∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 09 ■
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それでも等しく朝はやってきた。

一人起きれば気配に皆起き始める。

少年ディが目を覚まし半身を起こせば、既にソコには不機嫌に片膝立て座りのライ。

ねた側太股にはそれを枕に未だ安眠なルー

「おはようさん。」

「・・・おはようごさいます、ライさん」

「動けるようになったらルナつれて朝飯の用意してくれ。」

「・・・はい、わかりました」

いつもは減らず口のディも寝起きは素直である。

やがて頭に血が回ったディは大欠伸のルナを連れて水を汲みに。

「・・・ほら、おきろ」

と、ライはルーを起こし懐ですわらせた。

「ん゛〜〜〜、眠いぞ〜〜〜」

「場所が場所だからな、いつまでも寝かしてやるわけにはいかいんだ。わかるだろ?」

「うに゛ぃ〜〜〜、ぬ゛ぅ〜〜〜」

見た目と違い、ごねずに起きようとしてくれるから意外である。

「・・・身体の調子は如何?」

「む゛ぅ〜〜〜、むぅ・・・・・・悪くはないが・・・」

股間が強く打ったかのように痛いと仄かに朱に染まるルーの頬。

そして如何いうことだと睨む。

「んや、ルーの悪魔がな・・・またな・・・」

言葉を濁せば後は何を言わんとしているかは直わかる。付き合いが長い上に

なんせ当事者だから。 だから頬を朱に染めたまま表情は怒りから困惑へ。

「あー――、す、すまんナ」

「なんで謝る? ルー自身の問題だからな、俺が口を出す義理じゃないのは分かる。

・・・頭では・・・な」

・・・言ってしまっていいのだろうか?

魔女なんかやめてしまえ。 責任は俺が取ってやる。 と

・・・とりきれるのだろうか 数百年生きてきた魔女の負債を、己が犠牲とならずに

「・・・なんで黙るンだ?」

「・・・世の中、やっぱり思うようにいかないものだなと思ってさ」

そのまま不意を突くようにルーを捕まえ引き抱締め

口に出来ないその思いを込める。

「おおうっ!!? ら、ライ?」

驚愕されアタフタされようと構わず。

「おは・・・・・・・し、失礼しました(焦」

やってきたフューリアに見られ慌てて逃げられても構わず・・・

ディ&ルナが水汲みから戻ってみれば、

テントから少し離れてフューリアが照れ困惑に己の後頭部をトントンと

「・・・こんなところで何をやているんですか?」

「ワウ?」 何やってるの?

「朝っぱらスゴイモノ見ちゃったから・・・ライさんとルーって本当に兄妹?」

「そんな事あるわけないでしょう。 見てわかりませんか?」

「だ、だよね。 でも、それなら何故・・・」

「ライさん、今更ながら常識人ぶってますから。

・・・その辺りは二人とも訳ありということで」

「・・・ディ君にも訳はあるのかい?」

「どうでしょう。 それほど大層な訳は持っていないと思いますが。

では、御二人がイチャついている間に朝食の用意でも」

「うわぁ、露骨・・・(汗」

「今更、本当のことですからね・・・」

素知らぬ顔で作業し続けるディにフューリアも黙って手伝わざるえなく・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・司祭ヨ、貴様達ノ敵ガ来タ。 信仰ヲ揺ルガス敵ガ

「なっ、なんとぉっ!!?」

契約ニ基ヅキ、貴様ニ力ヲ授ケン。 人ヲ神ノ戦士ヘト成ス力ヲ。

「おお、神よ有難き幸せ。 この力で持って敵を討ち果しましょう」

ソウ、戦ッテクダサイ。 踊リ、我ヲタノシマセテ・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ライ達が其処に居座り三日が経とうとしていた。

間、フューリア一家の為に蓄えを庫さえ仕込み、畑を作り直し、過し・・・

夜、焚火前でライとディは向い合う。 

因みに、ルナは月見がてら水浴びに,ルーはテントの中でお休み。

「何時までこんな事をしているつもりなんですか?」

「不満・・・なんだな、その顔は。 いつまでもココにいるつもりはないさ。

・・・・・あの家族はココにいちゃいけない。でも、動くだけの力もない。

だからちょっと、そのための力のつけ方を教えてやっているだけさ。

その気があるなら、俺たちがいなくなった後で自分で如何にかするように」

「そこまでして助けないんですか? 隣村まで連れて行くとかして・・・」

「連れて行っても自身に生きる術を持っていなければ意味がないってこと。

別にコレばっかりは偽善でやってるわけじゃないからな」

「・・・そうですか」

と、不意にテントへ慌てて向かってくる気配。 その主はフューリア。

「そんなに慌てて、どした?」

「る、る、ルナが女の子にっ!!!」

「・・・・・・いや、確かにルナは女の子(メス)だけど?」

「そ、そうじゃなくて、人の女の子が狼のルナに化けていたんだっ!!!」

・・・どうも変身を見られてしまったよう。 

一度気を許した相手にとことん無防備になるのは皆共通の欠点らしい。

「実は、ルナは霊獣なんだ。だから月の魔力に感応して

姿が浮き出て見えたんだろうな」

「う、うわーっ、すごーっ」 

「・・・ウソですよ。 そんなことあるわけないでしょう?

アレがそんな風に見えますか? きっと見間違い、幻影でも見たんでしょう」

「ええっ、ウソなのっ!!? でも、その女の子は透き通るような肌に銀髪で

紅色の瞳で・・・あんなに綺麗な娘、今まで見たことがないのに・・・」

「ワンっ」ただいま

とルナが夜露に濡れたかのように毛皮を湿らせ帰って来た。

そのままでは風邪を引きそうなので焚火の前に行儀良く座り

その白犬もどきの銀狼を正体を見極めんと凝視するフューリア少女。

じぃー――――――――

「ワゥ(汗?」 何の御用でしょうか(汗?

「んで、コレがソレに見えるかい?」

「んー――、違うといわれれば違うし、そういわれればそう見えるし・・・」

「まぁ何であれ、素直で賢くイイ子。 それで俺は十分なんだけどねぇ」

「それはアンタ、気にしなさすぎ(汗」

「気にしないで下さい。この人は虎,豹をでっかい猫と言って憚らない人ですから」

「・・・私、頭痛くなって来た。 帰って寝る」

何であれ巧く煙に巻いたようで・・・

「そーいや、あの子何しに来たんだ?」

「ワウ?」 何しに来たの?

「何しにきたのでしょう」

「・・・潮時だな。」

「潮時ですね」

翌朝、フューリアがライ達のところへ行った時そこには既にテントの影も形のなく

山小屋にはフューリアと入れ替わるように

コンコン

「奥さん、御具合いかがですか?」

「あら、ライさん。おはようございます。今さっきフューリアがそちらへ御邪魔に」

「いえ、今日は出発の挨拶に来ただけですから」

「それは・・・色々な事をしていただいたのに結局何もお返しすることも出来ず・・・」

「いやいや、片手間の時間潰しがてらですから御気になさらず。

出来れば御節介がてらの忠告も聞いて頂きたく。奥さんには可也耳が痛いものですが」

「それは・・・何でしょう」

「もう病自体は大した事ないはず。 問題は身体は弱い為に風邪にかかりやすい事。

気をしっかり持って身体を強くするよう心がけた方がいい。でなければ未来はない。

貴女にも、貴女の子供達にも。 ・・・ただ食い潰していくだけで。

省みるだけではなく前を、未来を、子供の行く末を見たほうがいい。

皆で幸せになりたいのなら・・・」

それは忠告。 それは事実。 それは神託。

ただ呆然と何も言い返す事もできず・・・・・・

四人、もとい三人と一匹は森山を下る。

「・・・仮にも病人に対し、あれは余りにも言い過ぎじゃありませんか?」

「確かにお嬢育ちには厳し過ぎるだろうな。でも、もうそれは許されない現状だ。

村はいずれ滅ぶ」

「正しくは自然淘汰だがナ」

「そんなの・・・わかりません。」

「分かれ。 何事も他者に依存するだけになったら終わりなんだよ。」

子供には、大人が突き付ける現実は余りにも厳しく独善で

真に少年が戦わなければならない現実。

その少年の苦悩を遮るかのように激しい気配・・・殺気。

「お客さんだナ」

「やれやれ、大人しく滅んでいけばいいものを困ったもん、っ!!?」

瞬間、ライに凄まじい勢いで襲い掛かる影。

咄嗟に盾にした剣ごとライの身体を撃ち飛ばしたその姿は

酷似しつつも既に人のものではなく強さのみを追求した異形の甲獣。

「こ、このっ!!!」

と撃ちかかる少年の長剣を拳で粉砕し更に殴りかかる甲獣を打ち据えるのは魔法弾と

「がうっ!!!」

人状態のルナが振り抜く大太刀『獣皇鬼・砕刃』。それも一瞬怯ませ隙を作るだけで

ルーから預けていた己の得物、法杖『光晶槍』を投げ受け取ったディとルナに

ようやく撃破。

「自滅まで捨てて置けなくなったな。 ルー、全装備出してくれ」

見ればライは別に同様の異形の怪物、否、戦士を撃破した後だった。

その動かない躯を探り・・・紋章のペンダントが。

「愚か者ドモめ。自滅に飽き足らず他者も巻き込むつもりか? 一体何を・・・」

「人を怪物に変える・・・か。 ディとルナはフューリア親子を護れ」

「文句は言わせんゾ、小僧」

「今更いいませんよ。では、行きましょうか」

「がぅっ!!」 おーっ!!


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■ EPISODE 09 ■

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