∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 04 ■
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「クソっ、あの若造めぇ。調子に乗りおってからに」

「我々に対し一切の報告をせんか」

「殺せ。殺してしまえ」

「流石にそれは急ぎ過ぎだ。獣とはいえ黄金を産む」

「首輪を付けよ。それで調教出来んようなら抹殺してしまえ」

何処にでも懲りない連中はいる。ましてや老獪な老人達は・・・

・・・・・・

「はぁ〜〜何だ間だ言いつつ完成してしちまったな、屋敷」

新築の屋敷を見上げつつ考え深げにライは唸る。

地下に魔導実験室,倉庫,薬品庫、1階に執務室,図書室,居間,台所,風呂

二階は個室、そして屋根裏と中規模でしっかりした造りの構造。

因みに、屋敷の建設中に大工の格好をしたライが丸太を担ぎ釘打ち等をする姿が

しばしば目撃された。

目撃者の話だと違和感なさ過ぎ、ねじり鉢巻で場に溶け込みまくっていたそうだ。

というのはきっと幻影に違いない。

感慨に耽るライの処、ちょこちょことルーが

「おい御主、こんな処で何をやっている」

「いやぁ、俺も一国一城の主になってしまったと思ってさ」

「何を今更・・・それはそうと暇なら手伝え」

「・・・何を?」

「本の整理。」

「・・・ゴーレムは?」

「造る手間を考えろ、バカ」

「俺の他にも誰なりといるだろ?」

「カインは逃げた。アルシアは薬の整理をやっておる。

シエルはもう手伝わせているが私が付いてやらんとなぁ・・・

御主なら一人でも題で分類出来るだろ?」

「ん〜、そりゃまあ・・・多分。 って、それで俺を呼びに来たな」

「当然だ(フンッ)」

「別に急がなくても・・・」

「どうしてもしても読みたい本があるのだ」

「・・・さよけ(呆」

本の山に腰掛け尻尾をうねらせて休憩していたシエルにライも道連れに

本の整理は再開・・・

ひたすら黙々と作業を続け半刻後

「魔導書に神話に・・・何故料理の本?・・・・・・思うんだけど」

「ん〜〜、何だ?」

「分類しながら棚入れじゃなくて、先に分類を済ませちまえば後楽なんじゃない?」

「・・・・・・・・・先に気付けっ!!」

ライは逆切れルーの投げた本を受け止め

「魔導師の癖にそういう態度は、知識に対して尊敬の念が無さ過ぎだと思うぞ」

「ふんっ、私は知識を産む側だから問題無い」

「問題無いそうだ(笑」

「・・・シエルは本を読みすらしないけどな」

「・・・(クアアアア)。 ん?(ピクピク)」

猫娘、欠伸で誤魔化し。不意に周囲を覗い

「如何した?」

「いや、誰か来たような気がしたが・・・気のせいのようだ。」

「ふむ・・・念のため見てくるか」

「そのまま逃げるなヨ」

「・・・(んべぇ〜)」

と、ライは独り玄関へ来たものの、人が来た気配は微塵もない。

そのままサボってやろうと振り返ったそこには

「御邪魔します」

「おっ!!?・・・・・・ど、どちら様で?」

長い黒髪をアップで纏めスーツスカートの秘書っぽい、細丸眼鏡が知的な女性。

ライより若いはずなのだが感情が見えないため年が微妙にわかりにくい。

大きい荷物(鞄)を携えている処を見ると単なる訪問者ではない。

「この度、中央より騎士団長補佐を務めさせて頂くことになりました。

私、レイハ=サーバインと申します ライ=デステェイヤー様」

「はぁ、それはどうも御丁寧に・・・騎士団長補佐?」

「はい、騎士団において事務が私の仕事です。」

「じゃあ戦闘は」

「私は文官ですので直接参加することはいたしません。」

それでちょっと安心

「あ〜、うん、宜しく頼む」

「はい、宜しくお願いします」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・未だ何か?」

二人の間に流れる妙な緊迫感

「え? んや別に」

レイハの感情が見えないためライが間を掴めなかっただけ。そこに

「こら、いつまできゅーけーしてるんダ。 ・・・誰だ?」

ルー乱入。レイハを指差し怪訝な顔

「初対面の人に失礼なマネするんじゃない。これから世話になるんだから」

「レイハ=サーバインと申します 魔導師にして魔女のルー様。」

「おう、よろしくナ。 それはそうとオマエ、本は読めるか?」

つまり題から内容推測出来る 本を読みなれているかと。

「はい。よほど特殊なものでないのなら」

「じゃ、いっしょに手伝え」

そのままルーはテクテクと

「あ〜今、本の整理をやってて・・・

で、君は・・・レイハさんは俺達の事みんな知っているのか。」

「・・・はい。」

「ふ〜〜ん、態々御苦労さんな事で」

ルーを先頭に3人揃ってシエルが待つ図書室へ

「・・・遅いぞ。 彼女は?」

シエルの疑問はもっとも

「レイハ=サーバイン。事務でウチに加わる事になった。」

「シエルだ。よろしく」

「・・・よろしくお願いします」

レイハに一瞬間があったところを見るとシエルの存在は予想外だったのだろうか。

握手をし、レイハはルーの手伝いへ。 一方シエルは自分の手とレイハを見比べ

「如何した?」

「・・・いや。・・・何だろう。・・・違和感が」

「・・・・・・(納得)。 別にそれほど気にする事じゃないさ。」

「ん・・・ライがそういうなら」

シエルは聞き分けが良くて助かる。

シエルが感じた違和感の正体はライにも解かった。

かと言って早々に問題を生むのも面白くないので黙っておく事にした。

レイハが加わった御陰で順調に図書室の整理は順調に進む。

夕食時全員集合、珍しくカインのナンパもなくレイハの紹介が済み

「呼ぶ時は呼び捨てでいいから、皆。

君の部屋、まだだよな? さき案内するよ」

レイハを二階に案内しようとするライにカインがそさくさと接近し、そっと耳打ち

「彼女はプロだね(ヒソヒソ)」

「プロ?(ひそひそ)」

「プロの秘書だという事さ。

プロの秘書は身も心も尽くして主に仕えるもの(ヒソヒソヒソ)」

「身も心も?(ひそひそ)」

「そっ、彼女の主は君さ。まあ頑張って(ヒソヒソ)」

「な、何をだよ(汗) だからナンパしなかったのか!!?(ひそひそひそ)」

「んー、身内に手を出すと後が大変だからというのもあるけどね(ヒソヒソ)」

「経験者は語る、か?(ひそひそ)」

返ってきた返事はナンパな笑み。

「如何かなさいましたか?」

「んや・・・行こうか。 荷物、持つよ」

皆を残して二人は二階へ。

「階段を境にソッチが女子側。こっちが男側になってる。

プレートが架かって無い部屋を自由に選ぶといいよ」

「この部屋は使われていますが?」

『るぅ』と書かれた部屋の隣に札の無い部屋、『シエル』と乱書された部屋が並び

札の無い部屋を置いて『アルシア』と書かれた部屋

その『るぅ』と『アルシア』の両隣は物があって占領済み。

「アイツ等・・・空き部屋、もう好きに選んで(泣」

幸い部屋数だけは十分にあった。

無事部屋が決った後、ライが生活上の注意を説明し、

その日は何事も無く過ぎていった。


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■ EPISODE 04 ■

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