∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 10 ■
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薬の管理にアルシアが砦に来ていた事もあって負傷兵の傷の治療は順調に進んでいった。 

間に合わなかった者以外は。

部屋にはライにルー,アルシア,シエル

治療をしたのはルー,アルシアで、シエルはだた心配でいたにすぎない。

「綺麗に斬られていちゃったから、ちゃんとくっ付いたみたいね」

「それで御主、腕の調子は如何だ?」

「・・・違和感で軋むな。感触はあるが力が入らない。・・・動くだけか」

先の戦闘で斬られたはずのライのその腕はあり、斬口には符の上に包帯を巻かれていた。

「当分無茶しちゃダメよぉ。 簡単にもげちゃうから」

「魔導でくっ付けてあるだけだからナ。」

「・・・次の・・・最後の戦いに間に合えばいいさ。」

「「・・・・・・・・・」」

「ん。 ・・・実は」

「知ってる」

「「「!!?」」」

「今は・・・出来ることをしよう」

どちらかが弱っているせいか今は魂の繋がりを感じられない。それでも・・・

 

 

 

今、ジークフリードの側にいるのはハガル,ニーベルのみ。

腹を割って話しが出来るのは二人しかいない・・・というより他の者より信用できるだけ。

「ニーベル、客人の様子は如何だ?」

「何とも・・・未だ意識が戻りません。 ここに置いては命の保障もしかねると」

「・・・ハガルは如何するべきだと思う?」

「・・・客人という以上、殺してしまったら元も子もない。生きてる内に返した方が

いいのではないかと。 ・・・結局は、神将が何をしたかったかにもよりますけどね」

今、一兵でも惜しいこの時に態々割くのが惜しいのが本音。しかし

先の戦闘では借りがある以上作っておきたくないのも本音である。

少しでも情報が欲しかったのだが・・・

「・・・仕方あるまい。 ニーベル、客人を砦まで送れ。

ハガルはそれが他者へ漏れないよう手伝え。・・・くれぐれも内密にな」

しかし世の中、良い様に暗躍する者達がいれば、己の野望のために暗躍する者もいる。

その部屋には一人、全身打撲のため裸に処々包帯を巻かれてベットに安置されている女。

言わずもかな、レイハである。 見張りが居ないのは重傷であり一人では動けないから。

そこに招かざる訪問者。ニーベルと数名しかその存在,居場所を知らなくとも

その者の手にかかれば秘密などあってないが如し。神将達の暗躍もバレバレ。

もっとも、そのことを頭が単純なネクロ公に今すぐ告口する気などさらさらないが。

「くっくっくっ、貴女には私の手駒になっていただきましょう。使い捨てですが・・・」

と、その男が抱えていたのは試験瓶。

中で蠢くのは、胴から無数の細い触手を生やした長い芋虫。自然では存在しないサイズの

腹中蟲。

男はレイハの顎を掴み上げ仰け反らせ口を開けさせると

「さぁ、飲む込め」

「・・・ぅ・・・んぐ」

腹中蟲を摘み上げ、レイハの口へ。

呼吸困難に苦しんでもお構いなし。端よりこの男に慈悲など無い。 故に謀将 

「頑張って貴女の・・・」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

安静な怪我人がいようと強行軍で進めば早く間に合わせる事が出来る。

敵兵が怪我の女性を連れて来たと、偵察兵の一報に出迎えたのは

吊り腕のライを筆頭に騎士団総員。

連れて来たニーベルに語る言葉などなく、ただ軽く会釈するだけ。

「・・・ありがとう」

「礼を言われるようなことは何も。私はだた連れて来ただけですから」

「それでも・・・なら、君の大将に礼を。」

「お伝えしておきます。」

自分で抱き抱えるわけにはいかないのでシエルに抱き抱えてもらい

側で見守るライの目は限りなく優しい。 意識はないが生きている事に喜び。

そのレイハを診るルー,アルシア,リオを後ろに二人は話を続ける。

「夜間強行軍だったんだろ、一泊休んでいくか?」

「いいのか?」

「一応、見張りつきだけどな」

「それは仕方が無い。 ・・・いや、急ぐので残念だが」

「ふぅ、そうか。 じゃあ少しだが栄養剤を提供しする。途中にでも飲んでくれ」

気配にゆっくりと開き始めるレイハの眼。

「ライ、レイハがっ!!」

「・・・よう、御帰り。オハヨウの方がいいか?」

少しでも和ませようとするライを虚ろなレイハの瞳が捉え、認識した。

「ライ・・・」

「ん?」

「・・・コロス」

「!!?」

瞬間、誰が止める間もなくライの首をレイハが己の髪を紐に巻き締め上げる。

それこそ首を切断しかねない腕力で。

それこそルーが『凍結』させなければ飛んでいたかもしれない。

「どうゆう、事、だ?」

「私は・・・何も・・・」

ニーベルの驚き様を見れば全く関与していないのはかわる。

「・・・取り合えず、砦に戻るぞ。」

「私もこの件に決着が着くまでいてもいいだろうか」

己の立場が解っていても責任に一端があると思える以上、ケリが着くまで見届けたい。

結果、自身が危機に至ることになったとしても。 それがケジメであるから。

「・・・。 ああ、アレス,ルナ、面倒見てやってくれ」

「了解。」

「わん。」 はい。

・・・・・・・・・・・・・・・

面子がルー,アルシアにリオ,ディまでいれば、レイハが様態が異常と想像するに安い。

「・・・それで?」

「まぁ、手っ取り早くコレを見ろ」

とルーは魔杖一振、空中に展開されるパネル。 内容は人体の透過図。

丁度、鳩尾辺りに変な影がある。

「ココに蟲がいるのがわかるかしらぁ?」

「・・・ああ。」

「元凶はコレだな。この腹中蟲が操っておる。 御主を殺せ・・・とな」

「・・・それで、対処は?」

「無い。 変に神経まで触手を伸ばしておるからナ、迂闊に対処すればレイハが死ぬ」

「・・・俺が殺されれば?」

「・・・出てくるだろうな。 この手のモノは使命さえ果たしてしまえば

生物の本能が戻る。本来ならそのまま宿主を犯し孕ませ繁殖しようとするが

今、レイハの身体は弱っておるからナ 母胎としてはツカイモノにならん」

「元気な宿体を求めて出てくる、と。 それで、コイツは生物的には?」

「そう強くはないが、厄介だナ。 2000,000%の妊娠率を誇っていいと思うぞ」

「・・・は? 2百万%・・・2万倍??」

「つまりねぇ、お胎に挿入して液が入っちゃうと確実に妊娠させちゃう上に

数日で数十匹が成長しきっちゃって、それが母胎を犯す事が出来ちゃうのよぉ」

言っているアルシアを含み皆、う〜わ〜 な顔。

「俺が殺されなければレイハがヤバイし、殺されたら殺されたで周囲の誰かがヤバイと」

「そうだナ」

「ふぅ〜〜〜〜〜〜悪い、俺、死ぬわ。 後、頼む」

最も、簡単に、手っ取り早く、確実で、危険な方法。

それを言う事が分っていたから皆反対出来なかった。

全ての準備は直ぐに整った。

シャツにズボンのみ、後は腕に包帯のラフなライの前に横たわるのは

清潔な貫頭衣のレイハ。直ぐ目に付く位置には長剣まで用意してある。

「レイハ、起きろ」

声に、幽鬼の如く目を覚まし起き立つレイハ。やはり長剣を手に取り、抜き放った。

それに、ライは逃げるわけでもなく諸手を広げ

「来い」

腰溜めに懐へ飛び込むレイハ。 

それを踏ん張り受け止め、刃が胸から心の臓を貫き背へ抜け・・・

身体の主導権はレイハ自身へ。

・・・悪夢であって欲しかった。 己の手で愛する主を刺した事など。

しかし、抱擁されているため分らない。

そう思わせるのは手の感触と、背より生える刃

「・・・ライ?」

「・・・もう・・・大丈夫・・・」

レイハの願い虚しく、ライは縋りながらズルズルと力が抜けて膝が落ち

うなだれ座ったままピクリとも

「・・・ライ?」

「・・・・・・・・・」

読みかけても返事はなく、出血自体少ないため背から映えている刃がまるで玩具のよう。

極めて性質の悪い悪戯だと。

「・・・ライ、趣味が悪い悪戯は止めて下さい」

包帯塗れで軋む身体に鞭打ち、膝立ちに男の肩を揺する。

と、バランスは崩れ、男の身体はゆっくりと ゆっくりと横に倒れ

とさっ

寝顔のように穏やかな顔が目に入ってしまった。唇から血が垂れているのも

「 」

もう、何もわからない。 己が何を叫んでいるかも。

胸奥で何かを蠢くのを実感しレイハは吐き、意識は闇へ・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

帰って来たニーベルは早々、ジークフリードに謁見。

黙って差し出したものは一つの瓶。中で蠢くのは・・・

「・・・何だ、これは?」

「腹中蟲。これがレイハ殿を操りライ殿を・・・。

首謀者がコレを見れば結果が理解出来るとの事です」

人は怒りの度が超えると返って冷静になる。今のニーベルは正にそれ。

冷静に、主犯の顔面をぶん殴ってやると。

望み通り、ネクロ公を含め神将,烈将,中将,謀将,惨将が集り会議は開かれた。

ジークフリードの口より凡その顛末が話され

「それで、向こうの大将は死んだのかね?」

「敵の将たる私にそのような重要な事を教えるわけないだろう?

本来なら帰って来れるはずが無い事が起きたのに・・・」

「・・・向こうの策略かもしれん」

言って、ニーベルに睨まれ黙るネクロ公。 この男は

どんな汚い手であろうと敵が災難に合えば喜ぶし、計略ならと汚いと言うだけ。

以上に自身も何ややらクダラナイ計略を張り巡らしているっぽいが・・・

「こんな蟲けらが? ・・・気持ち悪」

と、瓶をペンでつつき返ってくる反応に何処かの誰かと似たような顔するハガル。

付纏われ鬱陶しく思った時もあったが・・・仲間としてこれほど嬉しいものはない。

残念ながら頼りになるならないかは別として・・・。

「何を言う。コレほど人を操るのに素晴らしい機能を備えた生物はいません」

何に興奮しているのか気色悪くうっとりなアンスール。

何であれこの男が関っているのは間違いない。真相がつかめ次第鉄拳制裁決定。

「・・・・・・・・」

相変わらず惨将ブリングは黒衣に包まれ吽とも寸とも反応無し。

正体は魔物ではといわれるがココまで反応しないと返って分り易い。・・・興味ないと。

「それから、

次が最後の戦い。数ある困難を克服してきた我らシウォングの民を舐めるよっ!!!

と伝言だ。」

「大方、大将を失い隊の編成が出来ない状態なのでしょう。

これは・・・砦を押さえてしまえば勝ちですね」

知ったかぶりを。勝手にホザケ。

「我々も今回の最終決戦に備え、それ往々の事をしなければならない。

兵増強ももはや出来ん。再編成に、最後の最後くらいはハガル公にも戦場に立って頂く」

「な、何っ!!?」

「・・・何か?」

「いや・・・(汗」

破滅の歯車は回る。

己の事しか考えず邪事を企む者、それを阻止せんとする者達の思惑を含み。


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■ EPISODE 10 ■

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