∴SHRINE∴

〜或る騎士団の日常〜
■ 仔猫 ■
少女シエル-そして
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■ nao様 ■





まだ子供の彼女にとって、彼女の母親の美しい漆黒の先の尖った猫耳と長い尻尾は誇りであり憧れだった。

それに対し彼女の猫耳は、いかにもまだ子供といった先が丸く垂れた子猫の耳。

その上、追い討ちを掛けるように彼女の外見も少年と差ほど変らない。普通に服を着ている限り。

その彼女を母親はこう慰めていた


「大丈夫、私も子供の時は貴方みたいだったから (微笑)」 と。


そう、彼女も彼女の母親も猫人。しかも彼女の母親は若くて落着いた美人の上に未亡人。

彼女の父親は彼女の物心ついた頃に流行り病で病死し、今はもう顔も思い出す事もない。

彼女達は深森の色々な種の獣人が住む村で狩人として暮らしていた。 その日まで

いつもの様に村の子供達と遊ぶことなく、彼女は母親の狩の手伝い。

別に、村の他の子に苛められている訳ではない。血のせいか単に好きなだけ、狩が。

例え苛められても、その敏捷力でやり返す。 それはさて置き、

夕方、二人はに持って帰れるだけの獲物を狩り終え、森の中獲物を担いで村へと向っていた。

その時、村の方から漂う きな臭い香り

「!!? お母さん、これ・・・」

「ココにいて。私が日が暮れても戻ってこなかったら隣村まで逃げなさい。」

あっという間に尻尾を立てながら森の影に隠れてしまう母親。ソレに不吉な予感を覚える少女。

元歴戦の冒険者である母親に対してそんな心配は無用のはずなのに。

日が暮れ、少女は言いつけを破り、村の方 明るい方へ走り始めた。


「・・・・・・・・」


少女が見たものは、焼き討ちされた村,惨殺され、人形の様に転がる顔見知りの大人達,青年達

犯され汚され尽くした後に殺された乙女達。

余りにも現実離れしたその光景に少女の感覚が麻痺し、まだ炎が燻る廃墟の中を茫然と歩く。

そして、少女はよりによって最も見付けたくないモノを見付けてしまった。


「・・・うにゃぁ、お母さん? お母さん、お母さん起きて、起きてよう。」


ユッサユッサ、ユッサユッサ


犯され汚され尽くし殺された母親を、少女は自分の身体が血や変な液体で汚れるのも構わずに揺する。

しかし、母親 だった物は虚ろに開ききった瞳孔でされるがまま。

痴呆の様に母親の遺体を抱き締め、少しでもその温もりを脱がさないようにする少女に影が掛る。

敵。その姿を見た少女に感情が戻り始め、 興奮で尻尾が立ち、膨らんだ。


「・・・ぅ、ぅぉぉぉおおおおおおお あうっ!!?」


結局、少女は抵抗する間もなく横殴りの一撃に昏倒・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


ふぐっ、ふぐぐううううぅぅぅ


少女は悪夢から覚めた。しかし、現実も悪夢と差して変らない。

天井から吊るされた鎖に両手を縛られ、口にギャクを嵌められ、

身体を立った状態で改造狼男達に前後から押し潰されながら犯されているという現実も。


ふぅっ、ふう、うぅ、ううう


普通のモノより細いが倍の長さがあり、幹に幾つも小珠を仕込まれ亀頭が尖った逸物が

少女の未熟な二つ孔を柔壁を掻き乱しながら何度となく 幼い故に低い位置にある奥底を突き上げていた。

折角、瞳に戻った意思の光も強烈な快感の責苦に虚ろになり、夢に興奮して発った尻尾も萎える。

こうやって少女は何日も休まず責め立て続けられていた。

内臓を貫く衝撃のせいで、少女のカケナシの体力は回復しない。させない。

連中はこのように娘の身体に快感を仕込み、性奴を作る。

不意に闇から現れた覆面男に、改造狼男達に動きが止まった。


「外せ。・・・何か言ってみろ、小娘。」


覆面男の指示に少女の口が自由になった。そして、少女は


「こ・・・こぉろすうぅぅぅ」


目を回しながらも覆面男を威嚇。 凄まじいまでの少女の精神力。普通なら2日と待たずに堕ちるのに。

だからこそ、この少女は上玉,磨けば好い性奴になる。その上、稀少種の完全漆黒耳尻尾の猫人。


「ふん。 やれ」


覆面男の呆れ混じりの合図に改造狼男達の蹂躙が再開


ズンッ、ズズン、ズンズン、ズンン、ズッン、


「い゛っ! ギッ! んがああああっ!!」


少女は自分の身体を最も敏感な処で支える事を強要され、

儚乳ごと身体を押し突撫されながら身体の中を擦られる。

それに少女は、ただ顔を涙と涎でグシャグシャにし、

改造狼男達の身体の間から食み出した脚を力なく揺らしながら悶絶するだけ。

そして、何十回目かの射精。 勢いよく 尖った亀頭が少女の柔奥に打ち込まれ


ズンン!! ヅッピッ、ブシュ、ブシュルルルゥゥ


「ミャッ!!! ミ、ミャァァァー・・・・・・」


そのめり込んだ亀頭から少女の中に大量の魔の粘液が撃込まれて、

身体を貫く衝撃に少女は狭い中、身体を退け反らし・・・・・か細い悲鳴を残して気絶。

魔の粘液、本物ではなく媚薬混じりの蛋白質水溶液。

それが収まりきれず、痙攣する少女の脚を伝い、床に液溜りを作った。

気を失おうと、これをお腹が一杯になり溢れてもなお、撃込まれ続ける。 精神が壊れるまで


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


ふしゅぅぅぅ こっ、りょしゅぅぅ


三角木馬の上、拘束された少女の口のギャクの穴から まだ怨の声が漏れる。

数日間休みなく責め続けられ改造狼男達が先に延びても、まだ少女は壊れずにいた。

否、思考ループが殺意のみになった時点で既に壊れていると言えるかもしれない。


・・・王都守護騎士団だ。抵抗すれば斬るッ

怒声,破壊音に混じり、救いの声が聞こえた。しかし、少女にソレを認識する精神力は・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


「っ!!? ・・・も、もう大丈夫よ。」


少女を最初に見付けた女神官戦士はその壮絶な状況に一瞬引きながらも縛を解き、少女を自由に


「・・・・・・・・・・・・・・」


「え? 何?」


「・・・殺すっ!!」


カンッ!!


瞬間、女神官戦士の首があった空間の空気を牙が噛んだ。

そして、少女はそのまま女神官戦士に抱き付くように昏倒。突然激しい動作の結果、それは当然だった。


王都、城,城下町を囲む様に総司令部,王都守護騎士団駐屯地,神殿が配置されている。

そして何故か、駐屯地と神殿の間には王都守護騎士団と教団が経営する孤児院・・・

午前中、駐屯地執務室 騎士団長オーディスの元に一人の青年がやって来た。

新米騎士ライ=デステェイヤー しかし、その腕は古参騎士に勝らぬとも劣らない。


「団長さん、この間の人身売買の報告書 出来たぜ。」


この間の人身売買。

城下町のある屋敷にまるでコレクターが集めたかの様に様々な種族の少年少女が囚われ、

そこから多くの少年少女達がある場所へ運ばれて行った件。

その子達の大半の故郷はもう既に存在しない。まるで、何者かに殲滅されたかのように

一応、その屋敷の所有者は分かってはいるが・・・


「分厚い方が保存用、薄っぺらい方は総司令部提出用だ」


保存用は総司令部提出用の二倍近くの分厚さ。

勿論、保存用の中には容易に逮捕できない主犯,人の流れ等がシッカリと書かれている。


「うむ。御苦労ついでに今から孤児院任務に行ってもらいたい」


孤児院任務・・・ようするにお子様達の面倒を見て来いということ。王都守護騎士団中最も不人気任務。


「いいですけどね・・・・何でウチ(王都守護騎士団)が孤児院をキョ−ド−経営してるんですか?」


「それは・・・(クワッ)我々が勇者だからだぁ!!!」


ドー−−−−−−−ン


「・・・・・・・・・・・・・・」


「勇者たるものカッコ良くなければならないッ!!」


ドー−−−−−−−ン


「・・・・・任務、行ってきや〜〜〜す」


「カッコ良いということは子供にモテルということっ!!!


・・・・・・・・・(鬱陶しいので省略)・・・・・・・・・・・


「 わぁかるかあああああぁぁ、ライッ!!! ・・・いないではないか。ライはどこへ行った?」


「私と入れ替わりに出て行きましたけど。」


答えたのは清楚な法衣姿の美女。最高司祭が一人、フェフ。

中年のオジ様オーディスと同世代のはずなのだが、それよりも若くも老いてる様にも見える。


「ぬううぅぅ、最近の若い者は落着いて話を聞くことをしない。」


「うふふふ、貴方のお話は熱いですから」


まるで灼熱の太陽のオーディスに対し、穏やかな春風のフェフ


「・・・で、今日は何の御用かね、最高司祭フェフ。・・・それとも」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


「・・・z・・・んがぁ・・・z・・・」


ガキどもを適当にあしらいながらヤル事を適当にさっさと済ませ、

青空の下、孤児院の屋根の上のベストポイントで、タオルを顔の上に乗せサボっていた。

不意に、そのライのタオルを何者かが奪う。 


「・・ぅ・・・返せェ・・・」


さ迷う手が空を掻く。寝惚けているのと逆光で横にいるのが子供という事しかわからない。


クスクス


その有様を笑うだけで返す様子は全くない。それなら


ぐいっ


「みゃっ!!!?」


「・・・お前も寝ろ。」


半分自分の身体の上に重なり胸の上にその子の頭が来る様に引張り倒し、逃げられないよう抱締める。

奥義 チャイルドブレイク。どんな子供も逃がさず、優しい抱擁と鼓動で大人しくしまう恐るべき奥義

・・・というほど大層でもないけど。


ジタバタジタバタ


ウケケケケケ、寝ぇ〜ムレ、ネぇ〜むれ


ジタバタジ・・タ・・・・バ・・・・・・タ・・・・・・・


初めは元気良くもがいていた子も次第に大人しくなり


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


カプッ!!!


「・・・カプッぅ?」

 


保護された直後、カーテンで暗い部屋で一人 目を覚ました少女は己の状況が理解できなかった。

すぐ自分が唯一の肉親と故郷を失いボロボロにされた事を思い出すが、その事に対し何の感慨も湧かない。

ただ、胸の奥にポッカリと諦めに似た虚無があるだけ。

数日後、保護された直後ほとんど動けなかった少女の身体は、

媚薬の影響で風邪のような熱っぽさと気だるさを残しながらもほどほどに動ける様になる。

本人は知らないが、この媚薬の影響は時が解決するのを待つしかない。

少女自身は暇、そうなるとする事は只一つ。本能のおもむくまま自分にとって最も快適な場所を探す事。

そして辿り着いたのは屋根の上のそのポイントだった。

しかし、その日に限り既に先客。気持良さそうに居眠りするその青年を少女は初めて見る。

場所を取られた事が癪なので、少女は脇に屈み その顔の上に置いてある光除けのタオルを取ってみた。


「・・ぅ・・・返せェ・・・」


突然の光に苦しみ悶える様子が面白い。そのまま嫌がらせしてやろうと顔の上に手を伸ばした瞬間


ぐいっ


「みゃっ!!!?」


「・・・お前も寝ろ。」


あっという間に手を取られ引張り倒されると、優しく抱締められてしまった。


ジタバタジタバタ


一瞬、男に対する恐怖で暴れる、が、頭をシッカリと青年の胸に固定され脱出不可能。

しかし、その温もりと鼓動が恐怖を溶解させ、心穏やかにさせていく。


ジタバタジ・・タ・・・・バ・・・・・・タ・・・・・・・


そして抵抗する気も失せ、驚愕を恍惚の表情に変え 抱締められるがまま。

その心を反映するようにショートパンツの尻尾穴から覗く毛並みのイイ漆黒の尾が踊り始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・


なぜか、目の前にある青年の手に無償に齧り付きたくなる少女。


・・・・・・・・・・


カプッ!!!


「・・・カプッぅ?」


カミカミアムアムアム


恍惚の表情を浮かべつつ青年の手に齧り付く少女。傍目では青年の手が美味い様にしか見えない。


「ぉーーーーーっ。 痛い、痛いッ!! やめんか、クソガキィッ。・・・お願いします止めて下さい(泣)」


んあ


「あーーーー、跡に血が滲んでるよ。普通、こんなに力一杯噛むかぁ?・・・てっ」


クリッとしたエメラルドブルーの獣瞳で八重歯を覗かせ首を傾げる子猫さながらの可愛い少女を見て硬直


「・・(か、可愛いじゃないか・・・って、俺、少年相手になんてことをぉ。


も、もしかして俺ってショタ、ボーイズラブだったのかああああぁっ!!!)」


三角の猫耳がピクピクと反応し、少女の後ろで尻尾が揺れる。


「・・・猫耳と尻尾? 少年、猫人なのか? 珍しいな。俺、初めて在ったよ。」


「少年っていうな。シエルだ。 ・・・それと私の耳に触るな。」


フニフニフニ、ピタッ


「・・・俺は、ライ=デステェイヤー。ライと呼んでくれ 。 で、何の用?」


「ココ、私の場所。」


「んなモノ、早い者勝ちだ。 隣で寝ろよ。んじゃ。」


ゴロンと横になり、再び眠り始めるライ。


「んにゃぁ・・・(泣)。・・・(悩)。・・・(考)。」


仕方がないのでシエルもライの横でいつものように横に丸まる。


「・・・・お休み。・・・・・z・・・z・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


「・・・くぅ〜〜〜〜っ(伸)。さてと、夕飯の手伝いしてサッサと帰るかぁ」


キッカリ一定時間居眠りしたライは伸びをしつつ独り言。


「ん。・・・帰る? どこへ?」


隣で寝ていたシエルも目を覚まし、身体を起こして質問。元々眠りが浅いのか、敏感なのか・・・。


「俺、守護騎士団の任務で来てるから。」


「ライが騎士? ・・・余り強そうに見えない。ライは強いのか?」


「(ボリボリ)弱けりゃ守護騎士団にはいないさ。まあ、あそこには俺より強い奴がゴロゴロいるけど・・」


と言いながら脳裏に浮ぶ王都守護騎士団の面々

大剣の団長に始り、燻銀の剣士、大戦斧のマッチョマン、陽気な双剣戦士、軟派なハルバード使い・・・等々々

その戦闘方法は千差万別。しかし皆が皆、一騎当千、心に熱いものを持つ勇者達(団長談♪)。


「・・・いいのか、仕事?」


「をっと!!」


慌てて台所に向うライとその後をテトテトテトと追っ掛けるシエル。

そのまま作業を始めたライを シエルは台所の隅、椅子に背凭れを前で座り見物。ソコへ院長もやって来た。


「あら? あらあらあら、誰にも懐かなかったシエルちゃんが・・・一体どんな事をしたの、ライ君(笑)」


「別に何も。・・・ん!!? 院長さん、今『君』じゃなく『ちゃん』って」


「そうですよ。シエルちゃん、女の子ですよ。」


内心、自分が正常であった事に安堵しつつ、

シエルに対して罪悪感・・・と哀れみ(同年代の子より背は高いが肉付は・・・で在る事に対して)。

当のシエルは既に椅子の上で寝ていた。半病人なので仕方ないのだが。


「・・・・・・・あ〜〜、ん〜〜。院長さん、子供達にも家事の手伝いさせません?」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


夕食後やる事を済ませたので帰ろうとするライとその後を追っかけるシエル。


「・・・さっきは御免な。」


「? ん・・・・・」


ライが謝りつつ頭をグリグリと撫で、シエルはソレに気持良さそうに目を瞑り応える。


「じゃ、また今度、次の機会にな。」


「あっ・・・・」


そのまま帰るライを、シエルは何も言えず捨てられた子猫の表情で見送った・・・


その二日後、駐屯地執務室にてオーディスとライの対決


「んな、滅茶苦茶なっ!!!! 一日置きにガキの面倒なんて見れるかぁ!!!」


日常任務、王都巡回,警護等の代りに孤児院任務せよとの突然の御達し。


「子供にモテルのも勇者の特権。それに、これは院長からの正式依頼であり命令なのだよ。」


「くっ・・・それならせめて非番をもう少し増せ。それがダメなら俺は傭兵に戻る。」


ライの非番は他の面子より少ない。これはオーディスがライに期待し過ぎ、やらせ過ぎなだけなのだが。


「ぬううううぅぅぅ、し、仕方ない。認めよう。(愚痴グチぐちグチ)」


「(ニヤッ)交渉成立。んじゃ、孤児院行って来る。」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


流れる雲の下、昼寝のベストポイント。シエルが丸まって寝ていた。


ピクッ、ピクピクピク


その気配に猫耳が反応。しかし本人は無視、寝たふり。


「よう、また来たぜ。 隣、空いているか?」


片目でライを確認して再び不貞寝。拗ねて、まるで勝手にしろと言わんばかりに。


「今日から一日置きにココに来る事になった。・・・ヨロシクな。」


シエル本人は無視のまま。でも、尻尾は嬉しそうに踊る。


「(喜んでいるのか? ・・・素直じゃないなぁ。)・・・フッ(微笑)」


同時に、ライの作戦『家事を子供達に手伝わせて、いずれは自分が堂々とサボれる様にしちゃおう』の幕は

切って落とされた・・・


・・・・・・・・・・


「・・・何だかなァ。こんな事なら最初っからさせりゃよかった。」


子供は親(仮)の背を見て育つ。

細かく指示するまでもなく子供達は良く動いた・・・ライよりも上手ではないかと思えるくらい。

こうして、ミッション『家事を子供達に手伝わせて、いずれは自分が堂々とサボれる様にしちゃおう』の幕は

呆気無く閉じられた。


でも、ライは一日置きの孤児院任務と割増の非番は撤回していなかったりする。・・・チャッカリ者め。

とは言え、ライは一応孤児院には顔を出し、子供達に許可を取ってクギをさしてからサボっている。

そして、そのままサボるかというとそう言うわけでもなく時間を自分のスキルアップの為に使っていた。

それを、全快したシエルは追っ掛けまわし、脇で何かをするわけでもなく見物。

 


本日は雨、孤児院の一室。

ライはテーブルの上に書物や魔導書を広げて唸り、その向い側でシエルはテーブルに顎を乗せて見物。


「・・・なあシエル、俺が唸っているのを見るのはそんなにおもしろいか?」


「全然。・・・ライは何をやっているんだ?」


「奥義魔法の開発。・・・シエルも魔導の勉強するか? 俺はあんまり教えてやれないけど。」


「その程度自分で読める。けど、性に合わなそうだからいい。・・・で、奥義って?」


ちなみに、シエルは母親から読み書きを一通り教わり、ちゃんと一人で本を読めたりする。


「ん〜〜、例えるなら、時間を止めてその間に敵を蛸殴りにってな感じかな。

実際に時間を止める訳じゃなくて、俺自身がソレだけ加速するんだけど・・・」


会話に色気もヘッタクリもない、まるで兄弟のような雰囲気。

勉強する兄ライとそれを見守る弟・・・じゃなくて妹シエル。


「・・・修行に付き合っているんだから勉強も付き合えば?」


「!!? ・・・私、ライの後ろでやってた」


「俺は、仮にも守護騎士な訳だしな。猫人程とは言えないが、それなりに気配を感じ取る力はあるさ。

・・・雨止んだな。 ・・・猫人って動態視力が凄いんだろ? チョイ付き合ってくれ。」


そして孤児院外れの空き地、オーディス似顔絵付標的等身大藁人形に離れてライが立ち、

失敗して良いようにシエルがさらに離れて見物。


「シエルの目で見て、一瞬で俺が消えてアレ(オーディス人形)が粉砕されればいいんだ」


精神集中、詠唱開始。ライの周りに光る魔方陣が走り始める。それをじっと見守るシエル・・・


・・・・・・・・・・

詠唱し始め随分経つが、さっきからライのを取り囲む立体魔方陣の呪文パターンの数が増えたり減ったり。


クアアアアアアァァ(涙)


額に汗を滲ませ精神集中し続けるライと 集中が切れ八重歯剥き出しで大欠伸をしてしまったシエル


・・・・・・・・・・


不意に、


「・・・いくぞっ!!!」


ライが戦叫を上げ、魔法発動。


瞬間、シエルは見たっ!!!


チュドオオオオオオォォォン↑・・・・・・ひゅるるるるる↓、べチャ


・・・

○ャラクテカマグナムをモロに食らったかのように、爆発にライがぶっ飛ばされ無様に地面に叩き着けられるのを。


クアアアァァ(欠伸) テトテトテトテトテトテトテトテト ・・・ツンツン


「・・・で、成功?」


「つ、つつくなああぁぁぁぁ。 こ、れが、成功に、見える、のかぁ?」


「見えな〜〜いニャァ〜♪」


「し、しかし、俺は、諦めない。 いつか、いつの日かぁならずううぅぅぅ・・・カク」


要すると、超加速までは出来たが数歩進んだ所で魔力が尽き、音速突破とライに退かれた空気が

元に戻るのに伴う爆発が発生。

ライはモロにその爆発に巻き込まれた。 要しなくても大失敗。

奥義魔法は当分完成しそうにないな とシエルはノびたライの背中の上に腰掛けて思った。

 

突然、1週間以上ライが孤児院に来なくなった。

ライが騎士である以上、日常任務より特務を優先するためコレは仕方がないことなのだが。

ライがいなくても、もう孤児院業務には全く問題ない。それでも懐いた子供達は寂しがる。特に・・・

帽子を深く被る事で何時の間にか三角になった猫耳を、ボロ布をマント状にする事で尻尾を隠し

シエルは朝一番で王都守護騎士団駐屯地行き巡回馬車にコッソリ飛び乗り、半刻掛けてやって来た。

そして駐屯地正面門、衛兵と怪しい格好のシエルが対峙


「・・・・・・(汗)」


「・・・・・・(悩) ・・・あの」


「(びくっ)はいぃ?」


「ライに会いたい。」


「ライ? それは、騎士ライ=デステェイヤーですか。」


王都守護騎士団でライと呼ばれる人は一人しかいない。


「・・・多分、そのライ(悩)。」


「き、君は?」


「・・・シエル」


シエルは帽子を取り、猫耳をピクと反応させる。その様子に衛兵はその少年 シエルを通しても問題ないと判断


「騎士ライは本日非番で、まだ兵舎の自室に居られるでしょう。」


シエルはその衛兵に兵舎のライの自室を教わり、一人そこへ向った。

 

その部屋の前、確かにドアからライの匂いがする。

コンコンコン

・・・・・・

返事はないが、部屋の中に気配はあった。居留守を使っているのではなく気付いていない感じ。

ガチャ

鍵は掛っていなかった。そのままドアを開け、中を覗いてみる。

手前の隅に、無造作に置かれ 使い終わったばっかりの汚れを見せる防具等。

奥隅には、書類,本山積みの机。使う部分だけちゃんと片付いていた。

そして、刃だけでシエルの背丈と大差ない大剣が立掛けられ こんもりと膨らみのあるベット。

部屋の主はその中。

テトテトテトテトテト ジ〜〜〜〜〜


「・・・z・・・z・・・z・・・」


疲労困憊 完全熟睡 マヌケ面で寝ていた。

ユッサユッサユッサ


「起きろ、起きろライ。朝だぞ。」


「・・・・も、う少し・・・明け方・・までやってた・・んだから・・・z・・・」


揺すっているのが居る筈のないシエルだという事にすら気付かない撃沈ぶり。


「むぅぅぅ・・・にゃぁ(困)」

 


最近のライの特務は 専ら、ある人身売買組織関連。

王国は一応人身売買を認めていない。しかし、一部の権力者はその悪行を秘密裏に行う。

そもそも、ライには人を商品として扱うという考え自体が理解できない したくもない。

商品として人(の子供)を手に入れるため村を丸ごと壊滅させるなんて事は正気を疑う。 それはさて置き

その追い込みのため、不眠不休で動き回っていたライはある程度ケリが着いたその日の明け方ついにリミットオーバー

取り敢えず、ある屋敷の強制調査申請書だけを書いて撃沈。

・・・・・・誰かが起こしに来たヨウナ気がスルナァ

そう思いながら、身体に掛る甘い香りと柔かな重みに より深い眠りへと誘われて行った。

で、昼過ぎ遅く ライが目を覚ますと


「うぅ〜〜〜、よ〜く寝たなぁ・・・・・・・・・・・・・って、ナンでお前がココにいる?」


自分の布団 お腹の上、シエルが丸まって気持良さそうに寝ていた。

ン〜〜〜〜、クアアアァァ


「・・・ライ、お腹空いた。」


「お腹空いた♪ じゃないっ!!! だから、何でお前がココにいるんだよっ?」


「ライが来ないから。 お腹空いた、お腹空いたぁ。」


「お腹空いたばっかり言うなっ!! おまえは子供か?子供かあぁ? この、この、このぉ!!!」


「ニャッ!!? 私は子供だ。ご飯、ご飯〜〜。ニャァッ、ニャァァァ〜〜」


ナンだカンだ言いつつ仲良くベットの上で じゃれる二人。

ライがシエルを布団に押し付け、シエルはライにケリを食らわして逃げると後から細腕を回して首を締め、

ライはシエルをベットに背負い投げ、シエルは尻尾でライに目潰し・・・・・・・

コンコンコン

そこへ来訪者。しかし、じゃれている二人は気付いていない


「・・・入るぞ、ライ?」


ガチャ


「・・・・・・・」


その来訪者、燻銀の剣士が見たモノは、ベットの上でライがシエルを仰向けに組伏した処。


「・・・なんだよ、その汚物を見るような目つきは。」


「・・・私とお前の友情もこれまでだ。 しかし安心しろ。その事を任務に影響はさせない。」


ガチャ

そして彼は行ってしまった。 ライは考える 彼は一体何を言いたかったのか。

ヒント:シエルの少年のような容姿と珍しい漆黒猫耳猫尻尾。


「・・シエル、チャンと飯に連れて行ってやるから俺がシャワー浴びてくるまで大人しく部屋で待ってろ。

(後、奴の誤解も解いておかないとな)」


数少ない着替えを引っ掴むと部屋を飛び出し、

慌てて追っ掛けて、ようやく追い付いた


「ちょっと待てよ。」


「わ、私に触るなッ(怯)」


「ん〜〜、如何したかぁ?」


二人が揉めている所に、更に大戦斧のマッチョマンまでやってきてしまった。


「ライ、貴様には失望したぞ。少年をかどわかした挙句、あんな、あんな猫耳をコスプレさせるとは!!!」


「なにいいいいいぃぃぃぃ(驚)!!!!??」


「・・・ふぅ、あれは彼女の自前だ。」


「なぬっ!!? そ、それは本当か?」


「それをシエル・・・あの娘の前で言ってみろよ。泣く、というより怒るかな。」


正解:言われなれているので泣きも怒りもしません。多少拗ねますが。


「がはははは、何がなんだかさっぱりわからんぞ。うむ、真相を確かめにライの部屋に行ってみるかな?」


がすぅ


「確かめなくていい。絶対来るなっ!!!」


ライの渾身の一撃を鳩尾に食らっても大戦斧筋肉男はケロッしたまま全然応えていない。


「私も、猫の娘に謝りに行かねば。」


と言いつつ好奇心に目を輝かせる燻銀の剣士


「いい加減にしろっ!!!」


どすぅ


ライの渾身の一撃を後頭部に食らい昏倒する燻銀の剣士

結局、いずれシエルとゆっくり会わせてやることを条件に二人を大人しくさせ、ライはシャワーを浴びに行った・・・

一人ライの部屋に残されたシエルは部屋の探索を開始。先ずは防具


「お、重い。汚い。臭い。」


ガントレット一方だけでも片手で持つには重く、プレートアーマーはコレを着けて闘うなんて事は想像も着かない。


「!!?」


タガー発見。シエルに丁度好いサイズで手にしっくりと馴染む上、あんまり使った痕跡はない。

それを気に入ったので、ライが戻ってきたら貰えるよう頼んでみることを考える。

「・・・何コレ?」

ゴンゴン

大剣、鞘ナシ諸刃で柄の長い物。切るのではなく、押し潰して斬るタイプ。

シエルにとって、刃だけでもシエルの背と同じ長さのソレは武器というにはあまりにも大雑把すぎた。


「・・・・・・・」


机の上、山と積まれた書類や本にはコメントのしようがない。

それでも机中央、椅子の前だけはチャンと使える様に成っていた。ソコに置かれた一束の書類。

書類を手に取り読み始めたシエルの顔が先へ読むに連れ無表情に 尻尾が興奮で膨らんでいく。

内容がシエルの身に起こった事ほとんどそのままだったのだ。

そして、その人身売買組織の大本、主犯の王都にある屋敷の強制調査申請書。

側に色々書き込みされた地図もある。


「お母さんの・・・仇っ!!!」


シエルは猫耳猫尻尾を隠すとタガーを隠し持ち、部屋を飛び出した。仇を討つため。

それがシエルの仇とも限らないのに。・・・実際、奇しくもシエルの仇だったのだが。


・・・・・・・・・・・


「ふふん♪、さっぱりしたよ。んじゃ、飯食いに行こうか。・・・シエル?」


いない。ベットの下にもいない。

聞き分けの良いシエルの性格からしてベットの上で寝ていそうなのだが。

そして、部屋の様子が何か変。


・・・・・・・・


・・・・


読み汚されたソレ関連の書類と地図、紛失したタガー。考えられる可能性は一つ。


「迂闊なっ!!」


そんな代物を置きっぱなしにした自分に対して。復讐に囚われ何も考えず飛び出したシエルに対して。


・・・・・・・・


駐屯地正面門、衛兵は行き成り後から怒鳴られた。


「をいっ、ココを猫人の子供がこなかったか?」


「は、はい。その少年なら凄い形相で帰っていきました。」


「・・・・・・があああああああああああっ!!」


お前もかあああああああああっ!!!

突然、ライは事態に頭を掻き毟り激走。多分確実になるであろう大剣を取りに。

一人事態に付いて行けず、呆気に取られた衛兵だけが取り残された。


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


屋敷の一室、その男は苛立っていた。

全て奪われたコレクション。削られていく戦力。自分の思い通りにいかない状況に。

コンコン

そこへ、その男の部下がやって来た。


「失礼します、坊ちゃん。」


「坊ちゃんというなっ!! 御主人様かマスターと呼べといっているだろう? で、何のようだ?」


「侵入者を捕まえました。 猫人の小娘、坊ちゃんの好みの漆黒猫耳尻尾、レアモノです。」


「へぇ、早速連れて来い。」


・・・・・・・・・・


「くっくっくっ、あの時のレアモノが戻って来るなんて、僕はついている(邪笑)」


「フウウウウウっ、お母さんの仇!!!」


無傷だが、縄を掛けられ束縛されたシエルが暴れる。だが、抑え付けられ満足に動けない。


「お母さん?・・・ああ、あの時の雌猫か。


「容姿も具合も良かったし僕のペットにしてやるっていったら唾かけたんだよね。思わずヤッちゃったよ。

そうかぁ、子持ちだったのかぁ。始末して正解だったね。」


「がああああああああああっ、殺す、殺すッ、殺すううううう」


牙剥き出しで暴れる。が、その牙は届かない。


「・・・放していいよ。」


「!!? しかし、坊ちゃん・・・」


「所詮、獣。こういうのはマスターがシッカリと調教しないとね。コレ、刃物もってただろ?返しやって。」


「・・・分かりました。」


そして、部屋にはその男とシエルだけになった。


「かかっておいで、子猫チャン。僕が直々に調教してやろう。」


長剣を玩びながら喋る男にシエルが襲いかかる。しかし


「ははは、僕はこっちだよ。 おっと、惜しかったね。もうちょっとだったのに。

これでも僕は王都守護騎士団騎士候補だっったんだよ。それをあのバカ団長は・・・

やっぱり、才能溢れる人間は愚人に理解されない運命なんだね。」


ペラペラと喋る男に、シエルのタガーは全く掠りもしなかった。


「ははは、どうした。」


びしっ


「あぐっ!!」


ばしっ


「ぎっっ!!」


容赦なく長剣の腹がシエルの腕を打った。それでもシエルはタガーを離さない。


「やっぱり、獣だね。そんな単調な攻撃が・・・・」


サクッ カンッ


「ば〜〜〜か、ニャァ(笑)」


してやったり。 シエルの投げたタガーが男の頬を掠め、壁に刺さった。


ぽた、ぽたたっ


床に滴り流れる鮮血に男の表情が変っていく。


「父さんにも殴られた事のない僕に傷をつけた?・・獣のくせに、獣のくせにいいいいいいいいいぃぃっ」


「!!!?」


ドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカ
ドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッ


「け、獣のくせに、逆らうから、こうなる」


「・・・けふっ・・・・・ぅぁぁ・・・」


出鱈目な暴力に茫然自失のシエルを踏み付け、男は息絶え絶えに唸る。興奮して暴れるから・・・


「どうだい、お前は僕のモノなんだ。」


「・・・・・・・・・・・」


「ん?」


ぺっ


血混じりの唾で男に目潰し。


「・・・クタバレ、クズ」


「・・・なら、望み通り死っ」


ザクッ


男のいた所、シエルを守る様に側に大剣が突き刺さった。もし、男が避けなければ一撃必殺。


「・・・お前、何者だ?」


「子猫ちゃんの保護者。だから子猫ちゃんは返してもらう。」


「・・・気に食わない、気に食わないね、そのスカした顔。それに子猫チャンの所有者は僕だ。

・・・ココにいた警備の者達はどうした?」


「あれね・・・こんな所にいなければ強かったものを・・・。それと、返してもらうといったはずだ。

貴様等流のやり方でなっ!!!」


「!!!!??」


瞬間、男の視界からライがケシ消え


どごぉっっっ!!!


横っ面の一撃に、男は錐揉み回転で吹っ飛ばされた。


「とぅひゃんにほなふらりぇたこひょにゃひほひ・・・・」


「バカボンボンめ、一生いってろ。」

大人しく部屋で待ってろって言ったのになぁ。飯に連れて行ってやるっていっただろ、シエル?」


「・・・殺す、お母さんの仇」


「やめとけ、アンなの殺す値打ちもない。」


暴れるシエルを優しく抱締め、優しく諭す。 ライの抱擁がシエルの殺意を怒を溶解させていく。


「殺、殺、こ、こ、こっ・・・うえ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」


そして、ようやく大事な人を失った哀しみに少女は泣く。仇を殺しても大事な人は帰って来ない。


・・・・・・・・・・・・・・・


シエルはライの肩を涙でグショリにしてから泣き止んだ。


「よしよし、もう大丈夫だな?」


「・・・(コクっ) ヒック」


「んじゃ、ちょっとごみを片付けてくるから。」


「?」


意味が分からずシエルは泣いて脹れた目で首を傾げる。


「アレを野放しには出来ないだろう?」


もうソコに男の姿はなかった。どうやら、ライがシエルを慰めている間にこっそり逃げたようだ。


「殺す・・・のか?」


「まさか、そんな楽はさせない。奴にはこれから一生今までの償いをしてもらうのさ。

今度は大人しく待ってろよ。」


ライはシエルに自分のマントを捲き付け、床に刺さったままの大剣を引き抜くと走り去った。


・・・・・・・・・・・・・・・


裏道、長剣を手に男は逃げていた。


「・・・父さんに言いつけてやる。言いつけて始末してやる。そうだ、僕は凄いんだ。」


自分のしてきた事に対して全く反省の色がない。

それを遮る影。


「いい加減にしろや、バカボンボン。」


「ひっ、ぼ、僕の父さんは大臣なんだぞ。偉いんだ。父さんに言いつけてやる。」


「・・・貴様の父親が大臣だということは知っている。だから?」


「へ?」


「貴様のケジメは貴様で着けろっ!!!」


ガシャーン ベチィーーーん


一瞬で居合を積めたライは長剣を粉砕。そのまま身体を回転させ、

蝿叩きで蝿を叩くが如く大剣の腹で男を叩いた。でも衝撃は強いがダメージは少ない。

そして、吹っ飛んだ男の上に馬乗り


「あ、あれはお前にやるから許して、許してください。」


「・・・ふぅ、質問に答えろ。お前がコレクトした以外の集めた子達、どうした?」


「王立の魔導研究所で高額で買い取ってくれるって言うから全部そこに・・・もう許して下さい。」 


「最後にもう一つ質問。俺はこれから如何するでしょうか?」


「ぼ、僕を解放してくれる?」


「ハ・ズ・レ〜♪ 貴様の顔の形が変わるまでぶん殴る(邪笑)♪」


「ひいいいいいっ」


ドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカ
ドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッ
ドスッベキッドカッベキッドカドカッドスッドスドスッベキッドスッベキッドカッベキッドカ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


その日、王都に一人乞食が増えた。 と言っても、毎日何千人と入れ替わる難民のたった一人。

 

シエルは、壁にマントを巻き付けた身体を預けてウッツらウッツらと居眠り。

一日何も食わず走り回り、挙句の果てにさっきの暴行。シエルの疲労はピークに達していた。

そのシエルに掛る影。疲労の余り自分に近づくその気配に気付かない。


「・・・・・・・」


影が笑い、マントの端を掴む。そして一気に

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ


「ニャっ!!? ニャー、ニャア、にゃあああぁぁぁーー」


転げる勢いそのままにシエルは逃げるが、あっという間に壁に追詰められた。


「・・・何、怯えているんだ? そうゆう反応、傷つくなぁ。」


影の主は大剣を背負ったライだった。悪戯は時と場所を考えませう。


「バカ、バカァ、バカー−−−」


ドンッッ、ぐぁしっっっ!!!


「ぐえっ!!!」


体当たりそのままに首に抱き付き、脚と尻尾をプラ〜〜〜ン


「・・・取り敢えず、帰るか?」


「(コクコク)」


「・・・歩きにくいから離してくれない?」


ブンブン


尻尾を振って拒否のゼスチャー。

仕方がないので二人の顔(と剣の柄)が出るようにマントを巻き付け、マントの中でシエルをお姫様抱き。


ウネ、ウネウネウネ、ウネウネウネウネウネウネ・・・・


「なあ、尻尾暴れさせるのやめてくれない?」


ピタっ


こうやって甘える事が出来るのがよっぽど嬉しいのかシエルの尻尾は良く踊る。だからしばらくすると


ウネ、ウネウネウネ、ウネウネウネウネウネウネ・・・・


しょうがないのでほったらかし。


・・・・・・・・・・・・・・・


しかし、それもいつのまにかとまっていた。


「・・・シエル?」


「・・・・くーー・・・くーー・・・」


しっかり抱き付いて熟睡。寒い深夜、高い体温のシエルは暖かだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


「って、兵舎の方に帰ってるぅーーー」


そう、夜中ライは兵舎に帰ってきた。 眠ったシエルを抱き付かせたまま。

正直、この状態を人に見られるのは大変不味い。かと言って、今から孤児院往復もきつい。


「・・・仕方ない。」


今夜はシエルを自室に泊める コッソリと。

しかし、兵舎の廊下を渡り切ろうとした時、後から


ポムッ


「ぐふ、ぐふふふふ、見たぞぉライ。こんな夜中にこんな格好で子猫チャンと何をやっていたんだぁ(酔)」


行き成り、酔いどれおっさん(大戦斧筋肉男)に見つかった。


「うっ・・・ん・・・(苦)」


よっぽど、おっさんの息が酒臭いのかシエルが魘される。ライも酒臭いのは御免だ。


「酒臭い顔を近づけるなっ!!!」


「ライ、お前付き合いが悪いぞォ。たまには一緒に酒飲もう。」


「酔ってるなオッサン。俺に触るな絡むな凭れるなーっ」


「うむ、俺は酔っている。酔っているから酔っていないぞぉ。」


酔払いに説教は無意味、無駄。 こういうのから逃れるのは至難の技。


「オッサン、もう晩い。俺は明日もあるし、オッサンも明日があるだろ?」


「そ〜だなぁ、俺も、もう部屋で飲むかなぁ。じゃあ、また明日なぁ。」


至難の技・・・・・・のはず。


「・・・まだ飲むのかよ。・・・俺も寝よ。」

 


その悪夢は今までの悪夢とは勝手が違った。

内容は今までと一緒。シエルの目の前で母親が殺され、自分が獣に犯され・・・陵辱のフラッシュバック。

憎しみが、怒りが癒えた今 シエルの心を蝕むモノは・・・恐怖。

大事なモノを失う恐怖。自分が壊され無理やり変貌させられる恐怖。


「・・・ぁ・・・ぅぅ・・お・・かぁさん・・いやぁ・・にゃぁぁ・・・」


ライは深夜、隣で魘されるシエルに目を覚ました。

だからと言ってライには何も出来ない。ただ、寝惚け眼で見守るだけ。

ライの意識がハッキリしていたなら、その色っぽさにドキマギしていただろう。


「・・・ひぃ・・・ぁっ、ぁっ、・・ゃぁぁぁぁ・・・・」


シエルの肢体がビクンビクンと身悶え、手が何かを探してピクピクと痙攣する。


「・・・大丈夫。大丈夫だ。大丈・・z・・z・・・」


甘い匂いに誘われ再び眠るライに抱締められ、シエルの寝息が安定し始める。


「・・・おかぁ・・さん・・z・・・z・・・ラ・・ぃ・・z・・らいぃ・・・」


子猫の心が救われる日はもう真近かもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


遅朝、駐屯地執務室


「(コンコンコン) ライ=デステェイヤー入る。」

言うだけいって返事も待たずにライは入室。待ちうけるのは、渋い顔をしたオーディス。


「今日から当分日常任務中心で行動する。んじゃ早速、孤児院に行ってくるぜ。」


「ちょっと待て」


ぴたっ


「今日早朝、大臣の息子が行方不明になった。今回の貴様のターゲットだ。何か知らないか?」


「さあ、知りませんねェ。大方、俺達が怖くなって逃げ出したんじゃないんですか。

意外とその辺で乞食でもしているかも。」


オーディスに背を向けたまま、しれっと言う。


「そうか ・・・我々は王都に住む民を、王国の平安を守らなければならない。分かるな、ライ。」


「・・・前に言ったはずですよ、俺は王国の平安なんぞ知ったこっちゃない。

ただ、俺の心が平穏であるために人々にはノンビリと生活して欲しい。俺の平穏のために俺は戦うと。」


「・・・・・(その万人の笑顔の為に戦う心意気さえあれば何の問題もない。いや、むしろ我々に必要な物)」


ライが見て見ぬフリが出来ない性分だという事をオーディスは良く知っている


「・・・んじゃ、行きます。」


そして、ライはシエルと一緒に孤児院に行った。院長にシエルを庇うため、二人とも腹ペコ君のまま。

ずっと保護者であるライと一緒にいたのでシエルはお咎め無し。

しかし、ライは何故か肉体労働・・・腹ペコ君のまま。


「は、腹ヘッタぁ〜〜(ぐうぅぅぅ、ぎゅるるるるぅ)」


数回目の奥義魔法実験 未だに打倒オーディス人形ならず。

孤児院外れの空き地・・・(以下前回と同文)


クアアアアアァァァ


「・・・もう、諦めたら?」


「成せばなる成さねばならぬ何事もおおおおっ。・・・では」


ライ精神集中、詠唱開始。


「お!! おっ!!! おおっ!!?」


今回は今までと違い順調に呪文パターンが増え、立体魔方陣が築かれていく。

そして、ついに立体魔方陣完成


「イっくぞおおおっ!!!!」


チュドオオオオオオオオォォォン


シエルは見た。ライが立っていた地点からオーディス人形の方向に直線の爆発が起きるのを


「・・・・・・・・・・・」


まさかの結果にシエルの目は点、硬直状態。

土煙が収まると見えてきたのは地面に走る直線状の爆発跡。勿論、オーディス人形完全粉砕、立っていない。


「・・・・っは!! ライ、成功、成功だ」


テットテットテットテットテットテット


硬直が解けたシエルは爆発跡に沿って走る。


・・・人形のあった場所のさらに先、ライがうつ伏せに倒れている処まで


「ライ、成功だ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ん? 発想はイイが、これじゃ使えない? なぜ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「発動までに時間が掛り過ぎる?詠唱中無防備?ダメージが大き過ぎる?改良の余地有りってか?」


「・・・・・・・・・・・」


「もうだめ、俺死にそう? ふみゃ、人呼んで来ようか?」


「 」


完全に白目を向いて気を失っている処を見ると、本当に命尽きかけらしい。


テットテットテットテットテットテット


仕方がないので、シエルは人を呼びに駆けて行った。 何をやっているんだろぉなぁ と思いつつ。

 


・・・力有る者達に平穏は許されない。

シエルは平穏な毎日がずっと続くと信じていた。 

しかし、その平穏は不意に終った。孤児院にライを含め王都守護騎士達が来なくなった。

同時に、わざとらしくシエルに対して数々の養子縁組。

一体何が起っているのか院長は何も語らない。語れない。

シエルは何時ものように猫耳猫尻尾を隠す変装をして王都守護騎士団駐屯地までやって来た。

そして、何時かの衛兵の前を通り過ぎようとした時


「ちょっと君、騎士ライに来たのかい?」


「・・・(コク)」


「もう彼はココにはいません。・・・おそらく、二度と戻ってこられない。」


「!!? ・・・な・・ぜ?」


「ここじゃなんだから、詰所で話しましょうか。」


シエルはその衛兵の寂しい笑みに彼自身ソレに納得していない事を理解する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


詰所、ストーブを挟んで手に熱い茶のコップを持って二人は座る。猫舌だけに、シエルは熱い茶は苦手。


「さて、何から話しましょうか。・・・今、騎士ライには国家反逆罪が掛り、逃亡中です。」


「・・・・・・・・・」


「信じられないようですね。私も信じていません。ココにいる人間は皆、総司令部の陰謀だと分かってます。

事の起りは一月程前でしょうか。王立の研究所で異界の神が降臨したので守護騎士団に出動依頼が来ました。

実際はとんでもない実験体が暴走したらいんですけど・・・守護騎士団ですら手におえなかった。」


「?・・・?・・・」


「守護騎士団と神官戦士団がもう少しで全滅必死という処で、騎士ライがソレを倒したらしいです

・・・命と引き換えに。」


「・・・?」


一瞬、シエルは何を言われたか理解出来なかった。そして、その意味が心に染みこむに連れて沸き起こる思い

また、私は、大事なヒトを、奪われるのか


「実際、騎士ライの身体はボロボロで・・・あれで生きているはずがなかった。」


「はずがなかった?」


「復元したんですよ、すぐに。どうも、その実験体の影響らしいのですが・・それでも意識は戻らなかった」


「・・・・・・・・」


「総司令部が意識の戻らない騎士ライを引き渡せといってきました。勿論、守護騎士団はそんな事許さない。

そうすると今度は国家反逆罪・・・。だから守護騎士団と神官戦士団の勇士数人が騎士ライを連れて逃亡。

・・・・・・今、彼等はどこにいるでしょうか。」


「・・・・・・・・」


二人は彼等を思い遥か青空を仰ぎ見る。残された者の気持は残された者にしか解らない。

母親の次は、今度はライ。シエルは自分から大事なモノを奪う運命に対して怒る。

しかし、ライは死んでいない。 シエルのその大事なモノはまだ奪われていない。

それなら、奪われないよう自分の手で護る。護れるように強くなる。

理不尽な運命に大事なモノを奪われないように。

シエルはライから貰った牙(タガー)に誓う。

シエルもまた運命に抗う者。

 


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


長い年月が流れた。

あの後、シエルは自分が選んだ元戦士の養子(弟子?)となり、傭兵となった。

少年のようだった身体も成長し鍛えられ、今や逞しくも野性的な美しい肉体に・・・胸を邪魔だと感じるが

しかし、所詮は女。体質のせいか剛の力は男ほど身に付く事無く、要は柔の素早さ。

使う得物もタガーではなく、より自分が強くなるため選んだ三刃鉤爪×2。

後は素早さを生かすためブーツ以外目立った防具は無し。

西へ東へ旅の中、シエルは一つの噂を耳にした。

国境付近、魔物が跋扈する荒野に少数精鋭の騎士団が護る町がある。

その騎士団が護るお陰で町は急速に発展して来ている。騎士団長の名前は・・・ライ。

その町が次の目的地。 もしかしたら今度こそソコが終着地かもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・


夕暮前シエルが到着した時、その町は異様なほど騒がしかった。まるで臨戦時みたいに。

亜人,翼人,獣人が数多くいるため、シエルの漆黒猫耳尻尾も多少珍しがられても奇異には見られない。

取り敢えず、近くにいる町人を捕まえて話しを聞いてみる。


「忙しい処済まないが、何があったのか教えてもらえないか?」


「魔獣だ!!魔獣の群がそこの山の直向こうまできているんだ。アンタ旅人だろ?さっさと逃げたほうがイイ。」


と言いながらも、町人達の気迫はココを死守しようと感じられる。


「貴方達は逃げないのか?」


「俺達ゃ、ココに護らなければならんものがある。それに今までこんな事は何度かあったさ。」


台詞と違い余り顔色は良くない。


「・・・私も手伝おう。 私は傭兵だ。多少なり戦力になる。」


「そ、それじゃあ町の中央広場に騎士団の人が残っているから、その人に指示を仰いでくれ。」


・・・・・・・・・・・・・・・


例えるなら、ロリ少女魔導師。その少女が偉そうに周辺の人々に指示をしていた。


「忙しい処済まないが、貴方は騎士団の人か?」


「そうだっ!! 何だお主は(怒)?」


即効で偉そうに怒鳴り返された。少女はストレスが溜まっているのか可也苛立ってい様に見える。


「シエル、傭兵だ。 助太刀したい。」


「フンっ、実際そのような事態に為ったら住民が避難する時にシンガリをしてもらうしかないぞ。」


「了解した。シンガリ、引き受けよう。」


「!!?・・・どいつもこいつもバカばっかりっだ。バカ、バカっ、バカ、特にバカラーーーーーイっ!!!」


どうやらライに置いてきぼりを食らったのがよっぽど悔しかったらしい。

暴れ、地団太を踏み、髪を掻き毟るため折角の可愛らしい容姿が台無し・・・


「・・・ライ。ライ=デステェイヤーか?」


苦笑いするシエルに対して、ロリ少女魔導師は驚愕、そして警戒。

一部の人間、関係者しかライのフルネームを知らない。

ロリ少女魔導師は一瞬でシエルを関係者、つまり刺客と判断した。

しかし、よく見てみるとシエルの雰囲気はそういう感じではない。


「・・・御主、何者だ?」


「だから傭兵、シエル。 ライは私の保護者らしい・・・私が子供の時の話しだけどな。」


ロリ少女魔導師の目が点。しかしシエルが味方でそれなりの戦士である事を理解するとその顔は半泣き顔に


「頼む、ライをア奴等を助けてやってくれ。 ア奴等、命に換えても魔獣を食止めるつもりだ。」


「(ガシッ)話しをっ!!!」


魔獣の大群が山の向う側に襲来、この町を目指している。

そこで、騎士団は山間の谷、向う側からこっち側に通じる唯一の街道で迎え撃つために出動

たった3人だけで。

ロリ少女魔導師ルーは置いてきぼり。ライ達が全滅した時、町人を避難させるため。

少女魔導師ルーが話している間、シエルはブーツをシッカリと締め、

身体(巨乳)を締める為レザーアーマー装着、両腕に三刃鉤爪装備

そして戦場へ。大事なヒトを死なせない為に、共に生きる為に。


谷の間、岩壁に挟まれた街道の入り口に3人の人影。

そして、街道の遥かむこう 血の様に赤い夕日の中には魔獣達の影。


「悪いな、こんな所まで付き合わせて」


「「ライは自分の保身を考えないからね。ホント世話が焼ける」」


3人の中央、片刃の大剣,特殊戦闘服,格闘ガントレット装備のライの台詞に対して両端、

ハルバート装備の完全装甲騎士とチャイナドレス状の鱗鎧,金属鞭,爪長盾装備の妖艶神官戦士が突っ込み

彼等の装備は、長い旅の間に自分の意志で成すべき事のために選んだモノ。


「ソレに、ココにいるのは僕自身の意思。僕も騎士だかね。」


完全装甲騎士の上げたフェイスガードから覗く笑う目に確固たる意志の光が輝く。


「でも、今回ばっかりは危なそう。美人薄命とは私みたいな事をいうのね(クネクネ)」


大丈夫、アンタは俺達を殺しても生残る。

空かさず二人は心の中で突っ込み。口に出すとこの場で女王様プレイをされかねない。


「・・・冗談はさて置き、そろそろ行きますか。

目標は、ココを壊さずココで奴等を退ける・・・もしくは殲滅する事。」


街道を壊してしまえは簡単に町は魔獣達から護る事は出来る。しかし、貿易が要の町にとってココは生命線。


「俺は前衛、突っ込む。二人は俺が討ち漏らした奴を・・・では極星騎士団、突貫!!!」


彼等は駆出した、護るために。


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・

既に日も暮れ、所々 地に魔炎、天に満月が輝く中、彼等は戦いつづけていた。

戦闘の中心はライ。既に妖艶神官戦士は魔法過剰使用と疲労で気絶し、それを完全装甲騎士が守っている。

魔獣は増える一方で極星騎士団が不利。


「・・・(くっっ、3人では流石にきつい。いっそうの事、街道を・・・しかし・・・)」


ライは戦いながら最善の方法を模索する。確かに、最善の方法はあった。

魔獣のリーダー格を見つけ一気に片付ける。しかし、そのためには人手が足りず、その場所も解らない。

せめて一人、後一人 一騎当千の戦士がいれば・・・

ゴリッ


「!!!??」


瞬間、倒した魔獣に足を取られ態勢を崩すライ。ソレに迫る魔獣の豪腕。しかし

ビクンッ、ザシュッッ

その魔獣が不意に硬直、その隙に態勢を崩す勢いの斬撃。危機を救った漆黒猫耳の女戦士とお互いの背を守る。


「義により助太刀する。」


「助かる!! 俺が合図するまで時間が欲しい。囮とリーダー格の探索、出来るかっ?」


「任せろっ!!!」


漆黒猫耳の女戦士は更に奥、魔獣の群へ。派手に跳び回るため、戦いの中心はライからその女戦士に移る。

ライも周りの魔獣を片付け、構え、神経集中、詠唱開始。

瞳が普通の茶色から金色の竜眼に変わると共に急速な勢いで立体魔方陣が構成され始める。



魔獣を岩壁を踏み台に跳び回るシエルは直にリーダー格,魔獣の群れの中心を見付けた。

ライの様子も伺う。ライの周辺で見覚えある形の立体魔方陣が構成されていた。

しかし、その構成速度は段違いに速く、微妙に呪文パターンが違い、立派のような気がする。

シエルは自分が強くなった以上にライが強くなっていた事を実感した。

魔方陣完成が近づきつつあるようなので、挑発にいきり立った魔獣の群れを引き連れライの元に戻る。


ライは驚いた。合図する間もなくピッタリのタイミングで女戦士が戻って来た事に。

そしてすれ違いざま、場所を指し示しながらもライの金色の竜眼に驚愕する女戦士に笑みを返す。


「・・・ナイスタイミング!!!」


女戦士が安全圏へ出ると当時に奥義発動。


おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!


全てが止まった世界、ライは音にならない戦叫を上げつつ一気に魔獣の間を抜けリーダー格集団に切迫、撃破

そして


ドオオオオオオオオオオオン!!!!

解除と共に起った、ライが通った跡そのままに爆発が発生。谷は砂煙に覆われた・・・。


・・・・・・・・・・・・


突然の爆発に魔獣達は硬直しかし直にざわめき出したが、砂煙が収まるに連れ再び沈黙が訪れる。

戦神が如く死々累々の中央に立つライに


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、


1歩踏み出す毎に、その戦気に魔獣達が左右に分かれ道を作る。

そして時間を掛けてシエルの処まで戻って来たライは闘刃横一閃


ザシュッ


道に境界線を作り、仁王立ち


「聞けッ、魔獣ども!! 退かずこの一線越えるモノは、我が滅するものと知れ!!!」


ザワ、ザワザワザワ・・・


大戦叫に魔獣達の間に広がる恐慌。言葉は通じなくともその意志は魔獣達に染みこんだ。

そして一匹逃げ出したのを皮切に雪崩が起るが如く魔獣達は遁走・・・・

恐らく、二度と魔獣達はこの谷を越えようとは思わないだろう。


・・・・・・・・・・・・

残ったのは静寂。魔獣達の屍骸の中に仁王立ちのライと茫然としたままのシエル。

遥か後の方で一発逆転、大勝利に喜ぶ二人


「・・・町まで帰ろう!!!」


そして彼等は町人達が出迎える町まで帰ってきた。

ライはルーに泣き飛び付かれて顎下に頭突きの一撃を食らい、町人に揉みくちゃにされ・・・

シエルは行き成り、装備を解いた完全装甲騎士の優男カインに軟派され

肩に手を掛けられたので思わず瞬殺コンボ、地に沈めてしまった・・・

それを、介抱されながら微笑み見守る妖艶女神官戦士アルシア・・・


焚き火の側、騎士団の面々とシエルが思い思いに座る。周辺は事後処理や祝宴で騒がしい。

違和なくその場に溶け込んでしまった 隣に座るシエルを思い出し、ライは話し掛ける。


「まだ礼を言っていなかったな、ありがとう、助かったよ。俺は・・」


「ライ、ライ=デステェイヤー。・・・私に見覚えがないか?」


シエルはライが名乗るのを制し、先に言って悪戯笑い。

一瞬ルーとシエル以外に警戒が走るが、ライが手で制して悩み始めたので全員返事待ち。

考え中・・・考え中・・・考え中・・・


「・・・で、ちらさまでしょうか?」


ぴしっ


「ちょ、ちょっと待て、シエル。 冗談、冗談だ(焦)。シエル・・・だろ?」


「(コクッ)ライ、今本気で忘れていただろう(苦笑)。」


「そりゃまあ、こんなに立派に成長してりゃ直には分からんわな。昔なんてホント子猫・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


久しぶりの再会にお互い話しが続かない。

それを微笑ましく見守る女性陣二人と (シエルのせいで)傷まみれの顔で我関せずを貫く優男カイン。


「ホント、よく成長したなぁ(特に胸が)。身長なんて俺の目の所ぐらいまで在るもんなぁ」


多少ライの視線の先が気に為らなくもないが、それ以上に心を占める懐かしい思い。

正直ライに抱き付きたいほどに。だが、戦士としての自分はソレを許さない。

しかし、心を反映して尻尾が踊る。


「ああ、アレから色々在った・・・。今は傭兵をしている。私をライの所で一緒に働かせて貰えないか?」


「「賛成っ!!」」


「むぅぅぅぅ・・・俺は・・・反対。」

苦い顔で返答。なぜならシエルを騎士団に入れればを自分の運命に巻込むことになる。


「僕も反・・」


「御主は答えんでいいっ!! (ゲシッ)」


「そうよぉ、今回、貴方に回答の権利はないのよぉ(怒笑)」

節操なく行き成り軟派して強烈に断れたカインは初めから意見を言う権利は与えられていない。


「入れてもらえないならそれで構わない。勝手にこの町に住まわせてもらうだけだ。」


「「・・・おおーーーーーっ!!! (チパチパチパ)」」

どうやらシエルが自分の運命に巻込まれるのは決定事項らしい。

それならいっそうの事、自分の目の届く所に置いたほうが・・・

いつまで経っても保護者意識が抜けないライ。シエルはもうライの背を守れるほど強いというのに。


「はぁぁぁ、分かったよ。シエルの入団認めよう。」


きゃあああああ


「ねぇシエルちゃん、私の事覚えてる?・・・・・・」


「済まない。あの頃、私はそれどころじゃなかった・・・」


「おおおっ猫耳、猫尻尾。尻尾フワフワ、フワフワだぁ・・・・」


入団承認同時に群がる女性陣。アルシアとシエルが話し込み、ルーはシエルの尻尾を首に捲き付けじゃれる・・・

一方、男性陣は


「・・・モテルね、ライ。・・・いいなぁ。羨ましいなァ。」


全然羨ましそうでないカイン。


「全然良くない。何か俺、疲れたぁ・・・・・・」


まだ着たままの特殊戦闘服の胸前だけを開け、寝転がるライ。 直に漏れる寝息。

戦闘に加え、覚醒、奥義の使用、旧知との再会・・・身も心も既にリミットオーバー。

今、ライの安息を破るモノはいない。破らせない。

皆が護る。

シエルが護る。 

そのために再会したのだから。

ついにシエルは終着地に到着した。もう既にシエルは次の目的地を目指して歩き始めている。

という名の目的地目指して・・・


「ん、因みに騎士団の名前、極星騎士団の由来は?」


「ん〜〜〜、ここだけの話、適当。ソレらしく、皆の成すべき事を護れるようにって処かな?」


「・・・昔と相変わらずいい加減だな(汗)」


 

文章 nao様

2002/02/22
「SHRINE」

■nao様書き下ろし、おまけシナリオ■





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〜或る騎士団の日常〜
■ 仔猫 ■
少女シエル-そして

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