∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■ EPISODE 02 後編 ■
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己の感覚を内側に向け、解放する思い。 あの時の怒りを思い出す。

憤怒に内から力が溢れ、肉体がソレに耐えられるよう変貌しようとする。

 

怒レ 殺セ 壊セ 全テヲ破壊シロ

 

破壊神が解き放たれようとする。だがさせない。

 

確かに俺は怒る。しかし壊さない。殺さない。破壊はさせない。

全テヲ破壊シロ

違うっ!! 護れ 護るんだ

破壊シロ

この力は護るためにある

破壊 破壊 破壊 破壊 破壊 破壊 破壊 破壊

大事なモノを護るタメの破壊ダ。

 

だが、変貌はしない。内の破壊神は解き放たせない。

己の身体がバラバラになりそうなのを押さえ込み、 人で在り続けようとする。

全てを否定し全てを認め相反する,矛盾する考えに折り合いを着けようとする。

誰も手出し出来ない戦い。

何者も介入が許されない戦い。

たった一人ぼっちの戦い。

 

その状況がどれくらい続いただろうか。

不意に黄金色の陽炎が散り腕の点滅が止み、前のめりに倒れるライ。

「???」

「大丈夫だよ。ライ、いつものように精神力が尽きちゃっただけだから」

フェイは慌てることなくライに近づき膝枕。

それ以上の事をしないという事は、ゴリアテには何も出来ない。

「二人だけにして」

後は沈黙が支配する中、フェイはライの汗を拭き、その顔を眺めていた。

 

「御帰り、ゴリさん。」

「・・・二人は、ライが何をやっていたのか知っとったのか?」

「ライの性格,感じる気配,そして朝の状況から簡単に想像が付くわぁ」

「それで・・・何で黙っとるんじゃ・・・」

「ライがそれを望んでいるからさ。

だから僕達は何も気づいていし、君は何も見なかった。」

「んなっ・・・」

「今、僕達が出来る事は二人を見守ってあげることぐらいだよ。

さあ寝よう。夜も深い・・・」

 

「私って、嫌な娘だね。私の中にエンジェが死んだのは

ライのせいって言っている私がいるの。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

気絶した人間が何も聞いていない応えないのは百も承知。

女の子が熊のぬいぐるみに愚痴るのと同じ。

「ライのせいじゃないのに・・・ライに出会わなければ

こんな事にはならなかったんじゃないかって・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「私、ライの事、大好きなのに・・・・・・」

不意に

「うっ・・・はぁはぁ・・・」

フェイの膝の上、悪夢に魘され始めたライ。 こうなると目覚めるまでもう少し。

ライの悪夢の内容は知っている。

今やフェイの能力はエンジェの分も合わせて増加。

本来なら二人のでしか成立しなかった微弱な精神感能力も

他者に向ければ夢に介入することぐらい出来なくもない。

 

お前が来なければ死ななかった。

 

お前のせいで我々は死んだ。

 

お前が殺した。

 

俺が殺した?

 

お前が我々を殺した。

 

そう、俺に出会わなければ・・・

 

死など生温い。生きて苦しみ続けろ。

 

ああ、それで亡者の気が晴れるなら・・・いくらでもノタウチ回ってやるさ。

 

1人だけ生残るがいい。

 

!!?

 

仲間を失い、大事な人を失い、それでもお前は生残れ。

 

ま、待てっ、みんなは関係ないだろ。

 

お前が生きているから死ぬ。 お前が殺すんだ。

 

殺す? 俺が殺す・・・なら、俺が死ねばミンナは・・・

 

ライッ、死んじゃ駄目っ!! 生きて、一緒に生きて、私を幸せにして!!

 

・・・・・・ああ、そうだな。・・・わかったよ。

 

俺は皆の無念を背負って生きる。皆の分まで幸せになる。

 

もう誰も死なせない。 死なせて・・・たまるか。

 

うん、その調子で無理しないように頑張ってね。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ライの寝息が安定した。 もう大丈夫 少なくても当分の間は。

フェイはライの頭をそっと地面に戻し、物陰に隠れ様子を覗う。

「ぐっ・・・ぅぅ」

ゆっくりと立ち上がり、そして気合一発

「う、うおおおおおおおおおっ!!! はぁ、はぁ、はぁ」

壮絶な戦叫。 そうしなければ動き出せない程疲労しきって・・・

そのままフラフラと危ない足取りで歩き出す。

後はライが野営地に戻る前にフェイが帰っていれば何の問題もない。

そして、急がなくてもフェイより先にライが帰ってくることもない。

空が白み始めた頃、ライは戻って来た。そのまま

フラフラフラ、バタッ

「・・・・z・・・z・・・z・・・」

寝床に倒れ込み、爆睡。

それと同時に全員の目がパッチリと開き確認、そのまま皆も・・・z・・・

 


「オラオラオラ、ミンナ朝だっ!! 起きろぅっ!!」

ライの雄叫びが森の静寂を打ち破る。 

とても早朝前に疲労困憊で帰ってきた人間とは思えない。

「ふにぃ、何で朝は元気なのぉ?」

「朝元気にしないでいつ元気にするんだ(グッ)」

空へ撃ち出される拳。 ・・・強情。でも、空元気でも元気。

だから皆、彼の者の苦しみを知りつつも平気な顔が出来る。

今日もいつもと変らない一日が始まった。


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■ EPISODE 02 後編 ■

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