∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 07 ■
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「ん、ディ、たくさん、出してる。・・・熱い」

「・・・・・・(はぁはぁ」

果てた茫然自失のディを身体の上に乗せたまま、少女は慈しみの笑みを浮べ少年を撫でる。

まるで年上の娘が未経験の子供の相手をしたかのように・・・

「・・・あの時君がこの子を襲えば、私は君を殺すつもりだった。でも君はそうせず

この子を大事にした。だから、これはその御褒美。 この子も君の事、大切だから・・・

記憶は消すけど・・・感覚は残しておいてあげる。 ・・・この子を支えてあげてね」

言葉に訳も解らず見上げたディは少女に額をキスされ、その意識は闇へ・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

闇の中、ペロペロと顔中を舐める感触を感じる。その瞳を開けると目の前には

緋の瞳の銀狼少女ルナ。 幼げな顔に心配の色を浮かべていた。

「ディ、大丈夫?」

「えっと・・・ルナ、如何したんですか?」

「ディ、寝る、ココ。 私、心配」

見渡せば其処は地下倉庫。少なくとも寝る場所に適しているとは言い難い。

ディが身体を起すと、その身体から落ちる毛布。

ライがルーの為に魔導実験室に備え付けた代物。

「・・・これ、ルナが?」

「わん?」

何こと? と少女は首を傾げ・・・考えてみれば魔導実験室に殆ど出入りしないルナが

これの存在を知っているかは疑わしい。 きっと四人娘かライが掛けてくれたのだろう。

「・・・こんな処にいつまでもいても仕方がないので上に上がりましょうか?

嵐もやんだようですし・・・」

「わん!!」

と、何で外が嵐だった事を知っているのだろう。

魔導実験室は防音でもあるため外の音は一切聞こえない。

そもそも何で自分はこんな処で寝ていなければならなかったのだろうか?

「わぅ? ディ、どした?」

ルナのいたいけな表情を見ていると自分の身に起った些細な事など

如何でもいいように思えてきた。

年上ぶっているくせに幼い少女。

「くすっ、何でもないですよ。」

「わぅ〜〜、ディ、バカにした」

ガプッ

「あははは、痛い、痛いですよ」

ガジカジカジカジ

何かが変ったのか、痛いはずなのに楽しくて仕方が無い。 心の余裕だろうか。

だから誰にいわれるまでもなく、この少女を支えたいと思う。

・・・誰に? 誰がそんな事を?

「わぅ、ディ、変」

ついには哀れがれ、可哀想にと頭を撫でられてしまった。

 

 

麗らかな午後、執務室ではいつも通りライがダベっていた。

「・・・何か、平和だねぇ。」

「平和ですか? ルナが来てから二月経た間に随分と色々あったと思いますが?」

「まだ二ヶ月しか経ってないのか・・・ルナが来て。 ルナとディ随分と仲良くなったな」

「同年代ですから・・・相手には丁度いいのでしょう。」

「最近かまってくれなくて、おとーさん寂しいなぁ・・・」

「ふぅ・・・仕事してください。」

「最近、俺、節操が無い気がする」

「それはいつものことでしょう。 誤魔化さないで仕事してください。」

「こう・・・清涼ある刺激が欲しいなぁ」

「・・・どうぞ、清涼ある刺激です」

「・・・御願い、刃物は突き付けないで。 清涼どころかキモが冷えるから」

毎度の夫婦(?)漫才も観客がいなければ何処と無く寒い。 と、その時

「団長は相変わらずですね。 只今帰りました」

「やっと帰ってきたか・・・でも、窓から挨拶するのはどうなか?」

「素早く、団長を見習ってみただけですが?」

「そんな処、見習わないで下さい(泣」

後の窓から顔を出すライとレイハの夫婦(?)漫才に乱入して来たのは言わずもかな、

「何であれ御帰り、アレス。 首尾はどうだ?」

「それは・・・自身が直接確かめて下さい(ニヤリ」

「それはそうだ。 ・・・処でリオは?」

「直接居間の方に。ルナとディに土産があるので」

「ふーん。 じゃ、早速一戦やりますか。 いけるな、アレス」

「勿論。」

「あっ、まだ仕事が」

「終わらせたよ〜〜ん」

とレイハが止める間も無くライ遁走。 もっとも行き先は解っている。

因みに仕事は・・・・・・いつの間にか終わっていた(驚。

広場に集う全メンバー

そして、ライ,アレス&リオ,ディ&ルナは己の装備を纏い得物を携えていた。

もっともディは間に合わせの蒼いレザーアーマー+マントと蒼色のグローブ、

ルナは毎度の格好+マントに、指二本分くらいの幅がある緋が基調の飾帯を首に。

共に材質的には共に破邪銀ミスリルの繊維状にしたものを編んだか。

「・・・首輪?」

「違います。首飾帯です。 可愛いでしょ?」

「・・・でも変身しても大丈夫なんだろ?」

「ええ、それはまぁ・・・(困」

「じゃ、首輪だな」

「・・・(泣」

ライに虐められて泣くリオは何故かアレス共々マントで身体を隠していた。

「・・・悪いけど今日は対一、俺対アレスで」

「「「異議あり」」」

珍しくリオとディ&ルナが挙手。

「僕もアレスさんと戦って、自分を試してみたいです!!!」

「わんっ!!!」

「何で私は駄目なんですかっ!!!」

「・・・うるさ。 対一なのはアレスの得物の具合を見る為だからだ。そんなに

戦ってみたいならリオVSルナ&ディでやればいい。それでも十分に楽しめるはずだ」

「「「え〜〜〜っ」」」

「ハイ決定。もう文句は言わない」

「「「ぶぅ〜〜〜」」」

文句を言う子供×3と構っていても埒があかないので、両雄距離を取って立会い。

アレスがマントを脱ぎ捨て、抜き放って見せたその得物は直線的だった『風羽』に比べ

全長は差して変らず、左右対象の両刃直刀の刀身は中央で縊れ全体的に滑らかな曲線を

描いていた。

「・・・いい剣だ。銘は?」

「『風羽』、改め『烈風裂羽』。 見ただけで分るとは流石・・・」

「そもそも剣は使手と一組だからな。 さてと、総合的には・・・」

と二人共々、片手持ちで無構のまま近づき、居合に入った瞬間

ー―――

撃込みに一瞬で二人の位置が入れ替わる。

「やっぱり、モノにすると各段に変るな。これなら楽しめそうだ」

「自分で鍛えましたからね・・・油断すると怪我しますよ、俺は」

共に両手持ちで構え相撃つ。

ライの撃込みをアレスは受け流しつつ絡め捕ろうとするがライは攻撃を突きに転じ、

アレスは鍔で避けて回転斬りを見ずにライは避けつつ足払いにアレスはバランスを

崩す勢いで斬り付けをライは受止めアレスを投げ飛ばし

「うわぁ、何なんですかアレは!!? あんなの・・・(汗」

「わぅ・・・(汗」

「そうか? 普通だと思うが・・・ライは二人相手には実力を

最大限に発揮させるようにしているからそう感じるのだろう」

二人の戦いを必死で追って汗かく子供二人に対しシエルは動きを楽々目で追う。

子供二人がライVSシエル戦を見ても、きっと初っ端から腕の動きは見切れないだろう。

ライとアレスの動きも次第に回転が上がっていき・・・

「うう、目が回ってきた・・・」

「わうぅ・・・」

瞬間、ライとアレスはバックステップで距離を取って構えたまま制止。

「・・・んー、本気になる前に止めておくか?」

「・・・そうですね。遊びで怪我はしたくない。」

と双方、剣を収めてしまった。

「えっ、もう終わりですか?」

「わんっ!!?」

「十分だろう? 二人とも可也技を試していたから。

あの剣、随分とライの剣を意識している・・・」

「・・・・・・僕には二人が凄い事ぐらいしか分りません(疲」

「わぅ〜〜」

「気負いするな。 二人とも始ったばかり、これからだ。

次は二人VSリオ。 思いっきりやって来い(ナデナデポンポン)」

既にリオはマントを脱ぎ捨て待っていた。その顔にはやはり楽しみなのか笑みが浮び、

その得物はバックラーと魔杖長剣『聖霊の刃』。対し子供二人はやはり自身最高の得物、

ディは法杖『光晶槍』,ルナは大太刀『獣皇鬼・砕刃』。

「・・・なぁ、アレス。『聖霊の刃』の形状、少し変ったな」

「ええ。『烈風裂羽』に合わせて少し鍛え直させました。今の銘は『聖星霊刃』

リオはそれだけではないですよ(ニヤリ」

「ん〜〜、もう独りで二人の相手はキツイな。」

「・・・処で、魔剣はルナが有する事に? ディのアレは何です?」

「元々アレ等は俺の仲間のモノだった代物だ。

余り言いたかないが・・・運命だったんだろうな」

仲間の形見を継承させるその気持、仲間を失った事があるアレスですら推して・・・。

感傷に浸る二人の前、戦いは戸惑い仕掛けられない子供達へ

リオが無数の魔法弾と共に撃って出た事で始まっていた。

ルナが破魔咆哮で魔法弾を消滅させると同じにディが撃って出、姉弟で鍔迫り合い、

そのディの後からルナの斬撃をリオはバックラーで受け流すと共にディも転がせ

「・・・はっきり言って、ディはルナの邪魔だな」

「気持は解るが・・・前線向きじゃない。 忠告したら如何です?」

「いいのか? なら ・・・ディ、ルナの邪魔するなっ!!!」

「厳しいな・・・(汗」

言われ思い出したか、ルナを前衛にディは援護へ。

それで多少はマシに成ったが、ルナの力が強かろうと剣技ではリオに長があるため

やっと互角といった処か。

不意に、ルナを転がせ魔法弾を避けつつリオが投じたバックラーは鎖を引きつつ

ディに鎖を絡み付け、リオが鎖を引くとディもズルズルと引き寄せていく。

ルナも直に起上り、リオの死角から襲いかかるがヒョイと避けられ

「・・・・・・えげつな。」

ディとルナは頭をぶつけのたうち回り。それを見てリオは楽しそうに笑い・・・

「・・・中々、終わりそうにないですね」

「御互い本気に成れないし・・・意外に力量、拮抗してるかもな。

・・・楽しそうだから放っておいて帰るか?」

「・・・そうもいかないでしょう?」

「でもなぁ、皆帰ったぞ? 乱入する気力もないしなぁ・・・」

「ですねぇ・・・」

何処となく寂しげな二人を他所に、戦いは日が暮れるまで続いた・・・

 

 

子供二人が一介の戦士といえる実力を有するなった今日この頃。

午後の日溜りの中、居間では皆が揃って思い思いに寛いでいた。

「・・・暇ですね。」

「わぅ〜〜〜(怠」

絨毯の上、まどろみダラケ切った子供二人

「俺等が開店休業って事は世の中平和ってことなんだよ。」

「ライの仕事は毎日、山ほどあるのですけれども」

「・・・今日の仕事はキッカリ済ませたぞ。」

何故其処でレイハさんは残念そうな顔をするのでしょうか?

でも、居間で皆揃って昼寝するって事は中々アットホームで宜しいことで・・・

って、アレス&リオ其処にいないし!!?

「・・・二人は何処ぞで逢引か?」

と、台所からやって来たのは召使の如き格好のその二人

「残念ながら違います。」

「うぇ〜〜ん、アレス君のバァカァッ!! 団長にはもうオヤツ上げません」

「「・・・・・・ごめんなさい。」」

相も変らぬ平穏な日々。

しかし、騒動はいつまでも『強者』を野放しにはしてくれない。

そろって楽しいオヤツにしようとした、その時

「騎士団の方、誰かいませんかっ!!」

緊急を急かす叫び声。

それを見に行き、戻って来た団長であるライは

「俺とシエル,アルシアそれにディとルナ,リオが出る。

リオが後方でディとルナの面倒を見ろ。準備急げよ。」

にわかに活気付く屋敷内。

幾ら平穏を渇望しようと騒動がそれを許してくれない。

犠牲に如何ほどに怒うが騒動に血が騒ぐのは否めない。

それが彼等の務め,宿命だから。

「騎士団出動っ!!!」

「「「「おうっ!!!」」」」「わんっ!!!」
















To be completed the Epsode07
「Succceed Children」.

But this story ”The Chivalry's Daily” don't end ,yet.

03.02/01〜03.04/06


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■ EPISODE 07 ■

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