのはやっぱりちょっと…」

年が上、とはいえ一つしか離れていない。

「いえ、構いませんよ。…それに、慣れてからで良いですよ。」

にっこりと、微笑みを向ける神官の少女。

「は、はい……」

すっかり恐縮してしまっている。

…とゆうか飛竜退治はどうなったのであろうか。

『グォォォォォ!!』

ニ度目の咆哮。
それは、対峙せし者…目の前に現れし竜殺し<ドラゴンスレイヤー>に対するモノであった。

(…始まったみたいだな)

「…!エルさん、私行きます!」

「ええ、行きましょう!」

魔剣を所持せし者への同意の言葉であり、共に旅する者へ加勢しに行く為の言葉。
彼の者を信頼するが故に出来る言葉。
それは、彼の者が"絶対的強さ"を持つからできる言葉。

―ナクアの村

「…お前の気持ちも解らないでもない。
…だが、人里を襲ってしまったからには成敗されるが道理…すまんな」

斬ッ

『ギャァァァァォォォン!!』

「レッドさん!」

「はぁっ、はぁっ……フォウさん、走るの速いですよ…」

「…応、遅かったな。こっちは片付いたぞ」

「…え?」

そこに横たわる骸。

(…どうやら外れだったみたいだな)

「ハズレ…って」

骸を見る魔剣と少女。
その目に傷は無く、一撃で屠られた傷跡のみ。

「嘘…こんなに大きな飛竜を…たった、一撃で…?」

「ふぅ………。…フォウさん、これで判りましたでしょう?
…彼が竜殺し<ドラゴンスレイヤー>の異名を持つ由来が」

(確かに…これほどの力量を持つ者とは…)

魔剣が唸る。

「ッ……」

少女がへたり込む。

―その日、村は祭り事になったのは言うまでも無い。

「いやぁ、しっかしニイちゃん見掛けによらずスゲェもんだなァ!」

バンバン、と背中を叩かれるレッド。

「…何、竜を葬るのは俺の使命だ。…俺は只仕事をこなしたに過ぎん」

言葉の冷たさとは裏腹に良く食う、飲む。

「ほぇ〜…」

「…いつもこんな調子なんですよ、レッドさんは。…毎回見惚れてたらキリがありませんよ?」

見事な食いっぷりをぼけーっと見ていた少女に言う。

「あ、あぅ」

「…ん?どうかしたのか?」

「うー…なんでもないです…」

(…にしても、"奴"と普通の飛竜の見分けがつかなかったとは…我の感も鈍ったか…)

「"奴"…ですか?」

「うん、さっきヴェルジェに聞いてたんだけどね。両目に傷があって、両腕も無い飛竜の―」

「"ジャガーノート"か…奴とはいずれ会い見える機会が在るだろうな」

唐突に出現するこの男。

「…ジャガーノート、ですか………そういえば、レッドさんはその飛竜を倒す為に」

「ああ。……この役目だけは誰にも譲れん。」

(我とて目前で主を殺された仇がある。どこの馬の骨とも分からぬ若僧に倒させはせん)

ふと目(?)が合う魔剣と男。

「……フォウさん。彼にはフランヴェルジェの声は聞こえてない筈ですよね?」

「う、うん……その筈だと思う、けど……」

地に突き刺さる魔剣を見つめる男。沈黙を守る魔剣。

二人「…怖い…」

確かにいろんな意味で怖い。

―夜刻、村の宿にて―

「あのう、個室二部屋しか開きありませんが…」

宿を仕切る女将さんが申し訳無さ気に答える。
村を救った英雄ご一行を箱詰めにするのだから、申し訳が立たない気もわからないでもないが。

「え…それじゃあ、えーっと…私とエルさ―」

「俺とエルで一部屋。フォウで一部屋、それで構わん」

す、っと言い出す男。
エルにそれを否定する仕草は無い。

「ええっ!?で、でもそれじゃぁ」

「それじゃぁ、何だ?」

普通、女二人で一部屋と男一人で一部屋であろう。
その常識をおもいっきりブチ破る発言にフォウは戸惑い気味であるが…

「いいんですよ、フォウさん。…この人は私が見張ってないと何仕出かすかわかりませんから」

呆れた口調で事を進め様とするエル。

「………俺はそこまで厄介者か?」

厄介者だと思うが。

「うーん…エルさんがそう言うなら、私は構わないけど…」

「……………。」

とことん信用されてない男である。

「それじゃぁ、お願いします」

「は、はぁ…」

女将さんが三人のやりとりを物珍しげに見つめていた後、

「それでは、こちらになります」

何かを悟ったようにふと顔付きが元に戻り、部屋へと案内される。

「それじゃぁエルさん、レッドさん、おやすみなさ〜い」

「はい、お休みなさいませ。」

「嗚呼、おやすみ。」

 

「………レッドさん、貴方率直過ぎます…もうちょっと控えられないのですか?」

「…すまない。どうも俺は―」

「いえ………分かっています。あまり長い付き合いとは言えませんが、
貴方の事は判っているつもりですから……」

「……すまない」

そっと抱き付く男。

それに身を委ねる女。

「ん……」

そして口付けを交わし、ベッドへと押し倒すように雪崩れ込む。

「…あまり周りに声が漏れたら困るからな。」

そう言うと男は、自らが羽織っていたマントの裾を千切る。
そして女にさるぐつわをかけ、

「…いくぞ」

「……………」

無言の肯定。
女の服を乱雑に脱ぎ散らし、真裸にする。

「んぅ……」

朱に染まる彼女の頬。

頬に口付けをし、それから始まる全身の愛撫。

まず片手で乳房を鷲掴みにし、もう片方の手を下の部分へと伸ばす。
そして自らの口で空いている胸にしゃぶり付く。

「んっ、んんっ…んんん、んんぅっ…んん…っ」

「今日はいつもより感度がいいな。…これ<さるぐつわ>のお陰か?」

そう言って、彼は責めの手を激しくする。

「んぅっ、んんッ、んんっ、…んんんーッ!!」

…どうやらイってしまった様だ。

「さて…お前だけ気持ち良くさせておく訳にはいかないからな」

男が自らのモノを取り出す。
既に膨張し切っており、

「……んぅ…」

とゆうかでか過ぎる。
少女の秘部に対しほぼ1.5倍程はある男根。

ズンッッッ

「―――――ッッッ!!!?」

いきなり最深部への挿入、
と共に未だ幼き少女の秘部からは愛液と共に裂ける血が飛び散る。

ズンッ、ブチュッ、ズグッ、ズニュッ…

「―ッ、んんんぅっ!!んんんんん、んんんんーーッ!!!」

苦痛のあまり瞳孔がかっ開き、虚ろな目は涙を流し只男の単純動作を受け入れている。

「…ッ」

ビクビクッ、と痙攣すると男はその男根を引き抜き、血に塗れた精液を少女にぶちまける。

「んんぅっ!…んんっ……んんっ…」

ぐったりとした少女を抱き起こし、さるぐつわを外す。

「…すまない。大丈夫だったか?…今治す」

まともに喋れない状態なのを既に判っている男は、腰から短剣を引き抜き自らの手の平をなぞる。
そして滴る血を、裂けて血塗れの少女の秘部へと垂らす。

すると、みるみる内に裂け口が修復されて行く。

「はぁっ、…はぁっ………ぅ……レッド、さん…………」

気を失ってしまった少女を、静かに…起こさないよう、体を綺麗にさせ、服を着させる。

「……………」

竜を屠る度に高ぶる感情。
其れを抑える為に、半ば八つ当たりと言ってもおかしくないだろうこの行為。
男は少女を護る身であり、甚振る身でもあるとゆうこの矛盾。
少女はその行為を受け入れ、この男と共に旅を続けているのだ…

そんな少女の事を愛しく思うが故に、申し訳無く、こんな自分を情けなく想う…

―翌日―

「あ、おはよう御座います。」

「おふぁようございまふー……」

低血圧のフォウにとって、寝起きとは正しく不機嫌そのものである。

「…………」

そんな彼女の殺気を感じ取ったのか、男は終始無言。

「フォウさん、朝食の時間ですよ。下に行きましょう」

「〜…○□@†ぇるじぇ=……」

「フォウさん、しっかりして下さい…」

ふらりふらりと歩くフォウを支えながら、エルが階段を下りて行く。

「………」

開けっ放しのフォウが寝ていた部屋から覗く魔剣を見つめながら、

「レッドさんも、朝食食べますよ〜」

下からエルの呼ぶ声が聞こえる。

「ああ、今行く。」

そう言いながら、彼はその部屋にあった魔剣を持ち出し、階段を下りる。

「…………」

「…………」

「…………」

(…………)

4人(三人+一本?)、無言。

フォウは何故か赤くなりながらもそもそ食べてるし、エルは元から質素。
この男は言うまでもなく豪食っぷりを披露しつつも魔剣を見つめている。

「あ、あの」
「えーっと…」
「……なぁ」

三人同時に口を開き、

「……今後の事についてだが」

「ええ。…フォウさん、宜しければ私達と一緒に行きませんか?」

「うん、私もそうしようかと思ってたの」

どうやら全員同じ事を考えていたらしい。

エルは魔剣 フランヴェルジェに選ばれし者に興味が在り、

レッドはエルから聞かされていたその魔剣に興味を示し、

フォウとはその大剣 舞天使を背負う男に興味を持つ。

魔剣は、と言うと―

(久方ぶりに再会した者達だ。我とて別に依存は無い)

「……となればこの村で残る目的はあと一つ…」

「ですね」

「ほぇ?」

相槌を打つ二人に疑問符をつけるフォウ。

(情報収集だ。…基本だろうが、馬鹿者)

に一喝する魔剣。

「あぅ…」

「まぁまぁ、フォウさんも寝起きが悪いみたいですし……まずは手分けして、ですね」

「ああ。…俺は酒場に行ってくる゛ッ」
ゴスッ

「フォウさんは村役場をお願いします。酒場は私が行って来ます。
レッドさん、貴方は『絶対どこにもいかないでそこらへんの村人から情報収集して下さい』。」

「わ、わかった……」

「エルさん、怖いです…」

「そうでしょうか?(にっこり)」

確かに怖い。

―昼頃、宿屋前―

「それで―」

「―このコが?」

「……何だ、その目は。」

情報提供者が居た、と言うので集まってみれば、そこに居たのは―

「あ、ボクの名前はシォル。シルフィード=ランクスって言うんだよ♪」

外見8歳前後の子供。
その子はまだ幼げが残り、男女とも区別のつかない顔付き。
にこにこ笑顔で居るが、しかしその瞳はしっかりと三人を見つめている。

「……この坊主が飛竜を見かけた、と言っている」

「む、おじちゃん。ボク女の子だよ?失礼だなぁ」

「そうか、すまん」

二人のやり取りを見ているエルとフォウ。

「……ひそひそ(どう見ても子供ですけど…どう思います?フォウさん)」

「……ええっ、…ひそひそ(どうと言われても、私には…さっぱり…)」

(子供の悪戯、とも考えられなくも無い。…のだがこの男は…)

その男ときたら、

「………それでね、向こうの山にある穴倉に住んでるみたいなんだよ♪」

「ほう…あの山か。」

すっかり話し込んでいる。

(だが、この村中探して得た唯一の手掛かりでもある…)

「ですよね……ここに飛竜が襲ってきたとゆう事は、或いは縄張り争いに負けたからかもしれませんし」

「え?…飛竜って、縄張り争いなんかするの??」

(飛竜といっても色々種類があるがな。あの類の飛竜は咆哮で縄張りを主張する)

「本来ならば戦う事をを好みませんから、フィルガラウスとゆう種族は特に。」

(負けた腹癒せに人間を襲う、か………有り得ない話では無いな)

「そっちの話は纏まったのか?」

どうやら既に情報を聞き終わったらしい男が二人+一本に問い掛ける。

「ええ。…どのみちそのコしか情報提供者は居ないんだし…」

そのコはと言うと、やはり満面の笑みを浮かべている。

「それじゃぁ、ヨロシクね♪おねーちゃん達」

「え?」

「え?じゃないよ。勿論道案内役としてボクもいかなきゃ♪」

そうゆうと、ちゃっかり懐から取り出した短剣を見せ出す。

「ちょ、ちょっとキミ!道案内って、すっごく危ないんだよ!?死ぬかもしれな―」

「わかってるよ、そんなコト。だからおねーちゃん達が守ってくれないと♪」

なんだか遠足にでも行くような調子で喋る少女。

「……子供の遊びじゃないんだ。危険だ、道案内の必要は無い」

「そーぅ?…でもおじちゃんスキだらけだよ。」

そう言い、先の短剣を差し出し、

「これ、おじちゃんの持ってた奴。返しておくね♪」

「なっ……」

―結局、連れて行くコトになったらしい。

「うわぁー、綺麗だなぁ。コレ、なんてゆうの?」

「これはだな、カシャナ草と言ってな………」

「すっかり仲良くやってますね、あの二人…」

「そうだねぇ。端から見たら親子みたい(笑)」

呆れ気味に呟くエルと、それを笑いながら答えるフォウ。

ふと、

「……俺の後ろに下がっていろ、シォル」

男の目付きが変わる。

「ほう、察しがいいモンだな。だが、どこにも逃げ場はねぇぜ?」

草の茂みから囲むようにして現れる山賊、その数ざっと30。

「うん、わかった。頑張ってね、おじちゃん達♪」

全然危機感を感じないセリフを吐きながら、男の後ろにピッタリとくっつく少女。

「……あまり人は殺したく無いのだがな」

少女を庇うようにして立つ男がその大剣、舞天使を引き抜く。
そしてその男に背を向けるようにして、

「みねうち程度で構わないでしょう。…最も、私にはそれしか出来ませんが」

「あう…なんでこーなっちゃうのかなぁ…」

呟きながら魔剣を取り出す。

「おうおう、黙って聞いてりゃ好き放題言ってくれるじゃねぇか。野郎共、行くぞ!」

掛け声と共に襲い来る山賊。

「……フンッ!」

一撃で相手の剣を破壊し、柄の部分で首筋を一撃。

「ぐぁっ…」

「てやぁっ!!」

神官杖を振り回しながら、火球<ファイヤーボール>と風斬<ウィンドカッター>で敵を牽制。

「のぁあっ!?」

「ええいっ!」

その一撃は炎を纏い、鉄で出来た剣を豆腐のように切り裂きながら相手の戦意を喪失させる。

「く、くそっ!?」

「うわぁ、みんな強い強い〜♪」

混戦の最中、とある一本の木の下で観戦中の少女。

「クソッ、ガキが…!」

ふと背後から現れる影、一つ。
手には両手斧<ブロードアックス>が握られている。

その斧が今、振り下ろされ―

「うわぁっ!?」

何も無い所でつまづく少女。
空振りする斧。

「……!シォル!!」

それに気付いたレッドが、少女を襲おうとしていた男に斬りかかる。

「…うにゃ〜、鼻ぶつけたよぉ〜…」

本人にその気は無い様子だ。

―数分後、そこには山賊団の伸び上がった姿があったとゆう。

「大丈夫だったか?シォル」

「うん♪みんな強いから、ボクの出番も無かったみたいだし」

あっけらかんと言う少女。

「って、あのねぇ…一歩間違えれば死んでたのよ?シォルちゃん、もうちょっと危機感とか―」

「それよりもさ、ホラ。そろそろ見えてくるよ〜♪」

全然人の話を聞いていない。

―飛竜の穴倉前―

「おっきい、ね…」

「大きい、ですね…」

「……大きいな」

「おっきーねぇ」

大きい、と表現されたのはその穴倉。

ゆうに城一つは建ちそうな空間が広がっている。

一歩踏み込むとそこは異様な雰囲気が広がっていた。

「暗いよぅ〜…エルさん、明かりの魔法使える?」

「ええ、今……照明<ライト>」

エルが詠唱を終えると同時に、周囲を照らす明かりが灯る。

「……カビ臭いな」

「う〜ん、今はいないみたいだねぇ」

少女がお気楽に言う、次の瞬間。

「私の寝床に何か御用でも?」

「!!!」

振り返ると、そこに居たのは両目が潰され、両腕の無い男。

「……誰だ、貴様は?」

「私達は、ここに住まうと言う飛竜を倒す為に―」

「………両目と、両腕の無い……」

フォウの体が震える。

目の前の男がそれだと確認し得る術は無い。
だが確率としては最も高い。
『私の寝床に何か御用でも―』

50年。

50年以上も昔の話。

もう、存在していないと思ったのに。

(しっかりしろ、フォウ!!)

はっと気付く。そうだ、私がやらなきゃ…そういう気持ち。

「ほう……これはこれは。揃いも揃って、私を退治しに来ましたか。
まぁ…二名程は恐らく"必然"でしょうが……」

「??」

「っくくくく。息子と対峙した時はよもやこうなるとは思いもしませんでしたが…
やはり来てしまいましたね。『私の孫』…とでも言うべきですかね?」

「!!」

「……ほざけ、外道が。…貴様など俺の血縁では無い。俺は竜を狩る者だ」

「な…レッド、さん…それは…一体、どうゆう意味です!?」

「孫、って……レッドさんが、孫??」

「それに、魔剣フランヴェルジェ……大方"息子"を殺した敵討ちといった所でしょうかね?
全く、今日程待ちに望んだ日はありませんよ。…ねぇ、レイバード=レファルドさん?」

「…………」

男は寡黙する。
それは否定が出来ないから。
…魔剣が語った、一度"ジャガーノート"と会い見えたラシュイ=レファルドの―

―息子である事を。

「母が息を引き取る時、一本の剣となった。…それが之、舞天使だ…」

男が大剣を引き抜く。

「俺は、仇討ちなんざ興味は無い。例えアンタが何者だろうとも、だ。
…只一つ、アンタが竜なのであれば在る答えは決まっている」

「レッドさん……」

「まさか、レッドさんって…もぅ、頭の中こんがらがちゃってるよ…」

(…そのまさかだろう。…この男は、かつて我を振るい回し…"あの男"と戦った、主の子孫…
そして母親はセイラといった所か。…そんな姿になってまで、セイラは戦っているのだな…)

「……そうゆう事だ。すまんな、聞こえない振りをしていた」

(何、我が気付くのが遅かっただけだ。…感とはよもや鈍ると戻るのは遅いものよ)

「さぁ、話は纏まりましたか?皆さん。…では、参りますよ…」

そう言うと同時に、男が巨大な飛竜へと変わって行く。

「…私は、逃げたりなんかしない…ヴェルジェの為にも、私の為にも!」

魔剣を構えるフォウ。

「例え事実が何であれ、私はレッドさんに付いて行きます…それが、今の私の答え!」

神官杖を構えるエル。

「……そうゆう事だ。悪いが、貴様には永遠の眠りについて貰おうか」

舞天使を構えるレッド。

「わわわ、なんだか知らないけどボクは逃げとこうっと…」

そそくさと穴倉の外へと逃げるシォル。

『ふフフフハハハハハ…ワたくシニ勝てルとでモお思イで。
…コの50年…伊達ニ両目ト両腕を無シで生き抜イてきタ訳でハ在リまセン』

飛竜が何か詠唱を始める。
―擬似腕の作成。失われし秘術<ロストミスティック>―
その術で創られて行く腕は、禍々しい瘴気を放つ代物となっている。

「な…そんな馬鹿な…!失われし秘術を使うには、ルーン文字と古代文字の入り混じった―」

「……こうゆう男なのは判っている…否、判っていた…!」

「レッドさん、エルさん!…絶対に、」

「勝つ!」

「勝ちましょう!」

「勝ってみせましょう!!」

フォウの言葉を合図に、切って落とされる戦いの幕。

轟ッ

飛竜がブレスを吐き出す。

「ちっ、てりゃぁああ!!」

レッドが切り裂き、

「危ない、エルさん!」

フォウが炎の結界でブレスを四散する。

『まだマダ…こノ程度でハ終わりマせンよ!!』

ぼろぼろの翼を羽ばたいたかと思うと、

ドォォォン………

穴倉を突き抜け、空高く舞い上がる飛竜。

『我ハ命ずル、古の契約にヨリ―』

(詠唱を始めたぞ!…フォウ、奴の『翼』を狙え!撃ち落とすんだ!!)

「うん!…いっけぇぇぇ!!」

真空火炎斬を放ち、その翼を狙う―

シュパァンッ

「―えっ!?」

が、弾かれる。

浮かび上がる、飛竜を包むようにして張られた結界。
―しかも只の結界では無い。古代ルーン文字が張り巡らされている。

「フォウさん!!」

エルが肉体強化と精神力強化の呪文を二人に掛ける。

「フォウ。同じ所を狙ってもう一度だ…次は俺もやる」

ぐっ、と構える両者。

「お願い、いって―!!」

「貫けぇっ!!」

バキンッ

そう鈍い音がすると同時に、結界の一部が破壊される。

「やった、あと一発で―」

が、瞬時に復元される結界。

「な…んだと…?」

『…ヨり放たレル閃光ハ全てヲ焼き尽くスであロう…出デよ!!』

(まずいっ!!来るぞ!!!)

光柱。

それは、天使が舞い降りた時とは違う、狂気に満ちた―
―破滅の光が、降り注ぐ。

(うおぉぉぉぉぉぉぉ!!)

魔剣が結界を張り、フォウを護る。

「…!!危ないッ、エル!!」

ズドォォォォン………

「…っ、大丈夫か……エル……」

エルを庇うようにしておおいさるレッド。
その左腕は消え失せ、左足も若干焦げている。

「わ、私は大丈夫…でも、レッドさん!!」

急いで治癒<ヒール>をかけるが、腕が再生する訳も無い。

「俺は…大丈夫だ、このくらいで死にはしない…!」

大剣を杖代わりに立ち上がり、

「フォウ!もう一度だ、奴に二発目を撃たせる前に撃ち落す!!」

「はいっ!!」

真空斬の連発。
並ならぬ負担を抱えるが故にあまり好まれない戦術だが、今となっては一刻を争う猶予も無い。

「うぉぉぉぉぉぉおおお!!!」

「てぇぇぇぇい!!」

「(お願い…皆、死なないで…!)」

片腕で真空烈斬を連発するレッドと真空火炎斬を連発するフォウに、
それぞれ治癒<ヒール>を掛け続けるエル。

バキィン!!

そう、固いモノが壊れる音がすると同時に、結界が崩壊する。

「今だ!!」

斬ッ

『グォォォォォ!?』

レッドの真空烈斬が飛竜の翼を斬る。
…そして、堕ちる飛竜。

「皆、避けろ!!」

ズドォォォォン……

『ぐ……ク、くクククク……追い詰めテいるのカ?たカがニンゲン如きガ、この私ヲ!!』

「ああ、そうだとも…どうやら貴様は、たかが人間の手によって倒される定めにあるらしいな」

「私は許さない…人を、人の心を弄ぶ貴方の事を……だがら、この剣に誓って貴方を倒してみせる!」

飛竜の周囲に、只ならぬ魔力が集結し始める。

『ならバ…良いでショウ。…私モ"正気"を捨て、真に怪物へと成って差し上ゲます!!』

グォォォォォォォォォォォォォン!!!

それは、覚悟を決めた竜人の咆哮。
竜人としての生を捨て、一匹の竜として生きる事を選んだ故の。

『………………』

竜が何かを詠唱している。と同時に竜を中心に円陣が描かれ、
両腕に魔力が集中して行く。

「なっ、腕を…」

そこから出来上がったのは、禍々しいまでの醜悪な姿を見える両腕。
所々には魔物の口や、小さな腕まで垣間見える。

そして竜は小さく笑んだと思うと、

『グォォォォォ!!!』

突進、後攻撃。
至って単純、しかしそれが厄介。

「ぬぉぉぉ!?」

ガキィンッ

ブンッ、

ズドォンッ!!

横からの薙ぎを片腕で受け止めたは良いが、後に大剣を掴まれ投げ飛ばされる。

「ぐっ……バカな、心眼を開いたとでもほざくつもりか…こいつ…!!」

両目を失っている竜に向けて愚痴をこぼす。

『グォォォォン!!』

轟ッ

二度目のブレス。標的は、壁に叩きつけられ無防備なレッド―

「(くそっ、ここまでかっ……!)」

「させないっ!!」

フォウが横から飛び入り、魔剣が結界を張る。

「レッドさん!戦ってるのは、貴方だけじゃないんですよ?」

傍にエルが駆け寄り、治癒<ヒール>をかける。

「あ、ああ…そうだったな。忘れていた」

どこまでもアバウトな男である。

『グォォォン!!!』

また突進を仕掛けてくる竜。

「フォウ!一撃で決めろ!!活路は俺が作り出す!!!」

レッドが立ち上がると、同じく竜へ向かい突進して行く。

「!!待って、レッドさ―」

(奴を信じろ、フォウ!チャンスは一度きりだぞ、構えろ!!)

「―……!うん、分かった!」

『ガァァァァァァ!!!』

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

跳躍するレッド、空を薙ぐ竜。

『グォォォォ!!』

轟ッ

それを読んでいたかのように、宙を飛ぶレッドへ向けてブレス。
が、

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁあああ!!」

ブレスを掻い潜り、

「ここだぁぁぁ!!!」

ザシュッ

竜の額にその剣、舞天使を突き刺す。

『ギャァァォォォォォン!!?』

「フォウッ!!後は、頼んだぞ!!」

言い終わると同時に、痛みにもがき苦しむ竜の一撃にて再び吹き飛ばされるレッド。

「レッドさん!」

(フォウ!躊躇うな、今だ!!)

「―!!はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

無意識の内に集結されて行く炎の力。

その力は翼となり、フォウの跳躍に拍車をかけ―

「―ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

―そして巨大な剣となり。

斬ッッッッッ

舞天使が突き刺さる額から、真っ二つに切り裂かれる竜。

『!!!………………』

そして、灰塵と化す。

「ッはぁっ、はぁっ、はぁっ………はぁっ」

フォウの体全身に、炎を思わせる刺青が浮かび上がっている。

「フォウさんっ!…その体……!?」

「はぇ?…わっ、何これ!?…って、え…」

ガクンッ

急な脱力感と共に崩れるフォウ。

「フォウさん、大丈夫ですか?」

「う、うん…なんとか……大丈夫、みた、い……」

パッタリ。

「………少しは、こっちの心配はしてくれないのか……」

忘れ去られかけた男が約一名、叩きつけられた壁から生還してくる。

「貴方は絶対に死なない…そう、信じてますから。」

エルの一言で、全てが片付く。

ゴゴゴゴゴゴゴ………

揺れる穴倉。

「……!!やばい、崩れるぞ!!エル、フォウを担いで先に行け!」

「いいえ、そうはさせません!…貴方の事です、どうせロクにも歩けないクセにガマンしてる筈です。
さぁ、三人で急いでここから出ましょう!」

何もかもお見通しの様である。

が。

ズドォォォン………

「あっ……」

唯一、出入り口となっていた穴が落盤によって塞がる。

「……参ったな」

「……参りましたね」

「……zzzzzz」

閉じ込められた三人。
しかし緊張感は無い。
だが状況は良く無い。

「……そういえば、俺の剣は……」

辺りを見渡す。

すると、飛竜が飛んで開けた穴から差し込む光に照らされるように一本、そこに突き刺さっていた。

「……ここから抜けれたら良いんだが。」

男が上を見上げながら言う。

「馬鹿な事言わないで下さい。こんな高い所まで、どうやって上るつもりです?」

こんな会話を交わしつつも、どんどんと崩れて行く穴倉。

「―……しょうがないか。元々はボクが撒いたタネだし……これで何度目だろう、人間を助けるのは―」

穴倉が正に総崩れしようとした瞬間、

パァァァァァァ………

 

ズドォォォォォォン!!!

 

「………何だったんでしょう、今のは…」

「……母に、似ていた―」

「………zzzzz……うーん、ヴェルジェぇ……」

その剣、舞天使が字の如く天使と化し、三人(+一本)を運び出したのだ。

そして、寿命を終えたかのようにボロリと壊れる剣。

「母さん……」

「レッドさん…」

「………また死に場を失ってしまった。…忌わしきこの血は、いずれ絶たねばならん」

「でも、貴方は死なないんでしょう?」

「…………………」

「クスッ。……まぁ、何はともあれ一件落着、といった所でしょうか?」

「あん、やん、だめぇ…そんなとこぉ……」

エルの背中でフォウが喘いでいる。

「………。どんな夢を見てるんでしょうね、フォウさん…(汗)」

(………。全く、この娘は………)

その娘にしっかりと握られている魔剣は、只溜息をつく事しかできなかった。

 

「と、ゆう訳だ。改めて宜しくな、フォウ」

「はい、宜しくお願いします!レッドさん、エルさん!」

「こちらこそ、宜しくお願いします。フォウさん」

とある宿にて休息した一行。

消えた少女<情報提供者>。

そして、これから明けるであろう新たなる仲間達との冒険の日々―

「よし、景気付けに酒場にでも゛ッ」
ゴンッ

「レッドさん〜?」

「あ、私が沢山作りますから遠慮せずに…(あせあせ)」

―になるのであろうか?

 

Crimson Edge ―了―


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