∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ 焔の魔剣 ■

■作者:nao 様/ 紅乃鳥飛鳥 様■
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「何で・・・他所の国まで来て賞金稼ぎに追われなきゃならんのかね。」

(・・・・・・・・・)

焔の魔剣の件以降、狙ってくる賞金稼ぎの数は母国にいた時の倍々

さっきなんぞ、入った酒場の其処にいた全ての人間がライを狙う賞金稼ぎだった。

で、今は路地裏に身を隠し表通りの様子を覗っているのだか・・・

賞金稼ぎらしき人間の数が減るどころかさらに増えていっている気がする。

ここは賞金稼ぎがさかんな国柄のようだ。

「・・・なんて暢気な事考えている場合じゃないよな〜」

(・・・もう、ここら一帯はライに敵意あるものだけだ)

「ふむ、・・・んじゃ、まとめて片付けますかね。」

表通りへ飛出たライ焔の魔剣を抜き放ち、

「うおおおおおおっりゃっ!!」

目立つ様、派手に火柱を発生。

それに引かれるよう集まってくる、戦士,剣士,魔導師・・・色々な種の賞金稼ぎ達。

「ヴェルジュ、当分は力添え無用」

(・・・お遊びが過ぎるな)

「嫌いじゃないだろ?」

(・・・・・・・・・)

烏合の衆であろうと数になれば脅威。その上で此方に制限を掛け戦う。

沈黙は肯定。

その考え、理解出来ないが・・・嫌いじゃない。

 

 

で、結局

散々、賞金稼ぎ達を蹴散らし、殴り倒し、剣の腹で叩きまくり・・・・・・

ライ自身の体技剣術を試し遊んだ挙句、最後はヴェルジュの爆裂でまとめてぶっ飛ばし

多分、負傷者多数。それでも死者だけは全くなし。

森の中、適度に雨宿りが出来る場所で薪をかき集め

「ふぅ、今日も野営か」

少なくとも町を滅茶苦茶にした人間が言っていい台詞ではない。

ヴェルジュは濡れなければ文句ないのでそれについてコメントなし。

(それより・・・)

「ああ、いるな。 あの混乱の中を付いて来たのか」

立掛けたヴェルジュを手に取り、その茂みへ火弾一発。

ドンッ!!

「きゃっ!!?」

爆発に誰かが吹っ飛ばされ転げ倒れた。

誰かとは、剣士らしき赤毛の若い娘。軽量化されたプレートメイルを装備し、腰には長剣。

「盗み見とは感心できないな。」

一瞬事態に茫然と見上げた少女は、己の状況を理解し

がしっ!!

「誰一人殺さず戦士達の群から逃げたその手際、貴方様を名立たる戦士とお見受けしました。

お願いします。私を鍛え強くして下さい!!」

ライの腰にしがみ付き、一気に巻くし立てた。

「はぁ??? 取り敢えず、俺から離れろ。」

「お願いします、私を貴方様の弟子にして下さい。

お望みなら私を慰み物にして頂いても結構です」

「いや、そう言われてもなぁ。 放せよ」

「私を弟子にしてくれるまで絶対放しません!! 

弟子にしてくだされないのならいっその事、ココで切り捨て下さい!!」

「・・・如何しよう、これ」

(・・・我に聞くな)

「弟子にしてください!!」

埒があかない。

「なんであれ、取り敢えず離れて、な?」

「嫌です。弟子に下さるまで離れませんっ!!」

「離れろっ!!!」

ごんっ!!

振り下ろされた拳が少女の脳天を撃ち

「きゅぅ・・・・・・(絶)」

ズルズルズル、バタ

「ありゃ、やりすぎたか」

(・・・だな。)

 

爆ぜる焚火、森には虫の声が響き・・・

ライの横には先程の少女。 鎧を脱がし長剣をハズして楽にはしてやっているが

「・・・あぅ・・ん・・・(苦)」

何か魘されている。

「たまらんなぁこうゆうの。 なんでいつも俺の前には助けが必要な人が出てくるのかねぇ。」

(・・・ならば、見捨てればよかろう)

「それが出来りゃ、苦労はしないんだけどな。」

そう言いつつ少女の頭を撫でて続けていると少女は次第に穏やかになり

「・・・う・・ん・・・・・(呆)」

「目ぇ覚めたか」

「・・・はい」

上体を起してと返事は返す。 一発で昏倒させられた事が解ったのか今度は大人しい。

「俺はライ。 嬢ちゃん、名前は?」

「フォウエン=フレイル。 愛称はフォウです。」

「何か男みたいな名だな。」

「はい、父が騎士だったので・・・私が幼い時、亡くなってしまいましたが」

「ふぅん。取り敢えずフォウと呼ばせて貰ってもいいか?」

「はい。・・・私を弟子にして下さるんですか?」

「いやいや、俺みたいな若輩者が人に教える身分じゃないかなと」

「あぅ・・・お願いします。お望みなら私を慰みモノにしても結構ですから」

どん

少女の肩を強打して押し倒し、上に覆い被さり

「あっ・・・・・・(ガタガタブルブル)」

「いい覚悟だ。ならお望み通り・・・と言いたいが、俺にゃ怯える娘を犯る趣味はない。

そうゆう台詞はもっと精神修行を積んでからにしな。」

「あぅ・・・結局、私は・・・」

自分の身体を起こしちゃんと座りつつ、少女もちゃんと座らせ

「俺は旅をしているわけなんだけど、君の目的地は?」

「???  えっと、ここから東へ・・・私の故郷です。」

「へぇ、同じ方向だ。 途中通るな」

ライは大嘘付き。 方向は90°くらい違う。

「弟子うんぬんは別として別に急ぐ旅じゃないからな、一緒に旅するなら別に構わんぞ。」

(・・・物好きだな)

ライさん、貴方は詐欺師に転職しますか?

「それって・・・・・・ありがとうございます、師匠!!」

「師匠は止めてくれ。俺の柄じゃない。 ・・・それと俺、高額の賞金首だから」

「じゃ、じゃあ、さっき師匠と戦っていた人達は」

「・・・そ、賞金稼ぎ」

「じゃあ、何故誰も殺さなかったんですか!?」

「連中はモノが解って襲ってきてるわけじゃないからな。そんな奴殺しても仕方がない。」

(そして、回復した者が再び襲ってくる。連中はしつこいぞ。)

「無意味に人を殺すのは俺の主義じゃないからな」

(・・・・・・)

「師匠は・・・・・・いえ、何でもないです(敬)

それより、さっきから私達とは別に誰かの声が聞こえるような気が・・・(悩」

(!!!)

「!!! ・・・紹介しよう。こいつはフランヴェルジュ、焔の魔剣、意思を持つ剣だ。」

「やっぱり・・・師匠は凄いんですね。 魔剣をお持ちだなんて。

宜しくおねがいしますね、フランヴェルジュさん」

(・・・よろしく、娘)

「・・・(どうゆうことだヴェルジュ。何故お前の声がこの娘に聞こえる?)」

(・・・解らん。恐らくは、我との相性がいいのだろう。 

しかし我を使うにはまだまだ力量不足。)

「うわぁ厳しい評価ですねフランヴェルジュさん。 私、頑張りますっ!!」

「・・・もしかして、今の聞こえてた?」

「はい、フランヴェルジュさんの声はしっかりと。」

(・・・・・・)

そして、3人(?)の旅が始まった。

 

昼間は賞金稼ぎ達をかわしつつ旅路を進み、夕方早めに野営を始めフォウに修行を課す日々。

ライが得意とする身体強化系魔法に、体術を織り交ぜた剣術。実戦を念頭に置いた訓練。

そして、フォウの村まで後一日となったその日、最後の修行が終り

「そういや、何故強くなりたいかって理由をまだ聞いてなかったな。」

「えっ、そ、それは・・・私の個人的なものですから」

「弟子の不始末は、師匠の不始末。一応俺は嬢ちゃんの師匠だ。

まあ、これでも人を見る目の自信はあるから

嬢ちゃんが悪事に力を使うとは思わないが・・・なんであれ、まだ未熟な事には変わりない。」

(・・・そう、娘はマダマダマダ未熟だ。)

「うぐ・・・」

「そんなのに無謀な戦いをされて死んでもらわれると俺のせいだからな。

・・・事情を話せ。」

「・・・私の家系は代々騎士なんですが、私が幼い時に父が亡くなりました。」

「ん、それは前にも聞いたな。 で、独学で己を鍛えたか。」

「はい、当然力不足で・・・ある時、村が野盗に襲われ

・・・でも、私だけじゃいいようにおちょくられるだけで

だから村人が傭兵を雇ったんですが・・・今度はその傭兵達が近くの遺跡に居座り・・・」

「ミイラ取りがミイラ・・・か」

「はい。 やはり村は村の人間によって護られなければならないんです。

私程度で村を護り切れるとは思ってません。

でも、私が戦う姿を村の人たちに見てもらい、その事を解ってもらおうと・・・」

「お前・・・やっぱり死ぬ気だったな。」

「そんなつもりはありませんよ。そうならないために強くなろうと」

いくら基礎が出来ていて筋がいいとはいえ、にわか仕込みの技術で早々強くなれるはずがない。

精々、いいように弄られ殺されるのがオチだろう。

それを理解した上で、部の悪い賭けをしようとしていたのだ  この娘は。

「自分一人ですべてを背負い込むのは如何かと思うが・・・

解った。お前の最後しっかりと見届けてやる。」

(娘、遺体は我炎で綺麗さっぱり焼いてやる。)

「はい、お願いします。」

 

 

翌朝、少女は己の決意を伝えるため村へ。それを村外れで待つ二人(?)。

「素直じゃないよな、お互い。」

(全くだ・・・師弟共々)

「ん?」

(何だ?)

ライが指しているのは、自分とヴェルジュの事であり

ヴェルジュが指しているのは、ライとフォウの事

「結局、ミンナ素直じゃないんだねぇ」

(我を貴様達と同じにするな)

「おっ、戻って来たぜ。・・・早いな」

戻って来たフォウは・・・機嫌が悪い。

「どうした?」

「いえ、思った通りの反応だったので・・・」

「まだ泣くなよ。泣くのは返って来てからだ。 やはり俺も行く」

「えっ、師匠も!!? 師匠まで巻き込めません」

「いまさら言うな。いくぞ!!」

「・・・はいっ!!!」

辺鄙な村,其処にいる騎士,遺跡 この三つのキーワードは

騎士がいる所に人が集まり村が出来た。 遺跡に対して騎士がいた。

遺跡にはこの世に放たれてはならないモノがいる。

と時間を遡り考える事が出来る。

そしてこの事は、こんないても意味がない所に傭兵達が居座ったことで裏付けは取れる。

封印されているモノが何とも分らず手に入れようとしているか、妖かしに操られているか。

つまり、もうフォウ一人の問題ではない。

ライがそこまで面倒を見る必要はないのだが・・・

「・・・結局、捨てちゃぁ置けないんだよなぁ」

(今更何を言っている。それが貴様の性分だろう?)

「師匠、如何したんですか?」

「いやな・・・俺もお人よしだと思ってさー――(ルルルー)」

今回の件に関して、ライ自身何のメリットもない。精々いい経験ができた程度。

「やはり師匠はここで戻られてください。私一人で」

「ここで嬢ちゃんを見捨てたら俺の飯が不味くなる。 以上」

意外にこんな感じで希望の種は蒔かれていくのかもしれない。

 

 「師匠、ココが・・・遺跡の入り口です。」

山の中腹にあるその場所。

木々に囲まれた洞窟の入り口はちゃんと整備された石に蔦が絡み付き

中から漂ってくる気配は・・・・・・瘴気

「うわぁ、ドンピシャ?」

「如何したんですか、師匠?」

(娘、お前の血族の使命が果たされなければならない時だという事だ)

「えっ! それって・・・」

「今は敵を如何にかする事だけを考えろ。 中の様子はわかるか?」

ライが明確に「敵」と言った・・・もう、相手の生死は言問わない。

「いえ。・・・でもそんなに深くはないはずです」

「よし、行こう」

「はいっ!!」

入って割りと早くに奥に辿り付き、傭兵たちはいた。

一番奥に封印を解こうとするシ−フと魔導師,戦士が3人。

「何だ、貴様等はっ!!?」

ライとフォウに対して警戒するところを見ると正気の様だが

「俺達の事は如何でもいい。

それよりあんた等こそ自分達が何をやっているのか分ってるのか」

「・・・直に封印は解ける誰にも邪魔はさせない。」

欲に狂った目、抜き放たれる傭兵達の得物

「師匠ッッ!!」

「待てっ!! ここは引くぞ

あんた等、自ら行いを自らで償うがいい。」

踵を返すライ。

「えっ!! ちょ、ちょっと待ってください師匠。何故ほっておくんですか!!?」

「ここまで瘴気が漏れてちゃどちらにしろ封印は解ける。

俺は正義の味方を気取る気はないからな、連中に封印は解かせる。

封印されしモノが連中を片付けた上で、俺達の登場だ。

まあ、連中のケツを拭いてやるのは気が進まないが」

「でも、それじゃあ・・・」

「奴等が自分で選んだ道だ。俺がとやかく言う義理はないし、

教えたところで連中は言う事を聞かない。生残るためには効率も考えろ。」

「師匠て優しいくせに意外にキツイんですね。」

(・・・激甘だな。)

「あはははは・・・(乾)」

瘴ゥゥゥ!!

「うわあああっ!!」

「なああああっ!!」

「ひいいいいっ!!」

溢れ出す瘴気。壮絶な悲鳴が上がり・・・・そして静かになった。

「・・・意外に呆気無かったな。」

「思うんですけど、彼ら結構強いですよね。」

「ああ、フォウなら一人道連れに出来て御の字だったな。」

何故に過去形。

奥から現れる5つの人影。そこから漂う気配は既に人のものでなかった。

「いくぞっ!!」

「はいっ!!」

一気に人の間を駆け抜けたライが一番奥にいる魔導師だったモノをヴェルジュで貫き

轟っ!!

そのまま内側から一気に焼滅。

「し、師匠っ、これはっ!!」

フォウはフォウで一人の戦士を相手が剣を抜く前に兜割りにしたのだが

その切口から粘度の高い血が溢れだしくっ付き・・・復元。

そして、

バキンッ!!

「きゃっ!!」

その一撃にフォウの長剣は折られてしまった。

ライは空かさずヴェルジュを投擲

「ヴェルジュっ、頼むっ」

(いた仕方あるまい)

そのままヴェルジュはフォウの手へ

「師匠はっ!」

「暫くは、持ち、堪える、間に、嬢ちゃんが、片付けろっ!!」

ライで3人、フォウで1人。 ライは素手のため時間稼ぎしか出来ないし、

フォウにしても相手と腕が拮抗しているので有効打が与えられない。

「ヴェルジュさんっ、師匠がっ!! 如何にか、如何にかしてください!!」

(如何にかするのは我ではなく、娘、主の意思だ)

「・・・師匠に力を!!」

ヴェルジュから生れた炎はそのまま分離、塊となり敵ではなくライの元へ

「!!? 魔法剣かっ!」

炎の塊はライの手の中、打ち合うごとに闘気と呼応し

棍から槍へ、槍から薙刀へ、薙刀から破壊剣へ、そして破壊剣から一つの形

直片刃の普通の物より柄が長い破壊剣の形へ

瞬間、その柄を両手で駆使し、旋回

「おおおおおおっ!!!」

斬っ斬っ斬っ!!!

一気に3人を両断。

その頃にはフォウもヴェルジュの力を理解し

「燃えろっ!!」

距離を取った状態で相手に炎を絡み付かせ、包み込み、焼滅。

「やりましたね、師匠!!」

「いや、まだ尖兵を片付けただけだ・・・」

・・・ズ、ゴゴゴゴゴ

「奥から御大が出てくるぞ。」

二人は洞窟の外へ。 そして、その後から出てくる圧倒的な質量の

「スライムゥ!!?」

(いや、水妖だ)

ヴェルジュの声には明かな嫌悪感。まあ相反する存在である訳だから当然。

「如何しましょう、師匠。 師匠!!?」

見ればライは側の樹に凭れ掛り、疲労困憊。

(先程の魔法剣で己が気を使い果たしたな。)

炎を分離し魔法剣を作り出したのはヴェルジュとフォウの力

それを維持し、己のもっとも使いやすい形へ変えていったのはライの力

しかし、それを燃費の悪い状態で行ったのだろう。

「如何しましょう、ヴェルジュさん」

(答は娘、主の中にあるのではないのか?)

「・・・はい。  ヴェルジュさん、私に力を貸してください。」

(我を使うには未熟だが・・・使って見せろ娘)

「はいっ!!」

(チャンスは一度きり。主の魂を炎へと変えるつもりで火球をつくれ

さすれば、ライの炎龍が如く主の炎も具象化する・・・かもしれない)

「かもしれないですか?」

(火球にしても炎の具象化にしても、我の力のみに在らず。 さあ、やれっ!!)

「うああああああああ!!」

(!!?)

火球の成長がライのそれよりも早い。しかも

「あああああああああっ!!」

既にその中は脈動を始め、火球そのものが暴れ始め

「だ、駄目です!! 力が安定しない!!」

(我に身を委ねよ。調整する)

「・・・・・」

轟ッ!!!

火球を割り炎を散らして生れたのは気高き鳳凰

「いけええええええっ!!」

凰!!

フォウの戦叫に鳳凰も一叫応え、水妖へ強襲

焼き尽くした。

「・・・終った?」

鳳凰は大空を優雅に舞い、飛び去るように空へ昇華。

「・・・おう、ご苦労さん」

「師匠、お身体大丈夫なんですか」

「おう、それなりにな。 

フォウ、よくやった。 もう、お前に教える事はない。」

「師匠・・・(感涙)」

「なんてな。一度言って見たかったんだよ、この台詞。」

「へ?」

(よくやったが・・・マダマダだと言う事だ。)

「そのとおり」

「そんなぁ・・・(泣」

「あははははははは」

(くっくっくっくっ)

「くすっ、ふふふふ」

勝利者のみに許される三者三様の笑み

 

フォウは村人達に惜しまれつつも村を出た。村人達の甘えを無くすため。

「師匠、これからも一緒に旅を続けましょうね。」

「いや、駄目だ。 俺と嬢ちゃんじゃするべき事が違う。」

「えっ、師匠のするべき事は人助けじゃぁ・・・」

(・・・それはライの性分だ。)

「俺のすべき事は、・・・殺戮の戦いと共にある。

だからは嬢ちゃんは俺といっしょに一緒にいちゃいけない。」

「それは余りにも・・・」

ライほど殺戮の似合わない人間はいない。それを敢えて己から言わざるえない・・・

「ありがとな。だからこそフォウはフォウの道を行け。

もう、フォウは己のすべき事は分っているはずだ。十分に技術は身に付いている

・・・後は、自愛することさえ忘れなけれはそれでいい。」

呼び方は「嬢ちゃん」から「フォウ」になっている。

ちゃんとフォウを一人前として見ているということ。

(・・・まだまだ心配なくらい未熟だがな。)

「俺はコッチの道だ。だからフォウ、お前が行くのは向うの道だ。

ちゃんと見送ってやるから。・・・サヨナラは言わないぜ。」

「あい(泣)。 では、私行きます。」

・・・夕日の中 段々小さくなる少女、否、少女剣士の姿。

(・・・行ってしまうな。)

「・・・なあ、フランヴェルジェ」

(何用だ、ライ)

「お前、彼女に惚れたんじゃないのか」

(・・・・・・・)

「すまん、言い方が悪かった。人として気に入ったんだろ?」

(・・・・・・・)

「彼女はこの先強くなる。そのときお前が居ればきっといいコンビになれるはずだ」

(されど今、彼女は未熟。 我を持つ器にあらず。)

「今はな。 ・・・たまには使われるだけじゃなく人を育ててみたらどうだ?

結構面白いと思うぞ」

(・・・・・・・)

「なら、こう言ってやる。 お前なんぞ使いにくくてしょうがない。目障りだ。

だから、・・・・・・捨てるっ!!」

・・・・・・・・・・ぽいっ!!

(・・・・・・さらばだ、ライ殿)

炎と変り少女の元目指して飛んで行く焔の魔剣「フランヴェルジェ」

「あ〜あ、本当に行ってしまいやがった。 薄情な奴め。

・・・オーダーメイドで自分の得物、造るかなぁ?」

炎の魔法剣が己の闘気に呼応し姿を変えていったあの時、

最後の形は正にライの求める形だった。あの感触は決して忘れない。

ライの自問自答に答えるのは虫の声のみ。

 

 「泣いちゃ・・・泣いちゃだめだ。」

ある意味、ライはフォウの父親像そのものだった。

どちらかと言えば「兄」に近いのだが。

短い間だったとはいえ、その情は肉親に寄せる思いであり

ライからその姿から見えなくなった瞬間、座り込み動けなくなってしまった。

「師匠・・・私、やっぱりまだまだ未熟です。・・・未熟でもいいから・・・」

(娘、お主が未熟なのは今に始った事ではない)

「へっ!!?」

轟っ!!

目の前、天から炎の雷が落ち、燃えながら地に刺さる焔の魔剣

「何故、ヴェルジェさんが?」

(あの男に我力は無用らしい。 娘、まだまだ未熟とはいえ我を有する資格がある

選べ、このまま我を有する資格を捨てるか、立ち上がり我を手に入れるか!!)

進む道は違い距離は離れていようと彼の者の心は側にある。

「ヴェルジュさん、私はまだまだ未熟かもしれません。

それでも、救いを求める人々の力に成りたい。 

私の力に成って下さい、ヴェルジュさん。 いえ、焔の魔剣フランヴェルジェ」

立ち上がり、ヴェルジュの柄を握り一気に引き抜く。

瞬間よりいっそう魔剣は燃え上がり、炎が羽衣が如く少女に纏わり付いた。

(強くなれフォウエン=フレイル。我を使うに値するよう!!)

「はいっ!!」

 

 

数年後、一つの英雄譚がある騎士団の団長の耳に入った。

紅蓮の女剣士。

焔の魔剣を携え数々の冒険を乗り越え、力なき人々の剣となり勇気を与える。

その名は・・・

その話を聞き、その男が漏らした一言は

「・・・へぇ、元気そうじゃないか」

その笑みは師が成長した弟子の活躍を聞いたかの様に喜びに溢れていたという。


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