∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 03 ■
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ライの旅は神殿などで文献を漁り噂を掻き集め、その存在の確認の繰返し。

でも、その全てがデマだったり・・・既に過去のモノとなり朽ちていたり・・・

その中であった数少ない収穫の一つ、焔の魔剣。

それですら直後出会った少女剣士に譲り渡してしまった。

でもその出会いがライを一つの結論に至らせる。

つまり、あるか解らないモノを探し出すより造り出す方が確実と。

その少女剣士と焔の魔剣おかげで求める剣のイメージは既にある。

後はそれを造れる鍛冶師のみ。

『大地の民』と呼ばれる亜人の種族がいる。

鍛冶や細工など物の加工に長けた彼等は気に入った者にはその作品をタダ当然で

造り譲るが、気に入られなけれは例え大金払っても一切何もなし・・・・・・・

という話が実しやかに流れている。 

 

その存在の噂を信じて遥か異国の山奥までやって来た。

で、目の前にはそれらしき一軒家。

「さて、如何したものか・・・・・・」

勢い付いてやって来たまではよかったが・・・・・・対策を考えていなかった。

「・・・そこの小僧」

「・・・・・・・・・・(考」

「最近の若い者は・・・」

ゴンッ

「のあっ!!!」

一撃に振り向けば、いかにもそれらしき髭面に職人気質そうな男。

「我家に何用だ、小僧?」

「えっと〜〜(行き成り遭遇かああああっ!!!)」

まあ、偽っても仕方が無いで直接ぶちまけるしかしょうがない。

「貴方が有能な鍛冶師と聞いてやってきた。俺の剣を造って欲しい。

貴方なら・・・貴方だけが俺の求めるモノを造れる・・・と思う。

礼もそれだけの額を持ってきた。」

正直、品定めされる視線は気持良くない。

「・・・来い、小僧」

どうやら第一関門は無事通過した模様。で、通された先は凡そ武道場?

壁一面、様々な武器が並べられ・・・・・オッサン、鎧を纏い武装してるしー―。

「え〜〜っと」

「ワシと一戦しろ、小僧。そしたら考えてやらん事は・・・ない。」

完全装甲鎧でグレイブ持ちの強者と戦えと。

負け前提で戦うつもりはないが、それでも・・・

「いやはや、何とも・・・参ったね。」

と言いつつも全身武者震いで手持ちの棍を構える。

「その木の棍で戦うつもりか。 其処の武器を使っても構わんぞ。」

「色々魅力的なモノはあるんだけど・・・ちょっとね。」

「・・・ワシも舐められたもの、だっ!!」

斬っ!!!

完全装甲鎧とは思えない踏み込みに、一気に居合を詰められ一刀。

危うく両断されかかった。

「その鎧・・・補助能力付きか」

「ふん、小僧のくせに大した観察力だ。一応名を聞いておこう」

「・・・ライ とだけ言っておく。」

「覚えておこう」

・・・このオッサン、マジで殺すつもりのようです。

「・・・やっぱり其処の武器使っていい?」

「構わんぞ。 ただし、出来たらなっ」

もうそれすらさせて頂けないようです。

一瞬で棍が身代わりに微塵切り。 ライ君大ピンチ。

「・・・なんてなっ」

「っ!!?」

一瞬で加速魔法を発動、死視へ周り込んで一蹴。距離をとり、

「・・・やはり獲物はイキが良くなければならん。」

「獲物・・・野獣を舐めると怪我するぜっ!!」

両者距離を詰め、死合が始ろうとした瞬間。

「何していらっしゃるんですか?」

余りにも場違いな女性の優声に

「「おごあっ!!?」」

両者避ける間も無く正面衝突。そのまま混絡み合い

「あらあら、お客様ならお茶の御用意をしますね」

そこ、台詞が違うと思う。

「・・・・・ふん、合格だ。」

「・・・・・そりゃどうも。」

両者の熱は一気に冷めてしまった。

 

両者テーブルを間に向い合い、そのテーブルの向うには先ほどの

この鍛冶師の娘だろうか、そんな感じ若い女性がニコニコと座り。

「・・・合格と言う事は、俺の剣を鍛えてくれるのか?」

「話は、小僧がその材料を取ってきてからだ。」

「材料・・・出来れば早急にお願いします。」

「それは小僧、お前次第だ(ニヤリ」

意味ある含み笑いが男から漏れる。なんとも否な予感。

「・・・そう言や、アンタの名を聞いていないな。」

「ブラミスだ。それはスイ。 この男はライ、今度剣を造ってやる。」

「あらあら、それはそれは、頑張ってくださいね。」

スイの応援は何故かライに対して

その理由は実に簡単だった。つまりライはこの一軒家の側にある倉庫、

もといダンジョンから剣を鍛えるのに必要なだけの金属インゴットを

取って来なければならないと。

と言うわけで破壊剣を借り、早速突入したのだが・・・

「・・・やべ、地図無くした。」

迷子にはなってない。出口の場所は分っているから。

ただ、サンドゴーレム(領域内では何度破壊されようと一定時間で復活するモノ)

との戦闘で地図を無くし、インゴットが収納されている部屋の場所はわからない。

「・・・ま、イッか。片っ端から見ていけば。」

最下層には守護獣がいるが、其処までいかなくてもインゴットは手に入る

と言われていたのをすっかり忘れ・・・

何時の間にかライの目の前にはロビーとその向うに祭壇があり、

つまり最下層まで着てしまったと。

本当は最下層までアッサリ来れるようにはなっていないのだが・・・(汗

「・・・帰るかな(ポリポリポリ)」

もう遅い。ライの目の前、その守護獣 獅子のような雷狼が具現化。

(我主の眠り、何者も乱す事許さず)

「あ〜〜〜、間違えて来ただけだから俺。直帰ります、ハイ。」

(黙れ盗人。ここで我が滅ぼしてくれる)

「ちょーっと待てぇいっ!!」

ライの制止も聞かず襲い掛かる雷狼。その顎や爪を右へ左へヒラリヒラリと避け

「ちょっと、待て、本当に、間違えた、だけ」

(盗人は皆そう言う。そう、間違っているのは貴様の性根

さあ、観念しろっ!!)

その耳には耳垢でも詰っているのだろうか。一切聞き耳持たず。

「このっ(ぷちっ)」

先ほどの煮え切らない戦闘もありライは躊躇無くキれ、眼が黄金の龍眼に変化

(!!?)

「解らずやああああああああっ!!!」

怒轟っ!!!

(ぐはあっ!!?)

横顔殴りの一撃に吹っ飛ぶ雷狼。

「全く・・・少しは人の話を聞け」

(盗人に負けるとは・・・無念。ああっ我が不甲斐ないばっかりに

このまま我主の墓は荒されて・・・(グジグジグジ))

「こら」

(こうなった以上、我命で償いを)

「聞けっ!!」

(おごあっ!!?)

黄金龍眼の一蹴に再び吹っ飛ぶ雷狼。

「・・・人の話、聞く気になったか?」

(はい・・・)

「俺はインゴットを取りに来たんだけど・・・ある部屋、何所?」

(なんとぉっ、盗人ではないのか!!?)

「・・・何度も違うと言ったぞ。」

(我とした事が・・・)

この雷狼、かなりウッカリさん?

「部屋、知ってるなら案内してくれるとありがたいんだけどね。」

(償いも兼ねて、喜んで案内させていただく。 暫し待たれよ)

ライの目の前、一度霧散し、再び集積すると其処に現れたのは

「君、女の子だったのか・・・」

「む? そうだが何か?」

長い黒髪を首後で纏め巫女らしき古風な服装の活発そうな娘。

声の雰囲気から若い少年かと思ったがまさか娘だっとは、 超意外!!!

「ま、いいや。取り敢えず案内してくれ」

「うむ、では早速・・・そう、我名はリーロン。貴殿の名は?」

「俺の名? ライ、と呼んでくれ。」

「その名、出来る限り覚えておこう。 ロイ殿」

「言われて直間違えるなよ。ライ だ。」

「ぬおぁっ!!? 我とした事がぁっ!!」

注)ヒルデとリーロン、同じ精霊でも随分違い過ぎていないかと疑問があるだろう。

これはヒルデは元人間であり、死後精霊となっているため守護霊に近い。

対しリーロンも元人間ではあるが生きて精獣雷狼と融合、精霊となった。

結果、ヒルデはまれにしか意思発現が出来ないがリーロンは常に意思発現が出来る。

因みに二人の性格が方や穏やか,方やオッチョコチョイなのは元々そうだから。

それ以上でもそれ以下でもありません。 念のため。

 

・・・・・・・・・

早速リーロンの案内でダンジョンの中をを右へウロウロ左へウロウロ

「・・・本当にこの路でいいのか? さっきも通ったぞ」

「大丈夫。ココを左へ行けば・・・」

と自身タップリに言いつつリーロンが行くのは右。

「・・・そっち、右」

「・・・・・・我とした事がぁっ!!」

「それはもうええっちゅうねん・・・(疲」

頭を抱え込む激しいリアクション。当事者でなければサゾカシ楽しいだろうに・・・

何であれコレで完全に迷ってしまった。

「・・・はぁ、一度出口まで戻るか」

「なんと、そんな事ができるのか!?」

「俺の知る限り出口は一つ最上階のみ。単純に階段を探し上がって行けばイイ」

「あははは、で、では参りましょう(汗」

気を取り直しライは再びダンジョンを歩き始めた。

厄介なオマケ(リーロン)を連れて・・・

ただ、無言で歩くライの後をリーロンが申し訳なさそうに付いて歩く。

・・・付いて歩く。 ・・・付いて歩く。 ・・・付いて歩く。

「・・・なあ、リーロン」

「何かな、ライ殿」

最初の元気は何処へやら、今や完全に意気消沈。

これの主人さぞかし苦労したのだろうと予想できてしまう。

「君も忙しいだろうからもう帰ってもいいぞ?」

「心配御無用、ここはチャンと最後まで」

「遠回しに帰れといっているんだぁっ!!!」

「ぐはっ!!?」

これが相手だと最悪感なく遠慮せずに力一杯突っ込める。

「このまま償いもせずに帰してしまっては我の面目が・・・(泣」

「もう既に全く無いと思う。」

「ぐは・・・」

・・・余りもの落胆ぶりに流石に可哀想になってきた。

「まあ、リーロンがいたら賑やかだから・・・いてもいい・・・かな?」

「おお、ライ殿。ありがとう・・・ありがとう・・・(感涙」

泣くほど感謝する事なのだろうか。 まあ何であれ暇になる事はないと。

そのままテクテクと歩き続け・・・当然、警備のサンドゴーレムが出てくると。

すると

「ココは我がっ!!!」

勇ましく跳出すリーロン。雷狼の強さからしてコレは流石に期待大か。

と思った瞬間

「あ〜〜れ〜〜」

「弱ぁっ!!!」

行き成りアッサリと捕縛されてやんの。その上、

「あひいっ、砂が、砂がっ、入ってくるぅっ」

何か服の下は凄い事になっている様で、砂の触手に四肢を絡まれたまま悶える。

どちらかと言えば

「は、腹痛ぇ・・・」

笑いを堪えるライの方がダメージ大きいそう

「い、痛い、痛いいいっ!! コレ以上入らないっ、入ってこないでぇっ!!!」

少女か襲われている場所から安全圏で、やっぱりこのまま放って置いたりすると

カエルポンプが如く破裂しちゃったりするのだろうかと失礼とわかりながら思い

泪目に腹を抱えのたうち回り。

「あぐ、あぐっ、ぐぎぎぎ、げぼぁ!!!」

仰け反り、百舌鳥の早贄が如く股間から貫かれ少女の口から抜ける砂槍。

その状態で服の上から身体をそのスタイルがしっかり判る程締め上げられ

四肢を壊れた人形の様にカクカクと振りながら腰が上下、

口から出入りするモノに泪目顔でアガアガと悶え・・・

「いつまで遊んでいるんだ〜〜、人の姿になった様に元の姿になればいいだろう?」

少女の悶えが停止。自分が精霊だという事を思い出したよう。

ライの目の前、貫かれながら少女の姿は透け霧散し少し離れた処に雷狼が降臨

一瞬、爪一撃でサンドゴーレムが粉砕。

そもその精霊なのだから初めっから単純な物理的攻撃ではダメージは受けないと

(我とした事が恥ずかしい処を見せてしまった・・・ では直に人の姿を)

「んや、別にその姿の方が強いんだから態々人に戻らなくてもいいんじゃない?」

人形態では普通の少女並でも、獣形態になればパンパじゃなく強い。

(いや、それは確かに・・・でも・・・しかし・・・(悩))

「ん? ・・・それより、君の背中乗って行ったら速そうだな。乗ってもイイか?」

(な、なんとおっ!!? そ、そんな・・・)

ライの目の前で繰り広げられる、獣が照れ悩み悶え苦しむ奇々怪々な光景。

「・・・別に嫌なら構わ」

(どうぞっ!!)シタッ

因みに、リーロンにとってこの獣形態が人の裸でいる事に近い感触 

だという事をその主ならぬライが知るはずもない。

雷狼はライを乗せダンジョンの通路を疾駆し

「おおっ、速い速い。 乗り心地も毛の手触りもいいしなぁ・・・」

(あ、余り撫でないで・・・頂きたいと・・・)

「ん?」

(・・・何でも無い)

乙女心(?)は複雑・・・

まあそうゆう事で途中サンドゴーレムとまともに戦いう事無く(雷狼がすれ違い様

一撃で粉砕するため)、あっという間に出口まで戻り宝物庫まで一直線。

宝物庫の中はさらに金属毎に幾つかの部屋に区分され、

そこにあるインゴットもサイズ色々。

「んー、凄いな・・・」

「元々ココは山の遺跡をブラミス殿が倉庫に改装されたものだ。」

「知り合い?」

「まあ、色々と・・・・・・」

口篭もるリーロン。 おっちょこちょいでも人に歴史あり・・・

「・・・まあ、これだけあるとドレを選んだいいか解らないな」

と言いつつ、普通の金属,貴金属は手に取ることすらせずに

選ぶのは中でも量が少ない特殊希少金属の小さ目のインゴット。

小さ目のインゴットでも数になれば、それなりの重量になる。

つまり、下手に欲張れば持ち返る事すら出来ないし少なければ得物は鍛えられない。

本人の望んだ材料を選択して、最適の重量を持って返えれるシステムになっている。

「もう終りですか?」

「まあな。・・・意外にアッサリと終ったな。」

(・・・ちょっと待っていただきたい。最後に)

雷狼へと戻ったリーロンが近くの石柱をがりっと噛み、ライの元へ

ポロッと口から零れたのは一欠けらの牙。

「・・・これは?」

(大した力はないが、ライ殿次第では我以上に化けてくれるだろう。

ライ殿と過ごす事が出来て、主殿と過せたみたいで楽しかった。さらばっ!!)

それだけを言い残し、雷狼はわき目も振らず帰ってしまった。

「何も今別れなくても・・・出口まで付き合えばイイのに・・・」

最後の最後までうっかりな雷狼。 きっと墓の主とやらも・・・


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■ EPISODE 03 ■

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