∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 09 ■
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「熱と身体の痛み、それに咳。 それが何?」

「・・・十分に食材も集まった事だしな、薬草でも集めますか」

「!!?」

「解熱と咳止めか・・・何だったっけなー 血止めは覚えているんだけどなー」

「こらこら。 ・・・・・・ぐすっ」

「おいおい、泣いているんだ」

「・・・つらかったんだ。 ・・・父さまが亡くなってからずっと

誰も頼れる人がいなくて・・・誰も助けてくれる人がいなくて・・・」

肩肘張った者ほど脆く、男に今は亡き父の面影を重ね少女は懐で泣いた・・・

嘗て冒険者であった父親は当時 村長の実娘、病弱なフューリアの母親と恋に落ち

この村に留まったという。 村長の死去と共に父親は次の村長となり

村を豊かにしようと都市に技師の派遣を求め、やって来た者と共に開発に乗り出した

が、迷信深い村人達にそれすら禄に進む事無く山事故に巻き込まれ共々亡くなった。

残されたフューリア親子は村八分で追い出され、現在に至る。

「助けられたとはいえ会って間もない人間に身の内を話してしまうのは

如何かと思うんだけどねぇ・・・」

「『それは貴方が信用に値する者だから。』父さまが技師さんに言った言葉。

それに、アンタからは父さま,技師さんと同じ匂いがする・・・・・・」

そりゃ、似た匂いはするだろう。 なんたってその技師を派遣させたのはライだし。

「・・・・・・・・・さて、適度に集まった事だし戻りますか。

ディ達が帰ってくる前に下ごしらえは済ませておきたいからな」

「・・・あんた、手際がいいね(呆」

「さっさと動いて、ゆ〜っくり休む。それが俺のポリシ〜〜♪」

戻った二人は、ライの持ってきた干肉から切り分けチュー用に他の具と共に

適度なサイズに切り刻み、同様持込の小麦粉と細かく刻んだハーブを混ぜ水で練り

「んじゃ母君の容態を見てくるから、フューリアはディ達を待って

後作るように言ってもらえるか。」

「うん、わかった。」

素直なフューリアを残しライは小屋の中へ。

幼児は多分遊び疲れ眠り、ルーも慣れない相手にぐったりと壁に背を預け

「奥さん、御具合いかがですか?」

「本当に今日は調子がいいのに動けず・・・

お客さまにまで気を使わせてしまって申し訳ありません。」

「いえいえ。 知り合ったばかりなのに失礼ですが、ちょっと診せていいですか。

生業柄、医術も多少かじっているのでお力になれると思います」

「え? ええ、それではお願いします」

目を舌を観、脈をとり、肌の具合を確かめ。

「・・・・・・最大の問題は体力の上限が低い事か。 如何思う、ルー?」

「んー、私も御主と同見解だ」

「あなた達は・・・」

流石にルーが普通の子でないことは直わかるが、経験豊富そうな若者が

対等に意見を聞く様子をみればライとルーが単なる兄妹でないことは気付く。

いや、ルーが見目と全く違う事に。

「なに、通りすがりの傭兵とその仲間達です。

んじゃルー、俺もうちょっと行ってくるけど如何する?」

「疲れた。 飯まで休む。 いってらっしゃい、オニーチャン」

投げやりで、今のルーに「オニイチャン」と呼ばれても嫌味にしか聞こえなかった。

何処かへ立ち去ったライと入れ替わりに、背に焚木を山と積んだディ&ルナが戻り

料理を始め、出来上がる前にライも何かを携え戻って来た。

フューリア一家には久しぶりに大人数で賑やかに茶,シチュー,パンと豪華な夕食

皆和気藹々とそれで程よく腹を膨らませ・・・不意に思い出したかのように

「そうそう、コレ出すの忘れてた」

とライが出したものはカラカラに炒った赤く細長いもの

「・・・(パク、カミカミ)。 以外に香ばしくっておいしい!」

「ワウ? ・・・(ハフハフ」 食べ物? おいしい。

「・・・何ですか? たんぱく質、魚の腸ですか?」

「???」

「・・・・・・(悩」

だけあって、ルーは直それの正体に気付いたよう。

「採って処理して、この状態までするのにそんなに時間はかかってないぞ。

これの正体はな、ミミズ(カリ ぽりぽり」

「ワン?」 何?

瞬間、ルナとルーとライと幼児以外、時が止まった。

「あ、あ、あ、アンタは何を食べさせるんだぁーっ!!!」

「変なモノ食べさせるなぁーーっ!!!」

「へぶっ!!? ミミズは栄養満点で滋養強壮にいいんだぞっ!!」

「これなら食べられるが・・・こんな時に正体をバラか、御主は(呆」

フューリアとディはツープランクトアタックでライ顔面に蹴りを叩き込み、

母親は座って目を見開いたまま気絶。ルナと幼児は何?何?と首をかしげ

ルーはただ溜息をつくしかなく・・・

「美味かっただろうが、ミミズ。ちゃんと調理してあるのに何の問題がある?

第一、見た目で判断するな。苔だってちゃんとすれば甘くて美味しいんだぞ。

森は食材の宝庫だと教えてあげようというこの心使いがわから無いのかーっ!」

「あんたは、どこぞの、料理人かー―っ!!!」

「戦士なんか、やめてしまえー―っ!!!」

「そこまでいうか? イモリの黒焼きとか湯ミミズとか焼き毛虫とか

見た目グロいやつは避けてやったのに」

「・・・っ!!? うわぁん、想像しちゃったじゃないか、バカーっ!!!」

「言うなーっ!!!」

・・・どうやら収拾が着かない模様。

夜すったもんだありつつも皆、無事にボロ屋で寝て過し

翌日

「あんた達、これから如何するんだい?」

「んー―、野菜類を村で補給するわけにはいかなくなったからなぁ・・・

数日程この辺りで拠点を構えることになるかな?」

異論なく当然といった顔のルーに対し、ディは何言っていると渋顔。

ルナは・・・耳後ろを後脚を掻いて座りなおし大欠伸。獣に意見なんぞありゃしない。

「とりあえず、一泊の恩義があるから今日は小屋の修理をさせてもらうとして

ディは適当な野営地を探してキャンプを張ってもらえるか?」

「バカタレ・・・・・・(睨」

「・・・あっ、そういうことですか。ええ、そちらが終わるまでにやっておきましょう」

つまり、野営地探しがてらに村の偵察もして来いと。

フューリアに真の目的がばれないように・・・

「い、いいのかい? 昨日食材まで提供してもらったのにそんなことまで・・・」

「気にするナ。 ドーセあての無い旅、ここで遊んだって問題ないさナァ?」

「そういうこと。じゃー行きますか」

「行くゾー」

と、どうせ見てるだけで何もしないのに勢い良く拳を上げるルーは既にルナの背の上。

・・・移動すら面倒くさいので。 

道中、ルーはずっとルナの背かライの肩車だったのは言うまでもなく。

何故かルナ(と、言わずも背にルー)を先頭に

己の得物を担いだライとフューリアは森の中を歩き

「それで、斬ってもいい適当な木はどれだって?」

「???」

ライがルナに何を尋ねているかなど、フューリアにわかるはずもない。

ルナはあっちを向きクンクンと匂いをかぎ、そっちを向きクンクンと匂いをかぎ

「ワン、ワンワン」(えっとね、こっち こっち)

したがって付いていった先には二抱え程の幹の大木。

「うん、これなら十分余りあるな。 ほーら、みんな下がって」

とライが手に握るのは斧ではなく、抜き放たれた破壊剣。

「いいのか、あれで(汗? あれって、武器じゃないのか?」

「ア奴にとって武器も道具もさしてかわらんさ。

それにアノ程度で壊れるほど軟な作り方をしとらんはずだからな。」

「そ、それってもしかして・・・あの剣は自分で鍛えたってこと? 鍛冶さん?」

「名工の元でナ。 器用で興味ある事は直手を出す奴だからナ、ライは」

二人が雑談に華を咲かせている間に、ライは何度もよく伐る処に狙いを定め構え

そして、狙いを定めた事が無駄な勢いで一気に剣を振り抜いた。

・・・でも、息を飲む女子達の前で大木は倒れる様子もなく突っ立ったまま。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・伐れてないんじゃないか?」

「伐れてるさ。 ほら」

と幹に十六文キック一発、ゆっくり倒れていく大木。

そして、ドンッと轟音を立て女子達を跳ね浮かし幹を地に横たえた。

「うわっ、本当に伐っちゃったよ(汗」

「・・・・・・うん、ここで角材にして持っていくか。板材と処理は向うでだな」

「・・・専門的な事言ってるけど、ライって大工さん?」

「ん〜〜違うが、心から否定できんところが哀しいナァ・・・」

自身曰く、出来るのは木を板にしてそれを打ち付けたりの日用大工だけで

本職の如く継手,表面加工等など匠な事はやらないから全く及ばないとの事なのだが

・・・せめて親密なルーだけでも否定していただきたく。

ライは剣で大木を、其の皮を剥ぎ一人でも運べるサイズの角材数本に切り分け

ルナと二人(?)でエッチラオッチラと往復して運び、更に数十本の板材に切断

昼食を経て

3人で表面を炙り加工を施し、それを小屋の修理が必要なところと入れ替え・・・

暗み始めた夕方

「う〜〜ん、元々小屋の基礎がしっかりしていたとはいえ

一日で補修を終わらせてしまった自分の才能が恐ろしい(ウットリ」

本来時間をかけるところを裏技を使いまくれば一日でも終わる。

「小屋を直してもらって言うもの何だけど・・・へ、変な奴・・・(汗」

「細かい事は気にせず好意に甘えとけ」

「ライさんが変なのは今に始ったことじゃなさそうですからね」

と出来栄えに至極満悦に浸るライを傍目に休む女の子+αにいつの間にか戻ったディ参加。

「おぅ小僧、テントは張り終わったのか?」

「ええ、ここからすぐ近くにいい場所があったのでそこに。

第一、テント一つ張るのに時間掛かるものじゃありませんから」

「一つ? オマエ、気を利かせろヨ」

「気を利かせろって、二人っきりで何をする気ですか」

「ナニをする気以外何があるっていうんダ、バカタレ」

と幼女は手直にあった細長い木材を手に小生意気な少年を殴り

「こ、この人達のノリ、付いていけない。これって単に私が田舎者なだけなの(汗」

テントは元々大の大人が4人ほどが十分寝れるスペースだったが二分してディとライ

そしてライの懐にくっついてルー,足元出口付近がルナの寝場所になってしまった。


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■ EPISODE 09 ■

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