∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 02 前編 ■
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ライが村に着いた時、戦場がそこにあった。 一方的な殺戮、破壊。

燃え燻り廃墟と化した村。あちらこちらに転がる無残な遺体。

そして倒れた友二人の・・・・・・

「・・・ば・・か・・野郎。 ・・・実践・・するなよ。」

エンジェの方へとのばされたキリトの腕を・・・二人の手をしっかりと握り合わせ

二人から離れた所に俯いたままライは立つ。

「・・・出て来い、貴様等」

誰に対して言ったでもないライの言葉に、周囲の光景がぼやけ、空中から表れる魔導装動鎧十数体。

これらはライが来た時には既にそこにいた。

それを光学迷彩の偏光障壁で姿を隠し、様子を窺がっていたのだろう。

キリト,エンジェ程の者が辺境の地にいたのだから、用心してもなんら不思議ではない。

「何故・・・こんな事をした?」

ライの顔を確認した一体に動揺が走る。 動揺は周囲へも伝播。

「・・・答えろっ!!!」

「貴様ハ ライ=デステェイヤー ダナ?」

内一体、隊長機らしき者の質問。しかしそれに答えてやる義理はない。

「答えろと言っているっ!!!」

怒声を肯定と理解したか、ライを逃さないよう包囲する魔導装動鎧

「貴様ノ逃亡ヲ許シタノト同時ニ総司令軍ハ守護騎士団ニ敗北シ戦力不足ニ陥ッタ。

イヤ、戦力不足ヲ理解シタト言ウベキカ。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「ソノオカゲデ、コノ魔導装動鎧ハ至急完成ヲ求メラレタ訳ダガ。」

「・・・俺の質問の答えになっていないっ!」

「実戦デ、コノ力ヲ試シタダケノ事ダ?」

ドクン

ライの怒りに呼応し、ライの中でソレが目を覚ました。

「我々ノ為ニ犠牲ニナッタ。コレ以上幸福ナ事ハアルマイ?」

ドクン

怒りとソレが結び付き始める。

「我々ニ逆ラッタ愚カ者モイタガ。」

「・・・貴様等、自分を何様だと思ってる。」

「守護騎士団ニ成リ代ワルコノ国ノ英雄ダ」

ドクン

もうライは己の怒りを抑える気はない。

上げた顔の瞳が黄金色の龍眼ヘと変化。見た目は変らずともその身体には力が満ち溢れ、

力に身体が耐えられず変貌を開始。

「ナ、何ダ?」

ライの身体から湧く濃霧がライの姿のみを覆い隠し始めた。

「ソンナデ逃ゲラレルト・・・」

濃霧の中に浮び上がる一つの影は既にライのその影ではなかった。

そして、霧を撒き散らし現れたのは

元のライより一回り大きい、刃状の鎧に身を包んだかのような攻撃的な身体,鋭い顎の龍頭

戦龍鬼・・・戦龍神が其処に降臨

「・・・・・」

魔導装動鎧達は動けない。

ライが変身したこと自体は大して脅威ではない。そのくらいの事をする輩は多少なりもいるからだ。

ただ、気配があまりにも・・・それが彼等に畏怖の念を抱かせた。

「ヘ、変身シタクライデェッ!!!」

恐慌に陥った隊長機が手に持った巨大剣を振り被り、その首目掛けて振り下ろす。

しかし

ガキー―ン

「!!???」

あっさりと折れ、吹き飛ぶ巨大剣の刃。 それでもライ・・だったモノは微動だにしない。

慌て距離を取る隊長機。

「総員、破壊魔弾発射用意。竜スラ殺スコレデ跡形残サズ消エ去レエっ!!!」

轟っ!!!

とてつもない火力による集中砲火。

あまりのも熱量にライだったモノがいる空間自体が白熱し、

距離を取っている魔導装動鎧達の装甲表層すら焼け始めた。

「ハっ・・ハっ・・ハハハハハ。」

安堵の余り漏れる狂笑。 しかし、それも長くは続かない。

急速に縮まり始める光熱球。その光の中から現れたのは

「バ、化ケ物」

クレーター中央に立つ、無傷どころか今の攻撃を全く意に関していない龍神。

それどころか今のこの熱量をこの龍神が吸収してしまったのだ。

現実離れした光景に硬直し動けない魔導装動鎧達の目の前、

ユックリと上げられた龍神の手に生まれる光珠。そして

「失・せ・ろ」

龍神がその手に生れた珠を握りつぶした瞬間、

辺りは光に包まれた。

 

森の街道を地響きを立て走る巨体が一つ。

遁走中、不意に気を失ったフェイを小脇に抱えたゴリアテ。

「一体、如何なっておるんじゃっ!!」

遠方ですら鈍いゴリアテでも解る存在が現れてから戦況はよりいっそう激しくなっているらしく

絶え間無く砲音が聞こえる。

「ん・・・」

「おおっフェイ、気づいたかぁっ」

「ライの・・・ライのところに行かないと!!」

「何を無茶いっとるんじゃ。この音が聞こえんのか? ライなら既に逃げたに違いないわい。」

「違うっ、違うのッ!!」

「ぬあっ!! 行ったらだめじゃっ!!」

とっさにゴリアテは小脇から抜け出したフェイの前に周り込み、立ち往生

フェイは己の第六感に従い 村に行こうとするし、

ゴリアテは冷静に判断した上で村から離れる事を選んでいるのでお互いゆずらない。

そうこう揉めている内に、突然

カッ

「きゃっ!!?」

「ぬをあっ!!?」

村の方向から森の木々を抜けた閃光に一瞬、そこは昼間のように明るくなり・・・

その後に光源の方へ吸い寄せられるような突風が発生

ゴリアテが気づいた時にはフェイは村に向けて疾駆していた。

「ぬあああああっ!! ・・・っ!!?」

村と反対方向から聞こえるヒズメの音。誰かが早馬でやってくる。

慌てて隠れ、そのやって来た者を確認し

「カインっ、アルシアっ!!」

急ブレーキをかける馬。飛び降りて駆けて来る二人。

「他のみんなはっ?」

「キリトとエンジェは村、フェイは今村に向かっとる。ライは・・・解らん」

「・・・村へ行こう。何が起こったのか確認しないと」

「じゃが、この気配は尋常じゃないぞ」

「だからこそ・・・さ。」

同意し頷くアルシア。 二人が事態の把握に同意している以上、

意外に(愚連)軍人気質のゴリアテは渋々ながらも二人に付いていくしかない。

急いだ3人は立ち尽くすフェイに追い付いた。

そして、何故フェイが立ち尽くしているかも理解した。

森のその線から向側へすっぱり何もない。

一段下がった其処は更地状態であり、円形状でかなり広範囲に及んでいるのだろう。

その中心辺り、月光を浴び空に浮く小さく人あらざるものの影が一つ。

「敵か?」

「・・・違うよ。」

答え、夢遊病の様に歩いてくフェイを3人は止める事が出来ない。

武器を構えつつフェイの後についていく。

そして、4人は龍神の姿を確認した。

「・・・・・・」

4人が近づくと共に、龍神はゆっくりと視線を4人の方へ向け

もの悲しげな黄金の龍眼を、何か棒状のものを握っている己の手に視線を戻し

ゆっくりと開いた手から滑り落ち、墓標が如く地に突き刺さる「鬼哭」「光晶槍」

「っ・・・」

「こいつが村をこんなにっ!!」

「・・・これ、ライだよ。」

「・・・ええ、そのようみたいねぇ」

驚愕の事実に気づく女性陣と驚愕し対処出来ない男性陣の目の前、

龍神はゆっくりと地に降りつつその姿を透け入れ替わる様に元のライへ。

「・・・・・・ごめん。」

俯いたままやっと搾り出した一声には哀しみと疲労と・・・己に対する恐怖。

「うん・・・エンジェがね、ありがとうって言ってた。」

「・・・でも俺は誰一人助けられなかったどころか・・・怒りに任せてすべてを」

光珠を握りつぶし周囲が消滅しようとしていく中、我に返り

二人の遺体を消滅から護ろうと手を伸ばし・・・

護り切れたのは二人の形見と僅かに絡み付いた髪だけ。

「なぁ、ライよう。 キリトの死に様はどんなだった?」

「解らない。でも、エンジェの側で・・・」

「そうかぁ。あのむっつり助平め、愛に死におったかぁ・・・」

ゴリアテの声を最後に空間を沈黙が支配した。

虫の声一つしない。何故ならこの辺り一帯は全てが消滅してしまったから。

風の声のみがもの悲しげに響く。

「・・・みんな、王都へ帰れ。 俺に付き合う必要はない。」

「・・・やだよ」

「!!!」

「最初にライが死んじゃった時、私は助けられただけで何も出来なかった。

今も、エンジェ達が死んじゃった時も私、エンジェの声を聞いただけで・・・

私、二度と大事な人を失いたくないっ!!!」

「・・・フェイ」

「ワシャのう、今まで何か大事なものの為に戦ってきたんじゃ。 キリトはそのために死におった。

ワシの大事なものは何かはハッキリと分からんが・・・ライ、お前サンが持っとるのは確かじゃ。

ここでお前さんに従ったらワシが後悔するわい。だから死んでも付いて行くぞぉ。」

「・・・ゴリ・・アテ」

「僕にもプライドというものがあるんだよ。やられっぱなしというのは如何も嫌いでね。

奴等の鼻を飽かしてやらないと僕は先にすすめそうにないんだ。

結局、君に付いて行く事が僕にとってすべての近道なんだね。」

「・・・カイン・・・お前は自分かってだなぁ。」

「ねぇライ、貴方の性格からして村人はたった一人でも生残っていたとしたら

力を解放しなかったと思うのよねぇ。貴方が貴方でいるためには私達が側にいることが一番だと思わない?

でもこの考えって、貴方から周りを護っている事になっちゃうのよねぇ・・・」

「・・・アルシア」

「だから、苦しまないでね、ライ」

「ごめん。ごめんな、フェイ。君も辛いハズなのに・・・」

強きゆえに傷つきこそすれ砕ける事無き心。故に彼の者は苦しみと共にある。

同時に幸も彼の者を見放さない。・・彼の者が彼の者でありつづける限りは。

フェイの胸に頭を抱き締られ、ライは静に慟哭する。

「ライの涙が止まったら、今度は私がライの肩で泣かせてね。」

「ああ・・・」

この日、一つの村が跡形もなく消え去り、国を一つの噂が流れた。

一人の男が一つの村を其処を護ろうとした軍の部隊ごと消滅させた。

ちょっと考えれば出鱈目,無茶だと解るこの噂を、当人は否定しない。

 

 

 

 

 

 

■episode02 死ス者、生ル者(前編)■

OVER...

To be continued Next story...


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■ EPISODE 02 前編 ■

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