∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 08 ■
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王位継承権。 大凡、人格に関係なく血が濃い順に決定されていくコレは

上位5位までの者は委員会しか順位を知らず、王城,王都に常に待機しなければならない。

もっとも、己の位を知る以下の順位の者にしても大抵が王都に住まうものだが・・・

アルシアの場合、先々王の子女。本来なら現王よりも順位は上でなければならない。

流石に王位交代はないが、上位は決定。

継承権授与式当日、王城の講堂には幼王に始まり先妃,大妃、摂政達、各種大臣達。

そして、継承権候補者達とその付き添いが揃っていた。

継承権候補者自体の数は数十人にしかならないが、その付添,警護の者がいるため

講堂にいる人数は可也のもの。それこそ儀式そのものである。

割りと地味でそれでもスカート部にはスリット入りな紫ドレスのアルシアの後に控える

付添は、言わずもかなライ正式決戦仕様衣装姿+女性らしく飾巻スカートのイリアだけ。

アレス&リオは入る事が出来ないため、外で結果を聞き次第帰還するよう待機している。

決ればアレス&リオにはもう何もする事は無いから。勿論、イリアの役割も其処で終り。

前で何やら御決まりの挨拶がされている中、

「・・・(なぁ、本当に付き添いは俺で良かったのか?

フェフ様とかオーディスのオッサンの方が・・・)」

と、アルシアの耳元で囁くイリア。

そこらの貴族の引けを取るつもりはないが、それでも自分が付添に相応しいとは思えない。

周囲は、身元が明確なその親族なり遠い親族でも要職に付いているものだったりする。

その点、フェフならアルシアの養母の上に王都神殿の最高司祭,オーディスは守護騎士団長。

言えば十二分ココに借出せる。どうせ今も長として講堂の何処かにいるだろうけど・・・

「・・・(今更、何言ってるのよぉ。 コレはね、貴女でなくちゃ だ・め・な・の)」

「・・・・・・」

再び神妙な面持ちを作り前を向くアルシアに、仕方なしとイリアも凛々しく前を向いた。

そうしている内に、本題の継承権授与。

本来なら、上位者5名の名が挙げられ一人一人前で授かり、以下順位と氏名が上げられ

閉の挨拶の後で式は終わるのが常である。

委員長の老人に上位者5名の名が上げられ、最後に

「・・・アルシア=フォアスタ」

名に前へ出るアルシアに僅かにどよめく講堂。ココまできたらその存在を認めざるえない。

前に立つ5人。明かに現王より早くこの世を去ると思われる中、

アルシアが最も若く美しく、唯一の女性。

不意に、

「ちょっと宜しいかしら?」

「場所を弁えたまえ。 話は後に・・・」

「重要な御話なのです。場合によっては、この国の行く末を左右するほどの。」

「・・・しからば、向こうで」

「いえ、皆にも聞いていただく必要があります」

問答は講堂中に響き渡るため、何事かと人々は騒ぎ外の衛兵,衛騎士も様子を覗う。

「私、アルシア=フォアスタは王位継承権を辞退させていただきます。」

は?

その一言に時が止まった。

 

一体何を辞退すると?

 

王位継承権 の上位

 

誰が?

 

アルシア=フォアスタ

 

「き、き、貴君は、い、い、一体、何を・・・」

「やーねぇ、もう一度言いましょうか?

私、アルシアは王位継承権なんてちーっとも要らないって言ったよぉ。

第一、私が先々代様の子女なんて証拠、一体何処にあるのかしらぁ?

そんなもの、何処にもないのよねぇ。」

「・・・・・・(ぱくぱくぱく)」

事態を理解出来ず茫然としたり、顔が赤くなったり青くなったり

挙句、腰を抜かしたり卒倒したり

その中で、してやったりと笑みを浮べる者数人。

爆弾を落すかもしれないとは思っていたが、こんな派手に効果ある形でとは

ざわめきながらも前代未聞の出来事に動けない中、

アルシアはスカートの裾翻し脚見せイリアまで駆け寄り

「さぁ、こんな所にはもう用無しよぉっ!!!」

「了解、マイプリンセス!!!」

手を繋ぎ駆け去る乙女二人を周囲は止めることなく見守るしかなく・・・

急にざわめき始めた講堂に講堂周囲で護衛していた者達も何事かとざわめき

その中から跳出す二人は開かれた道をアレス達の方へ。

何事かと尋ねるより早く

「二人とも、私達の都市に、屋敷にかえるわよぉっ!!!」

「・・・応、アルシアさんっ!!!」

「・・・わっかりましたぁっ!!!」

皆がより良いように。 そのためにはホンの僅かの度胸と勇気さえあればいい。

見られることも構わずアルシアはドレスを過ぎ捨て、己の装備を纏い、乗馬。

完全武装の四人の騎馬は、後はもう省みる事無く突走。

先頭のアルシアと剣幕に王城の門は全て素通り。

何処を如何来たのか見送る長二人を残し、王城を出た処で+5人の騎馬。

「我々も途中まで御供させて頂きますっ!!!」

「じゃっ、途中まで御願いねぇ」

守護騎士を含め九人の大所帯騎馬群に王都民は何事かと慌しく路を開け、抜けていく。

そして、王都街外の草原に入った処に九人はその突走を止めざるえなくなった。

前には武装した者達数十人。戦力的に可也の。

その先頭に立っていたのは、これまた完全武装の

「カインさん!!? な、何故!!?」

「・・・俺達を裏切っていたからだ。 この男の相手は俺が」

動揺のリオにアレスは声を殺し、言い放つ。

しかしアルシアとイリアは覚悟していたのか至って普通に動揺すらない。

「ふぅ、まだまだ若いね、君も。 気持は解るけど、君の望み通りに

させる訳にはいかないんだよ。 僕にも色々都合ってものがあるからね。

だから、大人しく・・・」

と、アレスが構える間も無く槍斧一閃。十分闘気がのった横薙ぎ真空刃を撃ち放つ。

後の団体に対し。

「なっ!!?」

「えっ!!?」

「今は僕との決闘を諦めて欲しいんだよ。 先ずは、コレを片付けようか」

「突撃っ!! 掃討戦よぉっ!!!」

後はもう、毎度ながらアルシアの号令に敵は成す術もなく討ちのされていき・・・

・・・・・・・・・・・・

アルシア達は一人増やして場を離れ、先の広場で落ち付いた。

戸惑いながらアレスとリオは無構えのカインに対し構え

「「・・・・・・(困」」

「・・・その顔は解らないみたいだね。 敵に敢えて正しい情報を流すのも兵法。

御陰で小物がチョロチョロ来る事は無かったと思うけど? だから僕は裏切った

ワケじゃないってことさ。 まぁ、僕の小遣い稼ぎもなった事は否定しないけど」

「そんな事だろうと思ったわぁ。貴方らしく遣り口がヤラシイわねぇ(呆」

「お褒めに預かり、光栄」

厭味にオドけて見せるこの男に端っから裏はなかった。そう見せていただけで

「・・・疑って悪かった。」

「ははっ、いいよ。それが今回の僕の役回りだから。 ・・・それより問題は

アルシアの大義名分がなくなった事。 押寄せる追っ手を如何するかが問題だね」

「その答えはもう決っている。俺と守護騎士達で食い止める間に四人は都市まで」

イリアに頷く守護騎士達。しかしアルシアは

「ダメよっ、そんな事。そうしたら貴女はどうなるのよぉっ」

「別に如何もなりゃしないさ。それが俺の役割だから」

「役割なんて如何でもいいわっ。 私達といっしょに」

不意に、アルシアの唇を塞ぐようイリアのキス。

それを、アレスは慌ててリオの目を隠し、以外は一部苦笑いしつつ目を背け

「・・・悪いけど、俺はアルシアといっしょに行く事は出来ない。

俺は彼の代り・・・終われば帰るべき場所に帰らないといけないから」

「それなら、終わらなければ・・・」

「いつまで経ってもアルシアが帰れない。 大丈夫、俺の心はアルシアと共にあるから」

「・・・わかったわよぉ。絶対・・・死んじゃダメよ」

「大丈夫。 借り物も返さなくちゃいけないし。 行けッ、アルシア!!」

願いに、アルシア達は振り返る事無く出発した。

行った反対側からは大群勢が迫る土煙が発つ。

アルシアは皇女である事を否定した。しかし、それでアルシアが皇女である可能性が

消えたわけではない。 寧ろ、皇女である事を確信した者もいるかもしれない。

それで助ける理由は無くとも、抹殺しなければならない,したい理由は以上に増えた。

表立って暗殺しようとする者々が。軍群を成して。

この戦い、アルシアがライの元まで帰る事が出来ればイリア達の勝利。

だが否定した事で、今や神殿や守護騎士団の保護を受ける事は出来ない。

今、守護騎士がココにいるのは命ではなく、嘗ての仲間としてでしかない。

彼等が逃げ返ったところで誰も咎めはしない。

「・・・命まで貸せとは言わない。 ただ、今は時間稼ぎに力を貸して欲しい」

『我に集い、我に纏え、力よ。 願い叶える剣と盾になりて我鎧となれ』

立つ、決戦仕様装備の魔操鎧闘士。

「と、言う事です。 我々は正義の味方ですから、悪は討つっ!!!」

副長に各々得物を構える守護騎士達。端からやる気は満々。

「お前等・・・極上だぜっ!!!」

言い始めたイリアが気合いで劣るわけには行かない。

腕を揮い舞う。詠う術詞に地を魔方陣が走る。 それは八方星、神の力。

『天裂く剣よ、我は求めん。護らんがため我力となれ。数多の剣よ、我敵を貫け』

魔方陣より天へ龍の如く数多の雷が昇る。空、数多の雷を呼水に更に雷が生れる。

そして

『雷・撃・陣』

大群勢に雷の雨が降った。

撃たれ倒れる者々を抜け、なお大群勢は迫る。

連中からも既にイリア達を確認出来ているはず。それででも未だ戦うと

「流石、龍妾。雷閃の魔導戦姫・・・ だが、守護騎士をもナメるなっ!!!」

イリアも交え撃って出る守護騎士達。 守護騎士は常に正しき者と共にある・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「空間跳躍」の魔法自体、手順さえ踏めば魔導士には困難なものではない。

対象物を分解し、情報として指定座標へ送り、指定座標で実体化するだけだから。

「空間跳躍」を困難に至らしめるのは、対象者に素質がない限り精神が耐え切れない事。

結果、対象者の精神は崩壊。 伴い、その肉体もまた異形化もしくは崩壊。

その対処として対象者を「凍結」させる等あるが、その場合は臨機応変さにかける欠点。

男の前で「空間跳躍」の魔方陣が展開し、光の粒子が集い形を作り実体化する。

実体化したのは乙女。「凍結」が解け、柔からさが戻る。

「・・・ただいま。」

「・・・御帰り。 首尾は?」

「今の処、上々、かな? 後は 次第。どうせ直解るだろうけど・・・」

「そうか・・・急いだ方が良さそうだな」

「ああ、後は頼む。」

「おう、後は引受けた。」

乙女が出した手を男が手に取り、乙女から溢れた光が男に伝い染みる。

そして、精神を失った乙女の肉体のみが希薄となり・・・

そこに残ったのは乙女が身に着けていたものと、男だけ。

「お前の想い、確かに引き受けた・・・のも変な言い方だな。

さて、・・・行くか」

復活。 そして、出撃。

やや語弊はあるが願いを受け継ぎ、彼女を護らんがため。

それが消えた乙女の願い、想い。

それが奮つ男の想い、意志。

 

守護騎士達とイリアの活躍で、アルシア達は時間を稼ぐ事はできた。

しかし、所詮 多勢に無勢。敵勢力が全力ながらも休めるに対しアルシア達に休憩は無く

騎馬達は倒れ、途中で放棄。 疲労に逃走速度が落ち、敵との距離が縮まるのは否めなく

後には目に見えて群勢が迫り

「くそっ、こうなったら『セラス』で・・・ カインさん、アルシアさんを頼む。」

「そうです。私達が時間稼ぎしている間に」

「疲れ果てている君達なら対して時間稼ぎならないと思うけどね。

それにもう手遅れ。 残念ながら囲まれたよ・・・」

「・・・そー見たいねぇ。 ・・・コレ上げる。」

とアルシアは皆に小瓶を配る。

「・・・コレは自害用の毒?」

「バカねぇ、強制活性化剤よ。 誰がそんならしくない事、するものですか」

捨てて逃げろと言った処で聞かないのは解っている。

ならば、命尽きるまで共に戦い続けるまで。 一人でも多く倒してやる。

決意固めるアルシア達に対し、敵は包囲を固め、アリ一匹逃さない気配。

その中で群勢から前へ進み出る代表者。

「我々の目的は解っているはず。差し出せば、君達にはココを通そう。」

「・・・だって(疲」

確かに、標的はアルシアのみ。カイン達を戦ったところで何のメリットもない。

ならば無理を通し戦うより、カイン達を逃がしアルシアを捕まえ御大等に引渡す方が

ボーナスもはずんでもらえると。

「それは大変イイ申し出だね」

「「!!?」」

「でもね、僕にもプライドってものがあるんだよ。仮にも守護騎士だったし。

・・・君達は行くといいよ。ココで死ぬには君達はまだ若すぎるからね。」

「・・・カイン、貴様はツクヅク人を舐めた男だ。 俺のプライドは如何なる?」

「そうです(怒。 私達だってプライドはあります。」

「一度ぐらい苦汁を飲んでも罰は当らないよ」

「・・・ほら、貴方達は行きなさい。」

「・・・・・・論外。却下。俺はそんな事出来ない。 リオ、お前だけでも・・・」

「アレス君、今更それは言っこ無し。 生きるも死ぬもいっしょだよ」

「・・・ディ君とかルナちゃんはどうなるの。悲しませる気?」

「・・・・・・」

「・・・じゃあ、アルシアさんは帰れなくていいんですか?」

「・・・死んで悲しむ人がいるのは皆同じ。 俺達でもいないよりましだ。」

リオとアレスはまだ希望を失ってはいない。それはとても儚い希望。

「若いねぇ、君達は。でも・・・」

業を煮やしたか、群勢は魔法弾や矢の一斉射撃の気配。

時間をかければ何らかの手を撃つ事は解っている。 だから当初通り抹殺すると。

「や、やはり奇跡は・・・起きないのか?」

互いの背を護る四人に一斉射撃の攻撃は殺到し、空間は・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その攻撃から逃れられるものはいなかった。

完全武装のカインですら直撃に即しすることはなくとも衝撃に負傷は否めない。

アルシア,アレス,リオは重傷必死。

・・・直撃すれば。

攻撃が止み爆煙が引けば、其処には輝く半球の防護結界。

上には破壊剣を揮い立つ黒衣に鋼甲腕の騎士。

「・・・極星の騎士ライ=デェスティヤ―剣参

今の俺はすこぶる機嫌がいい。 引けば逃がしてやる」

たった一人増えたくらいで優劣が変るものではない。

だから包囲が解ける事はなく、再び一斉射撃の気配。

「・・・そうかい。 頭の悪い連中だ。」

と剣を片手に生み出すのは雷撃槍。高出力のあまり放電現象まで起きているが

単体攻撃にこの状況を如何にかできるものかと群勢から失笑が漏れる。

「・・・頼むぜ、ルーっ!!!」

と投擲したのは真上。

「よしっ、まかせろっ」

と群勢が気付かない上空には『浮遊』に風でローブの裾をはためかせるルーが魔方陣を展開

その中央に雷撃槍が適中、分解、分散 そして魔方陣全体より

駕、駕、駕、駕、駕

と周囲全包囲に落雷。 それで遠距離攻撃可能な敵の殆どが倒れ、残るは四分の三強。

ライが結界から飛び降り結界が解けると、其処には+四人。

戦忍レイハ,双爪の黒猫シエル,大太刀の銀狼少女ルナ,晶槍の魔導士少年ディ

魔導師ルーも上から降って登場。

「薬師アルシア=フォアスタは我 極星騎士団の者。手を出すなら我等に敵対すると心しろ。

・・・言っとくが、俺達は守護騎士に負けないくらいに強いぞ(ニヤリ」

既に四人は持ってきた霊薬に疲労も全快し

重装騎士カイン,薬師アルシア,双翼の騎士アレス&リオ、復活。

つまり、アルシアを抹殺するためには守護騎士2ユニット以上の戦力と

ヤり合わなければならない。 それに勝つために必要な戦力は・・・

「如何する? やるか? 今一度言っておく。

俺は今、非情に機嫌がいい。向うヤツは殺さず再起不能で勘弁してやる」

勝負は言うまでもなく、端っからついていた・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

敗軍の様相を見せる郡勢・・・一人頭四,五人負傷者を運ぶソレを、

誰一人マトモに負傷することなく見送り

「・・・はぁ、これでやっと一見落着だな。 御帰り、アルシア」

「た・だ・い・ま」

と抱き合うのではなく軽くライの腹に拳を撃ち込むアルシア。

後ではルナがリオに飛び付いたり、それらをアレス,ディが微笑ましく眺めたり

「・・・つまらん。アノ二人は抱き合わんのか」

「ルーは一体何を期待しているんだ(汗」

「んん〜? 抱き合えば弱みの一つにでもなるダロ?」

「こらこら(汗」

「いいですね、御二人はお気楽で」

と、ルーにシエルにレイハ。今回はアルシアに譲るつもりだったがその必要はなさそうで、

寧ろ、間ずっと側にいるのに相手をしてもらっていなかった三人の方が譲っていただきたく。

「はぁ〜〜、全く相変わらずだね、皆。 暢気なもんだ」

とカインは一人寂しくその守護戦乙女に愚痴ってみたり。

そうしている内に、アルシア達が放置した騎馬達も回復しやって来た。

「さぁー、撤収っ!! 家に帰るぞっ!!」

誰にも評価されず、何の利益もない戦い。

でも、これは自身の魂,愛しい者を護る戦い。

それが存在意義。

 

夕食後、

ライのせいで子供が酒を呑む事を良しとしていなくとも

済崩し的に祝宴でディ,ルナ含め皆酒を呑み、酔いつぶれ・・・

否、ほろ酔いで済ませたライは皆寝る居間を抜け出し、一人屋根の上へ。

今夜は晴夜の満月で風も心地好く、屋根の上で寝転び夜天を仰ぐ。

「・・・あ〜〜、身体痛っ」

「あらぁ、若いのに筋肉痛? ちょっと見ないうちにオジさんになちゃったわねぇ」

「失礼な。アルシアが行った後全く運動してないのにハッスルしちまったせいだよ。

・・・それより、パンティ見えてるぞ。」

「・・・・・・」

毎度に艶っぽく脚見せロングスリットスカートなアルシアは脚をあげ、脚元に落し

メキッ

・・・休題。

悶絶のライの横にアルシアは腰を下し、落ち付き。

「・・・痛いぞ。 人の顔を踏んでくれるとは随分な挨拶じゃないか。」

「相変わらずオ馬鹿さんな事言っているからよぉ。 晩酌しない?」

と見せる籠には酒瓶とグラス

「・・・肴は?」

「・・・・・・御話を御肴代りって事でねぇ」

「・・・まっ、いいや。」

御互い、グラス酒で唇を濡らし香を楽しむ。

「・・・・・・なんつーか、改めて御帰り。

部屋、手をつけていないから埃まみれだっただろ?」

「本当、戻ってくるから片付けないでって言ったからって

御掃除くらいしてくれても良さそうなものなのにねぇ」

「良く言うぜ。掃除したら怒るくせに。第一、リオも行っているのに誰が掃除するんだ?」

「貴方」

「即答っ!!? まったく・・・姫様は全てを捨てて愛しき者の元へってなのにな・・・」

「う・ぬ・ぼ・れ・な・い・で。 煩わしいのが嫌なだけよ。ココは居心地がいいから

・・・ねぇ、イリア、貴方が遣わした娘は来た? 私、彼女にまだ礼を言って無いの」

「ああ、だから俺は知ってギリギリ間に合ったから・・・

礼を言う機会はもうないな。彼女は帰るべき場所に帰ったから」

「彼女・・・呼ぶ事は出来ないの?」

「無理、彼女を呼べば不具合が生じる。・・・大丈夫、礼なんか言わなくたって

彼女だって解っているさ。 彼女の心はアルシアと共にあるから」

ライに重なる女性の影、それは・・・

「そう、そういう事・・・・・・」

「んぁ?」

「何でもなぁいわよぉ」

アルシアは機嫌良く酒を呷る。この際、何に納得したかはこの際良しとしよう。

「・・・処で、アルシアは本当に『失姫』だったのか? 

御袋さん、王宮の後宮専属の薬師だったんだろ?」

「後宮にだって男の出入りはあるわよぉ。 それに今更、

私が『失姫』だったかだなんて如何でもいいんじゃなぁい?」

「まっ、確かにな・・・それでも・・・・・・」

知りたくとも無理には聞かない。 仕方なく、二人揃って酒を呷り余韻に浸り・・・

「・・・尽きちまったな、肴。」

「あらぁ、そうでもないわよぉ?」

とアルシアは二人の間にあった籠を避け、身体を近づけ指先で男の胸板をクリクリと

「もしかしてサカナって俺デスカ?」

「うふふふ、固いわねぇ・・・・・・」

「・・・俺のサカナは?」

「わ・た・し」

「・・・・・・(悩。 悪い、今は色気より食気より眠気。 ふぁ〜〜〜。」

ライはアルシアの魔手からすり抜けだし、追う間もなくさっさと退散。

「なによぉ。つれないわねぇ・・・」

と、思いきやUターン。

「・・・俺の夜伽、するか? H無しだけど」

「バカ」

「・・・さよけ」

それでも、ライの腕に抱き付き二人は連れ立って寝室へ。

アルシアは男の胸を枕に鼓動を子守唄に、より深い眠りに。 最も安全なこの場所で。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

シーツに顔を埋め、染込んだ香りを堪能し惚け・・・

「・・・えっ!!?」

っと、アルシアは行き成り我に返り飛び起きると下着シャツのままベットに座り込み

己の寝床でないコノ状況を理解しようと

思案・・・思案・・・思案・・・思い出し

「そう私、ライの部屋で寝たのよねぇ・・・・・・」

で、既に当のライはその温もりすら残しておらず見る影もない。

「・・・連れないわねぇ、全く。」

一度目が覚めた以上じっとしてもいられないので湯浴みに行こうと・・・

いま一度ベットに潜り込み、シーツに顔を埋め

「そ・の・ま・え・にぃー はぁん、ライの、男の香りぃ(ハァハァ」

・・・これが素のアルシアである。


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■ EPISODE 08 ■

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